短編
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休暇を利用して新選組の屯所を訪れ、戦の国から客人が来るので料理を運んでほしいと頼まれ、私は料理を運ぶことになったのだけれど。新選組と面識のある人は誰だろう、と想像しながら私は客間へと向かう。
「失礼します」
「誰かと思えば巫女ではありませんか」
障子を開くと魁さんと明智さんが談笑している。この二人は面識なんてなかったはずだけれど――。
抑揚がなく、氷のような冷たさすら感じる言葉に棘はない。むしろ穏やかで気さくにすら見えてくるから不思議だ。本当にあの光秀さんなのかと思ってしまうほどに。
「巫女、久方振りですね。まさか幕の国でお会いするとは思いませんでしたが」
「奇遇ですね。お二方は面識があるんですか?」
「いや、今日が初めてだ。なんでもオレの噂を聞いて訪ねてくれたようだが」
明智さんが言うには、『幕の国にお前と似た味覚を持つ男がいる』と信長さんに言われて、新選組の屯所を訪れたらしい。
そこで偶然魁さんに出くわし、意気投合したという。
(確かに二人と同じ味覚を持ってる人はそうそういないかも)
私は頼まれていた料理が乗せられた盆を、明智さんの前に置く。
梅と塩昆布のおにぎり。野菜がたっぷり入った味噌汁。蕪の千枚漬け。鮎の塩焼き。どれも明智さんには満足してもらえるとは思えないけれど――。
「流石は信長公です。私と同じ味覚を持つ者など、戦の国中探してもいなかったというのに、引き合わせて下さるとは。魁殿は他人とは思えませんね」
「それはオレもだ。なかなか理解者に恵まれなくてなあ。だがこれも何かの縁だ。今度はオレの方から訪ねたいんだが……」
「ええ、戦の国のとびきりの甘味を用意してお待ちしています。それはそうと巫女、ここにいるということは休暇中なのでは? ご一緒にいかがですか」
卓袱台の上には明智さんが持ってきたであろうお土産が、広げられている。
私も甘いものは好きだけれど、さすがに一度にこんなにたくさん食べてしまったら胸焼けしてしまいそうで、早くこの場を去らなければと思い、軽く会釈をした。
「す、すみません。まだ頼まれていた用事があって。ゆっくりしていって下さいね」
私はやや引き攣った笑顔で、その場を立ち去った。
幕の国と戦の国で度々彼らが一緒にいるところを人々が目撃することになるのは言うまでもなく、理解されない苦しみを分かち合う友ができることは喜ばしいことだ、と私はしみじみ思うのだった。
「失礼します」
「誰かと思えば巫女ではありませんか」
障子を開くと魁さんと明智さんが談笑している。この二人は面識なんてなかったはずだけれど――。
抑揚がなく、氷のような冷たさすら感じる言葉に棘はない。むしろ穏やかで気さくにすら見えてくるから不思議だ。本当にあの光秀さんなのかと思ってしまうほどに。
「巫女、久方振りですね。まさか幕の国でお会いするとは思いませんでしたが」
「奇遇ですね。お二方は面識があるんですか?」
「いや、今日が初めてだ。なんでもオレの噂を聞いて訪ねてくれたようだが」
明智さんが言うには、『幕の国にお前と似た味覚を持つ男がいる』と信長さんに言われて、新選組の屯所を訪れたらしい。
そこで偶然魁さんに出くわし、意気投合したという。
(確かに二人と同じ味覚を持ってる人はそうそういないかも)
私は頼まれていた料理が乗せられた盆を、明智さんの前に置く。
梅と塩昆布のおにぎり。野菜がたっぷり入った味噌汁。蕪の千枚漬け。鮎の塩焼き。どれも明智さんには満足してもらえるとは思えないけれど――。
「流石は信長公です。私と同じ味覚を持つ者など、戦の国中探してもいなかったというのに、引き合わせて下さるとは。魁殿は他人とは思えませんね」
「それはオレもだ。なかなか理解者に恵まれなくてなあ。だがこれも何かの縁だ。今度はオレの方から訪ねたいんだが……」
「ええ、戦の国のとびきりの甘味を用意してお待ちしています。それはそうと巫女、ここにいるということは休暇中なのでは? ご一緒にいかがですか」
卓袱台の上には明智さんが持ってきたであろうお土産が、広げられている。
私も甘いものは好きだけれど、さすがに一度にこんなにたくさん食べてしまったら胸焼けしてしまいそうで、早くこの場を去らなければと思い、軽く会釈をした。
「す、すみません。まだ頼まれていた用事があって。ゆっくりしていって下さいね」
私はやや引き攣った笑顔で、その場を立ち去った。
幕の国と戦の国で度々彼らが一緒にいるところを人々が目撃することになるのは言うまでもなく、理解されない苦しみを分かち合う友ができることは喜ばしいことだ、と私はしみじみ思うのだった。
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