4話
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お登勢達がいなくなってから銀時は勝手に飯を食べていた。
神楽に殆ど食べられていたのだが、とりあえず残っている分をかっ食らう。
「たく、神楽のやつ殆ど食べちまいやがって…っ」
「一応止めたんですけどね…。まぁ神楽ちゃんですから」
ブツブツ文句言いながら食べる銀時の隣で苦笑している新八。
あれからそれなりに時間が経っているのだが、愛実達はなかなか戻ってこない。
微かに神楽や愛実のキャッキャ言ってる声が聞こえる。
おそらくお登勢が出した着物をみて女特有の着せ替えごっこをしているのだろう。
(ったく、いつまで待たせんだか…)
「それにしてもお登勢さん達なかなか戻って来ませんね。」
「どうせアレやコレやと着物を見てんだろーよ。…女ってのはなんで好きかね、そういうのォ…」
「まぁ、姉上も確かに買い物は長いですね。」
ご飯を食べ終えた銀時は頬杖をつき、鼻をほじりながら新八と話をしていた。
2人で話をしていると、消えていった奥からお登勢が顔を出した。
「終わったよ。」
「愛実ごっさ綺麗アル!早く出てくるネ!」
「あ、あ!ちょっと神楽ちゃんっ…!」
神楽の手に引かれながら出てきた愛実は先程の雰囲気とはガラッと変わっていた。
さっきまではピンク色の少し可愛い目な着物を着ていたのだが、お登勢から貰った着物は全体が水色で下に向かって濃い藤色にグラデーションしていて小さな白い花がちりばめられている。
顔を見ると化粧気のなかった顔にもお登勢がやったのか頬と唇に少し濃い目の紅がしてあった。
着物と化粧のお陰で先ほどまでは垢抜けない可愛い系だったのがすっかり色気のある綺麗な女性へと変貌していた。
あまりの変貌ぶりに新八は顔を赤らめながらワタワタする。
「すごい印象が変わりましたね!えっと、すっごく綺麗です、愛実さん!」
「えっ!?そ、そうかなぁ?ありがとう新八君。」
「新八顔真っ赤ネ!愛実見て興奮したアルカ?」
「そ、そんなわけ!ただ本当に綺麗だなと思って…っ!」
「あの、ありがとうございます!こんなに綺麗なお着物頂いちゃって……この歳で恥ずかしながら化粧もあんまりわかんなくてしてもらっちゃいましたしっ…!」
「いいんだよ、別に。私が着るにも少し若いしね。さっき見せた着物も何着か包んでやるから持ってきな。後、20歳過ぎた女が少しは化粧くらい覚えないとダメだよ。」
神楽と新八が言い合う横で愛実はお登勢にお礼を言った。
着物を見せてくれている間も田舎から出てきて間もない自分にかぶき町の事や万事屋の事、大人の女なのだからと化粧まで簡単に教えてくれた。
自分を気遣ってくれるお登勢に始めは少し怖い印象を持っていたが、今では優しい第二のお母さんのようだと思っていた。
と、ここで先程から何も言葉を発しない銀時に呆れたようにタバコをふかしながらお登勢が声をかけた。
「オイ、銀時!少しは褒めるとかないのかい?全くこの男は…。」
「……まぁ、いいんじゃねーの?オレは別に興味ないね。」
「嘘アル、銀ちゃん顔が少し赤いネ!本当は愛実に見惚れてたんダロ?素直に認めるヨロシ!」
「なァに言っちゃってんの、神楽ちゃん?オレのどこが赤いって…?ああ、ほら!もう挨拶も終わったろ?上ェ戻るぞ。今後の事もお前らに説明しねーとだし…」
「いや、確かに銀さん顔赤いですよ。」
「あぁ?!童貞に言われたくねーよ!」
「いや、それ関係ないでしょ今!!」
カウンターでずっと頬杖つい見ていた銀時はおもむろに立ち上がりお登勢達に背を向けると入り口に向かって歩いて行く。
その銀時の背を追って神楽が顔を覗き込むと微かに頬が色付いているのが見てとれた。
それを指摘されとぼけて話をそらす銀時に新八も追い討ちをかける。
そうして逆ギレのようなことを新八にした後銀時は後ろを振り返って愛実に目を向けた。
「ほら、行くぞ愛実。」
「あ、う、うん!…お登勢さん、本当にありがとうございました!私これから頑張ります!!」
「あぁ、アイツらと一緒は大変だろうけど、まぁ…飽きはしないだろうね。アイツらをよろしく頼むよ。たまにはうちにも顔出しな。」
「はい!また来ます!」
愛実はニッコリと笑ってお登勢に挨拶をすると入り口で待っている銀時達の方に向かっていった。
入り口まで行くとまた振り返りお登勢に頭を下げる愛実。
それをフッと笑うと「早く行きな。」と扉を閉めるように促した。
閉まった扉を見たお登勢は「いい子じゃないか」と1人呟いていた。
「あれ?新八君と神楽ちゃんは?」
「先行かしたよ。…それよりババアに気に入られて良かったな。」
「え?私気に入られたのかな?……それなら嬉しいけど!」
2人は銀時を前に万事屋へと続く階段を登って行く。
普通に話かけてくる銀時に愛実は先程から少し気になっていた事を聞いてみる事にした。
「あ、あの…顔が赤くなってたって、本当…?」
「……。」
「さ、さっきは散々人の顔が赤いとかってバカにしてたくせに…っ!どーなの?銀さん!」
無言で階段を登る銀時に先程のやり返しが出来るのではないかと銀時を追いかけながら問い詰める愛実。
すると玄関の前まで無言で進んでいた銀時が急に止まった事で愛実も立ち止まる。
「そんな気になる?」
「まぁ、さっきは散々からかわれたし…。」
「……じゃあ、言ってやるよ。」
「え?」
ボソッと言いながら振り返った銀時の顔を見た愛実は後悔したと同時に体を強張らせた。
(さっきもこんな顔してた!!)
