3話
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
とりあえず全員が再びソファに座り、仕切り直しと新八が話を進めていく。
「とりあえず住む場所は決まりましたし、後は仕事だけですね!」
「あの!…報酬はいくら払ったらいいですか?というか住まわしてもらうんですし、家賃とか入れた方がいいですよね?とりあえず今持ち合わせがこんなもんなんですけど……」
新八は愛実の方を向きながら依頼の確認をした。
すると愛実は今回の依頼の報酬の話をしながら今持ってるいるお金を財布から出していた。
とりあえず今は3万円程持っていたのでそれを向かいに座っていた2人に差し出した。
「え?でも……」
新八が戸惑っている中、お札がひらりと誰かの手に持って行かれた。
その行方を目で追えば銀時の手にお札が握られていて、愛実も銀時が受け取った事を特に気にせず目で追っていた。
「ちょっと銀さん…っ?」
「あーー!銀ちゃんずるいネ!」
「いいから…これはオレが預かっておくの!」
銀時の行動に新八と神楽は非難したが、銀時に押し切られる形でとりあえず黙らされ、それからすぐに銀時はそのまま神楽と新八を促して下に行くように言った。
「オイ、お前ら。とりあえずお登勢のババァのとこ行って来い!オレらも後から行くから。愛実の事一応説明しとかねぇーとだし、ついでに朝飯たかりに行くぞ。」
「キャッホー!お腹空いたネ!ババァに米いっぱい炊いてもらうアル!」
「ちょっと神楽ちゃん?!僕の家でもいっぱい食べてたじゃないか!てか、待ってよ!!もう、じゃあ銀さん達は?」
「今後の事少し話してから行くから」
「…わかりました!早く来ないと神楽ちゃんに全部食べられちゃいますよ!愛実さん!じゃあまた後で!」
「あ、うん!」
愛実に懐いている様子を見せていた神楽も飯と言われてすぐさま玄関に走って行った。
新八も銀時と愛実に声をかけてから神楽の後を追った。
自分が口を出す隙もなく話が進み、とりあえず報酬が3万円でいいのかも分からず愛実は黙っている。
そして向かいに座っていた銀時が何を考えているのかわからない顔で受け取った3万円を愛実の目の前に差し出した。
「え?あ、あの……」
「いや、まぁなんつーの?お前さん、アパート燃えた時に色々一緒に燃えちまったんだろ?このお金はこれからの生活に必要な物を買うお金として持っておきなさい」
「え、でも…坂田さん達に依頼をした訳ですから報酬を払うのは当たり前です!」
「え?坂田さん?神楽と新八は名前呼びなのに?なんでオレだけ他人行儀なの?」
「へ?あの…っ?」
なんとも読めない顔で愛実の手を取り先程の3万円を握らせわざとらしい丁寧口調で銀時は言った。
そして愛実は握らされた3万円をまた銀時に差し出しながら反論するも全く関係のない事をつっこまれてだいぶ戸惑った。
「いや、その…坂田さんは歳上の方なのかなと思っていたのでつい…。」
「あー、オレそういうの全っ然気にしないから!むしろ坂田さん呼びの方がむず痒くなる!てか、何歳なの?」
「あ、私ですか?22です。」
「ふぅん、じゃあオレよりは歳下か…。まぁとりあえず坂田さん呼びは無しな!銀さんとか銀ちゃんとかで、坂田さんは無し!」
余程坂田さん呼びは嫌だったのか少し必死になりながら言ってくる銀時に愛実は戸惑った。
新八や神楽は明らかに歳下なので気兼ねなく呼べるが銀時は自分と同じか少し上だろうと少しかしこまっていたのだ。
それと田舎に住んでいた頃は周りも幼少期から一緒に過ごしていた者達ばかりでみんな家族といった感じだったからか異性をあまり意識したことが無かった。
呼び方も子供の頃からそう呼んでいるので照れ臭く思う事もない。
初対面のしかも歳上の男の人である銀時を名前呼びする事は愛実にはハードルが高かった。
嫌という事ではなく少し恥ずかしかったのだ。
戸惑いながらも本人がその呼び方が嫌だと言うのだから仕方ない。
愛実は少し顔に熱が集まるのを感じながらも上目で銀時を見ながら
「ぎ、銀さん…でいいでしょうか?」
と言った。
「っ……………」
その時銀時は思った。
(え?何この子?そんなに名前呼びが恥ずかしかったの?なんでこんなに頬赤らめてんの?
