短編
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繁忙期に入ると、帰宅時間が遅くなるために料理をするのがついつい面倒になってしまう。
だけどお母さんが作ってくれたような温かで懐かしい料理を提供してくれる、昔ながらの食堂を知ってしまった私は今やもうその店の常連客だ。
メニューの値段はもちろん、おかずの品数まで頭に叩き込んでいる。
もしかしたら店員さんより詳しいかもしれない。
仕事帰りにリドをご飯に行こうと誘ってお店に入ると、リドは意外そうな表情をしていた。
「あんた、いつもこういうとこで食べてるのか?」
「いつもじゃないけど、残業で遅くなる時とかに来てるよ。お母さんが作ってくれる家庭料理って感じで好きなんだ」
「確かに昔ながらの家って感じで落ち着くかもな。実家に帰ってきたっつーか。いい匂いするから腹減ってきたなあ」
この店では玄関付近に置かれたトレーに、好みのおかずを選んで会計をするというスタイルを取っている。
フライや卵焼きは常に出来立てのものを提供してくれるし、煮物など汁物は温めてくれる。
「ここは卵焼きがすごく美味しいんだよ。出来立てだしね」
「ならオレも貰おうかな」
「おじさん、卵焼き二つ。今日はネギなしで!」
「はいよ。ところでお隣の男前は彼氏かい? いやー姫ちゃんはいつも一人で来るから心配してたんだけど。姫ちゃん、彼氏はちゃーんと掴まえといた方がいいよ?」
私は嬉しいやら恥ずかしいやらで、ほっといて下さい! とだけ言い返す。
確かにリドとは恋人同士だけど、人前でそれも沢山の人がいる場所で。
学生時代は学校帰りに毎日寄り道してデートなんてしていたけど、社会人ともなればそれは難しい。
リドとは会社は同じだけど、部署が違うからなかなかお互いの都合が合わなくて、二人きりになること自体本当に久しぶりだ。
「姫ちゃんはさ、ここに一人で来ちゃドカ食いしてねえ。仕事でストレス溜まってるんだろうけど、いつも酔っ払って帰るんだよな。今日は彼氏と一緒だから、酔っ払っても安心だねえ」
「余計なこと言わないで下さい!」
私は卵焼きを受け取ると、リドと共に温かい食事が乗ったトレーを手に席に着いた。
一人でいる時は何も考えず、ただ食事に集中しているけれど、リドといる時はやっぱり彼女として可愛い、綺麗だと思われたい。
疲れていてもメイクやおしゃれは手抜きしたことがないし、これもすべてはリドによく見られたいがため。
「あんた、オレの前で酔ったことってないよな」
「もうそんなことは忘れてよ。私だってね、仕事で疲れた時くらいお酒飲んだり、美味しいもの鱈腹食べたいの」
そんな言い訳じみた私の言葉を、リドは決して否定しない。
辛い時はいつも寄り添ってくれて、話を聞いてくれる。優しくて自慢の恋人だ。
「なあ、あんたがよければだけど、この後まだ時間あるか? あ、別にあんたを酔わせたいってわけじゃなくて、ふたりきりになりたいっていうか……最近ゆっくりこうやって食事もできなかったわけだしさ」
照れながら誘ってくれるリドが愛おしくて、私は深く頷いた。
今夜はお酒の力を借りて、柄にもなくリドに甘えてみようか。気の向くままに猫が誰かに撓垂れ掛かるみたいに。
だけどお母さんが作ってくれたような温かで懐かしい料理を提供してくれる、昔ながらの食堂を知ってしまった私は今やもうその店の常連客だ。
メニューの値段はもちろん、おかずの品数まで頭に叩き込んでいる。
もしかしたら店員さんより詳しいかもしれない。
仕事帰りにリドをご飯に行こうと誘ってお店に入ると、リドは意外そうな表情をしていた。
「あんた、いつもこういうとこで食べてるのか?」
「いつもじゃないけど、残業で遅くなる時とかに来てるよ。お母さんが作ってくれる家庭料理って感じで好きなんだ」
「確かに昔ながらの家って感じで落ち着くかもな。実家に帰ってきたっつーか。いい匂いするから腹減ってきたなあ」
この店では玄関付近に置かれたトレーに、好みのおかずを選んで会計をするというスタイルを取っている。
フライや卵焼きは常に出来立てのものを提供してくれるし、煮物など汁物は温めてくれる。
「ここは卵焼きがすごく美味しいんだよ。出来立てだしね」
「ならオレも貰おうかな」
「おじさん、卵焼き二つ。今日はネギなしで!」
「はいよ。ところでお隣の男前は彼氏かい? いやー姫ちゃんはいつも一人で来るから心配してたんだけど。姫ちゃん、彼氏はちゃーんと掴まえといた方がいいよ?」
私は嬉しいやら恥ずかしいやらで、ほっといて下さい! とだけ言い返す。
確かにリドとは恋人同士だけど、人前でそれも沢山の人がいる場所で。
学生時代は学校帰りに毎日寄り道してデートなんてしていたけど、社会人ともなればそれは難しい。
リドとは会社は同じだけど、部署が違うからなかなかお互いの都合が合わなくて、二人きりになること自体本当に久しぶりだ。
「姫ちゃんはさ、ここに一人で来ちゃドカ食いしてねえ。仕事でストレス溜まってるんだろうけど、いつも酔っ払って帰るんだよな。今日は彼氏と一緒だから、酔っ払っても安心だねえ」
「余計なこと言わないで下さい!」
私は卵焼きを受け取ると、リドと共に温かい食事が乗ったトレーを手に席に着いた。
一人でいる時は何も考えず、ただ食事に集中しているけれど、リドといる時はやっぱり彼女として可愛い、綺麗だと思われたい。
疲れていてもメイクやおしゃれは手抜きしたことがないし、これもすべてはリドによく見られたいがため。
「あんた、オレの前で酔ったことってないよな」
「もうそんなことは忘れてよ。私だってね、仕事で疲れた時くらいお酒飲んだり、美味しいもの鱈腹食べたいの」
そんな言い訳じみた私の言葉を、リドは決して否定しない。
辛い時はいつも寄り添ってくれて、話を聞いてくれる。優しくて自慢の恋人だ。
「なあ、あんたがよければだけど、この後まだ時間あるか? あ、別にあんたを酔わせたいってわけじゃなくて、ふたりきりになりたいっていうか……最近ゆっくりこうやって食事もできなかったわけだしさ」
照れながら誘ってくれるリドが愛おしくて、私は深く頷いた。
今夜はお酒の力を借りて、柄にもなくリドに甘えてみようか。気の向くままに猫が誰かに撓垂れ掛かるみたいに。
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