警戒した通り銀時は愛実の後ろの手すりに手をついた。
そんな事をすれば当然2人の距離は近くなるわけで、そのまま銀時は愛実の耳元まで顔を近づける。
「こっちの方がすげェ色っぺーよ。銀さんが思わず見惚れるくらいにはな…。」
耳元で言われた言葉に愛実の顔は真っ赤になった。それはそれは耳の方まで赤くなるほどに。
そう言った銀時の表情は見えなかったが、そんな事を気にする余裕は愛実にはない。
そして案の定真っ赤になる愛実を見て満足した銀時はまたからかうように笑う。
「ぶはっ!やっぱりめっちゃ赤くなんのな!オレに仕返ししようなんて100万年早いよォ愛実ちゃん。」
「う、う〜っ!もう離れてよ!!またからかって!」
「はいはい、わァ〜たって!離れますよォ〜!」
真っ赤になりながら悔しがる愛実の手に押され、抵抗せずにスッと離れてやる銀時。
いまだに「絶対にやり返すんだからぁ!」と怒っている愛実を尻目に銀時は玄関の扉に手をかけた。
そして怒る愛実をなだめながら玄関に入れる。
「もう!しばらく銀さんには近付きません!!」
愛実はそういうと銀時を置いて草履を脱ぎ、万事屋に上がって行った。
そのようすを見ていた銀時は愛実が見えなくなってからスッと目元を手で覆うと「はぁ〜」と息を吐く。
(あぁ、やべーわ。普通に色っぽかった……田舎娘だと思って油断したァ〜)
顔を赤くしながらそんな事を思っていた。
「もうっ、もう!人をからかうにもほどがある!」
「ど、どうしたんですか?愛実さん」
「愛実顔真っ赤ネ!…まさか!銀ちゃんに何かされたアルカ?!」
「へ?あっ、いや…その、なんでもないよ!!うん!なんでもないよ!」
「でも本当に真っ赤ですよ?顔…それにからかう、とかなんとか…」
「から、からかうじゃなくてカラカラ!!ちょっと暑くて喉がカラカラだなぁって!…ホラ!お登勢さん見てちょっと緊張してたのもあって!」
「確かにバアさんの顔は怖いと思うケド…」
「え?!あ、いや、怖いっていうか、迫力があったなって!」
居間に入りながら悪態をついていれば新八達が気にするのも当然で顔が赤い事もあり何があったのかと心配された。
でも先程あったことを彼等に伝えるのはとても恥ずかしいし、そもそもなんて言っていいのかもわからない。
とりあえず必死の言い訳をし、なんとか納得してもらう事にした。
なんだか愛実の慌てた様子も気になるが本人が何でもないと言うし、お登勢の顔が迫力があるというのもまぁ納得できる。
とりあえず新八は「喉が渇いたならお茶入れてきますね。」と台所に消えて行った。
自分のついた嘘の為にお茶を入れに行かせたことを申し訳なく思いながらも、愛実は神楽と一緒にソファに座った。
その間に何事もなかったかのように銀時も居間に入ってきた。
「銀ちゃん何してたアルか?」
「あぁ?別にィ?ところで神楽、定春はどーした?」
「あー定春ならたまが散歩に連れて行ってくれたネ!」
「はぁ?何でまた…」
「今朝一緒に帰ってきたとき丁度たまがバアさんのお使いで出るところだったからたまにお願いしたアル!」
「なんでお前が行かねーんだよ!」
「私は腹が減って死にそうだったヨ!だから散歩に行きたがった定春はたまにお願いしたネ!」
「ったく、新八の家でもメシ食ってきたんだろーが…」
「姉御のダークマターがあってそれどころじゃなかったアル……」
「あぁ………」
なんだか知らない名前に話がついていけてない愛実は2人の会話をただ聞いている。
先程の事もあったので銀時に対してはあまり顔を見ないようにしていた。
そもそも顔を見たら思い出してまた赤面しそうなので見れないのである。
そんな事を考えながら聞いていると台所で話が聞こえていたのだろう、お茶を持ってきた新八が説明してくれた。
どうやら定春とはこの万事屋で飼われている犬でたまさんというのはお登勢のところで働いているカラクリという事だった。
「カラクリって、私見た事ない!」
「そっか、愛実さん1ヶ月前に田舎から出できたばかりですもんね」
「定春はすっごい大きな犬アル!!見たらびっくりするアルよ!」
「田舎にはカラクリなんてまだ出回ってないからね。定春くんってそんなに大きいの?早く見てみたいなぁ」
「いや、思ってるよりも本当にでかいぞ」
「また銀さんったらテキトーな事言って、大きい犬っていったって大体想像できますよ!」
「いや、本当に…"ピンポーン"
カラクリであるたまと大きいという定春にワクワクした様子で待つ愛実に銀時が忠告しておこうとすると、からかわれた事で信用ならないと思っている愛実はそれを一蹴する。
そしてさらに説明しようとする銀時を今度はチャイム音が遮った。
