春、新生活。
dream
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Side Tsukishima
ゴールデンウィーク明け、初日。
昨日はずっと試合をしていたから、今日の部活は休みになった。
あの変人コンビとは違って僕の体力には限界があるし、今日が休みなのは正直助かる。
それに今日は、行きたいところがあった。
「ツッキー!帰ろう?」
「あー、ごめん、今日はちょっと寄るとこあるから先帰ってて」
山口には悪いけど、ちょっと1人で行きたい気分だったし、何よりこんなお願いをしている所を見られたくなかった。
「分かった、またねツッキー!」
僕も早く帰って行こう。
一旦家に帰って昨日までの合宿で持ち帰れなかった分の荷物を家に置いて、靴を履き直した。
着替えるか悩んだけど、何を着て行けばいいのかも分からなくなったから制服のままケーキ屋へ向かう。
『Patisserie Hoshino』
ふぅ、と一息ついて店の扉を開く。
「いらっしゃいませー……あ」
この間同様驚いた顔の簗瀬さんが僕を迎え入れてくれた。
山口に交換してもらったショートケーキは、美味しかった。
久しぶりに自分のツボだと感じるケーキだったから、以前とは違って思わず食べたかったケーキの名前を告げる。
箱を作る彼女の背中をぼんやりと眺めていると、小さな声で「あれっ、」と何度が聞こえた。
よく見ると持ち帰りの箱を上手く作れていないようだった。
簗瀬さんはどこか小動物っぽい。
少しおっちょこちょいで、可愛らしい。
…………小動物として。
慌てている簗瀬さんを暫く眺めてから、さすがに可哀想に思って、僕も簗瀬さんに話したいことがあったからイートインで食べることを申し出た。
奥から女性の従業員の方が出てこられて、僕を友達と認識したらしく、簗瀬さんを僕の前に座らせた。
僕にとっては好都合で、簗瀬さんが淹れてくれた紅茶を一口飲んで、話を始めた。
「僕がケーキ買いに来たこと、学校で秘密にして欲しい」
彼女は呆気に取られたような顔をしたと思ったら、急に笑い始めた。
ふーん、君はそんな風に笑うんだ。
顔をくしゃっとさせて笑う君の顔を眺めてからはっとした。
「ちょっと、何笑ってんの」
「ごめんごめん……月島くんも同級生なんだなって思ったら可愛くて」
……可愛い?180センチ超えの男の僕が?
今度は僕が驚いてしまう。
「……はぁ?」
「月島くんってすごく大人っぽくてスマートなイメージがあったから、そんな事お願いするなんて意外で。ごめんね、でも大丈夫だよ、お客様のことだから、誰にも言ってないしこれからも言わないよ」
フー、と笑いを落ち着かせるように息を吐いた彼女を見ていると、僕の方が恥ずかしくなってきた。
「別に、当たり前でしょ、君と同級生だし、今日だって、こないだ食べたショートケーキが美味しかったから来たんだし」
目を逸らして早口で話しきった所で思い出す。
彼女は僕が食べたケーキがモンブランだと思っていたはずだ。
「もしかして……山口くんとケーキ間違って渡しちゃった!?」
とんだ勘違いを生んでしまった。
「違うよ、僕が好きなんだよショートケーキ。だから山口に交換してもらった」
「よ、よかったー……」
安堵した簗瀬さんは、えへへ、と笑っていた。
彼女は表情がコロコロ変わる。
驚いたり焦ったり恥ずかしがったり、笑ったり。
可愛らしい人だな、と思った。
山口が仲良くなるのもわかる。
それからは、お互いあまり口数が多い方ではないようで、時々言葉を交わす程度で、ケーキの感想を伝えたり、明日の課題について話したりした。
「そうだ、学校の子にバレたくないんだよね、いつも来る日は連絡くれるけど、詩織ちゃんも来るから気をつけてね」
詩織ちゃん……?ああ、簗瀬さんとよく話す子か。
簗瀬さんとは対称的によく話し声が聞こえる。
