ダグラス主 隠れ家
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常夏の国であるアンキュラでは陽射しが強く、陶器のように滑らかな肌をした人があまりいないことがそれを物語っている。
今日出かけることになっている場所はアンキュラでも特に陽射しが強い場所らしいから、私は日焼け対策にサンスクリーンを肌に伸ばした後、フェイスパウダーを重ねる。
ファンデを塗らないのはボニータが私の顔にキスしたり、舐めたりして有害なものを口に入れさせないためだ。
コットンワンピースに身を包み、ヒマワリのコサージュをあしらったストローハットを被ったボニータは私の隣でワンピースの裾を小さく掴み、宛らレディのようにお辞儀してみせた。
「ボニータ、今日はいつもみたいに服を泥まみれにしちゃだめだからね?
私と約束できる?」
「キキッ!」
ボニータは力強く頷くけれど、服を汚さない日はないだけに心配になりながらも私は微笑を浮かべる。
「船の準備はできたけど、レディの方はどうだい? 立派なレディが二人もいるんだから、しっかりエスコートしないとね」
船の用意を終えて隠れ家に戻ってきたダグラスさんが私達の装いを見て、目尻を下げたような気がした。
それは私も同じことで、胸元が覗くシャツにゆったりとしたデニムパンツを合わせたラフな格好をしたダグラスさんに心を揺さぶられずにはいられない。
王子様らしからぬ格好だけれど、いつもとは違うどこかリラックスしたような装いも眩しく映る。
もちろん王子様らしく正装したダグラスさんも素敵だけれど。
「ダグラスさん、今日はなんだかいつもと違うラフな格好ですね。よく似合ってますよ」
「そうかい? ありがとう。いつもは君によく見られたいと思って張り切るんだけど、今日は場所柄暑くなりそうだしね。気心の知れた関係だし、今更格好つけても君には見抜かれてしまうだろうけど──ボニータとお揃いのワンピースだなんてちょっと妬けるな。いつもの服も好きだけど、今日みたいなワンピースもよく似合ってる。君は肌が白いから何でも似合うけど、鮮やかな色もいいね」
今日着ているコットンワンピースはオリエンタルブルーの鮮やか色味のもので、丈はいつもより長いマキシ丈。
少し派手かと思っていたけれど、勇気を出して着てよかった、と口元を緩めながら、私達は隠れ家を出発した。
フィッシングボートでの船旅を楽しみながら、辿り着いた先はジョーヌ・フルール島。
アンキュラの陸地面積は少なく、海に面しているのだけれどこの島には眩いばかりのヒマワリで埋め尽くされた畑がある。
ヒマワリの種はそのままで食べることもできるけれど、料理やお菓子だけでなく、食用油や美容にも使われていて、多岐に渡る。
「さ、着いたよ。お姫様」
「見事なヒマワリ畑ですね。ね? ボニータ」
ボニータはフィッシングボートが係留されるや否や、ヒマワリ畑に向かって駆け出した。
だけど今日は服に気を遣っているのだろうか、香りを嗅いだり指先で花弁に触れているだけだった。
いつもはお転婆な女の子だけど、今日はお淑やかなお嬢様みたい。
もしかして私と約束したから、淑やかに振る舞っているのだろうか。
「可愛いお嬢さんが迷い込んでしまったようね。──初めまして、トロイメアの姫君。私はこの畑を所有している者です。ダグラス様が今日いらっしゃると聞いておりましたので、楽しみにしていました」
「ダグラスさん、お知り合いなんですか?」
「ああ、たまに隠れ家にヒマワリを持って帰ることがあっただろう? あれは街で買ったものなんだけど、ここから出荷されているものなんだ」
ヒマワリ畑に姿を現した女性はダグラスさんと同じく褐色の肌をしていて、ブロンドのショートヘアがよく映えていた。
シャツから覗く筋肉は適度に引き締まっていて、健康的そのもので計算尽くで作られた彫刻のように美しく見える。
「ここは暑いので、ログハウスの方でゆっくりなさって下さい。何もない所ですが、寛いで頂けると嬉しいです」
「それじゃあお言葉に甘えてそうさせてもらおうか」
女性はログハウスに案内してくれると、色鮮やかなトロピカルジュースとヒマワリのアイシングクッキーを用意してくれた。
ごゆっくりどうぞ、と一礼をして部屋に私達を残して去っていく。
部屋の内装もヒマワリを彷彿とさせる明るい色合いで統一されていて、テーブルに置かれた花瓶には一輪のヒマワリが挿されていた。
ヒマワリといっても品種はイエローだけではなくオレンジのもの、八重咲きのものなど様々あるようで、私達の目や心を癒やしてくれる。
「ボニータ、今日は疲れちゃったでしょ? 約束も守ってくれたし、いっぱい食べてね」
待ってましたと言わんばかりにボニータは席に着き、クッキーを口いっぱいに入れて豪快な音楽を奏でた。
交互にトロピカルジュースを口に含み、幸せそうな顔をしている。
「花より団子だな、ボニータは。俺達も頂こうか。君も疲れただろう?」
「綺麗な風景を見たら疲れなんて吹き飛んじゃいました。とても素敵なところですね……あっ!」
窓から見えるヒマワリが風に吹かれて揺れている。音楽を聴きながら、リズムを感じながら踊るように。
風を孕んで仲良く揺れるヒマワリはまるでカーテンやスカートのように見えた。
柔らかな花弁は風に吹かれて形を変えながらも、根をしっかりと張り、倒れることはない。
それはまるで過酷な環境下でも決して屈することなく、強く逞しく生きるアンキュラ国民そのものだ、と思いながら、私はヒマワリを見つめるのだった。
今日出かけることになっている場所はアンキュラでも特に陽射しが強い場所らしいから、私は日焼け対策にサンスクリーンを肌に伸ばした後、フェイスパウダーを重ねる。
ファンデを塗らないのはボニータが私の顔にキスしたり、舐めたりして有害なものを口に入れさせないためだ。
コットンワンピースに身を包み、ヒマワリのコサージュをあしらったストローハットを被ったボニータは私の隣でワンピースの裾を小さく掴み、宛らレディのようにお辞儀してみせた。
「ボニータ、今日はいつもみたいに服を泥まみれにしちゃだめだからね?