それを聞いた神楽は「定春がきっと帰ってきたアル!」と玄関に走って行った。
それを聞いた愛実も思わず立ち上がり、居間の出入り口を見ていた。
すると玄関の開く音と神楽と誰かの話し声がする。それと一緒にワンっと元気な犬の声も聞こえた。
しばらくすると神楽が戻ってきた。
「紹介するアル。定春ネ!」
「ワンっ!!」
「……………。」
「な?だから言ったろ?本当にデケーって。」
「すみません、なんか。定春は特別な犬なんです。」
目の前に現れた大きなそれはそれは大きな犬になんと言っていいのか言葉が出ない。
確かに大きいと言っていたが、ここまででかいとは。
これは犬なんだろうか……
そんな事を考え固まっている愛実を見て、呆れたように声をかける銀時となんとなく謝る新八。
神楽は先程からにこにこと自慢げに腕を組んでふんぞりかえっていた。
(……どうしよ、ちょっと怖いような。けど…可愛い。クリクリした目も可愛いし、なによりすっごくモフモフしたい。あの毛に埋もれたら気持ちいいんだろうなぁ……)
触りたくて思わず近づいていく愛実に慌てたように立つ上がり止める新八と銀時。
それにも気づかず、目の前のモフモフに向かっていく愛実。
「オイっ!あんま近づくと…っ!」
「愛実さん!ちょっと待って…っ!」
"モフっ
"モフモフ モフモフ
「柔らか〜い!気持ちいい、可愛い〜!」
「デショ!さすが愛実ネ!定春の可愛さわかってくれると思ってたアル!」
「うん!すっごい可愛い!いい子ね〜定春〜」
「アレ…?」
「なんで?」
特に何事も無く、むしろモフモフと首元あたりの毛を撫でられて気持ちよさそうに大人しくしている定春。
クゥ〜ンと鳴きながら愛実に頭を擦り付けている。
それをさらに可愛い可愛いと言いながら愛でる愛実。
そんな定春を見て男連中は疑問符を浮かべる。
何故だ?と
「オ、オイ定春?お前なんでそんな大人しいんだ?」
「そうですよ…っ」
「へ?銀さんも新八君も何言ってるの?定春くんすっごくいい子だよ?」
「そうヨ!定春はいい子アル!」
「いや、そんなわけ…"バクっ………
訝しながら定春に銀時が手を伸ばそうとすると、頭からかぶりつかれた。
これには流石に今まで可愛がっていた愛実も引いた。
「ふごっ…っ!ふごふごごごっ!」
「わあ!銀さん!」
「こら定春〜そんなモジャモジャ食べたらお腹壊すヨ〜?めっ!」
「え?え?!銀さん大丈夫なのコレ?!神楽ちゃん?!銀さん大丈夫なの?!!」
慌てる新八と愛実。
神楽は呑気に定春を叱る。
しばらくすると満足したのかガバっと口を開けて銀時を離すと居間のいつもの定位置に行き、寝始める定春。
頭から血を流す銀時をみて愛実は完全に引いていた。
そんな愛実を見て神楽はフォローする。
「大丈夫アル。定春も食べていいのと悪いのちゃんと理解してるネ!銀ちゃんのもじゃれてるだけアル!」
「え?でも血…」
「アレは銀ちゃんが柔なだけヨ!」
「いや噛まれたら誰だって血ィ出るわ!!」
「とりあえず銀さん、血を吹きましょう…」
神楽を信じたらいいのか銀さんの心配をしたらいいのかよくわからなくなりながらもとりあえず愛実には噛み付いてこないのだからよしとする事にした。
これで万事屋メンバー全員に会うことができた。
それとたまだが、お登勢の元に行って頼まれたものを渡さなければならないので万事屋にはあがっていかなかった。
その事を神楽から聞いて愛実はちょっと残念な気持ちになりながらも次会える時を楽しみにすることにした。
「そういえば愛実さん、日用品とか買い出し行かなくていいんですか?荷物は殆ど燃えてしまったんですよね?」
「あ、そうなの。どうせ家が無いなら荷物は必要最低限でいいと思ってあまり買い足してないの。」
「買い物アルか?!私も行くネ!…と言いたい所だけど、今日はそよちゃんとの約束があるヨ。愛実とはまた今度買い物行くアル!約束ネ!」
「実は僕も今日は親衛隊の集まりがあって……すみません。お買い物付き合えなくて…」
「いいよいいよ!自分の買い物くらい自分でできるし、ありがとう2人とも!神楽ちゃんとはまた今度一緒に買い物行こうね!」
3人がそんな会話をしているの中銀時は社長椅子に座ってジャンプを読み始めていた。
そんな銀時に気づいた新八が「どうせ暇なら銀さん、荷物持ちくらいしたらどーですか?」
その一言に慌てたのは銀時より愛実だった。
何故なら先程しばらく銀時には近づかないと誓ったばかりだったからだ。
「いいよっ新八君!買い物くらい1人で出来るから!ね!?」
「でもこの辺りは物騒ですし、銀さん連れて行った方が安心すると思いますよ?」
