1話
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朝の8時半
ある程度の人間がとっくに起きて活動している時間である。
その時間にかぶき町に独特な看板をつけた家の前で女が1人チャイム音を響かせていた。
ピンポーン
ピンポーン
もう一度鳴ったが反応は返ってこない。
それもそのはず、その家の主はまだ起きていないのだ。
ピンポーン ピンポーン ピンポピンポーン
ピンポーン ピンポーン
何度も押され鳴り続けるチャイム音
その後もしばらくなっていたが、家の中からする足音にその音が止まった。
ダダダダダダダダダダダっ!!!
ガシャン!!!!
「うるせぇぇぇぇえええ!!!!」
あまりのチャイムの回数に居留守を使おうとしたであろう男はけたたましい音と共に玄関に現れた。
この話はこの男坂田銀時とチャイムを鳴らし続けた女藤咲愛実のなんて事ない恋物語である。
「ピンポンピンポンうるせーよ!!こちとら朝方まで呑んでて殆ど寝てねーの!!なんなの?嫌がらせか!?嫌がらせだよな!?普通はあんなに鳴らさねーよ!………おたく、どちら様?」
すごい勢いで捲し立てた銀時は目の前にいた少しあか抜けないがそれなりに整った顔の女が自分の知り合いでは無い事にに気付き、少し冷静になって尋ねた。
するとあまりの勢いに固まっていた愛実も我に返り自分が目的としていた場所なのかを確認しようと口を開いた。
「え、えっとすみませんでした。何回も…でもあの私もその切羽詰まってて。えっと、ここって万事屋さんで合ってますか?」
「あーはいはい、お客さんね?いや〜なんかごめんね、うん。いや、でもぉうちの営業時間まだなんだわ、うん。悪いんだけどぉ、一度帰ってもらってまた後でぇ」
「えぇ?!まだやってないんですか?!いや、でもぉ、戻るにもえっと…」
銀時は目の前の女が依頼人だとわかってばつが悪そうにしながらも二日酔いだし寝足りないしという理由で愛実を追い返そうとしていた。
しかし愛実も一旦帰るにしても、それが無理なのでなんとかしてもらおうともう一度銀時を見ると
「…う、オェェ。」
「え?!だ、大丈夫ですか?!!」
銀時は二日酔いだった。
ピンポンのうるささに飛び起き玄関まで走ってきたのが悪かったのだろう。
すっかり吐きそうになっていた。
そのたくましい体をこれでもかと縮こませ、玄関で這いつくばっていたのである。
「気持ち悪いんですか?!」
「う、もうダメ…限界だわコレ、オェェ…」
「ま、待ってください!!玄関で吐いたら、とトイレ!トイレどこですか?そこまで支えますからもう少し頑張って!!」
明らかに限界なのだろう。
その顔はだいぶ青くなっていた。
しかしそれでも玄関で吐くよりは家なのだしトイレまで我慢した方がいいと思った愛実はその自分より遥かに堅いのいい体をなんとか支え起こし、「お、お邪魔します!」というと草履を脱ぎながら銀時をトイレまで連れて行った。
「オェェ、オボロロロロロロ……」
トイレに着くなりすぐ様吐き出した銀時の背中を心配そうな顔でさする愛実。
言っておくが2人は初対面である。
「大丈夫ですか?お水持ってきましょうか?あ、でも勝手にお台所使っちゃ…」
「いや、頼むわお姉さん。そこ行ったとこに水道あっから」