「だったらさ……教えてよ、彼女が来ない日に来るから」
「……へ?」
こうして僕達は連絡先を交換しあった。
ゴールデンウィーク明け、初日。
昨日はずっと試合をしていたから、今日の部活は休みになった。
あの変人コンビとは違って僕の体力には限界があるし、今日が休みなのは正直助かる。
それに今日は、行きたいところがあった。
「ツッキー!帰ろう?」
「あー、ごめん、今日はちょっと寄るとこあるから先帰ってて」
山口には悪いけど、ちょっと1人で行きたい気分だったし、何よりこんなお願いをしている所を見られたくなかった。
「分かった、またねツッキー!」
僕も早く帰って行こう。
一旦家に帰って昨日までの合宿で持ち帰れなかった分の荷物を家に置いて、靴を履き直した。
着替えるか悩んだけど、何を着て行けばいいのかも分からなくなったから制服のままケーキ屋へ向かう。
『Patisserie Hoshino』
ふぅ、と一息ついて店の扉を開く。
「いらっしゃいませー……あ」
この間同様驚いた顔の簗瀬さんが僕を迎え入れてくれた。
山口に交換してもらったショートケーキは、美味しかった。
久しぶりに自分のツボだと感じるケーキだったから、以前とは違って思わず食べたかったケーキの名前を告げる。
箱を作る彼女の背中をぼんやりと眺めていると、小さな声で「あれっ、」と何度が聞こえた。
よく見ると持ち帰りの箱を上手く作れていないようだった。
簗瀬さんはどこか小動物っぽい。
少しおっちょこちょいで、可愛らしい。
…………小動物として。
慌てている簗瀬さんを暫く眺めてから、さすがに可哀想に思って、僕も簗瀬さんに話したいことがあったからイートインで食べることを申し出た。
奥から女性の従業員の方が出てこられて、僕を友達と認識したらしく、簗瀬さんを僕の前に座らせた。
僕にとっては好都合で、簗瀬さんが淹れてくれた紅茶を一口飲んで、話を始めた。
「僕がケーキ買いに来たこと、学校で秘密にして欲しい」
彼女は呆気に取られたような顔をしたと思ったら、急に笑い始めた。
ふーん、君はそんな風に笑うんだ。
顔をくしゃっとさせて笑う君の顔を眺めてからはっとした。
「ちょっと、何笑ってんの」
「ごめんごめん……月島くんも同級生なんだなって思ったら可愛くて」
……可愛い?180センチ超えの男の僕が?
今度は僕が驚いてしまう。
「……はぁ?」
「月島くんってすごく大人っぽくてスマートなイメージがあったから、そんな事お願いするなんて意外で。ごめんね、でも大丈夫だよ、お客様のことだから、誰にも言ってないしこれからも言わないよ」
フー、と笑いを落ち着かせるように息を吐いた彼女を見ていると、僕の方が恥ずかしくなってきた。
「別に、当たり前でしょ、君と同級生だし、今日だって、こないだ食べたショートケーキが美味しかったから来たんだし」
目を逸らして早口で話しきった所で思い出す。
彼女は僕が食べたケーキがモンブランだと思っていたはずだ。
「もしかして……山口くんとケーキ間違って渡しちゃった!?」
とんだ勘違いを生んでしまった。
「違うよ、僕が好きなんだよショートケーキ。だから山口に交換してもらった」
「よ、よかったー……」
安堵した簗瀬さんは、えへへ、と笑っていた。
彼女は表情がコロコロ変わる。
驚いたり焦ったり恥ずかしがったり、笑ったり。
可愛らしい人だな、と思った。
山口が仲良くなるのもわかる。
それからは、お互いあまり口数が多い方ではないようで、時々言葉を交わす程度で、ケーキの感想を伝えたり、明日の課題について話したりした。
「そうだ、学校の子にバレたくないんだよね、いつも来る日は連絡くれるけど、詩織ちゃんも来るから気をつけてね」
詩織ちゃん……?ああ、簗瀬さんとよく話す子か。
簗瀬さんとは対称的によく話し声が聞こえる。
「だったらさ……教えてよ、彼女が来ない日に来るから」
「……へ?」
こうして僕達は連絡先を交換しあった。