「物騒って……私ここまで来たけど何ともなかったよ?」
「確かに愛実、来た時よりもさらにべっぴんになったヨ!私も少し心配アル…」
「ええ?2人とも過保護過ぎるよ!私もう22歳なんだけど……っ」
こんなに若い2人に心配される自分って…と少し情けなくなる愛実。
でも2人の言う通り来た時よりも田舎者さが抜け、そこに色気まで追加された今の愛実はそれなりに心配にはなる見た目ではある。
先程から新八に言われた当の本人である銀時は愛実と2人のやり取りをしばらく黙って見ていた。
すると新八、神楽がジト〜……と視線を向けてくるので「はあ〜……」とため息をつきながらジャンプを閉じて立ち上がった。
ボリボリと頭をかきながら愛実に近づき、
「何買うんだ?」
「え、えっと…化粧品とか寝るときのお布団とか!後は…し、下着もみたいし。」
「布団はもう1組うちにあるからそれ使え。化粧品とか下着が見てーならとりあえず俺が知ってるとこでいいなら案内すっけど?」
「あ、えっとじゃあ……お願い、します。」
結局断れなかった。
思っていたより銀時が嫌だとか言わなかったことと何より新八と神楽からの視線に耐えれなかった。
2人とも何をそんなニコニコしているのか、おそらく安心からの表情なのだろうが…
とにかくそんな風に見てくる2人の手前断る事は出来なかった。
正直下着とか銀時に見られながら買うのはすごく恥ずかしい。
さすがに店舗の中までは見にこないだろうが…。
そんな愛実の葛藤があったとは知らぬ2人はそれぞれの用事のために家を出て行ってしまった。
「それじゃあ僕らはもう行きますね?ほんとにすみません!愛実さん。」
「ううん!2人ともありがとう!また後でね。」
「「はい(おうヨ!)」」
「銀ちゃん!ちゃんと愛実をエスコートするネ!」
「荷物ちゃんと持ってあげて下さいね!」
「わァーたっての!さっさと行けお前ェら!」
慌しく玄関を出て行く2人と神楽について行く定春。
万事屋に残された2人は玄関前に立ち尽くす。
先に動いたのは銀時だった。
荷物を取ってくると一言いい居間に戻って行った。
そんな銀時の後ろ姿を見ながらこれから2人で出かける事に緊張を隠せない愛実。
(2人で出かけることになるなんて思わなかったよー。てか、今からでも断れば…)
「ホラ、俺たちも行くぞ。」
「あ、うん。」
振り返ると腰に木刀をさした銀時が立っていた。
思わずうんと答えてしまったのでやっぱりいいと言い出せず草履を履いて銀時の後をついて行った。
下に着くとちょっと待ってろといい離れた銀時はスクーターを抱えて戻ってきた。
と、突然頭に衝撃が…
どさっ
「うわっ…」
「これ被って。」
「ヘルメット?…でも銀さんは?」
「俺は頭硬いからいいのォ。ホラ後ろ乗って。」
「私スクーターって乗るの初めてなんだけど…」
「あぁ、ここんとこ後ろ横向きに乗れる?」
「こ、こう?よっ…。」
「ん。そしたら腰でもどこでもとりあえずしっかり掴んどけ。」
「ど、どこ?腰?」
「ったく…」
スクーターにまたがり愛実に乗り方を教えてやる銀時。
とりあえず横向きに乗る事ができた愛実だが、掴んどけと言われてもどこを掴めばいいやら戸惑っていると銀時に手をとられた。
両手を銀時に掴まれ強制的にお腹の方まで回されたので体もピッタリ銀時の背中にくっ付く。
「え、わっや…っ。」
顔に熱がのぼっていくのがわかる。
だが、未だ手は掴まれたままで離れられない。
「柔らか…っ」
「え?!銀さんなんか言った?てか手、離して。こんなにくっつかなくても!」
「いや、落ちたくねーだろ?しっかり掴んどきなさい。行くぞ!」
「ま、待って…っ」
"ブロロロロ〜"
思っていたより早かったスクーターの勢いに思わず銀時に愛実はしがみ付いた。
(やっぱ柔らか…)
(思ったより怖いぃ…)
それぞれの感想を思いながら2人はお買い物に出発した。
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神楽に殆ど食べられていたのだが、とりあえず残っている分をかっ食らう。
「たく、神楽のやつ殆ど食べちまいやがって…っ」
「一応止めたんですけどね…。まぁ神楽ちゃんですから」
ブツブツ文句言いながら食べる銀時の隣で苦笑している新八。
あれからそれなりに時間が経っているのだが、愛実達はなかなか戻ってこない。
微かに神楽や愛実のキャッキャ言ってる声が聞こえる。
おそらくお登勢が出した着物をみて女特有の着せ替えごっこをしているのだろう。
(ったく、いつまで待たせんだか…)
「それにしてもお登勢さん達なかなか戻って来ませんね。」
