短編
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実質女人禁制の茜龍会の事務所に、一般人の娘がやってきた。
組長と顔見知りの鑑真はんが世話を見てくれと組長に頼み込んで、住み込むことになったけどやくざと顔見知りの坊主なんて普通おらんやろ。絶対訳ありの坊さんに決まっとるわ。
俺が休憩をしていたある日のこと。偶然茜龍会の事務所を訪れていた鑑真はんと出くわした。
「道長、元気そうでなりよりだ。巫女はここでみんなと仲良くやれているか?」
「裏社会の人間と仲良うやるなんて、あの娘ほんまに変わり者やな。俺らは陽の当たる世界に生きてへん、はみ出し者や」
やくざと聞けば一般人がイメージするものは犯罪組織そのものや。実際の所は弱者の保護、少年院や刑務所を出たばかりの者の更生や支援、治安維持を行ってるんやけど、うちの組長はアピールすんの苦手やからな。
俺も血気盛んな十代の頃から組長の世話になり、恩を返すためにそのまま居着いてもうたいうわけや。
「ドラッグや犯罪には手を出していないだろう。それに人間は誰もが罪を犯しながら生きている。そう自分を卑下するな、道長」
「ただ俺は事実言うてるだけやん。悪いことさんざんしてきたし、女も騙してきたしなぁ。金には困ってへんし、顔もスタイルもえぇから女が寄ってくる言うわけや」
「性格は良くはないがな」
「そこはフォローしぃや。――あの娘見てたらいらつくねん」
借金をしていた父親が亡くなって、鑑真はんのツテでここで働きながら暮らすことになったあの娘ときたら、暗い顔ひとつ見せへん。
どんなに活きの良い魚も汚い川で泳いでたら汚れていくはずや。せやのにあの娘はここに来てから少しも変わらん。
頼れる身内ひとりおらんのに、前向きに頑張ってます、言いたいんか? そういうの、ほんまいらいらすんねん。
鑑真はんにそないなこと話したかて意味ないんや――そんなことを考えていると、鑑真はんの口角が僅かに上がったような気がした。
「何がおもろいねん」
「女を騙してきたと豪語する色男が、虫一匹殺したことがなさそうな純粋な娘に恋をするとは、やはり外の世界は興味深いことだらけだ」
「はぁ? 恋、やて?」
「道長、巫女のことを考えている時点であんたは既に彼女に恋をしている。いや、恋に落ちている。地位、名誉、富――あんたが手にできないものはなにひとつないだろう。だがあんたはすべてを失った巫女に奪われるだろう。その身も心も、思考さえも」
何を根拠にこの坊さんはわけわからんこと言いよるんや。
女なんかもう懲り懲りやねん。甘ったるい声と化粧品の鼻につく匂い。狙いの的は金と地位と俺の見てくれだけや。痴情の縺れは面倒臭いし、俺には割り切った関係で十分や。
『道長さん!』
せやのに脳裏に汚れを知らん笑顔を浮かべる巫女の姿が鮮明に浮かぶ。
こんなん恋でもなんでもない。鑑真はんがしょうもないこと言うから、思い出しただけや――俺はそんなことを思いながら、否定するように心の中で同じ言葉を繰り返すのだった。
組長と顔見知りの鑑真はんが世話を見てくれと組長に頼み込んで、住み込むことになったけどやくざと顔見知りの坊主なんて普通おらんやろ。絶対訳ありの坊さんに決まっとるわ。
俺が休憩をしていたある日のこと。偶然茜龍会の事務所を訪れていた鑑真はんと出くわした。
「道長、元気そうでなりよりだ。巫女はここでみんなと仲良くやれているか?」
「裏社会の人間と仲良うやるなんて、あの娘ほんまに変わり者やな。俺らは陽の当たる世界に生きてへん、はみ出し者や」
やくざと聞けば一般人がイメージするものは犯罪組織そのものや。実際の所は弱者の保護、少年院や刑務所を出たばかりの者の更生や支援、治安維持を行ってるんやけど、うちの組長はアピールすんの苦手やからな。
俺も血気盛んな十代の頃から組長の世話になり、恩を返すためにそのまま居着いてもうたいうわけや。
「ドラッグや犯罪には手を出していないだろう。それに人間は誰もが罪を犯しながら生きている。そう自分を卑下するな、道長」
「ただ俺は事実言うてるだけやん。悪いことさんざんしてきたし、女も騙してきたしなぁ。金には困ってへんし、顔もスタイルもえぇから女が寄ってくる言うわけや」
「性格は良くはないがな」
「そこはフォローしぃや。――あの娘見てたらいらつくねん」
借金をしていた父親が亡くなって、鑑真はんのツテでここで働きながら暮らすことになったあの娘ときたら、暗い顔ひとつ見せへん。
どんなに活きの良い魚も汚い川で泳いでたら汚れていくはずや。せやのにあの娘はここに来てから少しも変わらん。
頼れる身内ひとりおらんのに、前向きに頑張ってます、言いたいんか? そういうの、ほんまいらいらすんねん。
鑑真はんにそないなこと話したかて意味ないんや――そんなことを考えていると、鑑真はんの口角が僅かに上がったような気がした。
「何がおもろいねん」
「女を騙してきたと豪語する色男が、虫一匹殺したことがなさそうな純粋な娘に恋をするとは、やはり外の世界は興味深いことだらけだ」
「はぁ? 恋、やて?」
「道長、巫女のことを考えている時点であんたは既に彼女に恋をしている。いや、恋に落ちている。地位、名誉、富――あんたが手にできないものはなにひとつないだろう。だがあんたはすべてを失った巫女に奪われるだろう。その身も心も、思考さえも」
何を根拠にこの坊さんはわけわからんこと言いよるんや。
女なんかもう懲り懲りやねん。甘ったるい声と化粧品の鼻につく匂い。狙いの的は金と地位と俺の見てくれだけや。痴情の縺れは面倒臭いし、俺には割り切った関係で十分や。
『道長さん!』
せやのに脳裏に汚れを知らん笑顔を浮かべる巫女の姿が鮮明に浮かぶ。
こんなん恋でもなんでもない。鑑真はんがしょうもないこと言うから、思い出しただけや――俺はそんなことを思いながら、否定するように心の中で同じ言葉を繰り返すのだった。
