ダグラス主
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私は凪の祭日に相応しく、海賊の衣装を身に着けてアンキュラに滞在している。
海賊というものを人々に知ってもらうため、色んな催しが用意されているようだけれど、私が目を付けた催しはただひとつ。
ナイフの技術を競う催しで、最も優れた技術を持つ参加者にはラリマーの原石が贈与されるという。
ラリマーは一部の国でしか産出されず、年々天然石が高騰していることもあり、価値と共に値段が上昇し続けている。
ダグラスさんに頼めば苦労せず手に入ることはできるだろう。けれど私はどうしても自分の手で、自らの力で手に入れたかった。
でも私は恥ずかしながら武器を扱ったことがない。そこはやはりプロに指導して貰うべく、お願いすることにした。
「君が俺にお願いなんて珍しいね。よほど手に入れたいものがあるらしい」
「はい、実は凪の催しでラリマーが出品されていまして。どうしても欲しいんです」
「俺が参加することはできないけど、何故欲しいのか聞いてもいいかい? 元々君は宝石の類に目がないタイプではないだろう?」
ラリマーという石は澄んだ青色で、波の模様が色濃く出ている。それを隠れ家に置き、ダグラスさんがいない間もラリマーを見て過ごすことで、航海に出ているダグラスさんが傍にいるような気分になれるかもしれないから、と私は答えた。
「それなら俺が手にする理由にもなるってわけだ。じゃあ海賊の姫様にナイフの手解きをしようか。但し期間はあまり長くないからね、恋人とはいえ甘やかさないから最後まで付いてきてもらうよ」
凪の祭日を主催している多忙なダグラスさんは合間を縫って、休息に使うべき時間を使い、私にナイフ投げを教えてくれた。
セント・ガブリエル号の一室に本場宛らの的が置かれており、所々ナイフで付けたであろう傷が見える。海賊の武器であり、そして遊戯のひとつであることが窺える。
ダグラスさんは説明するより見た方が早い、と実際にナイフを投げ、ナイフは回転しながら的のど真ん中に突き刺さった。
「す、すごい……」
「君も練習すればできるようになる──いや、これは俺と君でお宝を手に入れなければならないんだから、必ずマスターしてもらないとね。催しには海賊は参加できないことになっているんだけど、中にはナイフ投げやダーツが趣味の観光客もいるだろうから、こっちも万全な対策をしていた方がいいだろう」
脇を締め、力を入れずに的に向かって投げるという行為は想像以上に難しかった。
海賊達は日常的に動いている者に対し、時には足止めのために、時には命を奪うために的にナイフを投げている。失敗は決して許されない。失敗することは自らの命を危険に晒すということなのだから。
ダグラスさんが暇を見繕っては私の練習に付き合ってくれるので、私も睡眠時間を少し削って練習に励んだ。
いい結果が残せるように──そんなことを思いながら、私がナイフを握らない日は一日もなかった。
そしてとうとう催しの日がやってきた。様々な国から多くの参加者が集い、少しばかり不安を覚えたけれど、ダグラスさんが稽古をつけてくれたのだからきっと大丈夫だ。
ダグラスさんは仕事があるが、時間ができ次第、こちらに向かうと言ってくれた。私は私のできることをしよう。
海賊の格好をしているからトロイメアの姫であることがばれる可能性は低いけれど、参加登録が必要だったため、私は偽名で参加することにした。
「それでは、お次はナビさん! ご準備をお願いします」
(ナビ、ごめんね)
ナビに許可なく名前を借りたことを詫びながら、進行係であろう男性からナイフを受け取る。
ルールにより定められた定位置から、的のど真ん中に狙いを定めてナイフを投げた。
一度目、二度目、三度目とナイフは見事ど真ん中に刺さってくれた。ダグラスさんはどこかで見てくれているだろうか。
「やっぱり君は海賊の女だね。俺の技をいとも簡単に盗んで自分のものにするとは恐れ入ったよ」
「ダグラスさん! もしかして全部見てくれてたんですか?」
「君の勇姿はしっかりと見させてもらったよ。君が初めて自分の力でお宝を手に入れる瞬間をこの目に焼き付けたいんだ。焦らさないで彼女にお宝を渡してあげてくれ」
私は男性からラリマーの原石を受け取る。掌に乗せられたそれはちょうどスマホくらいのサイズで、くっきりとした色合いの美しい水面模様に目を奪われる。
だがそれもこれもダグラスさんの協力あってのものだ。私は感謝の気持ちを込めて、ダグラスさんの頬に口付けた。
「ダグラスさん、ありがとう」
「公衆の面前でキスなんて、随分心境の変化があったみたいだね。でも頬はカウント対象外だよ」
「姫様が勇敢なのは知ってましたが、まさか短期間でナイフ投げを習得するなんて俺達もうかうかしてられませんね。それはそうとお頭、浮気したら姫様に寝首掻かれるかもしれないから気を付けないと」
「お前はいちいち一言多いんだ。姫以外に関心はないけど、君に寝首掻かれるなら本望かな」
「もう物騒なこと言わないで下さいよ!」
ダグラスさんの隣にいた船員さんの台詞に、私がトロイメアの姫であることが露見してしまい、周囲の雰囲気が凍りついたのだった。
