ダグラス主 オフィスパロ
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仕事は楽しいし、頼れる仲間や可愛い部下にも恵まれて周囲から見れば順風満帆、思い通りの人生のように思えるかもしれない。
だけど一人暮らしの家に帰ってきて明かりが点いていないというのは寂しいものだ。一人で暮らしているんだから当たり前のことではあるんだけどね。
彼女の顔を見た後なら尚更人が恋しくなる。
でも今日は明かりが灯っている。それは彼女が俺の家にいるという確かな事実だ。
明かりの点いた家、温かい食事。そして彼女の笑顔。
それさえあれば例え家が小さかろうと、貧しくなっても幸せだと俺は思ってしまうんだ。
「お帰りなさい! ご飯できてますけどもしかしてもう食べちゃいました? あ、掃除は終わったけどお湯張ってなかったんだった……ごめんなさい」
「構わないよ。折角の休日なのにわざわざ家事をしてくれて有り難いくらいだ。君が来るって聞いてたから腹を空かしてきたんだ。君のご馳走にありつけると思ってね」
「もう。会食やら出張で舌が肥えてるのにハードル上げないで下さいよ。それはそうとお話があるんですが」
彼女がこう切り出す時は大抵俺への説教だ。
エプロンを身に着けた天使が雷を落とす瞬間の顔も、それはそれで可愛いとは思うけどね。
一週間の間に一日は休肝日を作れだの、冷蔵庫に酒と肴以外がないだの苦情は俺の生活に関することばかり。
いけないってことはわかってるんだけどね。仕事が激務だから寝る前の晩酌が俺の一番の楽しみなんだ。
こうやって俺の体を気遣ってくれる恋人がいるっていうのはとても幸せなことだけど、まるで通い妻みたいに思えてくる。
いつか実際にそうなったらいいなとは思っているけど、彼女はいわば同業者。
好きでこの世界に入り、今日までキャリアを積み重ねてきた。
入社した当初は他所に契約を取られては悔しい思いをしていたけれど、今ではクライアントのリピートも増えてきて、後輩だってできた。
俺と一緒になるということは築いてきたキャリア全てを捨てるも同義だ。
そんなこと彼女にできるわけがない。君の苦労を知っているからこそ、俺にはそんなことをする勇気がない。
俺自身の海外栄転の話も出たけれど、君を捨て置いて行くことなんてそもそもできることじゃなかった。
俺は栄転の話を蹴り、短期の海外出張を承諾するのを条件に今も彼女と同じオフィスで働いている。
「冷蔵庫がこんなに大きいのにお酒とおつまみしか入ってないってどういうことなんです? 若い若いと思ってても気が付いた時にはもう遅いんですからね? ただでさえ仕事が忙しくて生活も不規則なんですから、ちゃんと食べないと次の健康診断で引っかかっても知りませんよ? それからお酒も──」
「姫、俺から酒を取ったら何も残らないのは分かってるだろう? それに仕事の後の酒は格別なんだ。隣に君がいてくれればもっと旨くなる」
俺は落とされた雷に言い訳で返すが、どうやら逆効果だったらしく姫は眉間に皺を寄せて怒っている。
怒っている顔も可愛いなんて言ったら火に油を注ぐようなものだから口にはしないけど、とりあえず火が大きくならないようにしないと。
俺は手渡すのをすっかり忘れていた、出張先で購入した土産物を差し出す。
姫は甘いものが好きだから、少しは機嫌が良くなるはずだ。
「何です? これ」
「出張先で買った土産だよ。ショコルーテのチョコレート。甘い物、好きだろうと思ってね」
女性は大概甘い物が好きだし、姫が甘い物を好んでいることを前々から知っていたから、喜んでくれると思っていたけど姫の機嫌は変わらないようだ。
どうやらまずい選択肢だったらしい。
「ダグラスさん、私がチョコひとつで機嫌直すような安い女だとでも思ってるんですか? 本当に失礼しちゃう」
「気に入らなかったかい? なら捨てるのは勿体ないし、俺が食べようかな」
「食べないなんて言ってません。私が貰ったものですから。──ありがとうございます」
包装紙を開いてチョコレートをひとつ齧る姫の頬に、許しを請うキスを落とした。