え、なんかオレまで恥ずかしいんですけどぉぉお!)
「あ、あの…銀、さん?」
「…ん?あ、うん。それでいいわ、うん。なんか、うん……」
少し微妙な空気になりつつもとりあえず話を再開させた2人。
とりあえず3万円は愛実に戻ってきた。
当面仕事が見つかるまでは万事屋の手伝いや家事をしてくれたらいいという事になった。
お金はとりあえずお給料をもらえるようになってからでいいという事にした。
住むところもお金がある程度貯まり、生活が落ち着いたら新たに探すという事になった。
銀時はあまり気にしていなかったが、流石にいつまでもお世話になるのは図々しすぎると愛実が言うのでそういう事になったのだ。
「まぁ、なんだ。とりあえずここの大家のとこ連れて行くから。」
「えっと、先程言っていたお登勢さん?という方ですか?」
「まぁ、そうなんだけどよ…」
「…な、なんですか?」
なんだか不満げな顔で愛実を見てくる銀時を訝しげに思い聞いてみると、今度は敬語が気に食わないという。
普通初対面の相手、特に歳上の人と話すなら敬語が当然だと思う。
しかしいきなり敬語をなくせと言われても、先程も言ったように異性にあまり慣れていない愛実には難題だ。
「いきなりはちょっと…」
「神楽と新八には平気だったろ?」
「それは、2人とも歳下で話安かったので…」
「オレは話にくい、と?」
「え?…んと、そういう事でも……」
なんと言ったらいいのか、愛実は今まで感じた事のない感情を銀時に抱いていた。
周りにはいないタイプだというのもあると思うが、あの赤い瞳に見られるとなんだかくすぐったいような落ち着かない気持ちになる。
でもその事を上手く言葉にも出来ないしと、悩んでいると銀時が顔を少しニヤつかせながら
「愛実ちゃんって男苦手?」
「え?いえ、そういう訳じゃないんですけど…」
「ふぅ〜ん…」
「へ?!あのっ…っ!」
なんとなくいたずらな表情の銀時はさり気無く愛実の隣に座り、顔を覗き込みながら近づいた。
この時の銀時の表情はいつものダルげな様子を感じさせないほど真剣な顔だった。
もちろんそんな事をされた愛実は急に近づいてきた銀時に驚き距離をとろうとしたが、そうはさせないとばかりに更に顔を寄せる銀時。
2人掛けのソファの端っこに身を寄せている2人はハタから見ればくっ付いてさえいるように見える。
顔をこれでもかと真っ赤にさせ、口を鯉のようにパクパクとしている愛実をしばらく見つめる銀時だったが
「っ……」
「………ぷっ、ククククっ!!スッゲェ顔真っ赤だぞ愛実ちゃん!いや、悪かったよ悪かった!いやぁ、さっき名前で呼ぶ時も結構顔が赤かったからすげぇウブなんだろうなと思ってたけどそんな赤くなるとは…っブっククク!!!」
「な、な、なっ、失礼でしょ!!普通そんなに顔近づけられたら誰だって赤くなるしっ!!そんなに笑う事無いじゃない!!銀さんサイテーっ!!」
真剣な顔を思いっきりニヤけ面に変え、身体を丸めて笑いが止まらない様子の銀時をみて未だにほんのり赤い顔をしながら愛実は怒っていた
当然だろう。
脈絡もなしに近づかれ、しかも赤くなった様子を見て笑われているんだから。
バカにされていると思った愛実は今度は怒りに顔を染め、銀時を怒鳴りつけた。
その様子を笑いの余韻を残しながら悪かったと愛実をなだめる銀時。
「いや、でも銀さんのおかげで敬語も外れただろ?」
「そんなっ!……て、え?敬語外すためにあんな事を?」
「いや、単純にオレのドS心を刺激されたからってのもある」
「な!ドS?ドSってなんですか?!てかやっぱりサイテーっ、からかったんじゃない!!」
先程の事が敬語をやめさせるための事だったと思い少しおさまった怒りもその後の銀時の言葉で余計に増した。
そもそも初対面の人間にする事ではないし、敬語をやめさせるためでも普通ならばあんな事はしない。
そう思った愛実はなんとなく銀時に感じていた気持ちはなりを潜め、今後この人に敬意をはらう必要はないと思った。
普通に失礼な人だ。
