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新しい関係

林子がゲーニッツの家に住み始めて数日が過ぎた。
一緒に住み始めてから林子は不安を持っていた。
ゲーニッツが教会で仕事をしてる間は何もせず家にいて気が向いた時に掃除をするぐらいだった。
ご飯はなるべく林子で用意しようとしてたがゲーニッツの優しさに甘えてしまい一緒に作る事も多かった。
働きにも行かず彼氏の家に何もしないでじっと居るのが少し苦痛になっていた。
ある日の夕飯時、林子は思っている事をゲーニッツに伝えた。
「働きにも行かないでゲーニッツさんにおんぶ抱っこでいるのが少しつらいので働きに行こうかなって考えてるんですが…いいですかね?」
ゲーニッツの箸が止まる。うーんと考えている。
「私がいることで出費もかさんで来てるだろうし働きに頑張ろうかと」
そう言うとゲーニッツは問いかけた。
「今までお仕事はやってた事はあるんですか?やっていたとしたらなぜ辞めてしまったか理由も聞いていいでしょうか?」
ウウッと顔が渋る林子。
「今までの家庭環境が良くなくてでも家のためにって何度か働いてましたが情けない事に情緒不安定で仕事に通う事が出来なくなってしまって辞めてしまってたんです…」
暗い顔になる林子。
 (ああ…ダメだ。こんな落ちこぼれな私と居れないよね。離されたらどうしよう)
どんどん表情が曇り涙目になり俯いてしまう。
重い空気を切り裂くようにゲーニッツが言葉を発した。
「私は今のままで全然構いません。貴女が快く暮らせるのなら働かなくても大丈夫です。…もしかしてですが働いてない自分を責めてませんか?」
ゲーニッツの言葉でハッとなり顔を上げる。
「重荷になんて思ってもいませんしむしろ私は貴女と一緒に暮らせて幸せです。でなきゃ親御さん達を納得させませんからね」
我慢が出来ず涙が溢れ出る。
(またゲーニッツさんの優しさに泣いてしまった。自分が情けない…)
(ごめんなさい。)が言えなかった。
するとゲーニッツが先に謝ってきた。
「すみません。何かまた悪い事言ってしまいましたか?貴女を泣かせてしまうなんて駄目ですね」
声を振り絞り出す。
「ゲーニッツさん、の、優しさに、甘える自分が、許せなく、て…」
ゲーニッツが席から立ち林子を抱きしめる。
「もうここに来たのなら貴女を責める人なんて誰もいません。…貴女には笑顔でいて欲しいです。私の我儘でしょうか?」
首を大きく横に振る。
自分をここまで肯定されるのに戸惑う林子。
「私の、笑顔が、ゲーニッツさんの幸せですか?」
「勿論です」
すぐに返事が返ってきた。
「ゆっくりで構いません。ご自身を大事にしていきましょう。私も手伝います。ですから今は無理に働かなくてもいいです」
こんなに想われているのがすごく嬉しかった林子。
食べかけの夕飯は冷めたが林子の心には温かい心地ができたのであった。
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