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dream
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長谷川絵莉高校1年16歳、只今の時刻は16:30。
大大大、大ピンチです。
前方におられる私の手首を握ったまま無言でズンズン歩く巨人、こちら私の彼氏の月島くん。
たった一言聞こえた言葉は「あのバカ共明日覚えてなよ……」
お察しの方もいらっしゃるかと思いますが、月島くんめちゃくちゃに怒ってます、声をかけても無視、オブ、無視。なんてこった。
大大大、大ピンチです………………
時を遡ること30分前、教室にて。
今日は部活が休みだから一緒に帰ることになってたんだけど、先生に呼び出しを受けた月島くんを教室で待ってる間、たまたま学校に残っていたらしい山口くん、日向くん、影山くんと教室で談笑していたときのこと。
「あれ、長谷川さん、手怪我してるけどどうしたの?」
軽く擦りむいた私の掌に気付いた山口くんが心配そうに私の左手を見た。
私もすぐ心当たりに気付き、あはは、と笑いながら体育の途中で転んだことを説明すると、今度は日向くんがムッとした顔で私の右手を優しく掴んだ。
「ダメだよ長谷川さん、こんなに綺麗な手してるのに跡残ったらヤじゃん!」
真剣に心配してくれる日向くんに圧倒されつつも、右手は右手で痣になってることを伝えると、途端に平謝りに平謝りを重ねて右手を撫で始めた。
「長谷川さん、俺、絆創膏持ってるっす」
影山くんが少し大きめの絆創膏を見せてくれたところで、いつの間にやら山口くんがティッシュを濡らしてきていたらしく、優しく傷口を撫でた後、影山くんが絆創膏を貼ってくれた。
終始、バレー部1年組に甲斐甲斐しく世話を焼かれて何度か謝ったりお礼を言ったりしていると、背後から殺気立ったオーラを感じた。
そして、今に至る。
どこへ向かっているのかも分からないままだったが目的地が近づくにつれ凡その予想がついた。
予想通り着いたのは月島くんの家、どうやら今日はお家の方は誰もいらっしゃらないらしい。
月島くんの部屋に通され、クッションに座らされる。
やっと見えた月島くんの顔はやっぱり怒っているようで。
「…………手、どうしたの」
長い沈黙の後、月島くんと漸く目が合う。
よかった、怒ってるんじゃなくて心配してたんだ。
少し安心して事のあらましを伝えると、月島くんは呆れたように、ふぅ、と短く溜息を吐き、不格好に絆創膏が貼られた左手を見つめたまま、そっと握った。
「……気安く他の男に触らせないでくれる」
俯いた彼の表情は分からなかったけれど、少しいじけたような、ムスッとした声がして、彼の小さな嫉妬心に気付き、「ごめんね」と、あまり見ることの無い彼の旋毛当たりを優しく撫でた。
すると、彼はそれに満足したのかゆっくりと顔を上げ、握られた手とは逆の手を私の顎に添えてそっと口付けた。
「キミはホント、山口は兎も角あの2人に油断しすぎ」
唇が離れ、彼の真剣な眼差しで見つめられ、胸の鼓動が高鳴るのを感じる。
「ご、ごめ……」
言葉を紡ぎ終わるより先に再び唇が重なる。
普段より少し低めの声で彼が囁く。
「僕もあの人達も、れっきとした男の子なんだけど?」
名残惜しげに離れる唇と、握られた手の温もりに顔がどんどん熱くなる。
「月島くん……?」
「蛍」
目を逸らした月島くんは本棚に目を向けたまま続ける。
「蛍って、呼んで」
「……蛍っ」
少し恥ずかしくなりながら、彼の名前を呼ぶと、満足気に口角を少しあげ、私を抱き寄せた。
「……好きだよ、絵莉」
耳元で囁く彼の声はとても優しく響き、胸がぎゅっと締め付けられた。
私も好き、の気持ちを込めて今度は私からキスをすると、彼が少し驚いた様子で私を見つめた。
「ホンット、キミには敵わないよ」
笑い始めた彼のふわふわの頭を少し撫でると、彼はそれに応えるように私を強く抱き締めた。
初めて見る彼の嫉妬や甘え方に、より一層の愛おしさを覚えて時計の時刻を確認する。
17:30。
刻々と近づく別れの時間を惜しむように、私もぎゅっと彼を抱きしめた。
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