これからはもう絶対に敬語を使わないと決めるのと同時に、このままここに住んで大丈夫なのだろうかと少し不安に思う愛実だった。
その後はとにかく下で神楽と新八、そして自分の事を聞いて待っているであろうお登勢という方の元に案内してもらった。
スナックお登勢に先についていた新八はお登勢に文句を言われながらも茶碗に白米を大盛りにしかっ込んでる神楽を横目に愛実についての説明をしていた。
「その娘も運が悪いねぇ。それで、居候が増えるってかい?また賑やかになりそうだねぇ」
「えぇ、まぁ…アハハ。」
「愛実はいい女って感じネ!私には劣るけどナ。スッゲェ胸がデカくて優しそうで、ちょっとあか抜けない感じだけど、そこの役に立たないネコ耳とは全然違うアル!!」
「ダレガヤクニタタナイネコミミダ!!オマエニイワレタクネーヨ!!」
「やめないかい、お前たち!……ったく、ふぅ〜」
ドスの効いた声で一喝ケンカを始めそうな神楽とキャサリンを止めたお登勢は新八に向き直って、少し考えたように言った。
「それで?仕事探してやるってアンタ達ツテでもあるのかい?」
「いえ……まぁでも住むところさえ決まれば仕事も探しやすいと思いますし!」
「まぁねぇ」
そんな事を話しながら本人が来るのを待っていた。
少ししてまた神楽とキャサリンのやり合いが始まり、それを怒鳴るお登勢と止めようとし新八が巻き込まれて殴られたりしながらしていると
ガラガラガラァ〜っとお登勢スナックの扉が開いた。
「おう、ババァ邪魔するぜ」
「お、お邪魔します!」
銀時は慣れたように新八の隣のカウンターに座る。
愛実はどこに座ればいいのかキョロキョロとしているとお登勢が銀時の1つ空けた隣のテーブルにお茶を出した。
「話は聞いたよ。アンタが愛実かい?」
「あ、はい!藤咲愛実と申します!この度万事屋さんでお世話になります!よろしくお願いします!」
お登勢の出してくれたお茶の前に立ち、お登勢の問い掛けにガバァっと音がしそうな勢いで頭を下げながら愛実は自己紹介した。
「あぁ、ここでスナックをしてるお登勢だよ。とりあえず頭上げて座んな。」
「あ、ありがとうございます」
「それとこっちが従業員のキャサリンだよ。」
「コンニチハ。テメースコシチチガデカイカラッテチョーシニノルナヨ!」
「やめなキャサリン!ったく。」
「へ?チチ?……えっとよろしくです。」
なんだか緊張した面持ちでお登勢に促されるままイスに座ると何故かキャサリンにケンカを売られ戸惑う愛実だった。
とりあえずキャサリンから視線を銀時に向けたお登勢はタバコを吸いながらギッと銀時を睨んだ。
「まァたアンタ酔って帰ってきた上に、こんな若い娘にゲロの世話までさせたんだって?!しかも住まわせるって家賃もロクに払えてねー奴がちゃんと責任とれんだろーねぇ?!」
「うっせーな、てめーはオレのかーちゃんですかァ?!家賃はホラ!この間テレビ直してやったろーが!」
「ありゃ先々月の話だろうが!!それにあの後すぐにまたぶっ壊れちまって買い替えたわァ!大体ほとんど滞納してる奴が居候ばっか増やしやがって!」
どうやら万事屋はなかなか厳しい状況のようで家賃は滞納してるらしい。
やっぱり自分がこのまま住むのは大変なんじゃ無いかと愛実は思い始めた。
ボソッと「やっぱり迷惑なんじゃ…」と愛実が呟いた声が聞こえた新八は慌ててフォローに入った。
「あ、あの!たまたまですから!たまーにちょっと、ほとんど仕事が無くて…その、払えてないだけで!えぇっと…っ、」
「ソレゼンゼンフォローニナッテネージャネーカメガネ」
お金うんぬん仕事うんぬんに関しては本当の事なのだからフォローもしようがない
案の定フォローになっていない事をキャサリンにツッコまれ更に焦る新八。
そして新八の話を聞いて更に不安になる愛実。
そんな様子にやっと気付いた銀時はお登勢との言い争いをやめ、愛実の頭にポンっと手を置いて安心させる様に話した。
「心配しねーでも誰も迷惑になんて思ってねーよ」
「そ、そーですよ!僕ら全っ然迷惑になんて思ってませんから!」
