短編
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高々と掲げられたブラックボードにはびっしりと文字が敷き詰められてあるが、何を書いてあるのか理解できず、俺はただただブラックボードを睨み付ける。
俺の視線に気付いたのか、姫が肩を揺すってきた。
仕方ないだろう、俺は城か王室御用達の高級店でしか食事をしたことがないのだから当然だろう。
「フリッツさん、早くしないと店員さんに迷惑がかかりますよ」
「わかっているが種類が多くて決められん。もういい、この店にあるすべての商品を寄越せ」
「何言ってるんですか、二人しかいないのに食べられるわけないでしょう。私は注文するので、フリッツさんは席を確保しておいてもらえますか」
押し問答は埒があかないと姫は俺と交替し、悔しいが一般人としての経験では彼女に勝てない俺は空席を陣取り、大人しく座っていることにした。
トロイメアの姫ともあろう高貴な者が、一般人に紛し生活していたとは前々から聞いてはいたが手際のよさから言って嘘ではなかったようだ。
さほど時間もかからずお前はトレーを手にして帰ってきた。なんて仕事の早い女だ。
「さ、じゃあ早速いただいちゃいましょうか。加糖だと甘いと思って無糖にしましたよ」
「ところで沈んでいる丸い物体はなんだ?」
トレーの中にはミルクティーと思わしきドリンクが入ったカップとクッキーが置かれた皿が二つずつある。
俺が思わず気になったのは丸い物体だ。まさかとは思うが──生物の卵などではないだろうな。
俺はどこぞの美食家と違って食事に未知など求めていないぞ。
「これはですね、タピオカと言いまして……デンプンですね」
「デンプンだと? ドリンクにデンプンを混入するのが市井では流行しているのか」
「まあ……そうですね。大体若い人メインですが。試しに食べてみて下さい」
生物の卵でないならまあいいが……。姫に促されるまま、ストローでミルクティーなるものを吸い上げるとタピオカとかいう丸い玉が舌に当たった。
歯で食い千切ってやろうとしたら、柔らかく弾力があるもののなかなか砕けないではないか。まるで蒟蒻のようだ。
不味くもないが旨くもない。確かにデンプンと言われればその通りだな。
「どうです?」
「妙な感触だな。それでは口直しに甘いものをいただくとするか」
「じゃあクッキーを食べますか。これはですね、テイシャの──」
俺は姫が言い終わらない内にその唇を塞ぐ。
勘違いも甚だしい。俺が口直しに、と言ったのはお前を味わうためだ。
講釈が始まればいつ終わるかもわからん。聞き終わるまで待てるほど気の長い男ではない。それはお前が一番知っているはずだ。
ミルクティーの甘い香りがゆっくり広がり、人目も憚らず唇の柔らかさと香りを堪能するのだった。
俺の視線に気付いたのか、姫が肩を揺すってきた。
仕方ないだろう、俺は城か王室御用達の高級店でしか食事をしたことがないのだから当然だろう。
「フリッツさん、早くしないと店員さんに迷惑がかかりますよ」
「わかっているが種類が多くて決められん。もういい、この店にあるすべての商品を寄越せ」
「何言ってるんですか、二人しかいないのに食べられるわけないでしょう。私は注文するので、フリッツさんは席を確保しておいてもらえますか」
押し問答は埒があかないと姫は俺と交替し、悔しいが一般人としての経験では彼女に勝てない俺は空席を陣取り、大人しく座っていることにした。
トロイメアの姫ともあろう高貴な者が、一般人に紛し生活していたとは前々から聞いてはいたが手際のよさから言って嘘ではなかったようだ。
さほど時間もかからずお前はトレーを手にして帰ってきた。なんて仕事の早い女だ。
「さ、じゃあ早速いただいちゃいましょうか。加糖だと甘いと思って無糖にしましたよ」
「ところで沈んでいる丸い物体はなんだ?」
トレーの中にはミルクティーと思わしきドリンクが入ったカップとクッキーが置かれた皿が二つずつある。
俺が思わず気になったのは丸い物体だ。まさかとは思うが──生物の卵などではないだろうな。
俺はどこぞの美食家と違って食事に未知など求めていないぞ。
「これはですね、タピオカと言いまして……デンプンですね」
「デンプンだと? ドリンクにデンプンを混入するのが市井では流行しているのか」
「まあ……そうですね。大体若い人メインですが。試しに食べてみて下さい」
生物の卵でないならまあいいが……。姫に促されるまま、ストローでミルクティーなるものを吸い上げるとタピオカとかいう丸い玉が舌に当たった。
歯で食い千切ってやろうとしたら、柔らかく弾力があるもののなかなか砕けないではないか。まるで蒟蒻のようだ。
不味くもないが旨くもない。確かにデンプンと言われればその通りだな。
「どうです?」
「妙な感触だな。それでは口直しに甘いものをいただくとするか」
「じゃあクッキーを食べますか。これはですね、テイシャの──」
俺は姫が言い終わらない内にその唇を塞ぐ。
勘違いも甚だしい。俺が口直しに、と言ったのはお前を味わうためだ。
講釈が始まればいつ終わるかもわからん。聞き終わるまで待てるほど気の長い男ではない。それはお前が一番知っているはずだ。
ミルクティーの甘い香りがゆっくり広がり、人目も憚らず唇の柔らかさと香りを堪能するのだった。
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