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新しい関係

お昼を済ませると時刻は午後一時半をさしていた。
「ずいぶんと引き留めてしまいましたがご両親は心配なさってませんかね?」
そう聞くと林子の顔が曇る。
死にたい。そう言ってた時の顔と同じ雰囲気だ。
「両親はこの間、離婚しました。今は母方の方に引き取られているので母親は父親ほどうるさくないから大丈夫かと」
続けて言う。
「私、こんな歳ですが働けてなくて、母親1人での収入じゃ今住んでる所に居るのは厳しいと言われたので近いうちに親戚の家に引っ越す事になっているんですが…正直嫌で。」
真剣に話を聞いているゲーニッツ。
無理に励まそうとしたり同情するような事もなく黙って彼女の話を聞いている。
「教会までも通うのも気持ち遠くなるし、親戚の家になったら夜遅くまで居れなくなるし。嫌だな~って。ごめんなさい暗い話になっちゃって」
いえ。とだけ答えて考え込むゲーニッツ。
しばらく沈黙が続く。
するとゲーニッツが口を開いた。
「林子さん自身と林子さんのお母様が良ければの話なんですが、林子さんが私の家に一緒に住むことは可能でしょうか?」
「えっ」と思わず声が出る林子。
考えるより先に林子はすぐにでもゲーニッツと一緒に住みたいと思ってしまった。
だがそうなると林子とゲーニッツだけの問題じゃなくなってくる。
「今さっき付き合ったばかりなのに申し訳ないし、母親と親戚の人にも納得させるのは大変かと…」
「嬉しいけど気持ちだけ受け取っておきます」と言ってるのさえぎるようにゲーニッツが喋る。
「私も直接、お母様と親戚の方に言いに行きます。それでも納得されないのであれば諦めます」
「ええ、悪いよ…」とばつが悪そうな顔になる林子。
「もう私は貴女の彼氏です。貴女の幸せを一番におもいますし、それくらいのこともして当然かと」
彼氏…そうはっきり言われるとどこかこそばゆい感じがした。まだ実感はない。
「今度、林子さんのお宅を一緒に伺わせてください。ですので帰られたら今度彼氏が来るとお母様にお伝えください」
そういい時計を見ると午後2時になっていた。
もうこんな時間ですか。と言い立ち上がるゲーニッツ。
「では私は教会での仕事が少し残っていますので行きます。今の話ちゃんと伝えといてください」
そういい思い出したかのようにおもむろに紙とペンを出し何かを書き込んでいるゲーニッツ。
「こちらを渡しときます。私の連絡先です。」
渡された紙を見ると電話番号が書いてあった。
「今日はもう帰られたらいいと思います。連絡待っています。直接来ていただいても構いませんが。では一緒に出ましょう」
そう言ってゲーニッツと一緒に家を出て、清々しい日が照り付ける中、帰路に向かった。
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