日常シーン10題
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肌寒さに思わずつけた石油ストーブの匂いが鼻をつく。
カーテンを開けると、窓は結露で濡れていた。
「朝だよ、錦山くん」
「ん……まだ寝る」
「駄目だよ、今日は仕事があるって言ってたじゃない」
自分が寝ていたベッドでうごめく布団の塊を思いっきりはぎ取ってやった。
「さみいって」
「起こしてあげてるの」
不機嫌そうに歪められた顔はまだ寝ぼけていて、思わず笑みがこぼれる。
「まだ暗いじゃねえか」
「外、霧が凄いみたい。ほら起きるよ」
「あ~~、寝てえ」
そんな愚痴をこぼしつつも、なんだかんだと起き上がる。
「シャツ、しわになるよって言ったのに」
「昨日、そんな余裕あったか?」
流れるように距離を詰められて、するりと髪を撫でられてしまっては、こちらは押し黙ることしかできない。
下着にシャツを羽織ったのみで晒された彼の見事なまでの体躯は、こんなときでもドキリとさせてくるのだから質が悪いのだ。
「もう、目が覚めたなら早く準備してよね」
「はいはい、じゃあまずは朝の挨拶からだな」
そう言うとあっという間に唇は奪われていて、軽いリップ音が響く。
「ちょっと、ン」
射抜くような視線がこちらを捉えて離さない。
数を重ねるごとに深くなるそれに全部どうでもよくなってしまいそうだった。
「っあ」
徐に腰を撫で上げられ意図せぬ声が漏れる。
いよいよこのまま流されてしまってはいけないと、必死に己の理性をかき集めて抵抗した。
「っ、駄目。予定があるんでしょってば」
「おかげで目が覚めたわ。おはよう、名前」
鋭い目が柔らかく歪むその笑顔に自分はずっと負け続けてしまうのだろう。
「……おはよ、錦山くん」
彼は満足げにこちらを抱きしめて、頭を優しく撫でてから調子よく洗面台に行ってしまった。
あんなに寒かったはずの部屋はいつの間にか温まりきっていて、今の自分には少し暑いくらいだった。
それから彼はいつものように長い髪をきっちりと後ろに撫でつけて、白いスーツを着込んで濃い霧の中に溶けていった。
どれだけ濃い霧も気づけば夢のようにはれてしまうように、彼もいつの日か自分の元からすっかり消え去ってしまうのではないかと不安になる。
彼を見送った一人の部屋で、やけに鼻につく石油ストーブは一層激しく燃えていた。
カーテンを開けると、窓は結露で濡れていた。
「朝だよ、錦山くん」
「ん……まだ寝る」
「駄目だよ、今日は仕事があるって言ってたじゃない」
自分が寝ていたベッドでうごめく布団の塊を思いっきりはぎ取ってやった。
「さみいって」
「起こしてあげてるの」
不機嫌そうに歪められた顔はまだ寝ぼけていて、思わず笑みがこぼれる。
「まだ暗いじゃねえか」
「外、霧が凄いみたい。ほら起きるよ」
「あ~~、寝てえ」
そんな愚痴をこぼしつつも、なんだかんだと起き上がる。
「シャツ、しわになるよって言ったのに」
「昨日、そんな余裕あったか?」
流れるように距離を詰められて、するりと髪を撫でられてしまっては、こちらは押し黙ることしかできない。
下着にシャツを羽織ったのみで晒された彼の見事なまでの体躯は、こんなときでもドキリとさせてくるのだから質が悪いのだ。
「もう、目が覚めたなら早く準備してよね」
「はいはい、じゃあまずは朝の挨拶からだな」
そう言うとあっという間に唇は奪われていて、軽いリップ音が響く。
「ちょっと、ン」
射抜くような視線がこちらを捉えて離さない。
数を重ねるごとに深くなるそれに全部どうでもよくなってしまいそうだった。
「っあ」
徐に腰を撫で上げられ意図せぬ声が漏れる。
いよいよこのまま流されてしまってはいけないと、必死に己の理性をかき集めて抵抗した。
「っ、駄目。予定があるんでしょってば」
「おかげで目が覚めたわ。おはよう、名前」
鋭い目が柔らかく歪むその笑顔に自分はずっと負け続けてしまうのだろう。
「……おはよ、錦山くん」
彼は満足げにこちらを抱きしめて、頭を優しく撫でてから調子よく洗面台に行ってしまった。
あんなに寒かったはずの部屋はいつの間にか温まりきっていて、今の自分には少し暑いくらいだった。
それから彼はいつものように長い髪をきっちりと後ろに撫でつけて、白いスーツを着込んで濃い霧の中に溶けていった。
どれだけ濃い霧も気づけば夢のようにはれてしまうように、彼もいつの日か自分の元からすっかり消え去ってしまうのではないかと不安になる。
彼を見送った一人の部屋で、やけに鼻につく石油ストーブは一層激しく燃えていた。
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