捧げ物
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
愛や感謝を伝える日が存在するということは、記録に関する仕事に携わっているから目にしたことはあるが、愛の日というものを僕は初めて耳にした。
姫はトロイメアの姫にして外の世界からやってきた人物だ。彼女がよく知るイベントを、僕が知らずともそう不思議なことではない。
チョコレートの国で行われるイベントとよく似ているようだが、姫が元いた世界では恋人以外にも友人にもチョコレートを渡す者もいたようだ。
更に歴史を遡れば、元々は男性から女性に贈り物をしていたらしい。
やはりどの世界も歴史というものは興味深く、僕の知的探究心を満たしてくれる。
ただ、ひとつだけ気に入らない点を除けばの話ではあるが。
気に入らない点というのは、世話になっているからという名目でレコルドの王子だけでなく、部下や執事・メイドにチョコレートを配っていることだ。
愛の日に贈るべき相手はこの僕だろう? 僕は君の恋人なのだから。
この僕が感情に揺さぶられるとは実に笑い種(ぐさ)だとは思わないかい。感情に支配されるのは女という生き物だけだと信じ、苦手だったというのに。
「ロイエさん、お疲れ様です。はい、これ受け取って下さい」
仕事を終え私室に戻ると、小さなギフトボックスを手にした姫が待っていた。
滞在中は好きに使ってくれて構わないと言ったのが、却って気を遣わせてしまったのかもしれない。
「この包みは……愛の日のチョコレートかい? しかし僕に渡すには些か遅いような気がするのだがね」
「もう、そんな嫌味言わないで下さい。他の方には購入した物を渡しましたけど、ロイエさんのはちゃんと私が作ったんですから」
ギフトボックスのリボンを紐解くと球体の形をしたチョコレートが六個姿を現した。
自らの手で作ったと言った割には美しい形状だ。美味であれば申し分ない──と言いたいところだが、そんなことは今の僕にはどうでもいいことだ。
彼女が僕の為に時間を割き、僕を想いながら作ったというのなら。
「ふむ……これは確かトリュフと言ったかな」
「はい、シャンパンを少しだけ入れてチョコはビターなものにしました。あ、でもロイエさんには説明するよりも食べてもらった方が早いので。さ、どうぞ」
やはり疲れた脳に適度な糖分は良い。
彼女が作ったからだろうか、誰が作ったものよりも美味しく感じられ、僕はすぐにそれを平らげてしまった。
そうか、これが愛の日ならではの醍醐味か。彼女が込めた愛情の味は何より勝るものだった。
今度は僕から彼女に何かを贈ろう。彼女を笑顔にし、愛情を感じて貰える物を。
姫はトロイメアの姫にして外の世界からやってきた人物だ。彼女がよく知るイベントを、僕が知らずともそう不思議なことではない。
チョコレートの国で行われるイベントとよく似ているようだが、姫が元いた世界では恋人以外にも友人にもチョコレートを渡す者もいたようだ。
更に歴史を遡れば、元々は男性から女性に贈り物をしていたらしい。
やはりどの世界も歴史というものは興味深く、僕の知的探究心を満たしてくれる。
ただ、ひとつだけ気に入らない点を除けばの話ではあるが。
気に入らない点というのは、世話になっているからという名目でレコルドの王子だけでなく、部下や執事・メイドにチョコレートを配っていることだ。
愛の日に贈るべき相手はこの僕だろう? 僕は君の恋人なのだから。
この僕が感情に揺さぶられるとは実に笑い種(ぐさ)だとは思わないかい。感情に支配されるのは女という生き物だけだと信じ、苦手だったというのに。
「ロイエさん、お疲れ様です。はい、これ受け取って下さい」
仕事を終え私室に戻ると、小さなギフトボックスを手にした姫が待っていた。
滞在中は好きに使ってくれて構わないと言ったのが、却って気を遣わせてしまったのかもしれない。
「この包みは……愛の日のチョコレートかい? しかし僕に渡すには些か遅いような気がするのだがね」
「もう、そんな嫌味言わないで下さい。他の方には購入した物を渡しましたけど、ロイエさんのはちゃんと私が作ったんですから」
ギフトボックスのリボンを紐解くと球体の形をしたチョコレートが六個姿を現した。
自らの手で作ったと言った割には美しい形状だ。美味であれば申し分ない──と言いたいところだが、そんなことは今の僕にはどうでもいいことだ。
彼女が僕の為に時間を割き、僕を想いながら作ったというのなら。
「ふむ……これは確かトリュフと言ったかな」
「はい、シャンパンを少しだけ入れてチョコはビターなものにしました。あ、でもロイエさんには説明するよりも食べてもらった方が早いので。さ、どうぞ」
やはり疲れた脳に適度な糖分は良い。
彼女が作ったからだろうか、誰が作ったものよりも美味しく感じられ、僕はすぐにそれを平らげてしまった。
そうか、これが愛の日ならではの醍醐味か。彼女が込めた愛情の味は何より勝るものだった。
今度は僕から彼女に何かを贈ろう。彼女を笑顔にし、愛情を感じて貰える物を。