タイムリミットは夜明けまで
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あっという間に冷たくなっていく
その身体の温もりを少しでも逃がさぬように、
その男はずっと彼女を抱きしめ続けていた。
「俺はね、もう少し早く貴女に出会いたかった」
優しく、そして切なくこだましたその低く抑揚のない声は
微かに震えていた。
それから数日。
病院の屋上から男性2人が転落死。
転落するまでの短い時間、目を瞑った男の脳裏には
所謂走馬灯と呼ばれるものが浮かんでいた。
幼い頃の貧困極まりない生活。
そこから地獄のような日々を乗り越えて掴んだ権力。
だがそこに群がる卑しい人間達。
改めて振り返る自分の人生はお世辞ですら良いものとは言い難い。
だが、この走馬灯をみている自分の心持ちは
不思議と穏やかだった。
脳裏に浮かぶは今はもうこの世にいない彼女の顔。
本当に瞬きをするくらいのわずかな時間だったが、自分にとって大きなことを教えてくれた彼女。
その彼女の元に逝ける……
随分不謹慎な話だ、と脳天が地面にぶつかるその刹那、彼は皮肉めいた笑いを零したのだった。
___
「土方さん、今日の夕餉はどうなさりますか?」
「ああ、今晩は早く帰って来れる。久しぶりに名前と食卓を囲めるな。頼むよ」
「確かに久しぶりですね!嬉しいです。
それじゃあここは私の腕の見せ所ですね。
では、いってらっしゃいませ」
「いってくる」
そう言って軽く口付けを交わす。
夢のような幸せだ。
「夢で逢いましょうとは、よく言ったものだな」
ふと土方が発したその言葉の真意は誰もわからない___
その身体の温もりを少しでも逃がさぬように、
その男はずっと彼女を抱きしめ続けていた。
「俺はね、もう少し早く貴女に出会いたかった」
優しく、そして切なくこだましたその低く抑揚のない声は
微かに震えていた。
それから数日。
病院の屋上から男性2人が転落死。
転落するまでの短い時間、目を瞑った男の脳裏には
所謂走馬灯と呼ばれるものが浮かんでいた。
幼い頃の貧困極まりない生活。
そこから地獄のような日々を乗り越えて掴んだ権力。
だがそこに群がる卑しい人間達。
改めて振り返る自分の人生はお世辞ですら良いものとは言い難い。
だが、この走馬灯をみている自分の心持ちは
不思議と穏やかだった。
脳裏に浮かぶは今はもうこの世にいない彼女の顔。
本当に瞬きをするくらいのわずかな時間だったが、自分にとって大きなことを教えてくれた彼女。
その彼女の元に逝ける……
随分不謹慎な話だ、と脳天が地面にぶつかるその刹那、彼は皮肉めいた笑いを零したのだった。
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「土方さん、今日の夕餉はどうなさりますか?」
「ああ、今晩は早く帰って来れる。久しぶりに名前と食卓を囲めるな。頼むよ」
「確かに久しぶりですね!嬉しいです。
それじゃあここは私の腕の見せ所ですね。
では、いってらっしゃいませ」
「いってくる」
そう言って軽く口付けを交わす。
夢のような幸せだ。
「夢で逢いましょうとは、よく言ったものだな」
ふと土方が発したその言葉の真意は誰もわからない___
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