私と約束できる?」
「キキッ!」
ボニータは力強く頷くけれど、服を汚さない日はないだけに心配になりながらも私は微笑を浮かべる。
「船の準備はできたけど、レディの方はどうだい? 立派なレディが二人もいるんだから、しっかりエスコートしないとね」
船の用意を終えて隠れ家に戻ってきたダグラスさんが私達の装いを見て、目尻を下げたような気がした。
それは私も同じことで、胸元が覗くシャツにゆったりとしたデニムパンツを合わせたラフな格好をしたダグラスさんに心を揺さぶられずにはいられない。
王子様らしからぬ格好だけれど、いつもとは違うどこかリラックスしたような装いも眩しく映る。
もちろん王子様らしく正装したダグラスさんも素敵だけれど。
「ダグラスさん、今日はなんだかいつもと違うラフな格好ですね。よく似合ってますよ」
「そうかい? ありがとう。いつもは君によく見られたいと思って張り切るんだけど、今日は場所柄暑くなりそうだしね。気心の知れた関係だし、今更格好つけても君には見抜かれてしまうだろうけど──ボニータとお揃いのワンピースだなんてちょっと妬けるな。いつもの服も好きだけど、今日みたいなワンピースもよく似合ってる。君は肌が白いから何でも似合うけど、鮮やかな色もいいね」
今日着ているコットンワンピースはオリエンタルブルーの鮮やか色味のもので、丈はいつもより長いマキシ丈。
少し派手かと思っていたけれど、勇気を出して着てよかった、と口元を緩めながら、私達は隠れ家を出発した。
フィッシングボートでの船旅を楽しみながら、辿り着いた先はジョーヌ・フルール島。
アンキュラの陸地面積は少なく、海に面しているのだけれどこの島には眩いばかりのヒマワリで埋め尽くされた畑がある。
ヒマワリの種はそのままで食べることもできるけれど、料理やお菓子だけでなく、食用油や美容にも使われていて、多岐に渡る。
「さ、着いたよ。お姫様」
「見事なヒマワリ畑ですね。ね? ボニータ」
ボニータはフィッシングボートが係留されるや否や、ヒマワリ畑に向かって駆け出した。
だけど今日は服に気を遣っているのだろうか、香りを嗅いだり指先で花弁に触れているだけだった。
いつもはお転婆な女の子だけど、今日はお淑やかなお嬢様みたい。
もしかして私と約束したから、淑やかに振る舞っているのだろうか。
「可愛いお嬢さんが迷い込んでしまったようね。──初めまして、トロイメアの姫君。私はこの畑を所有している者です。ダグラス様が今日いらっしゃると聞いておりましたので、楽しみにしていました」
「ダグラスさん、お知り合いなんですか?」
「ああ、たまに隠れ家にヒマワリを持って帰ることがあっただろう? あれは街で買ったものなんだけど、ここから出荷されているものなんだ」
ヒマワリ畑に姿を現した女性はダグラスさんと同じく褐色の肌をしていて、ブロンドのショートヘアがよく映えていた。
シャツから覗く筋肉は適度に引き締まっていて、健康的そのもので計算尽くで作られた彫刻のように美しく見える。
「ここは暑いので、ログハウスの方でゆっくりなさって下さい。何もない所ですが、寛いで頂けると嬉しいです」
「それじゃあお言葉に甘えてそうさせてもらおうか」
女性はログハウスに案内してくれると、色鮮やかなトロピカルジュースとヒマワリのアイシングクッキーを用意してくれた。
ごゆっくりどうぞ、と一礼をして部屋に私達を残して去っていく。
部屋の内装もヒマワリを彷彿とさせる明るい色合いで統一されていて、テーブルに置かれた花瓶には一輪のヒマワリが挿されていた。
ヒマワリといっても品種はイエローだけではなくオレンジのもの、八重咲きのものなど様々あるようで、私達の目や心を癒やしてくれる。
「ボニータ、今日は疲れちゃったでしょ? 約束も守ってくれたし、いっぱい食べてね」
待ってましたと言わんばかりにボニータは席に着き、クッキーを口いっぱいに入れて豪快な音楽を奏でた。
交互にトロピカルジュースを口に含み、幸せそうな顔をしている。
「花より団子だな、ボニータは。俺達も頂こうか。君も疲れただろう?」
「綺麗な風景を見たら疲れなんて吹き飛んじゃいました。とても素敵なところですね……あっ!」
窓から見えるヒマワリが風に吹かれて揺れている。音楽を聴きながら、リズムを感じながら踊るように。
風を孕んで仲良く揺れるヒマワリはまるでカーテンやスカートのように見えた。
柔らかな花弁は風に吹かれて形を変えながらも、根をしっかりと張り、倒れることはない。
それはまるで過酷な環境下でも決して屈することなく、強く逞しく生きるアンキュラ国民そのものだ、と思いながら、私はヒマワリを見つめるのだった。