短編
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障子越しに俺と似たような、いや同じような影が見えた。背格好まではわからないが、俺の部屋に無断で入る奴は巫女以外はいない。俺に恨みがある奴なら話は別だがな。
万が一、ということもある。過激派の連中なら生かして捕らえりゃいいだけの話だ。
俺は刀を鞘から引き抜くと、影を見つめる。どうやら呑気に煙草を吸っているのか、煙が立ち上っているのが見えた。
障子ごと斬ってやるのもいいが、俺の部屋に無断で入る勇気のある愚かな輩の顔を拝むのも一興だ。
俺は勢いよく障子を開くと、影の主目掛けて刀を振り下ろすが一瞬動きを止めた。
影の主は巫女だった。危うく斬っちまうとこだった……斬った後じゃ洒落にもならねぇぞ。
「巫女じゃねぇか」
「私以外に誰が鴨さんの部屋に入るって言うんです? 寿命が縮まる所でしたよ……」
「お前だと分からなきゃ斬っちまう所だったぞ。で、何で俺の服着てんだ?」
「トリックオアトリート! 今日はハロウィンに当たる日なので、鴨さんの服を拝借しました。ということでお菓子を下さい。お菓子がないなら悪戯しちゃいますよ?」
巫女は新選組の羽織を着て、手には煙管を持っていた。どれも俺の物だが、体格差のせいか袖は長いし煙管を持つ指が隠れている。
俺は男娼には興味なんざねぇが、惚れた女が自分の服を着てる姿ってのは遊女の艶姿より色っぽく見えるな。
普段は尻の青い子供に見えるが、垣間見える女の表情が堪らねぇんだ。
「菓子……ねぇ。ああ、そういや貰い物だが菓子折りがあったな」
甘味は好きじゃねぇが、お前が甘い物好きってのはもう分かってるから贈られた菓子は手元に置いてんだよ。仕事柄色んな奴に会うしな。
まさか菓子があると思わなかったのか、俺が菓子折りを手渡すと拍子抜けした巫女は頬を膨らませる。
「なーんだ、残念。鴨さんに悪戯できると思ったのに……」
「折角だから俺もそのハロウィンとやらに乗っからねぇとな。菓子がなきゃ悪戯してもいいって言ってたな、確か」
俺は巫女の腰を抱いて引き寄せ、襟に手を掛ければ帯を解かずとも容易に着物は着崩れた。今日ばかりはお前の着付けが下手なことに感謝するぜ。
その胸元から腹部は晒で覆われている。着付けが下手な癖に晒をきつく巻いているのは俺が口煩く言いつけてあるからだろうが、俺と二人でいる時は必要ねぇはずだ。寧ろ苦しくて息がし辛いようにしか見えねぇよ。
「鴨さん、な、何するんですか!?」
「あんまりきつそうだから苦しいだろうと思ってな。男の部屋に一人で来るなら、どうなるかは容易に想像できるだろ? しかし取れねぇな……」
空いた片方の手で結び目を手探りで探す。それを見つけるまでに時間はかからなかったが、何せきつく結んであるから時間がかかって仕方ねぇ。まったく難儀なもんだ。
結び目を解くと晒が弛くなり、胸元が露になる。
抗議の声は段々甘くなり、借りてきた猫みてぇに大人しくなっちまった。
「鴨さん──」
「観念して腹括っちまえ。悪いようにはしねぇよ。ただ可愛がってやるだけだ」
巫女は俺の背にしがみついて顔は見えなかったが、茹で蛸みたいに真っ赤になってんだろうな。
いつまで経っても初心な癖に、これ以上翻弄してくれるなよ。
お前のことを子供子供と言ってる俺が、離れられねぇじゃねぇか。ま、端から離すつもりもねぇがな。
唇を重ねれば、いつも吸っている筈の煙草の残り香が巫女の唇から香ってくる。
それはまるで見えない鎖で縛り付けているようで、俺の胸中を満たしていくのだった。
万が一、ということもある。過激派の連中なら生かして捕らえりゃいいだけの話だ。
俺は刀を鞘から引き抜くと、影を見つめる。どうやら呑気に煙草を吸っているのか、煙が立ち上っているのが見えた。
障子ごと斬ってやるのもいいが、俺の部屋に無断で入る勇気のある愚かな輩の顔を拝むのも一興だ。
俺は勢いよく障子を開くと、影の主目掛けて刀を振り下ろすが一瞬動きを止めた。
影の主は巫女だった。危うく斬っちまうとこだった……斬った後じゃ洒落にもならねぇぞ。
「巫女じゃねぇか」
「私以外に誰が鴨さんの部屋に入るって言うんです? 寿命が縮まる所でしたよ……」
「お前だと分からなきゃ斬っちまう所だったぞ。で、何で俺の服着てんだ?」
「トリックオアトリート! 今日はハロウィンに当たる日なので、鴨さんの服を拝借しました。ということでお菓子を下さい。お菓子がないなら悪戯しちゃいますよ?」
巫女は新選組の羽織を着て、手には煙管を持っていた。どれも俺の物だが、体格差のせいか袖は長いし煙管を持つ指が隠れている。
俺は男娼には興味なんざねぇが、惚れた女が自分の服を着てる姿ってのは遊女の艶姿より色っぽく見えるな。
普段は尻の青い子供に見えるが、垣間見える女の表情が堪らねぇんだ。
「菓子……ねぇ。ああ、そういや貰い物だが菓子折りがあったな」
甘味は好きじゃねぇが、お前が甘い物好きってのはもう分かってるから贈られた菓子は手元に置いてんだよ。仕事柄色んな奴に会うしな。
まさか菓子があると思わなかったのか、俺が菓子折りを手渡すと拍子抜けした巫女は頬を膨らませる。
「なーんだ、残念。鴨さんに悪戯できると思ったのに……」
「折角だから俺もそのハロウィンとやらに乗っからねぇとな。菓子がなきゃ悪戯してもいいって言ってたな、確か」
俺は巫女の腰を抱いて引き寄せ、襟に手を掛ければ帯を解かずとも容易に着物は着崩れた。今日ばかりはお前の着付けが下手なことに感謝するぜ。
その胸元から腹部は晒で覆われている。着付けが下手な癖に晒をきつく巻いているのは俺が口煩く言いつけてあるからだろうが、俺と二人でいる時は必要ねぇはずだ。寧ろ苦しくて息がし辛いようにしか見えねぇよ。
「鴨さん、な、何するんですか!?」
「あんまりきつそうだから苦しいだろうと思ってな。男の部屋に一人で来るなら、どうなるかは容易に想像できるだろ? しかし取れねぇな……」
空いた片方の手で結び目を手探りで探す。それを見つけるまでに時間はかからなかったが、何せきつく結んであるから時間がかかって仕方ねぇ。まったく難儀なもんだ。
結び目を解くと晒が弛くなり、胸元が露になる。
抗議の声は段々甘くなり、借りてきた猫みてぇに大人しくなっちまった。
「鴨さん──」
「観念して腹括っちまえ。悪いようにはしねぇよ。ただ可愛がってやるだけだ」
巫女は俺の背にしがみついて顔は見えなかったが、茹で蛸みたいに真っ赤になってんだろうな。
いつまで経っても初心な癖に、これ以上翻弄してくれるなよ。
お前のことを子供子供と言ってる俺が、離れられねぇじゃねぇか。ま、端から離すつもりもねぇがな。
唇を重ねれば、いつも吸っている筈の煙草の残り香が巫女の唇から香ってくる。
それはまるで見えない鎖で縛り付けているようで、俺の胸中を満たしていくのだった。