「わかりました」
銀時に言われ、少し慌てながらお水を取りに行く愛実。
人様の家でましてや今日初めて訪ねた家で勝手をしていいものか悩んだ愛実は一瞬躊躇したが、銀時は特に気にしなかった。
まぁこの家は何かしら勝手に人がやってきては勝手をする家なのだ。
そんな事を気にする愛実を見て自分の周りにはいないタイプだなと銀時は思った。
そんな事を考えているうちに水の入ったコップを持って愛実が戻ってきた。
「あの、お水持ってきました。大丈夫ですか?」
「あぁ助かったわ」
言うや否や銀時は水を受け取り一気に飲み干した。
水を一気に煽る銀時を愛実は少し呆けながら見ていた。
「ぷはぁぁぁぁああ!!いやぁマジ助かったわ。今回はマジでヤバかったな、やっぱ酒やめよ!うん、今度こそやめるわ!」
「あ、あの大丈夫なんですか?さっきまで真っ青でしたけど…」
「あぁ、全部吐いたらスッキリしたわ」
吐ききり水も飲んで調子を取り戻したのか1人スッキリした様子の銀時からは先程のような具合悪さは感じられなくなっていた。
その様子に安堵した愛実は本来の自分の目的である依頼を思い出した。
「元気になったのならよかったです。あ、あのそれで先程言っていた依頼なんですが…」
「あ〜はいはい。お姉さん依頼人だったっけ?で?その依頼ってのは?」
「え?あのいいんですか?その、さっきは営業時間がどうって…」
「え??っあ〜そうね!いや、でもお姉さんには世話んなったしね!うん!特別に話聞いたげるわ!」
「あ、ありがとうございます!」
二日酔い、寝たり無いといった理由から追い返そうとしたのだがここまで迷惑をかけておいてそれを言うのはさすがの銀時でもばつが悪い
愛実も人を疑うという事をしないのかすっかり銀時の話を信じていた。
「とりあえずこっちのソファに座っててくれる?」
話をするにも流石にずっとトイレでする訳も無く、事務所兼リビングに依頼人である愛実を連れてきてソファに座らせた。
そして吐いてスッキリしたとはいえ未だ酒の匂いが残る状態で話を聞くのもなんだという事で銀時はシャワーを浴びてくるという。
「なんか悪いな、待たせちまって」
「いえ!話を聞いていただけるようですし、それに吐いたばかりでは気持ち悪いでしょう?シャワー浴びた方がいいですよ!私は大丈夫ですから」
内心あまり酒が得意で無い愛実は酒の臭いが気になっていたので願ったり叶ったりだったりするがそれは胸にしまった。
そして風呂場に入る前に銀時がそろそろ従業員が来る頃だからもし来たら説明しておいてくれと言っていった。
「はぁ…なんか、ドッと疲れた。てか、ここ大丈夫なのかなぁ?あのお兄さんだいぶ具合悪そうだったけど…」
そう言って部屋の中を見渡す愛実。
額縁に大きく書かれた糖分の文字や立て掛けて置かれている木刀に書かれた洞爺湖を見てなんだか胡散臭さが際立ってきたような気がしてくる。
「いやいや!選んでる場合でも無いし、きっと大丈夫だよね!」
愛実が1人ブツブツと言っていると玄関の方から人の話し声がし始めた。
「あれ?玄関開けっ放し。ま〜た銀さん酔い潰れて帰ってきたのかなぁ?」
「へっ!いつものことアル。どうせゲロ吐きまくって伸びてるネあの天パ!」
(あ、あれ?従業員の人たちかなぁ?)
