短編
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花宮の年寄り共は口を揃えて言いよる。
国の為、国民の為──ちゃうやろ、全部保身の為やろ。
古い仕来りが悪いとは思わん。時代に合わせたものが必要なんや。それやのに変化を恐れて仕来りを守り続けることに何の意味があるんや。ほんまに嫌なるわ……。
溜息をつくと俺は書類を抱えて部屋へと戻った。
すると白拍子姿の女が文机の前で呑気に和歌集を読んどるやないか。誰に断って入ったんかは知らんけど、事と次第によっては痛い目見てもらわなな。
衣擦れの音に女が振り返る。白拍子の女は巫女やった。なんや、普段と全然ちゃうからわからんかったわ。
「道長さん! お疲れ様です」
「どないしたんや、その格好」
「今日はハロウィンに当たる日なので仮装しようと思ったんですが、衣装が思い付かなくて。それで白拍子に扮してみました。道長さん、お菓子くれないと悪戯されちゃうんですよ?」
巫女は嬉しそうな顔をして俺に近付いてきよる。
仕事から帰ってきたばっかでそんな気の利いたもん、あるわけないやん。
いつもは悪戯するんは俺やからな。たまには悪戯されんのもいいかもしれん。
せっかく白拍子に扮しとるんや。舞いで俺を惑わすんか、それとも──口付けだけで茹で蛸みたいになるあんたのことや。おぼこいあんたがそんなことできるわけないわなあ。
でも白拍子は舞うだけやないんや。芸事は勿論やけど、遊女の真似事したりもするやなんて知らんやろな。
あんたはただ白拍子の衣装に袖通しただけや。何も知らんと──。
白拍子は誰彼構わず相手にするわけやない。貴族や権力者だけやけど、気に入られて妾にされた例もあるんや。
好きでもない男の夜伽をすることもある。俺以外の男の下で啼かされるやなんて、想像しただけで腸煮え繰り返りそうになるわ。
「ほんで悪戯て何されんの? 気になるわあ」
「え、えっとそこまでは考えてなかったんですが……」
やっぱり真っ赤になりよった。俺が巫女の手首を強く掴むと、彼女は体勢を崩して俺を押し倒した形になってもうた。下から見上げるあんたも悪ないなあ。
今にも口付けてまいそうな距離やのに、俺の顔に触れるんは立烏帽子や。ああ、邪魔でもどかしいわ。
俺が巫女の立烏帽子を奪うと、彼女は驚いた目で俺を見よる。
「悪戯、するんちゃうの?」
「道長さん、手首離して下さい……」
もう片方の空いた手で巫女の項をなぞると、びくりと震えながらも林檎みたいに真っ赤な頬は俺が勘違いするにはええ材料でしかなかった。
そりゃそうやろ、好いた女なんや。俺は何かに魅入られたように巫女の唇を奪った。深くなる口付けに巫女は抗うこともせんと瞳を閉じて俺に応えとる。
こうやってあんたを乱してええのは俺だけや。誰もあんたのこんな色っぽい表情なんて知らんやろ? あんたが拒めへんのやったらもう止めてやらへんで。
国の為、国民の為──ちゃうやろ、全部保身の為やろ。
古い仕来りが悪いとは思わん。時代に合わせたものが必要なんや。それやのに変化を恐れて仕来りを守り続けることに何の意味があるんや。ほんまに嫌なるわ……。
溜息をつくと俺は書類を抱えて部屋へと戻った。
すると白拍子姿の女が文机の前で呑気に和歌集を読んどるやないか。誰に断って入ったんかは知らんけど、事と次第によっては痛い目見てもらわなな。
衣擦れの音に女が振り返る。白拍子の女は巫女やった。なんや、普段と全然ちゃうからわからんかったわ。
「道長さん! お疲れ様です」
「どないしたんや、その格好」
「今日はハロウィンに当たる日なので仮装しようと思ったんですが、衣装が思い付かなくて。それで白拍子に扮してみました。道長さん、お菓子くれないと悪戯されちゃうんですよ?」
巫女は嬉しそうな顔をして俺に近付いてきよる。
仕事から帰ってきたばっかでそんな気の利いたもん、あるわけないやん。
いつもは悪戯するんは俺やからな。たまには悪戯されんのもいいかもしれん。
せっかく白拍子に扮しとるんや。舞いで俺を惑わすんか、それとも──口付けだけで茹で蛸みたいになるあんたのことや。おぼこいあんたがそんなことできるわけないわなあ。
でも白拍子は舞うだけやないんや。芸事は勿論やけど、遊女の真似事したりもするやなんて知らんやろな。
あんたはただ白拍子の衣装に袖通しただけや。何も知らんと──。
白拍子は誰彼構わず相手にするわけやない。貴族や権力者だけやけど、気に入られて妾にされた例もあるんや。
好きでもない男の夜伽をすることもある。俺以外の男の下で啼かされるやなんて、想像しただけで腸煮え繰り返りそうになるわ。
「ほんで悪戯て何されんの? 気になるわあ」
「え、えっとそこまでは考えてなかったんですが……」
やっぱり真っ赤になりよった。俺が巫女の手首を強く掴むと、彼女は体勢を崩して俺を押し倒した形になってもうた。下から見上げるあんたも悪ないなあ。
今にも口付けてまいそうな距離やのに、俺の顔に触れるんは立烏帽子や。ああ、邪魔でもどかしいわ。
俺が巫女の立烏帽子を奪うと、彼女は驚いた目で俺を見よる。
「悪戯、するんちゃうの?」
「道長さん、手首離して下さい……」
もう片方の空いた手で巫女の項をなぞると、びくりと震えながらも林檎みたいに真っ赤な頬は俺が勘違いするにはええ材料でしかなかった。
そりゃそうやろ、好いた女なんや。俺は何かに魅入られたように巫女の唇を奪った。深くなる口付けに巫女は抗うこともせんと瞳を閉じて俺に応えとる。
こうやってあんたを乱してええのは俺だけや。誰もあんたのこんな色っぽい表情なんて知らんやろ? あんたが拒めへんのやったらもう止めてやらへんで。