初夏、予感。
dream
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Side Tsukishima
「教科書忘れた」
試験前、最後の練習の日。
来週からの中間テストの教科書をいくつか机のなかに忘れていたことを思い出した。
「俺も一緒に行くよツッキー!」
「いいよ、先に練習してなよ。教科書くらい1人で取りに行くから」
山口を置いて教室に戻ると、簗瀬さんが居た。
「暗記物苦手なんだよね……」
困ったように苦笑いをうかべた簗瀬さんに少しどきっとした。
ああ、神聖ローマ帝国か……
「ま、程々に頑張んなよ」
自分でも、なんでそうしたのか分からない。
けど、気付いたら簗瀬さんの頭に手を乗せていた。
無意識で自分でも驚いて、急に恥ずかしくなって教室を去る。
体育館に戻る途中、知らない女子から声をかけられた気がしたけど気付かなかったことにして素通りした。
体育館に入ると、山口が不思議そうに僕の顔を覗き込む。
「ツッキー……なんか耳赤くない?」
「山口……うるさい」
「ごめんツッキー!」
試験初日、特に問題なくテストを終わらせて、帰り支度をしていると、後ろから山口と簗瀬さんの話し声が聞こえた。
「世界史がヤバい……」
まだ、簗瀬さん困ってたんだな。
何となく山口にイライラして、置いて帰ろうか悩んでいたら、僕の支度が終わった頃に山口が僕の机まで来ていた。
「ツッキー帰ろ!」
「……」
なんでこんなにイライラするんだろう。
「じゃあね!ツッキー!また明日!」
山口と別れてヘッドフォンをつける。
帰宅途中も何となく簗瀬さんの世界史事情が気になって、山口が話していた内容は半分も覚えていない。
ただ時々、山口の口から"簗瀬さん"のことが語られたことは分かった。
……気に食わない。
どうして、気に食わないんだろう。
気がついたら、家で昼食を摂りながら、簗瀬さんに連絡をしていた。
「母さん、昼食べたら山口と勉強してくる」