「どうせアレやコレやと着物を見てんだろーよ。…女ってのはなんで好きかね、そういうのォ…」
「まぁ、姉上も確かに買い物は長いですね。」
ご飯を食べ終えた銀時は頬杖をつき、鼻をほじりながら新八と話をしていた。
2人で話をしていると、消えていった奥からお登勢が顔を出した。
「終わったよ。」
「愛実ごっさ綺麗アル!早く出てくるネ!」
「あ、あ!ちょっと神楽ちゃんっ…!」
神楽の手に引かれながら出てきた愛実は先程の雰囲気とはガラッと変わっていた。
さっきまではピンク色の少し可愛い目な着物を着ていたのだが、お登勢から貰った着物は全体が水色で下に向かって濃い藤色にグラデーションしていて小さな白い花がちりばめられている。
顔を見ると化粧気のなかった顔にもお登勢がやったのか頬と唇に少し濃い目の紅がしてあった。
着物と化粧のお陰で先ほどまでは垢抜けない可愛い系だったのがすっかり色気のある綺麗な女性へと変貌していた。
あまりの変貌ぶりに新八は顔を赤らめながらワタワタする。
「すごい印象が変わりましたね!えっと、すっごく綺麗です、愛実さん!」
「えっ!?そ、そうかなぁ?ありがとう新八君。」
「新八顔真っ赤ネ!愛実見て興奮したアルカ?」
「そ、そんなわけ!ただ本当に綺麗だなと思って…っ!」
「あの、ありがとうございます!こんなに綺麗なお着物頂いちゃって……この歳で恥ずかしながら化粧もあんまりわかんなくてしてもらっちゃいましたしっ…!」
「いいんだよ、別に。私が着るにも少し若いしね。さっき見せた着物も何着か包んでやるから持ってきな。後、20歳過ぎた女が少しは化粧くらい覚えないとダメだよ。」
神楽と新八が言い合う横で愛実はお登勢にお礼を言った。
着物を見せてくれている間も田舎から出てきて間もない自分にかぶき町の事や万事屋の事、大人の女なのだからと化粧まで簡単に教えてくれた。
自分を気遣ってくれるお登勢に始めは少し怖い印象を持っていたが、今では優しい第二のお母さんのようだと思っていた。
と、ここで先程から何も言葉を発しない銀時に呆れたようにタバコをふかしながらお登勢が声をかけた。
「オイ、銀時!少しは褒めるとかないのかい?全くこの男は…。」
「……まぁ、いいんじゃねーの?オレは別に興味ないね。」
「嘘アル、銀ちゃん顔が少し赤いネ!本当は愛実に見惚れてたんダロ?素直に認めるヨロシ!」
「なァに言っちゃってんの、神楽ちゃん?オレのどこが赤いって…?ああ、ほら!もう挨拶も終わったろ?上ェ戻るぞ。今後の事もお前らに説明しねーとだし…」
「いや、確かに銀さん顔赤いですよ。」
「あぁ?!童貞に言われたくねーよ!」
「いや、それ関係ないでしょ今!!」
カウンターでずっと頬杖つい見ていた銀時はおもむろに立ち上がりお登勢達に背を向けると入り口に向かって歩いて行く。
その銀時の背を追って神楽が顔を覗き込むと微かに頬が色付いているのが見てとれた。
それを指摘されとぼけて話をそらす銀時に新八も追い討ちをかける。
そうして逆ギレのようなことを新八にした後銀時は後ろを振り返って愛実に目を向けた。
「ほら、行くぞ愛実。」
「あ、う、うん!…お登勢さん、本当にありがとうございました!私これから頑張ります!!」
「あぁ、アイツらと一緒は大変だろうけど、まぁ…飽きはしないだろうね。アイツらをよろしく頼むよ。たまにはうちにも顔出しな。」
「はい!また来ます!」
愛実はニッコリと笑ってお登勢に挨拶をすると入り口で待っている銀時達の方に向かっていった。
入り口まで行くとまた振り返りお登勢に頭を下げる愛実。
それをフッと笑うと「早く行きな。」と扉を閉めるように促した。
閉まった扉を見たお登勢は「いい子じゃないか」と1人呟いていた。
「あれ?新八君と神楽ちゃんは?」
「先行かしたよ。…それよりババアに気に入られて良かったな。」
「え?私気に入られたのかな?……それなら嬉しいけど!」
2人は銀時を前に万事屋へと続く階段を登って行く。
普通に話かけてくる銀時に愛実は先程から少し気になっていた事を聞いてみる事にした。
「あ、あの…顔が赤くなってたって、本当…?」
「……。」
「さ、さっきは散々人の顔が赤いとかってバカにしてたくせに…っ!どーなの?銀さん!」
無言で階段を登る銀時に先程のやり返しが出来るのではないかと銀時を追いかけながら問い詰める愛実。
すると玄関の前まで無言で進んでいた銀時が急に止まった事で愛実も立ち止まる。
「そんな気になる?」
「まぁ、さっきは散々からかわれたし…。」
「……じゃあ、言ってやるよ。」
「え?」
ボソッと言いながら振り返った銀時の顔を見た愛実は後悔したと同時に体を強張らせた。
(さっきもこんな顔してた!!)
