ダグラス主 隠れ家
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姫様が各国に広めたクリスマスのお陰でこの時期はどの国でも賑やかになっているとの報告を受けていた。
僕はといえば旅の合間にトロイメアに戻り、政務に追われていた。
そんな折、姫様から隠れ家への招待状が届いた。
クリスマスは家族や恋人と過ごす日だと聞いていたから、姫様はダグラス王子と過ごすものだとばかり思っていたのに、何故僕に白羽の矢が立ったのだろう──そんなことを思いながらこの日の政務を終わらせ、一日だけ留守にすると部下に伝えた後、姫様の隠れ家へと向かった。
「ナビ! いらっしゃい!」
食事の準備でもしていたのだろうか、エプロンを身に着けた姫様が出迎えてくれたが、どうやら一人のようだ。ダグラス王子はどうしたのだろうか。
辺りを見回していると、姫様が不思議そうな顔をして僕を見つめてきた。
「ナビ、どうかした?」
「いえ、今日はクリスマスとかいう日なのでダグラス王子は何処にいるのかと思ったんですが」
「ダグラスさんは今日は帰らないの。急ぎの仕事が入ってしまって、ナビと水入らずで過ごして欲しいって。年明けには帰るとは言ってたんだけどね」
ああ、なるほど。彼は僕に気を遣ってくれたようだ。それならダグラス王子には改めてお礼の品でも送らないと。
姫様は僕を椅子に座るよう促すと、何やら料理をテーブルに運び始めた。
生クリームで彩ったクリスマスケーキ。モッツァレラチーズとバジルを挟んだカプレーゼ。魚の幸をふんだんに使ったパエリア。その他にもたくさんの料理が並べられ、まるでホームパーティーでも始まるかのような雰囲気だ。
「ちょっと作りすぎちゃったんだけど、たくさん食べてね。クリスマスは大切な人と過ごす日だもの。今日くらいは兄と妹に戻っても……いいよね?」
姫、違う。そうじゃないんだ。僕がこの隠れ家を用意したのはその為じゃない。
僕は普通の女の子として暮らしていた筈の君をこの世界に連れ戻し、辛く悲しい思いをさせてきた。旅に休息はあってもいつ終わるかわからない旅だ。
だからせめて君に恋人と日常を過ごして欲しくて、旅の疲れを忘れて欲しくて用意したものなんだ。
本当なら君は女性としての幸せを掴ませてあげたかった。でも僕にはそれができなくて、王としても兄としても不甲斐ない男だ。
本来ならあの玉座だって僕には相応しくないこともわかっている。彼の方がよほど相応しかった筈だ。
それなのに僕を責めることすらせず、優しくしてくれる君の心が身に沁みて自然と涙が溢れてくる。
「何で泣いてるの? 嫌いな食べ物ばかりだった?」
「違うんだ。僕は身勝手な兄で、君にこんなことしてもらう価値なんてない──」
「ううん、辛い時も悲しい時もいつだって私の傍にいてくれたもの。心細くて寂しい時もいつも寄り添ってくれた。これからも私を見守っていてね、お兄ちゃん」
姫がハンカチで僕の涙を拭う。ずっと小さいとばかり思っていた、僕達の可愛い妹。知らない間にこんなに大きくなって、子供じゃなく大人になっていたんだね。
どんなことが起きようと君の傍で君を守るよ。そして執事としての務めをしっかりと果たすと誓うよ。
だからどうかトロイメアの加護がありますように──。
僕はといえば旅の合間にトロイメアに戻り、政務に追われていた。
そんな折、姫様から隠れ家への招待状が届いた。
クリスマスは家族や恋人と過ごす日だと聞いていたから、姫様はダグラス王子と過ごすものだとばかり思っていたのに、何故僕に白羽の矢が立ったのだろう──そんなことを思いながらこの日の政務を終わらせ、一日だけ留守にすると部下に伝えた後、姫様の隠れ家へと向かった。
「ナビ! いらっしゃい!」
食事の準備でもしていたのだろうか、エプロンを身に着けた姫様が出迎えてくれたが、どうやら一人のようだ。ダグラス王子はどうしたのだろうか。
辺りを見回していると、姫様が不思議そうな顔をして僕を見つめてきた。
「ナビ、どうかした?」
「いえ、今日はクリスマスとかいう日なのでダグラス王子は何処にいるのかと思ったんですが」
「ダグラスさんは今日は帰らないの。急ぎの仕事が入ってしまって、ナビと水入らずで過ごして欲しいって。年明けには帰るとは言ってたんだけどね」
ああ、なるほど。彼は僕に気を遣ってくれたようだ。それならダグラス王子には改めてお礼の品でも送らないと。
姫様は僕を椅子に座るよう促すと、何やら料理をテーブルに運び始めた。
生クリームで彩ったクリスマスケーキ。モッツァレラチーズとバジルを挟んだカプレーゼ。魚の幸をふんだんに使ったパエリア。その他にもたくさんの料理が並べられ、まるでホームパーティーでも始まるかのような雰囲気だ。
「ちょっと作りすぎちゃったんだけど、たくさん食べてね。クリスマスは大切な人と過ごす日だもの。今日くらいは兄と妹に戻っても……いいよね?」
姫、違う。そうじゃないんだ。僕がこの隠れ家を用意したのはその為じゃない。
僕は普通の女の子として暮らしていた筈の君をこの世界に連れ戻し、辛く悲しい思いをさせてきた。旅に休息はあってもいつ終わるかわからない旅だ。
だからせめて君に恋人と日常を過ごして欲しくて、旅の疲れを忘れて欲しくて用意したものなんだ。
本当なら君は女性としての幸せを掴ませてあげたかった。でも僕にはそれができなくて、王としても兄としても不甲斐ない男だ。
本来ならあの玉座だって僕には相応しくないこともわかっている。彼の方がよほど相応しかった筈だ。
それなのに僕を責めることすらせず、優しくしてくれる君の心が身に沁みて自然と涙が溢れてくる。
「何で泣いてるの? 嫌いな食べ物ばかりだった?」
「違うんだ。僕は身勝手な兄で、君にこんなことしてもらう価値なんてない──」
「ううん、辛い時も悲しい時もいつだって私の傍にいてくれたもの。心細くて寂しい時もいつも寄り添ってくれた。これからも私を見守っていてね、お兄ちゃん」
姫がハンカチで僕の涙を拭う。ずっと小さいとばかり思っていた、僕達の可愛い妹。知らない間にこんなに大きくなって、子供じゃなく大人になっていたんだね。
どんなことが起きようと君の傍で君を守るよ。そして執事としての務めをしっかりと果たすと誓うよ。
だからどうかトロイメアの加護がありますように──。