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姫と気持ちが通じ合うようになって迎えるクリスマス。ぼくにとっては初めてのクリスマスだ。
そもそも家族としか過ごしたことがないし、トルークビル以外の人間とまともな会話も交わしたことなんてなかった。
そんなぼくが誰かを好きになることができたなんて、すごい変化だと思う。
トロイメアのお姫様はすべての元凶となった国のお姫様だと信じていたから、最悪の出会いで始まったからまさかこんなことになるなんて誰も思ってなかったよね。このぼくだって、そう。
それにぼくと姫は年が離れている。だから選ぶなら年が近いフレ兄かイザ兄だと思ってた。
だけど姫はぼくを選んでくれて、今は幸せで仕方ないんだ。
クリスマスは大切な人と過ごす日。姫がいなければ家族と過ごしてただろうけど、ぼくは隠れ家で姫と過ごすことにした。
「シリル、みんなと過ごさなくていいの? 私は嬉しいけど」
「今はアダム兄も元気だし、兄弟水入らずだから逆に賑やかすぎてうるさいくらいなんだよね。特に家に帰るとルー兄とかからかってくるし、ウザいからあんたといる方がいいんだ」
「もうシリルったら……思ってもいないくせに」
食卓に温かな料理が並ぶ。
ハンバーグドリアに南瓜のポタージュ。ねぇ、何で今日はこってり系で攻めてるの? それともこれがクリスマスの定番なの? ぼくはあんたの料理はなんだって美味しいから好きだけど。
でも料理より楽しみなのは姫からのプレゼントなんだよね。だって今日は大切な人と過ごす日、でしょ?
欲しいものがあれば奪って手に入れることしかしなかったぼくが、誰かに贈り物をするなんて不思議だよね。
他の王子様みたいに有り余るお金なんてないから、姫には内緒で一週間前に街で見つけた貼り紙で求人募集していたベーカリーでアルバイトをして、貯まった軍資金で初めてのプレゼントを購入した。ぼくにとっては初めての買い物だった。
女の人は何を貰ったら喜ぶのか分からなかったけど、指輪はもう大切なものを持っているし、じゃらじゃらしたネックレスやブレスレットだと旅をするあんたには向いていないかなと思ったから、あまり邪魔にならなさそうなパールをあしらったシンプルなイヤーカフを選んだ。喜んでくれるといいんだけど。
ぼくは姫が作ってくれた料理をぺろりと平らげ、デザートはまだ早いかな、とお姫様の顔を見つめる。
「なぁに、シリル? ケーキはもう少ししてから食べない? 私、お腹一杯なの」
「そうじゃなくて、クリスマスにはプレゼントを贈るって決まってるんでしょ? だからこれ、あんたに」
懐にしまっておいた、綺麗にラッピングされたギフトボックスを手渡すと、あんたは嬉しそうに大切なものを扱うように、包装紙の封印を解き、ギフトボックスを開く。
「わぁ……綺麗なパールだね。シリル、ありがとう。大事にするね──あ、私もね、シリルにプレゼントがあるの」
そう言ってあんたが手渡してくれたのは、サンタクロースとトナカイが描かれた包装紙で包まれたものだった。
包装紙の中身はアイボリーのニットグローブが入っていた。
ぼくにとって他人から初めて貰うプレゼント。それはどんなものより尊くて、輝いているように見えた。
「まだ寒いからよかったら使って? シリルが留守の時に編んだんだけど、お店で売ってるやつみたいにきれいじゃないけど──」
そんなことない。ぼくはあんたの了承を得てから、ニットグローブをはめてみた。
ぼくの指先にフィットしたニットグローブは暖かい。ぼくの心までも満たしていくみたいだ。
姫はきれいじゃないなんて言ったけど、まるでお店に並んだ商品みたいに網目も均一だし謙遜だと思う。
あんたがぼくを想ってくれてるから、そう感じるのかもね。
そもそも家族としか過ごしたことがないし、トルークビル以外の人間とまともな会話も交わしたことなんてなかった。
そんなぼくが誰かを好きになることができたなんて、すごい変化だと思う。
トロイメアのお姫様はすべての元凶となった国のお姫様だと信じていたから、最悪の出会いで始まったからまさかこんなことになるなんて誰も思ってなかったよね。このぼくだって、そう。
それにぼくと姫は年が離れている。だから選ぶなら年が近いフレ兄かイザ兄だと思ってた。
だけど姫はぼくを選んでくれて、今は幸せで仕方ないんだ。
クリスマスは大切な人と過ごす日。姫がいなければ家族と過ごしてただろうけど、ぼくは隠れ家で姫と過ごすことにした。
「シリル、みんなと過ごさなくていいの? 私は嬉しいけど」
「今はアダム兄も元気だし、兄弟水入らずだから逆に賑やかすぎてうるさいくらいなんだよね。特に家に帰るとルー兄とかからかってくるし、ウザいからあんたといる方がいいんだ」
「もうシリルったら……思ってもいないくせに」
食卓に温かな料理が並ぶ。
ハンバーグドリアに南瓜のポタージュ。ねぇ、何で今日はこってり系で攻めてるの? それともこれがクリスマスの定番なの? ぼくはあんたの料理はなんだって美味しいから好きだけど。
でも料理より楽しみなのは姫からのプレゼントなんだよね。だって今日は大切な人と過ごす日、でしょ?
欲しいものがあれば奪って手に入れることしかしなかったぼくが、誰かに贈り物をするなんて不思議だよね。
他の王子様みたいに有り余るお金なんてないから、姫には内緒で一週間前に街で見つけた貼り紙で求人募集していたベーカリーでアルバイトをして、貯まった軍資金で初めてのプレゼントを購入した。ぼくにとっては初めての買い物だった。
女の人は何を貰ったら喜ぶのか分からなかったけど、指輪はもう大切なものを持っているし、じゃらじゃらしたネックレスやブレスレットだと旅をするあんたには向いていないかなと思ったから、あまり邪魔にならなさそうなパールをあしらったシンプルなイヤーカフを選んだ。喜んでくれるといいんだけど。
ぼくは姫が作ってくれた料理をぺろりと平らげ、デザートはまだ早いかな、とお姫様の顔を見つめる。
「なぁに、シリル? ケーキはもう少ししてから食べない? 私、お腹一杯なの」
「そうじゃなくて、クリスマスにはプレゼントを贈るって決まってるんでしょ? だからこれ、あんたに」
懐にしまっておいた、綺麗にラッピングされたギフトボックスを手渡すと、あんたは嬉しそうに大切なものを扱うように、包装紙の封印を解き、ギフトボックスを開く。
「わぁ……綺麗なパールだね。シリル、ありがとう。大事にするね──あ、私もね、シリルにプレゼントがあるの」
そう言ってあんたが手渡してくれたのは、サンタクロースとトナカイが描かれた包装紙で包まれたものだった。
包装紙の中身はアイボリーのニットグローブが入っていた。
ぼくにとって他人から初めて貰うプレゼント。それはどんなものより尊くて、輝いているように見えた。
「まだ寒いからよかったら使って? シリルが留守の時に編んだんだけど、お店で売ってるやつみたいにきれいじゃないけど──」
そんなことない。ぼくはあんたの了承を得てから、ニットグローブをはめてみた。
ぼくの指先にフィットしたニットグローブは暖かい。ぼくの心までも満たしていくみたいだ。
姫はきれいじゃないなんて言ったけど、まるでお店に並んだ商品みたいに網目も均一だし謙遜だと思う。
あんたがぼくを想ってくれてるから、そう感じるのかもね。
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