短編
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今年もまた七彩桜が咲き誇る季節がやってきた。
今回は屯所ではなく、遊郭で過ごすことになったのだけれど、その発端となった出来事は数時間前に遡る。
近藤さんからお遣いを頼まれ、鴨さんとともに町に買い出しに行った帰りに運試しにと富くじを買ったのだ。
現代でも購入した経験はあるが、当たっても末等ばかり。当たるわけがないと思っていたけれど――。
「お嬢さん、大当たりだよ!」
「え?」
「なんて幸運なお嬢さんなんだろうね! 一等だよ一等。さすがに一千両だから今日支払うことはできないけど、いつ来るのか教えてくれたら用意しておくよ」
「鴨さん、どうしましょう?」
「お前が当てたんだからお前の金だ。好きに使え」
現代でも当たったことがない、富くじに当たるなんてまるで夢のようだ。
だけど私は日ノ許を旅する身。必要以上のお金は不要だし、贅沢品だってあっても意味を持たない。
だから使えと言われても使い道がないのだ。お金の使い道といえば、鴨さんや新選組の隊士たちへの差し入れや、逢瀬の際に普段使いできそうな装飾品を数店購入するくらいだ。
「あの、当たったお金、孤惑楼に送ってもらうことはできますか?」
「巫女、お前何考えてんだ」
「できることはできるけど、弧惑楼って遊郭だよ? お嬢さんが行くっていうのかい?」
「はい、遊びに行くんです」
それから弧惑楼の楼主である遊さんに手紙を送り、その日は新選組が貸し切らせてほしいと無茶な願いを申し出た。
しかし遊さんは快く私の願いを受け入れてくれ、その日は弧惑楼にて宴が開かれることとなった。
めかしこんだ遊女からの接待を受け、屯所で食すものとは格の違う豪華な料理がこれでもかというほどに所狭しと並んでいる。
新選組では大所帯ということもあり、豪勢な食事が出ることはまずない。そのため、隊士たちは遊女を横目で見ながら鼻の下を伸ばして食事を楽しみながら舌鼓を打っていた。
私と鴨さんはというと、遊さんの計らいで七彩桜が一望できる座敷に通された。
(ここ、本来は宴席用だよね。めちゃくちゃ広いし、料理だって……)
卓袱台には二人分とは思えない数の料理が並んでいる。
真鯛の尾頭付き。彩り豊かな五目寿司。具沢山の味噌汁に新鮮な刺し身――普段は屯所で口にできないものばかりだ。
お酒に目がない鴨さんに合わせてか、お酒も数種類、それもたくさん酒瓶が置かれている。
「さすが一千両も出しただけはあるな。ま、出したのはお前だが――お前はつくづく欲のねぇ女だ。普段はなかなか言えねぇがお前には感謝してるぜ。俺がこんなにも長く一人の女と過ごすのはお前が初めてだ」
「ふふ、鴨さんがお礼言うなんて雨でも降りそうですね。でも新選組の皆さんにはお世話になっていますし、感謝の気持ちを込めて。それにお金はあんまり使わないので。家がないから何かを置くところも困りますし」
「なんだ? 俺にすら義理を返してくれるってわけか。だがお前と見る七彩桜は今年で八度目だってのに、他の連中と同じ扱いってのは気にいらねぇな」
そう言われて私は改めて気付く。鴨さんとこんなにも長く付き合うなんて、出会った当時は想像もできなかっただろう。
他の人と同じ扱いだとは気に入らないという鴨さんの言葉が、私達の関係を示している。私の特別でありたいと思ってくれていると自惚れていいだろうか。
「もちろん鴨さんは特別な人です。誰もあなたの代わりになれる人なんていません。今までも、これからも」
私は身を乗り出して鴨さんの頬に口付ける。唇を離すと彼は眉ひとつ動かさずに私の瞳を覗きこんだ。
触れるだけの口付けでは不満と言わんばかりの表情だ。
「ガキじゃねぇんだからそれだけで終いってことはねぇよな? それとも会わねぇ間に忘れたか? 忘れたってんならじっくり時間をかけて思い出させてやるよ」
鴨さんは私の顎を掬うと強引な口付けで私の酸素を奪う。
紫煙の香りと庭先で咲き誇る七彩桜の香りに抱かれて、今日もまた鴨さんに主導権を握られて翻弄されるのだ。