彼女はチョコレートを頬張った途端に笑顔になる。
笑顔になった理由はチョコレートか俺のキスなのか──彼女の無垢な笑顔は俺を惹きつけてやまないようだ。
だけど一人暮らしの家に帰ってきて明かりが点いていないというのは寂しいものだ。一人で暮らしているんだから当たり前のことではあるんだけどね。
彼女の顔を見た後なら尚更人が恋しくなる。
でも今日は明かりが灯っている。それは彼女が俺の家にいるという確かな事実だ。
明かりの点いた家、温かい食事。そして彼女の笑顔。
それさえあれば例え家が小さかろうと、貧しくなっても幸せだと俺は思ってしまうんだ。
「お帰りなさい! ご飯できてますけどもしかしてもう食べちゃいました? あ、掃除は終わったけどお湯張ってなかったんだった……ごめんなさい」
「構わないよ。折角の休日なのにわざわざ家事をしてくれて有り難いくらいだ。君が来るって聞いてたから腹を空かしてきたんだ。君のご馳走にありつけると思ってね」
「もう。会食やら出張で舌が肥えてるのにハードル上げないで下さいよ。それはそうとお話があるんですが」
彼女がこう切り出す時は大抵俺への説教だ。
エプロンを身に着けた天使が雷を落とす瞬間の顔も、それはそれで可愛いとは思うけどね。
一週間の間に一日は休肝日を作れだの、冷蔵庫に酒と肴以外がないだの苦情は俺の生活に関することばかり。
いけないってことはわかってるんだけどね。仕事が激務だから寝る前の晩酌が俺の一番の楽しみなんだ。
こうやって俺の体を気遣ってくれる恋人がいるっていうのはとても幸せなことだけど、まるで通い妻みたいに思えてくる。
いつか実際にそうなったらいいなとは思っているけど、彼女はいわば同業者。
好きでこの世界に入り、今日までキャリアを積み重ねてきた。
入社した当初は他所に契約を取られては悔しい思いをしていたけれど、今ではクライアントのリピートも増えてきて、後輩だってできた。
俺と一緒になるということは築いてきたキャリア全てを捨てるも同義だ。
そんなこと彼女にできるわけがない。君の苦労を知っているからこそ、俺にはそんなことをする勇気がない。
俺自身の海外栄転の話も出たけれど、君を捨て置いて行くことなんてそもそもできることじゃなかった。
俺は栄転の話を蹴り、短期の海外出張を承諾するのを条件に今も彼女と同じオフィスで働いている。
「冷蔵庫がこんなに大きいのにお酒とおつまみしか入ってないってどういうことなんです? 若い若いと思ってても気が付いた時にはもう遅いんですからね? ただでさえ仕事が忙しくて生活も不規則なんですから、ちゃんと食べないと次の健康診断で引っかかっても知りませんよ? それからお酒も──」
「姫、俺から酒を取ったら何も残らないのは分かってるだろう? それに仕事の後の酒は格別なんだ。隣に君がいてくれればもっと旨くなる」
俺は落とされた雷に言い訳で返すが、どうやら逆効果だったらしく姫は眉間に皺を寄せて怒っている。
怒っている顔も可愛いなんて言ったら火に油を注ぐようなものだから口にはしないけど、とりあえず火が大きくならないようにしないと。
俺は手渡すのをすっかり忘れていた、出張先で購入した土産物を差し出す。
姫は甘いものが好きだから、少しは機嫌が良くなるはずだ。
「何です? これ」
「出張先で買った土産だよ。ショコルーテのチョコレート。甘い物、好きだろうと思ってね」
女性は大概甘い物が好きだし、姫が甘い物を好んでいることを前々から知っていたから、喜んでくれると思っていたけど姫の機嫌は変わらないようだ。
どうやらまずい選択肢だったらしい。
「ダグラスさん、私がチョコひとつで機嫌直すような安い女だとでも思ってるんですか? 本当に失礼しちゃう」
「気に入らなかったかい? なら捨てるのは勿体ないし、俺が食べようかな」
「食べないなんて言ってません。私が貰ったものですから。──ありがとうございます」
包装紙を開いてチョコレートをひとつ齧る姫の頬に、許しを請うキスを落とした。
彼女はチョコレートを頬張った途端に笑顔になる。
笑顔になった理由はチョコレートか俺のキスなのか──彼女の無垢な笑顔は俺を惹きつけてやまないようだ。