銀時の乱暴に撫でる手と新八の言葉に少し安心するも根本的な解決はしていないのだからとどうも愛実の表情はまだ晴れない。
それを見ていたお登勢は少なからず自分が家賃の話をした事も原因であるだろうしと声をかけた。
「別にアンタが気負うことはないよ。コイツらが家賃を払わないのなんて今に始まった事じゃないしね。それでも気になるんならたまにうちの店の手伝いにでもきておくれよ。」
「お手伝い…ですか?」
「ここはスナックだよ?酒と健全なエロを嗜む店親父の客ばっかりだからね。アンタみたいな子が来てくれるならこちらは万々歳さ。」
「オイオイ!ババァ!コイツ田舎から出て来たばっかのおのぼりさんなんだよォ?それを親父どもの相手をしろって…」
「フン、だったらアンタが仕事してお金稼いで家賃払えばいいだろうが。こっちも商売なんだよ!」
さっき万事屋で見せていた反応といい、明らかに男慣れしていない愛実がスナックで働くのはなんとなく面白くない銀時だったがぐうの音も出ないとはこの事。
1つも言い返せない銀時を尻目にどうする?というお登勢に愛実は答えていた。
「不慣れだと思いますが、やってみます!」
「そうかい。なら、今度お願いするよ。」
「はい!」
「そうだ、それと。アンタもと住んでたアパートが燃えちまったんだって?着るものあんのかい?」
「ええ、まぁ最低限は買って揃えましたから。」
「それでも少ないだろ?私が昔着てたので良ければいくつか持っていくといいよ。」
「え?!いいんですか??…でもっ!」
「着物だってずっと箪笥に仕舞われてるより誰かに着てもらった方がいいだろう?こっちにおいで。」
「愛実の着物アルか?!私も一緒にみてあげるネ!」
トントン拍子に話が進み呆気にとられている銀時の存在は無視され、お登勢と愛実とみんなが話している間ずっとご飯を食べていた神楽も一緒になってスナックの奥へと消えていった。
「……なぁ、新八。オレの立場は?」
「とりあえず仕事探しましょう、銀さん。」
「ホントオマエラシゴトシロヨナ」
キャサリンに蔑んだ目で見られる銀時と新八だった。
.
「とりあえず住む場所は決まりましたし、後は仕事だけですね!」
「あの!…報酬はいくら払ったらいいですか?というか住まわしてもらうんですし、家賃とか入れた方がいいですよね?とりあえず今持ち合わせがこんなもんなんですけど……」
新八は愛実の方を向きながら依頼の確認をした。
すると愛実は今回の依頼の報酬の話をしながら今持ってるいるお金を財布から出していた。
とりあえず今は3万円程持っていたのでそれを向かいに座っていた2人に差し出した。
「え?でも……」
新八が戸惑っている中、お札がひらりと誰かの手に持って行かれた。
その行方を目で追えば銀時の手にお札が握られていて、愛実も銀時が受け取った事を特に気にせず目で追っていた。
「ちょっと銀さん…っ?」
「あーー!銀ちゃんずるいネ!」
「いいから…これはオレが預かっておくの!」
銀時の行動に新八と神楽は非難したが、銀時に押し切られる形でとりあえず黙らされ、それからすぐに銀時はそのまま神楽と新八を促して下に行くように言った。
「オイ、お前ら。とりあえずお登勢のババァのとこ行って来い!オレらも後から行くから。愛実の事一応説明しとかねぇーとだし、ついでに朝飯たかりに行くぞ。」
「キャッホー!お腹空いたネ!ババァに米いっぱい炊いてもらうアル!」
「ちょっと神楽ちゃん?!僕の家でもいっぱい食べてたじゃないか!てか、待ってよ!!もう、じゃあ銀さん達は?」
「今後の事少し話してから行くから」
「…わかりました!早く来ないと神楽ちゃんに全部食べられちゃいますよ!愛実さん!じゃあまた後で!」
「あ、うん!」
愛実に懐いている様子を見せていた神楽も飯と言われてすぐさま玄関に走って行った。
新八も銀時と愛実に声をかけてから神楽の後を追った。
自分が口を出す隙もなく話が進み、とりあえず報酬が3万円でいいのかも分からず愛実は黙っている。
そして向かいに座っていた銀時が何を考えているのかわからない顔で受け取った3万円を愛実の目の前に差し出した。