幾度となく交わった舌先が蕩けるように甘く感じられて、私は桃源郷へと意識を飛ばすのだった。
今回は屯所ではなく、遊郭で過ごすことになったのだけれど、その発端となった出来事は数時間前に遡る。
近藤さんからお遣いを頼まれ、鴨さんとともに町に買い出しに行った帰りに運試しにと富くじを買ったのだ。
現代でも購入した経験はあるが、当たっても末等ばかり。当たるわけがないと思っていたけれど――。
「お嬢さん、大当たりだよ!」
「え?」
「なんて幸運なお嬢さんなんだろうね! 一等だよ一等。さすがに一千両だから今日支払うことはできないけど、いつ来るのか教えてくれたら用意しておくよ」
「鴨さん、どうしましょう?」
「お前が当てたんだからお前の金だ。好きに使え」
現代でも当たったことがない、富くじに当たるなんてまるで夢のようだ。
だけど私は日ノ許を旅する身。必要以上のお金は不要だし、贅沢品だってあっても意味を持たない。
だから使えと言われても使い道がないのだ。お金の使い道といえば、鴨さんや新選組の隊士たちへの差し入れや、逢瀬の際に普段使いできそうな装飾品を数店購入するくらいだ。
「あの、当たったお金、孤惑楼に送ってもらうことはできますか?」
「巫女、お前何考えてんだ」
「できることはできるけど、弧惑楼って遊郭だよ? お嬢さんが行くっていうのかい?」
「はい、遊びに行くんです」
それから弧惑楼の楼主である遊さんに手紙を送り、その日は新選組が貸し切らせてほしいと無茶な願いを申し出た。
しかし遊さんは快く私の願いを受け入れてくれ、その日は弧惑楼にて宴が開かれることとなった。
めかしこんだ遊女からの接待を受け、屯所で食すものとは格の違う豪華な料理がこれでもかというほどに所狭しと並んでいる。
新選組では大所帯ということもあり、豪勢な食事が出ることはまずない。そのため、隊士たちは遊女を横目で見ながら鼻の下を伸ばして食事を楽しみながら舌鼓を打っていた。
私と鴨さんはというと、遊さんの計らいで七彩桜が一望できる座敷に通された。
(ここ、本来は宴席用だよね。めちゃくちゃ広いし、料理だって……)
卓袱台には二人分とは思えない数の料理が並んでいる。
真鯛の尾頭付き。彩り豊かな五目寿司。具沢山の味噌汁に新鮮な刺し身――普段は屯所で口にできないものばかりだ。
お酒に目がない鴨さんに合わせてか、お酒も数種類、それもたくさん酒瓶が置かれている。
「さすが一千両も出しただけはあるな。ま、出したのはお前だが――お前はつくづく欲のねぇ女だ。普段はなかなか言えねぇがお前には感謝してるぜ。俺がこんなにも長く一人の女と過ごすのはお前が初めてだ」
「ふふ、鴨さんがお礼言うなんて雨でも降りそうですね。でも新選組の皆さんにはお世話になっていますし、感謝の気持ちを込めて。それにお金はあんまり使わないので。家がないから何かを置くところも困りますし」
「なんだ? 俺にすら義理を返してくれるってわけか。だがお前と見る七彩桜は今年で八度目だってのに、他の連中と同じ扱いってのは気にいらねぇな」
そう言われて私は改めて気付く。鴨さんとこんなにも長く付き合うなんて、出会った当時は想像もできなかっただろう。
他の人と同じ扱いだとは気に入らないという鴨さんの言葉が、私達の関係を示している。私の特別でありたいと思ってくれていると自惚れていいだろうか。
「もちろん鴨さんは特別な人です。誰もあなたの代わりになれる人なんていません。今までも、これからも」
私は身を乗り出して鴨さんの頬に口付ける。唇を離すと彼は眉ひとつ動かさずに私の瞳を覗きこんだ。
触れるだけの口付けでは不満と言わんばかりの表情だ。
「ガキじゃねぇんだからそれだけで終いってことはねぇよな? それとも会わねぇ間に忘れたか? 忘れたってんならじっくり時間をかけて思い出させてやるよ」
鴨さんは私の顎を掬うと強引な口付けで私の酸素を奪う。
紫煙の香りと庭先で咲き誇る七彩桜の香りに抱かれて、今日もまた鴨さんに主導権を握られて翻弄されるのだ。
幾度となく交わった舌先が蕩けるように甘く感じられて、私は桃源郷へと意識を飛ばすのだった。
