番外編　Side Yamaguchi




最近、ツッキーは何となく調子がいい。


いつからなのかはわからないけど、部活以外の時は少し調子が良さそうだ。


ツッキーとはもう何年も一緒にいるから、先輩方が言うほど表情が分かりにくいなんて事は無い。


今日は一緒に帰るのを断られたからゆっくり帰ろうと思って、ふと簗瀬さんを思い出す。


最近仲良くしてくれている隣の席の女の子。


可愛らしくて髪がサラサラで、何より俺と話していて、ツッキーのことを聞いてこない女の子は簗瀬さんが初めてだった。


俺の悩みは、女の子が話しかけてきてくれたと思ったら、ツッキーの好きなタイプを聞かれたり、ツッキーに好きな人がいるのか聞かれたり…とにかく俺はツッキー関連以外で女の子に話しかけられたいい思い出があまりない。


そういえば、モンブラン…美味しかったな。
ツッキーは気付かれてないと思ってるだろうけど、簗瀬さん……同級生の女の子にショートケーキ買うところを見られたくなかったからモンブランにしたんでしょ。


そんな事を考えながら気がついたらPatisserie Hoshinoの店の近くまで来ていた。


簗瀬さんオススメのガトーショコラ、気になってきちゃったな、買って帰ろうかな……


そう思って、お店を外からちらりと見ると、そこにはツッキーがいた。


思わず近くの影に隠れてしまったけど、イートインスペースで一緒に座っていた女の子は間違いなく簗瀬さんだった。


え、え、どういうこと？


ツッキー用事があるって言ってたけど、もしかして用事ってこれ！？


しかもショートケーキ食べてたし！

俺も食べたかったんだけど！？


胸がチクリと痛むのを感じたけど、ツッキーが嬉しそうな顔をしていたから、今日はお店に入るのはやめて、帰路についた。


簗瀬さんも…なんか楽しそうだったな。


毎日話してるけど、あんなに嬉しそうに話す簗瀬さんは見たことないや。


5月も始まったばかりだけど、まだ少し肌寒いな。