警戒した通り銀時は愛実の後ろの手すりに手をついた。
そんな事をすれば当然2人の距離は近くなるわけで、そのまま銀時は愛実の耳元まで顔を近づける。
「こっちの方がすげェ色っぺーよ。銀さんが思わず見惚れるくらいにはな…。」
耳元で言われた言葉に愛実の顔は真っ赤になった。それはそれは耳の方まで赤くなるほどに。
そう言った銀時の表情は見えなかったが、そんな事を気にする余裕は愛実にはない。
そして案の定真っ赤になる愛実を見て満足した銀時はまたからかうように笑う。
「ぶはっ!やっぱりめっちゃ赤くなんのな!オレに仕返ししようなんて100万年早いよォ愛実ちゃん。」
「う、う〜っ!もう離れてよ!!またからかって!」
「はいはい、わァ〜たって!離れますよォ〜!」
真っ赤になりながら悔しがる愛実の手に押され、抵抗せずにスッと離れてやる銀時。
いまだに「絶対にやり返すんだからぁ!」と怒っている愛実を尻目に銀時は玄関の扉に手をかけた。
そして怒る愛実をなだめながら玄関に入れる。
「もう!しばらく銀さんには近付きません!!」
愛実はそういうと銀時を置いて草履を脱ぎ、万事屋に上がって行った。
そのようすを見ていた銀時は愛実が見えなくなってからスッと目元を手で覆うと「はぁ〜」と息を吐く。
(あぁ、やべーわ。普通に色っぽかった……田舎娘だと思って油断したァ〜)
顔を赤くしながらそんな事を思っていた。
「もうっ、もう!人をからかうにもほどがある!」
「ど、どうしたんですか?愛実さん」
「愛実顔真っ赤ネ!…まさか!銀ちゃんに何かされたアルカ?!」
「へ?あっ、いや…その、なんでもないよ!!うん!なんでもないよ!」
「でも本当に真っ赤ですよ?顔…それにからかう、とかなんとか…」
「から、からかうじゃなくてカラカラ!!ちょっと暑くて喉がカラカラだなぁって!…ホラ!お登勢さん見てちょっと緊張してたのもあって!」
「確かにバアさんの顔は怖いと思うケド…」
「え?!あ、いや、怖いっていうか、迫力があったなって!」
居間に入りながら悪態をついていれば新八達が気にするのも当然で顔が赤い事もあり何があったのかと心配された。
でも先程あったことを彼等に伝えるのはとても恥ずかしいし、そもそもなんて言っていいのかもわからない。
とりあえず必死の言い訳をし、なんとか納得してもらう事にした。
なんだか愛実の慌てた様子も気になるが本人が何でもないと言うし、お登勢の顔が迫力があるというのもまぁ納得できる。
とりあえず新八は「喉が渇いたならお茶入れてきますね。」と台所に消えて行った。
自分のついた嘘の為にお茶を入れに行かせたことを申し訳なく思いながらも、愛実は神楽と一緒にソファに座った。
その間に何事もなかったかのように銀時も居間に入ってきた。
「銀ちゃん何してたアルか?」
「あぁ?別にィ?ところで神楽、定春はどーした?」
「あー定春ならたまが散歩に連れて行ってくれたネ!」
「はぁ?何でまた…」
「今朝一緒に帰ってきたとき丁度たまがバアさんのお使いで出るところだったからたまにお願いしたアル!」
「なんでお前が行かねーんだよ!」
「私は腹が減って死にそうだったヨ!だから散歩に行きたがった定春はたまにお願いしたネ!」
「ったく、新八の家でもメシ食ってきたんだろーが…」
「姉御のダークマターがあってそれどころじゃなかったアル……」
「あぁ………」
なんだか知らない名前に話がついていけてない愛実は2人の会話をただ聞いている。
先程の事もあったので銀時に対してはあまり顔を見ないようにしていた。
そもそも顔を見たら思い出してまた赤面しそうなので見れないのである。
そんな事を考えながら聞いていると台所で話が聞こえていたのだろう、お茶を持ってきた新八が説明してくれた。
どうやら定春とはこの万事屋で飼われている犬でたまさんというのはお登勢のところで働いているカラクリという事だった。
「カラクリって、私見た事ない!」
「そっか、愛実さん1ヶ月前に田舎から出できたばかりですもんね」
「定春はすっごい大きな犬アル!!見たらびっくりするアルよ!」
「田舎にはカラクリなんてまだ出回ってないからね。定春くんってそんなに大きいの?早く見てみたいなぁ」
「いや、思ってるよりも本当にでかいぞ」
「また銀さんったらテキトーな事言って、大きい犬っていったって大体想像できますよ!」
「いや、本当に…"ピンポーン"
