短編
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恋仲になってからも俺に対する巫女の態度は変わらなかった。
いつも優先するのは俺の都合で自分の気持ちは押し隠す。好きな時に来りゃいいと言ったはいいが、俺は新選組の筆頭局長だ。それなりの付き合いがあり、夜中に帰ることも度々ある。
巫女が休暇で幕の国を訪れている時に限って急な仕事が舞い込む時は一瞬呪いたくなる時もあるが、どうこう言っても仕方ねぇ。俺は後ろ髪を引かれる思いで用件だけを巫女に告げる。
「いつ何時戻るか分からねぇから、先に寝てろ。休暇で来てんのに夜更ししてりゃ意味ねぇぞ」
「ちゃんと起きて待ってます。寝る前に鴨さんの顔くらい見たいので……」
だが俺が屯所に戻ると、案の定巫女は俺の布団を占領して熟睡している。
まあ朝っぱらから飯の支度だの忙しなく動いているから、当然といえば当然だが。利にもならねぇのに他人の為に尽くすなんざ理解の外だが、お前に世話を焼かれるのは悪くねぇ。
正直なところ隊士の世話を焼いてる所を見るのは面白くねぇが、顔に出すほど俺は子供じゃねぇからな。だが世話を焼いて好意を抱かれるなんてこともないとは言えねぇ。
まあ俺の女と知りながら手を出すほど勇気のある奴もいねぇだろうが──そんなことを思案していると、巫女がふと寝返りを打った。
「ん……」
帯が弛いせいか、胸元が露になっている。生白い肌に俺が刻んだ鬱血痕がまだ色濃く残っていた。
寝顔は無垢な子供みてぇだが、褥の中では──いや俺の腕の中では女の表情になる。
その無防備な姿を見て襲いたい衝動に駆られるが、意識のない女を襲う趣味はねぇ。
隣に好きな女がいるってのに、手も出せないなんざまるで蛇の生殺しじゃねぇか。
これが遊女なら叩き起こしてでも接待させてる所だが、巫女の穏やかな寝顔を見ていたら柄にもなく口元が弛む。
子供子供と思ってたが、俺も随分と絆されちまったもんだ。
俺のこんな腑抜けた面なんざ、他の隊士には見せられたもんじゃねぇな。
俺は死ぬまで新選組を抜けられねぇし、端からそのつもりはねぇ。死ぬまで血に塗れて生きるもんだと思ってたが、屯所に戻ってお前に出迎えられることが、お前の笑顔を見られることがこんなに当たり前になっちまうなんてな。らしくねぇったらありゃしねぇ。
俺は巫女の乱れた襟を正してやると、起こさないように静かに布団の中に入る。
巫女が身に纏う花の香りに抱かれながら、俺は睡魔の手招きに屈するのだった。
いつも優先するのは俺の都合で自分の気持ちは押し隠す。好きな時に来りゃいいと言ったはいいが、俺は新選組の筆頭局長だ。それなりの付き合いがあり、夜中に帰ることも度々ある。
巫女が休暇で幕の国を訪れている時に限って急な仕事が舞い込む時は一瞬呪いたくなる時もあるが、どうこう言っても仕方ねぇ。俺は後ろ髪を引かれる思いで用件だけを巫女に告げる。
「いつ何時戻るか分からねぇから、先に寝てろ。休暇で来てんのに夜更ししてりゃ意味ねぇぞ」
「ちゃんと起きて待ってます。寝る前に鴨さんの顔くらい見たいので……」
だが俺が屯所に戻ると、案の定巫女は俺の布団を占領して熟睡している。
まあ朝っぱらから飯の支度だの忙しなく動いているから、当然といえば当然だが。利にもならねぇのに他人の為に尽くすなんざ理解の外だが、お前に世話を焼かれるのは悪くねぇ。
正直なところ隊士の世話を焼いてる所を見るのは面白くねぇが、顔に出すほど俺は子供じゃねぇからな。だが世話を焼いて好意を抱かれるなんてこともないとは言えねぇ。
まあ俺の女と知りながら手を出すほど勇気のある奴もいねぇだろうが──そんなことを思案していると、巫女がふと寝返りを打った。
「ん……」
帯が弛いせいか、胸元が露になっている。生白い肌に俺が刻んだ鬱血痕がまだ色濃く残っていた。
寝顔は無垢な子供みてぇだが、褥の中では──いや俺の腕の中では女の表情になる。
その無防備な姿を見て襲いたい衝動に駆られるが、意識のない女を襲う趣味はねぇ。
隣に好きな女がいるってのに、手も出せないなんざまるで蛇の生殺しじゃねぇか。
これが遊女なら叩き起こしてでも接待させてる所だが、巫女の穏やかな寝顔を見ていたら柄にもなく口元が弛む。
子供子供と思ってたが、俺も随分と絆されちまったもんだ。
俺のこんな腑抜けた面なんざ、他の隊士には見せられたもんじゃねぇな。
俺は死ぬまで新選組を抜けられねぇし、端からそのつもりはねぇ。死ぬまで血に塗れて生きるもんだと思ってたが、屯所に戻ってお前に出迎えられることが、お前の笑顔を見られることがこんなに当たり前になっちまうなんてな。らしくねぇったらありゃしねぇ。
俺は巫女の乱れた襟を正してやると、起こさないように静かに布団の中に入る。
巫女が身に纏う花の香りに抱かれながら、俺は睡魔の手招きに屈するのだった。