捧げ物
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春だというのに朝晩の風はまだ肌寒い。そろそろ暖かくなると風の噂で聞いたけれど、本当なのだろうか。
公務が終わり、隠れ家に帰るとカリバーンが出迎えてくれた。
「姫、お帰りなさい。お疲れでしょう? 夕飯はできていますので着替えてきて下さい」
「せっかくのお休みだったなのに……でもすごく嬉しいです。ありがとうございます──うん、いい匂いがする。シチューですね?」
かつて故郷の母が作ってくれた、懐かしい優しい香り。そしてクリームソースと一緒に煮込んだ野菜の匂いが食欲を掻き立てる。
私が着替えをしている間に、もうすぐにでも食事ができるようにセットされていることに申し訳なく思いながらも、席に着いた。
「何から何まですみません」
「何を言っているんですか。普段は貴女がしてくれていることが多いんですから──それに貴女を待つ時間というのも悪くありませんから」
スープボウルを満たしたシチュー。レタス・キュウリ・トマトを使った彩り豊かなサラダ。
至ってシンプルな料理。だけど彼自ら用意してくれたという事実がこれ以上にないくらいとても嬉しい。
「カリバーンは野営地でも料理を作ることがあるんですか?」
「作ることはありますが、ゆっくり食事する時間はあまりありませんね。いつモンスターに襲われるかわかりませんし、手早く済ませる物が多いかもしれません。野営地でこうしていたら鍋をひっくり返されて皆飢えてしまうでしょう? それに片付けも大変です」
「やだ、もうカリバーンったら……」
カリバーンの冗談にふと笑ってしまったけれど、野営地では笑い事では済まない。
一挙一動で命が奪われてしまう戦場に彼は立ち続けているのだ。
そう考えると恐怖に抱きしめられて背筋が凍りそうになる。彼を見送り、出迎えることができなくなるのではないか──私が思い悩んだところで何か変わる事があるわけではないけれど、彼の無事を確かめるまでいつも不安で仕方がない。
「ところで──これからの時間は俺が頂いてもいいんですよね? 公務はありませんし、明日は休日だと聞きましたので。もちろん無理に、とは言いませんが」
「そういう言い方、ずるいです……」
「ではどうしたいのか、俺に教えてくれませんか? 俺は貴女と穏やかで甘い時間が過ごしたいんです」
鍋の中で煮込んで柔らかくなった野菜のように、私の顔は真っ赤になって火照っているに違いない。
食事が済んだ後の事を考えていたら、せっかく作ってくれた彼の料理の味を楽しむ余裕なんてなく、時間だけが過ぎていくのだった。
公務が終わり、隠れ家に帰るとカリバーンが出迎えてくれた。
「姫、お帰りなさい。お疲れでしょう? 夕飯はできていますので着替えてきて下さい」
「せっかくのお休みだったなのに……でもすごく嬉しいです。ありがとうございます──うん、いい匂いがする。シチューですね?」
かつて故郷の母が作ってくれた、懐かしい優しい香り。そしてクリームソースと一緒に煮込んだ野菜の匂いが食欲を掻き立てる。
私が着替えをしている間に、もうすぐにでも食事ができるようにセットされていることに申し訳なく思いながらも、席に着いた。
「何から何まですみません」
「何を言っているんですか。普段は貴女がしてくれていることが多いんですから──それに貴女を待つ時間というのも悪くありませんから」
スープボウルを満たしたシチュー。レタス・キュウリ・トマトを使った彩り豊かなサラダ。
至ってシンプルな料理。だけど彼自ら用意してくれたという事実がこれ以上にないくらいとても嬉しい。
「カリバーンは野営地でも料理を作ることがあるんですか?」
「作ることはありますが、ゆっくり食事する時間はあまりありませんね。いつモンスターに襲われるかわかりませんし、手早く済ませる物が多いかもしれません。野営地でこうしていたら鍋をひっくり返されて皆飢えてしまうでしょう? それに片付けも大変です」
「やだ、もうカリバーンったら……」
カリバーンの冗談にふと笑ってしまったけれど、野営地では笑い事では済まない。
一挙一動で命が奪われてしまう戦場に彼は立ち続けているのだ。
そう考えると恐怖に抱きしめられて背筋が凍りそうになる。彼を見送り、出迎えることができなくなるのではないか──私が思い悩んだところで何か変わる事があるわけではないけれど、彼の無事を確かめるまでいつも不安で仕方がない。
「ところで──これからの時間は俺が頂いてもいいんですよね? 公務はありませんし、明日は休日だと聞きましたので。もちろん無理に、とは言いませんが」
「そういう言い方、ずるいです……」
「ではどうしたいのか、俺に教えてくれませんか? 俺は貴女と穏やかで甘い時間が過ごしたいんです」
鍋の中で煮込んで柔らかくなった野菜のように、私の顔は真っ赤になって火照っているに違いない。
食事が済んだ後の事を考えていたら、せっかく作ってくれた彼の料理の味を楽しむ余裕なんてなく、時間だけが過ぎていくのだった。