カラクリであるたまと大きいという定春にワクワクした様子で待つ愛実に銀時が忠告しておこうとすると、からかわれた事で信用ならないと思っている愛実はそれを一蹴する。
そしてさらに説明しようとする銀時を今度はチャイム音が遮った。
それを聞いた神楽は「定春がきっと帰ってきたアル!」と玄関に走って行った。
それを聞いた愛実も思わず立ち上がり、居間の出入り口を見ていた。
すると玄関の開く音と神楽と誰かの話し声がする。それと一緒にワンっと元気な犬の声も聞こえた。
しばらくすると神楽が戻ってきた。
「紹介するアル。定春ネ!」
「ワンっ!!」
「……………。」
「な?だから言ったろ?本当にデケーって。」
「すみません、なんか。定春は特別な犬なんです。」
目の前に現れた大きなそれはそれは大きな犬になんと言っていいのか言葉が出ない。
確かに大きいと言っていたが、ここまででかいとは。
これは犬なんだろうか……
そんな事を考え固まっている愛実を見て、呆れたように声をかける銀時となんとなく謝る新八。
神楽は先程からにこにこと自慢げに腕を組んでふんぞりかえっていた。
(……どうしよ、ちょっと怖いような。けど…可愛い。クリクリした目も可愛いし、なによりすっごくモフモフしたい。あの毛に埋もれたら気持ちいいんだろうなぁ……)
触りたくて思わず近づいていく愛実に慌てたように立つ上がり止める新八と銀時。
それにも気づかず、目の前のモフモフに向かっていく愛実。
「オイっ!あんま近づくと…っ!」
「愛実さん!ちょっと待って…っ!」
"モフっ
"モフモフ モフモフ
「柔らか〜い!気持ちいい、可愛い〜!」
「デショ!さすが愛実ネ!定春の可愛さわかってくれると思ってたアル!」
「うん!すっごい可愛い!いい子ね〜定春〜」
「アレ…?」
「なんで?」
特に何事も無く、むしろモフモフと首元あたりの毛を撫でられて気持ちよさそうに大人しくしている定春。
クゥ〜ンと鳴きながら愛実に頭を擦り付けている。
それをさらに可愛い可愛いと言いながら愛でる愛実。
そんな定春を見て男連中は疑問符を浮かべる。
何故だ?と
「オ、オイ定春?お前なんでそんな大人しいんだ?」
「そうですよ…っ」
「へ?銀さんも新八君も何言ってるの?定春くんすっごくいい子だよ?」
「そうヨ!定春はいい子アル!」
「いや、そんなわけ…"バクっ………
訝しながら定春に銀時が手を伸ばそうとすると、頭からかぶりつかれた。
これには流石に今まで可愛がっていた愛実も引いた。
「ふごっ…っ!ふごふごごごっ!」
「わあ!銀さん!」
「こら定春〜そんなモジャモジャ食べたらお腹壊すヨ〜?めっ!」
「え?え?!銀さん大丈夫なのコレ?!神楽ちゃん?!銀さん大丈夫なの?!!」
慌てる新八と愛実。
神楽は呑気に定春を叱る。
しばらくすると満足したのかガバっと口を開けて銀時を離すと居間のいつもの定位置に行き、寝始める定春。
頭から血を流す銀時をみて愛実は完全に引いていた。
そんな愛実を見て神楽はフォローする。
「大丈夫アル。定春も食べていいのと悪いのちゃんと理解してるネ!銀ちゃんのもじゃれてるだけアル!」
「え?でも血…」
「アレは銀ちゃんが柔なだけヨ!」
「いや噛まれたら誰だって血ィ出るわ!!」
「とりあえず銀さん、血を吹きましょう…」
神楽を信じたらいいのか銀さんの心配をしたらいいのかよくわからなくなりながらもとりあえず愛実には噛み付いてこないのだからよしとする事にした。
これで万事屋メンバー全員に会うことができた。
それとたまだが、お登勢の元に行って頼まれたものを渡さなければならないので万事屋にはあがっていかなかった。
その事を神楽から聞いて愛実はちょっと残念な気持ちになりながらも次会える時を楽しみにすることにした。
「そういえば愛実さん、日用品とか買い出し行かなくていいんですか?荷物は殆ど燃えてしまったんですよね?」
「あ、そうなの。どうせ家が無いなら荷物は必要最低限でいいと思ってあまり買い足してないの。」
「買い物アルか?!私も行くネ!…と言いたい所だけど、今日はそよちゃんとの約束があるヨ。愛実とはまた今度買い物行くアル!約束ネ!」
「実は僕も今日は親衛隊の集まりがあって……すみません。お買い物付き合えなくて…」
「いいよいいよ!自分の買い物くらい自分でできるし、ありがとう2人とも!神楽ちゃんとはまた今度一緒に買い物行こうね!」
3人がそんな会話をしているの中銀時は社長椅子に座ってジャンプを読み始めていた。