「え?あ、あの……」
「いや、まぁなんつーの?お前さん、アパート燃えた時に色々一緒に燃えちまったんだろ?このお金はこれからの生活に必要な物を買うお金として持っておきなさい」
「え、でも…坂田さん達に依頼をした訳ですから報酬を払うのは当たり前です!」
「え?坂田さん?神楽と新八は名前呼びなのに?なんでオレだけ他人行儀なの?」
「へ?あの…っ?」
なんとも読めない顔で愛実の手を取り先程の3万円を握らせわざとらしい丁寧口調で銀時は言った。
そして愛実は握らされた3万円をまた銀時に差し出しながら反論するも全く関係のない事をつっこまれてだいぶ戸惑った。
「いや、その…坂田さんは歳上の方なのかなと思っていたのでつい…。」
「あー、オレそういうの全っ然気にしないから!むしろ坂田さん呼びの方がむず痒くなる!てか、何歳なの?」
「あ、私ですか?22です。」
「ふぅん、じゃあオレよりは歳下か…。まぁとりあえず坂田さん呼びは無しな!銀さんとか銀ちゃんとかで、坂田さんは無し!」
余程坂田さん呼びは嫌だったのか少し必死になりながら言ってくる銀時に愛実は戸惑った。
新八や神楽は明らかに歳下なので気兼ねなく呼べるが銀時は自分と同じか少し上だろうと少しかしこまっていたのだ。
それと田舎に住んでいた頃は周りも幼少期から一緒に過ごしていた者達ばかりでみんな家族といった感じだったからか異性をあまり意識したことが無かった。
呼び方も子供の頃からそう呼んでいるので照れ臭く思う事もない。
初対面のしかも歳上の男の人である銀時を名前呼びする事は愛実にはハードルが高かった。
嫌という事ではなく少し恥ずかしかったのだ。
戸惑いながらも本人がその呼び方が嫌だと言うのだから仕方ない。
愛実は少し顔に熱が集まるのを感じながらも上目で銀時を見ながら
「ぎ、銀さん…でいいでしょうか?」
と言った。
「っ……………」
その時銀時は思った。
(え?何この子?そんなに名前呼びが恥ずかしかったの?なんでこんなに頬赤らめてんの?
え、なんかオレまで恥ずかしいんですけどぉぉお!)
「あ、あの…銀、さん?」
「…ん?あ、うん。それでいいわ、うん。なんか、うん……」
少し微妙な空気になりつつもとりあえず話を再開させた2人。
とりあえず3万円は愛実に戻ってきた。
当面仕事が見つかるまでは万事屋の手伝いや家事をしてくれたらいいという事になった。
お金はとりあえずお給料をもらえるようになってからでいいという事にした。
住むところもお金がある程度貯まり、生活が落ち着いたら新たに探すという事になった。
銀時はあまり気にしていなかったが、流石にいつまでもお世話になるのは図々しすぎると愛実が言うのでそういう事になったのだ。
「まぁ、なんだ。とりあえずここの大家のとこ連れて行くから。」
「えっと、先程言っていたお登勢さん?という方ですか?」
「まぁ、そうなんだけどよ…」
「…な、なんですか?」
なんだか不満げな顔で愛実を見てくる銀時を訝しげに思い聞いてみると、今度は敬語が気に食わないという。
普通初対面の相手、特に歳上の人と話すなら敬語が当然だと思う。
しかしいきなり敬語をなくせと言われても、先程も言ったように異性にあまり慣れていない愛実には難題だ。
「いきなりはちょっと…」
「神楽と新八には平気だったろ?」
「それは、2人とも歳下で話安かったので…」
「オレは話にくい、と?」
「え?…んと、そういう事でも……」
なんと言ったらいいのか、愛実は今まで感じた事のない感情を銀時に抱いていた。
周りにはいないタイプだというのもあると思うが、あの赤い瞳に見られるとなんだかくすぐったいような落ち着かない気持ちになる。
でもその事を上手く言葉にも出来ないしと、悩んでいると銀時が顔を少しニヤつかせながら
「愛実ちゃんって男苦手?」
「え?いえ、そういう訳じゃないんですけど…」
「ふぅ〜ん…」
「へ?!あのっ…っ!」
なんとなくいたずらな表情の銀時はさり気無く愛実の隣に座り、顔を覗き込みながら近づいた。
この時の銀時の表情はいつものダルげな様子を感じさせないほど真剣な顔だった。