海賊というものを人々に知ってもらうため、色んな催しが用意されているようだけれど、私が目を付けた催しはただひとつ。
ナイフの技術を競う催しで、最も優れた技術を持つ参加者にはラリマーの原石が贈与されるという。
ラリマーは一部の国でしか産出されず、年々天然石が高騰していることもあり、価値と共に値段が上昇し続けている。
ダグラスさんに頼めば苦労せず手に入ることはできるだろう。けれど私はどうしても自分の手で、自らの力で手に入れたかった。
でも私は恥ずかしながら武器を扱ったことがない。そこはやはりプロに指導して貰うべく、お願いすることにした。
「君が俺にお願いなんて珍しいね。よほど手に入れたいものがあるらしい」
「はい、実は凪の催しでラリマーが出品されていまして。どうしても欲しいんです」
「俺が参加することはできないけど、何故欲しいのか聞いてもいいかい? 元々君は宝石の類に目がないタイプではないだろう?」
ラリマーという石は澄んだ青色で、波の模様が色濃く出ている。それを隠れ家に置き、ダグラスさんがいない間もラリマーを見て過ごすことで、航海に出ているダグラスさんが傍にいるような気分になれるかもしれないから、と私は答えた。
「それなら俺が手にする理由にもなるってわけだ。じゃあ海賊の姫様にナイフの手解きをしようか。但し期間はあまり長くないからね、恋人とはいえ甘やかさないから最後まで付いてきてもらうよ」
凪の祭日を主催している多忙なダグラスさんは合間を縫って、休息に使うべき時間を使い、私にナイフ投げを教えてくれた。
セント・ガブリエル号の一室に本場宛らの的が置かれており、所々ナイフで付けたであろう傷が見える。海賊の武器であり、そして遊戯のひとつであることが窺える。
ダグラスさんは説明するより見た方が早い、と実際にナイフを投げ、ナイフは回転しながら的のど真ん中に突き刺さった。
「す、すごい……」
「君も練習すればできるようになる──いや、これは俺と君でお宝を手に入れなければならないんだから、必ずマスターしてもらないとね。催しには海賊は参加できないことになっているんだけど、中にはナイフ投げやダーツが趣味の観光客もいるだろうから、こっちも万全な対策をしていた方がいいだろう」
脇を締め、力を入れずに的に向かって投げるという行為は想像以上に難しかった。
海賊達は日常的に動いている者に対し、時には足止めのために、時には命を奪うために的にナイフを投げている。失敗は決して許されない。失敗することは自らの命を危険に晒すということなのだから。
ダグラスさんが暇を見繕っては私の練習に付き合ってくれるので、私も睡眠時間を少し削って練習に励んだ。
いい結果が残せるように──そんなことを思いながら、私がナイフを握らない日は一日もなかった。
そしてとうとう催しの日がやってきた。様々な国から多くの参加者が集い、少しばかり不安を覚えたけれど、ダグラスさんが稽古をつけてくれたのだからきっと大丈夫だ。
ダグラスさんは仕事があるが、時間ができ次第、こちらに向かうと言ってくれた。私は私のできることをしよう。
海賊の格好をしているからトロイメアの姫であることがばれる可能性は低いけれど、参加登録が必要だったため、私は偽名で参加することにした。
「それでは、お次はナビさん! ご準備をお願いします」
(ナビ、ごめんね)
ナビに許可なく名前を借りたことを詫びながら、進行係であろう男性からナイフを受け取る。
ルールにより定められた定位置から、的のど真ん中に狙いを定めてナイフを投げた。
一度目、二度目、三度目とナイフは見事ど真ん中に刺さってくれた。ダグラスさんはどこかで見てくれているだろうか。
「やっぱり君は海賊の女だね。俺の技をいとも簡単に盗んで自分のものにするとは恐れ入ったよ」
「ダグラスさん! もしかして全部見てくれてたんですか?」
「君の勇姿はしっかりと見させてもらったよ。君が初めて自分の力でお宝を手に入れる瞬間をこの目に焼き付けたいんだ。焦らさないで彼女にお宝を渡してあげてくれ」
私は男性からラリマーの原石を受け取る。掌に乗せられたそれはちょうどスマホくらいのサイズで、くっきりとした色合いの美しい水面模様に目を奪われる。
だがそれもこれもダグラスさんの協力あってのものだ。私は感謝の気持ちを込めて、ダグラスさんの頬に口付けた。
「ダグラスさん、ありがとう」
「公衆の面前でキスなんて、随分心境の変化があったみたいだね。でも頬はカウント対象外だよ」
「姫様が勇敢なのは知ってましたが、まさか短期間でナイフ投げを習得するなんて俺達もうかうかしてられませんね。それはそうとお頭、浮気したら姫様に寝首掻かれるかもしれないから気を付けないと」
「お前はいちいち一言多いんだ。姫以外に関心はないけど、君に寝首掻かれるなら本望かな」
「もう物騒なこと言わないで下さいよ!」
ダグラスさんの隣にいた船員さんの台詞に、私がトロイメアの姫であることが露見してしまい、周囲の雰囲気が凍りついたのだった。
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