第一章 眼を眩ますは浅葱色
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「たいむすりっぷ……?なんやそれ」
「私、未来から来たみたいなんです!」
「歳ちゃん、ほんとにこの嬢ちゃん怪我なかったんか?」
「発見したのはお前だろう総司。見事なまでに無傷だったことは知っているはずだ」
「としちゃんって……もしかして土方歳三ですか……?」
さほど歴史に詳しいわけではないが、流石に新選組の名前くらいは知っている。
「そうだが。だから峯義孝なんて男は知らんと改めて言っておく」
「え、えぇ……」
あの真島吾朗が沖田総司で、峯義孝が土方歳三。
歴史の教科書で見た顔は確かに二人に似ていたような、全然違ったような……。
おぼろげな記憶の中で、きちんと勉強しておかなかったことを今更悔やむ。
「土方さん、沖田さん。信じられないとは思いますが聞いてください」
「ようやく話す気になったか」
「あんまり信用はできへんそうやけどな」
「局長……お入りください」
土方がそう扉の向こうに話しかけると、貫禄のある同じ浅葱色の羽織を羽織った男が入ってきた。
「俺は近藤勇だ。
__俺はお前さんを信じる。だから知ってること全部聞かせちゃくれねえか?」
“近藤勇”と名乗るその男は汚れることも気にせずに名前の前に座り込んだ。
近藤勇と言えば先ほど土方が呼んでいた通り、確か新選組の局長にあたる存在だ。
「近藤さん、ですね。わかりました。
これが全て私の勝手な夢ではないことを仮定しての話になりますが__……」
それから名前は自分のあらかたの経緯を話した。
三人は思ったよりもこの突飛な話に真剣に耳を傾けてくれている。
どうやら元の世界のままの自分の服装が、この信じ難い状況を少しだけ裏付けてくれているようだった。
「そうだ、吾朗さんと義孝さんがいるなら他の人もこの世界にいるかもしれない。
紙とペン……じゃなくて、紙と筆はありませんか?」
「何をするつもりだ?」
「先ほども言った通り、私の時代に土方さんと沖田さんに凄く似ている人がいるように、他にもそういう人がいるんじゃないかって思ったんです。もしかしたら元の時代に戻るきっかけになるかもしれないし、その人たちを探したくて……」
「絵でも描くちゅうわけか。嬢ちゃんに描けるんかいな」
「こう見えても私、幼い頃は美術の先生が夢だったんですよ」
幼い頃から絵を描くことが好きだったし、学校で唯一、自分に対して偏見を持たず接してくれたのも美術の先生だった。
__偏見というのは、自分が極道の娘ということである。
東城会直系苗字組の組長の娘として生まれてしまった自分は、いくら押し隠そうとも常に周りからの好奇の眼差しにさらされてきた。
同い年の大吾がいたからこそまだ独りきりになることはなかったものの、やはりどこか異質な存在として扱われていたことは確かだ。
しかし、その美術教師は違った。
初めて自分を一人の人間だと認識してくれた“外”の人間だった。
そんなことから、安直な経緯ではあるものの確固たる意志として美術教師に憧れを抱いていた。
しかし極道の娘だというのに、“教師”だなんて真っ当な夢を持つのは馬鹿らしいと周りからは否定されてきたのも事実だった。
そんな経緯から教師という夢は隠すようになってしまったけれど、大学は美大に進学するくらいには美術に対しては向き合ってきたつもりだ。
「逃げられるとは思うなよ」
絵を描くために縄を解かれる。
縄を解いてくれた土方の顔が至近距離に迫り、思わずドキリとする。
こんなに近くで見ても、やはり土方は峯とまったく同じだった。
ここが本当に江戸時代だとしたら、峯の先祖か前世は土方なのだろうか。
「逃げませんよ、貴方がここにいるなら」
土方を名乗るこの人が峯ではなくとも、自分は到底この人から離れられる気はしなかった。
「私、未来から来たみたいなんです!」
「歳ちゃん、ほんとにこの嬢ちゃん怪我なかったんか?」
「発見したのはお前だろう総司。見事なまでに無傷だったことは知っているはずだ」
「としちゃんって……もしかして土方歳三ですか……?」
さほど歴史に詳しいわけではないが、流石に新選組の名前くらいは知っている。
「そうだが。だから峯義孝なんて男は知らんと改めて言っておく」
「え、えぇ……」
あの真島吾朗が沖田総司で、峯義孝が土方歳三。
歴史の教科書で見た顔は確かに二人に似ていたような、全然違ったような……。
おぼろげな記憶の中で、きちんと勉強しておかなかったことを今更悔やむ。
「土方さん、沖田さん。信じられないとは思いますが聞いてください」
「ようやく話す気になったか」
「あんまり信用はできへんそうやけどな」
「局長……お入りください」
土方がそう扉の向こうに話しかけると、貫禄のある同じ浅葱色の羽織を羽織った男が入ってきた。
「俺は近藤勇だ。
__俺はお前さんを信じる。だから知ってること全部聞かせちゃくれねえか?」
“近藤勇”と名乗るその男は汚れることも気にせずに名前の前に座り込んだ。
近藤勇と言えば先ほど土方が呼んでいた通り、確か新選組の局長にあたる存在だ。
「近藤さん、ですね。わかりました。
これが全て私の勝手な夢ではないことを仮定しての話になりますが__……」
それから名前は自分のあらかたの経緯を話した。
三人は思ったよりもこの突飛な話に真剣に耳を傾けてくれている。
どうやら元の世界のままの自分の服装が、この信じ難い状況を少しだけ裏付けてくれているようだった。
「そうだ、吾朗さんと義孝さんがいるなら他の人もこの世界にいるかもしれない。
紙とペン……じゃなくて、紙と筆はありませんか?」
「何をするつもりだ?」
「先ほども言った通り、私の時代に土方さんと沖田さんに凄く似ている人がいるように、他にもそういう人がいるんじゃないかって思ったんです。もしかしたら元の時代に戻るきっかけになるかもしれないし、その人たちを探したくて……」
「絵でも描くちゅうわけか。嬢ちゃんに描けるんかいな」
「こう見えても私、幼い頃は美術の先生が夢だったんですよ」
幼い頃から絵を描くことが好きだったし、学校で唯一、自分に対して偏見を持たず接してくれたのも美術の先生だった。
__偏見というのは、自分が極道の娘ということである。
東城会直系苗字組の組長の娘として生まれてしまった自分は、いくら押し隠そうとも常に周りからの好奇の眼差しにさらされてきた。
同い年の大吾がいたからこそまだ独りきりになることはなかったものの、やはりどこか異質な存在として扱われていたことは確かだ。
しかし、その美術教師は違った。
初めて自分を一人の人間だと認識してくれた“外”の人間だった。
そんなことから、安直な経緯ではあるものの確固たる意志として美術教師に憧れを抱いていた。
しかし極道の娘だというのに、“教師”だなんて真っ当な夢を持つのは馬鹿らしいと周りからは否定されてきたのも事実だった。
そんな経緯から教師という夢は隠すようになってしまったけれど、大学は美大に進学するくらいには美術に対しては向き合ってきたつもりだ。
「逃げられるとは思うなよ」
絵を描くために縄を解かれる。
縄を解いてくれた土方の顔が至近距離に迫り、思わずドキリとする。
こんなに近くで見ても、やはり土方は峯とまったく同じだった。
ここが本当に江戸時代だとしたら、峯の先祖か前世は土方なのだろうか。
「逃げませんよ、貴方がここにいるなら」
土方を名乗るこの人が峯ではなくとも、自分は到底この人から離れられる気はしなかった。