もちろんそんな事をされた愛実は急に近づいてきた銀時に驚き距離をとろうとしたが、そうはさせないとばかりに更に顔を寄せる銀時。
2人掛けのソファの端っこに身を寄せている2人はハタから見ればくっ付いてさえいるように見える。
顔をこれでもかと真っ赤にさせ、口を鯉のようにパクパクとしている愛実をしばらく見つめる銀時だったが
「っ……」
「………ぷっ、ククククっ!!スッゲェ顔真っ赤だぞ愛実ちゃん!いや、悪かったよ悪かった!いやぁ、さっき名前で呼ぶ時も結構顔が赤かったからすげぇウブなんだろうなと思ってたけどそんな赤くなるとは…っブっククク!!!」
「な、な、なっ、失礼でしょ!!普通そんなに顔近づけられたら誰だって赤くなるしっ!!そんなに笑う事無いじゃない!!銀さんサイテーっ!!」
真剣な顔を思いっきりニヤけ面に変え、身体を丸めて笑いが止まらない様子の銀時をみて未だにほんのり赤い顔をしながら愛実は怒っていた
当然だろう。
脈絡もなしに近づかれ、しかも赤くなった様子を見て笑われているんだから。
バカにされていると思った愛実は今度は怒りに顔を染め、銀時を怒鳴りつけた。
その様子を笑いの余韻を残しながら悪かったと愛実をなだめる銀時。
「いや、でも銀さんのおかげで敬語も外れただろ?」
「そんなっ!……て、え?敬語外すためにあんな事を?」
「いや、単純にオレのドS心を刺激されたからってのもある」
「な!ドS?ドSってなんですか?!てかやっぱりサイテーっ、からかったんじゃない!!」
先程の事が敬語をやめさせるための事だったと思い少しおさまった怒りもその後の銀時の言葉で余計に増した。
そもそも初対面の人間にする事ではないし、敬語をやめさせるためでも普通ならばあんな事はしない。
そう思った愛実はなんとなく銀時に感じていた気持ちはなりを潜め、今後この人に敬意をはらう必要はないと思った。
普通に失礼な人だ。
これからはもう絶対に敬語を使わないと決めるのと同時に、このままここに住んで大丈夫なのだろうかと少し不安に思う愛実だった。
その後はとにかく下で神楽と新八、そして自分の事を聞いて待っているであろうお登勢という方の元に案内してもらった。
スナックお登勢に先についていた新八はお登勢に文句を言われながらも茶碗に白米を大盛りにしかっ込んでる神楽を横目に愛実についての説明をしていた。
「その娘も運が悪いねぇ。それで、居候が増えるってかい?また賑やかになりそうだねぇ」
「えぇ、まぁ…アハハ。」
「愛実はいい女って感じネ!私には劣るけどナ。スッゲェ胸がデカくて優しそうで、ちょっとあか抜けない感じだけど、そこの役に立たないネコ耳とは全然違うアル!!」
「ダレガヤクニタタナイネコミミダ!!オマエニイワレタクネーヨ!!」
「やめないかい、お前たち!……ったく、ふぅ〜」
ドスの効いた声で一喝ケンカを始めそうな神楽とキャサリンを止めたお登勢は新八に向き直って、少し考えたように言った。
「それで?仕事探してやるってアンタ達ツテでもあるのかい?」
「いえ……まぁでも住むところさえ決まれば仕事も探しやすいと思いますし!」
「まぁねぇ」
そんな事を話しながら本人が来るのを待っていた。
少ししてまた神楽とキャサリンのやり合いが始まり、それを怒鳴るお登勢と止めようとし新八が巻き込まれて殴られたりしながらしていると
ガラガラガラァ〜っとお登勢スナックの扉が開いた。
「おう、ババァ邪魔するぜ」
「お、お邪魔します!」
銀時は慣れたように新八の隣のカウンターに座る。
愛実はどこに座ればいいのかキョロキョロとしているとお登勢が銀時の1つ空けた隣のテーブルにお茶を出した。
「話は聞いたよ。アンタが愛実かい?」
「あ、はい!藤咲愛実と申します!この度万事屋さんでお世話になります!よろしくお願いします!」
お登勢の出してくれたお茶の前に立ち、お登勢の問い掛けにガバァっと音がしそうな勢いで頭を下げながら愛実は自己紹介した。
「あぁ、ここでスナックをしてるお登勢だよ。とりあえず頭上げて座んな。」
