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俺達兄弟に日常が戻って初めて迎える冬。
俺は姫と二人でクリスマスの準備の為、ショコラベリィに来ていた。
勿論お目当てはクリスマスケーキだ。クリスマスケーキはクリスマスに食べる特別なケーキらしい。
ケーキ屋のショーケースに並ぶケーキを見ていると、あれもこれも欲しくなる。クリスマスケーキといっても色々あるんだな。
「あの茶色いのは何味なんだ?」
「あれはクリームとスポンジがチョコ味なの。中に苺が入ってるけど上には乗ってないのがショートケーキとの違いかなあ。国によっては違いがあるみたいだけど」
ケーキだけじゃなくて、焼き菓子にも目が止まる。
確かに兄さんも作ってくれたりはするが、シンプルだからな。まあ材料があまりないというのもあるが。
俺は手当り次第に焼き菓子を手に取る。溢れんばかりの焼き菓子を店員に手渡し、またケーキの物色を再開する。
「お前はどれがいい?」
「私は甘い物なら何でも好きだから、イヴァンの好きなものにしよう?」
「そうか? じゃあ俺はチョコのやつがいい。ディナーの後に食べるか」
お目当てのクリスマスケーキを手に俺達は隠れ家へと戻る。俺とお前だけの家に。
兄弟以外と過ごすのは俺にとって初めてのことだ。
特に俺は双子の片割れであるアダムのことしか頭になかったから、今日という日を誰かと祝うなんて考えたこともなかったな。
今はもうアダムは日常生活を送れるようになるほどに回復したから、世話を焼くことが減ってしまったのが少し淋しい。
でもこれが本来は普通なんだろうな。
クリスマスは大切な人と過ごす日だから、姫は俺が兄弟達と過ごすと見越していたのか、隠れ家に赴くことを伝えると『みんなと過ごさなくていいの?』と聞いてきた。
お前はすべてを知っているから変に気を遣わせてしまったんだな。
俺が今日一緒に過ごしたいのは家族じゃなく、お前だからこれでいいんだ。
兄弟達と、それも女性と同じ家で過ごすのは初めてのことだ。
アダムを、俺達を苦しめる諸悪の根源だと信じ、憎んでいたお前を愛するなんて。
俺は愚かだった。噂だけで嫌悪した宗主国の姫君は分け隔てなくすべての者に夢と希望を分け与えるような、優しい女性なのに。
トロイメアの姫君だというのにキッチンに立って俺のために料理を作ってくれている。
食事は食事でも、イザーク兄さんが作ってくれるものとは少し違う気がする。
母さんがもし生きていたらこんな光景が見られたのかもしれない、と俺は姫の後ろ姿にほとんど記憶のない母の面影を重ねた。
「できたよ! イザークより美味しいかはわからないけど、たくさん食べてね」
姫が時間を掛けて煮込んだ、柔らかくなったスペアリブが入った皿をテーブルに置く。
立ち上る湯気。食欲を誘う香り。
俺は姫の指示を受けながら、ワイングラスにスパークリングワインを注ぐ。
透明なグラスには緩んだ俺の顔が映っている。こればかりはもうどうにもならなそうだ。
俺は姫と二人でクリスマスの準備の為、ショコラベリィに来ていた。
勿論お目当てはクリスマスケーキだ。クリスマスケーキはクリスマスに食べる特別なケーキらしい。
ケーキ屋のショーケースに並ぶケーキを見ていると、あれもこれも欲しくなる。クリスマスケーキといっても色々あるんだな。
「あの茶色いのは何味なんだ?」
「あれはクリームとスポンジがチョコ味なの。中に苺が入ってるけど上には乗ってないのがショートケーキとの違いかなあ。国によっては違いがあるみたいだけど」
ケーキだけじゃなくて、焼き菓子にも目が止まる。
確かに兄さんも作ってくれたりはするが、シンプルだからな。まあ材料があまりないというのもあるが。
俺は手当り次第に焼き菓子を手に取る。溢れんばかりの焼き菓子を店員に手渡し、またケーキの物色を再開する。
「お前はどれがいい?」
「私は甘い物なら何でも好きだから、イヴァンの好きなものにしよう?」
「そうか? じゃあ俺はチョコのやつがいい。ディナーの後に食べるか」
お目当てのクリスマスケーキを手に俺達は隠れ家へと戻る。俺とお前だけの家に。
兄弟以外と過ごすのは俺にとって初めてのことだ。
特に俺は双子の片割れであるアダムのことしか頭になかったから、今日という日を誰かと祝うなんて考えたこともなかったな。
今はもうアダムは日常生活を送れるようになるほどに回復したから、世話を焼くことが減ってしまったのが少し淋しい。
でもこれが本来は普通なんだろうな。
クリスマスは大切な人と過ごす日だから、姫は俺が兄弟達と過ごすと見越していたのか、隠れ家に赴くことを伝えると『みんなと過ごさなくていいの?』と聞いてきた。
お前はすべてを知っているから変に気を遣わせてしまったんだな。
俺が今日一緒に過ごしたいのは家族じゃなく、お前だからこれでいいんだ。
兄弟達と、それも女性と同じ家で過ごすのは初めてのことだ。
アダムを、俺達を苦しめる諸悪の根源だと信じ、憎んでいたお前を愛するなんて。
俺は愚かだった。噂だけで嫌悪した宗主国の姫君は分け隔てなくすべての者に夢と希望を分け与えるような、優しい女性なのに。
トロイメアの姫君だというのにキッチンに立って俺のために料理を作ってくれている。
食事は食事でも、イザーク兄さんが作ってくれるものとは少し違う気がする。
母さんがもし生きていたらこんな光景が見られたのかもしれない、と俺は姫の後ろ姿にほとんど記憶のない母の面影を重ねた。
「できたよ! イザークより美味しいかはわからないけど、たくさん食べてね」
姫が時間を掛けて煮込んだ、柔らかくなったスペアリブが入った皿をテーブルに置く。
立ち上る湯気。食欲を誘う香り。
俺は姫の指示を受けながら、ワイングラスにスパークリングワインを注ぐ。
透明なグラスには緩んだ俺の顔が映っている。こればかりはもうどうにもならなそうだ。