そんな銀時に気づいた新八が「どうせ暇なら銀さん、荷物持ちくらいしたらどーですか?」
その一言に慌てたのは銀時より愛実だった。
何故なら先程しばらく銀時には近づかないと誓ったばかりだったからだ。
「いいよっ新八君!買い物くらい1人で出来るから!ね!?」
「でもこの辺りは物騒ですし、銀さん連れて行った方が安心すると思いますよ?」
「物騒って……私ここまで来たけど何ともなかったよ?」
「確かに愛実、来た時よりもさらにべっぴんになったヨ!私も少し心配アル…」
「ええ?2人とも過保護過ぎるよ!私もう22歳なんだけど……っ」
こんなに若い2人に心配される自分って…と少し情けなくなる愛実。
でも2人の言う通り来た時よりも田舎者さが抜け、そこに色気まで追加された今の愛実はそれなりに心配にはなる見た目ではある。
先程から新八に言われた当の本人である銀時は愛実と2人のやり取りをしばらく黙って見ていた。
すると新八、神楽がジト〜……と視線を向けてくるので「はあ〜……」とため息をつきながらジャンプを閉じて立ち上がった。
ボリボリと頭をかきながら愛実に近づき、
「何買うんだ?」
「え、えっと…化粧品とか寝るときのお布団とか!後は…し、下着もみたいし。」
「布団はもう1組うちにあるからそれ使え。化粧品とか下着が見てーならとりあえず俺が知ってるとこでいいなら案内すっけど?」
「あ、えっとじゃあ……お願い、します。」
結局断れなかった。
思っていたより銀時が嫌だとか言わなかったことと何より新八と神楽からの視線に耐えれなかった。
2人とも何をそんなニコニコしているのか、おそらく安心からの表情なのだろうが…
とにかくそんな風に見てくる2人の手前断る事は出来なかった。
正直下着とか銀時に見られながら買うのはすごく恥ずかしい。
さすがに店舗の中までは見にこないだろうが…。
そんな愛実の葛藤があったとは知らぬ2人はそれぞれの用事のために家を出て行ってしまった。
「それじゃあ僕らはもう行きますね?ほんとにすみません!愛実さん。」
「ううん!2人ともありがとう!また後でね。」
「「はい(おうヨ!)」」
「銀ちゃん!ちゃんと愛実をエスコートするネ!」
「荷物ちゃんと持ってあげて下さいね!」
「わァーたっての!さっさと行けお前ェら!」
慌しく玄関を出て行く2人と神楽について行く定春。
万事屋に残された2人は玄関前に立ち尽くす。
先に動いたのは銀時だった。
荷物を取ってくると一言いい居間に戻って行った。
そんな銀時の後ろ姿を見ながらこれから2人で出かける事に緊張を隠せない愛実。
(2人で出かけることになるなんて思わなかったよー。てか、今からでも断れば…)
「ホラ、俺たちも行くぞ。」
「あ、うん。」
振り返ると腰に木刀をさした銀時が立っていた。
思わずうんと答えてしまったのでやっぱりいいと言い出せず草履を履いて銀時の後をついて行った。
下に着くとちょっと待ってろといい離れた銀時はスクーターを抱えて戻ってきた。
と、突然頭に衝撃が…
どさっ
「うわっ…」
「これ被って。」
「ヘルメット?…でも銀さんは?」
「俺は頭硬いからいいのォ。ホラ後ろ乗って。」
「私スクーターって乗るの初めてなんだけど…」
「あぁ、ここんとこ後ろ横向きに乗れる?」
「こ、こう?よっ…。」
「ん。そしたら腰でもどこでもとりあえずしっかり掴んどけ。」
「ど、どこ?腰?」
「ったく…」
スクーターにまたがり愛実に乗り方を教えてやる銀時。
とりあえず横向きに乗る事ができた愛実だが、掴んどけと言われてもどこを掴めばいいやら戸惑っていると銀時に手をとられた。
両手を銀時に掴まれ強制的にお腹の方まで回されたので体もピッタリ銀時の背中にくっ付く。
「え、わっや…っ。」
顔に熱がのぼっていくのがわかる。
だが、未だ手は掴まれたままで離れられない。
「柔らか…っ」
「え?!銀さんなんか言った?てか手、離して。こんなにくっつかなくても!」
「いや、落ちたくねーだろ?しっかり掴んどきなさい。行くぞ!」
「ま、待って…っ」
"ブロロロロ〜"
思っていたより早かったスクーターの勢いに思わず銀時に愛実はしがみ付いた。
(やっぱ柔らか…)
(思ったより怖いぃ…)
それぞれの感想を思いながら2人はお買い物に出発した。
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