「あ、ありがとうございます」
「それとこっちが従業員のキャサリンだよ。」
「コンニチハ。テメースコシチチガデカイカラッテチョーシニノルナヨ!」
「やめなキャサリン!ったく。」
「へ?チチ?……えっとよろしくです。」
なんだか緊張した面持ちでお登勢に促されるままイスに座ると何故かキャサリンにケンカを売られ戸惑う愛実だった。
とりあえずキャサリンから視線を銀時に向けたお登勢はタバコを吸いながらギッと銀時を睨んだ。
「まァたアンタ酔って帰ってきた上に、こんな若い娘にゲロの世話までさせたんだって?!しかも住まわせるって家賃もロクに払えてねー奴がちゃんと責任とれんだろーねぇ?!」
「うっせーな、てめーはオレのかーちゃんですかァ?!家賃はホラ!この間テレビ直してやったろーが!」
「ありゃ先々月の話だろうが!!それにあの後すぐにまたぶっ壊れちまって買い替えたわァ!大体ほとんど滞納してる奴が居候ばっか増やしやがって!」
どうやら万事屋はなかなか厳しい状況のようで家賃は滞納してるらしい。
やっぱり自分がこのまま住むのは大変なんじゃ無いかと愛実は思い始めた。
ボソッと「やっぱり迷惑なんじゃ…」と愛実が呟いた声が聞こえた新八は慌ててフォローに入った。
「あ、あの!たまたまですから!たまーにちょっと、ほとんど仕事が無くて…その、払えてないだけで!えぇっと…っ、」
「ソレゼンゼンフォローニナッテネージャネーカメガネ」
お金うんぬん仕事うんぬんに関しては本当の事なのだからフォローもしようがない
案の定フォローになっていない事をキャサリンにツッコまれ更に焦る新八。
そして新八の話を聞いて更に不安になる愛実。
そんな様子にやっと気付いた銀時はお登勢との言い争いをやめ、愛実の頭にポンっと手を置いて安心させる様に話した。
「心配しねーでも誰も迷惑になんて思ってねーよ」
「そ、そーですよ!僕ら全っ然迷惑になんて思ってませんから!」
銀時の乱暴に撫でる手と新八の言葉に少し安心するも根本的な解決はしていないのだからとどうも愛実の表情はまだ晴れない。
それを見ていたお登勢は少なからず自分が家賃の話をした事も原因であるだろうしと声をかけた。
「別にアンタが気負うことはないよ。コイツらが家賃を払わないのなんて今に始まった事じゃないしね。それでも気になるんならたまにうちの店の手伝いにでもきておくれよ。」
「お手伝い…ですか?」
「ここはスナックだよ?酒と健全なエロを嗜む店親父の客ばっかりだからね。アンタみたいな子が来てくれるならこちらは万々歳さ。」
「オイオイ!ババァ!コイツ田舎から出て来たばっかのおのぼりさんなんだよォ?それを親父どもの相手をしろって…」
「フン、だったらアンタが仕事してお金稼いで家賃払えばいいだろうが。こっちも商売なんだよ!」
さっき万事屋で見せていた反応といい、明らかに男慣れしていない愛実がスナックで働くのはなんとなく面白くない銀時だったがぐうの音も出ないとはこの事。
1つも言い返せない銀時を尻目にどうする?というお登勢に愛実は答えていた。
「不慣れだと思いますが、やってみます!」
「そうかい。なら、今度お願いするよ。」
「はい!」
「そうだ、それと。アンタもと住んでたアパートが燃えちまったんだって?着るものあんのかい?」
「ええ、まぁ最低限は買って揃えましたから。」
「それでも少ないだろ?私が昔着てたので良ければいくつか持っていくといいよ。」
「え?!いいんですか??…でもっ!」
「着物だってずっと箪笥に仕舞われてるより誰かに着てもらった方がいいだろう?こっちにおいで。」
「愛実の着物アルか?!私も一緒にみてあげるネ!」
トントン拍子に話が進み呆気にとられている銀時の存在は無視され、お登勢と愛実とみんなが話している間ずっとご飯を食べていた神楽も一緒になってスナックの奥へと消えていった。
「……なぁ、新八。オレの立場は?」
「とりあえず仕事探しましょう、銀さん。」
「ホントオマエラシゴトシロヨナ」
キャサリンに蔑んだ目で見られる銀時と新八だった。
.