どうやらこの万事屋の従業員である新八、神楽がやってきたようだった。
愛実は説明しておくよう言われたのでソファから立ち上がり玄関にいる2人の元に向かおうと廊下に続く扉を開けた。
それと同時に風呂から上がったのだろう銀時がパンツ一枚で風呂場から出たきた。
「へ?」
「あ?」
少しの間の後、目の前にいた銀時が吹っ飛んだ。
ドガァ!だかドコォ!だか音を立てて扉にめり込む銀時と、目の前で起こった事が信じられない愛実は固まっていた。
吹き飛んだ銀時が先程までいた場所、つまり愛実の目の前には見慣れないチャイナ服でオレンジの髪色の可愛らしい顔をした女の子が立っていた。
するとその女の子もとい神楽はその可愛らしい顔を恐ろしい形相に変えるとめり込んだ状態からなんとか起き上がったらしい銀時に飛びかかって行く。
「オマエこんな純粋そうな女連れ込んで何してたアルか?!ナニしたアルか?!!サイテーよ!見損なったよ銀ちゃん!!!」
「銀さん、アンタって人はもうホントに呆れましたよ!サイテーだよアンタ!」
「オメェら何とんでもない勘違いしてんのぉぉおお?!!事情も聞かず急に殴り飛ばすとか!何考えてんだ!!」
「お前もお前アル!!」
銀時を殴りつけながらとんでもない誤解を口にする神楽と銀時を蔑んだ目で見る新八に怒りだす銀時。
誤解だと言おうとするところで神楽はそれを無視して怒りの矛先を愛実に向けた。
愛実はあまりの状況に未だよく理解の追い付いていない頭を動かして、とりあえず自分がすごい勘違いをされているんだろうことだけは分かった。
なんとか誤解を解こうと口を開こうとするが、
「自分を大切にしなきゃダメアル!!なんて言って連れてこられたんだか、こんな男について行っちゃいけないネ!!」
「え、あ、あの…はい。」
神楽のあまりの勢いに上手く言葉が出ない愛実ははいと返事をするしかなかった。
「いや、なんでお姉さんまで返事してんの?!誤解だって言ってんだろうがぁぁあ!!」
「いやぁーなんかすみませんでした。盛大な勘違いをしてしまって」
「いえ、わかっていただけて何よりです。」
「だいたい銀ちゃんが悪いネ!パンツ一丁でいたら誰だって勘違いするアル!」
「だからっていきなり吹っ飛ばす奴があるかぁ!!ったく、どんだけ信用ねーんだよ。」
「「それは日頃の行いアル(です)」」
「なんだと!?、」
とりあえずなんとか神楽と新八への誤解を解き、今は4人万事屋の事務所兼リビングであるソファに座っていた(ちなみに席順は銀時と新八が並んで座り、愛実が向かいに座っている。神楽は銀時と新八の間の背もたれ部分に座っていた)
また取っ組み合いが始まりそうな雰囲気を壊したのは愛実の笑い声だった。
「ふっ、あははははは!ご、ごめんなさいっ…つい、」
「あ、いやこちらこそなんか恥ずかしい所をお見せして…」
あまりの息の合ったやり取りに我慢が出来なかったのだ。
それだけこの3人の仲は良いのだろう。
そう思うと先程のやり取りももしかしたら日常なのかもしれないと愛実は思った。
「えっと、自己紹介がまだでしたよね。僕志村新八って言います。」
「私は神楽ネ!歌舞伎町の女王様と呼ぶヨロシ!」
恥ずかしそうにしながらも真面目に自己紹介してくれた新八とその新八を押し除けて元気よく名乗ってくれた神楽を見て愛実もニッコリと笑いながら名乗った。
「えっと、私藤咲愛実って言います。新八君と神楽ちゃん?女王様って呼べばいいの?」
「愛実って呼んでいいアルか?私の事は特別に神楽でいいネ!」
「わかった!神楽ちゃん、すごく可愛いよね!私神楽ちゃんみたいな可愛い子初めて見たよ!」
「当然ヨ!でも愛実も可愛いアル、それにめっさスタイルいいネ!」
「へ?そ、そうかなぁ?」
「何食べたらそんなに大きくなるアルか?」
明らかに神楽の目が愛実の胸を見ていた。
確かに愛実の胸は大きい方だが、男2人がいる状況で話すことでは無い。
案の定そんな事を言い出す神楽を慌てて新八が止める。
「神楽ちゃん!失礼でしょ、そんな事急に!」
「新八、何顔赤くしてるアルか。キモいネ、私に近づかないで」
「な、なんだとぉ!!」
「まぁまぁ新八。童貞のお前には刺激が強すぎるよなぁ。」
「銀さんまで!!」
先程から口を挟まずに様子を見ていた銀時も新八をからかい始める。
それに対しさらに顔を赤くして怒っている新八だったがまだ銀時が名乗っていない事に気づき自己紹介を促した。
「ぼ、僕の事はいいんです!!てか、銀さん!まだ名乗っていないでしょう?!愛実さんにちゃんと自己紹介して下さい!」
「あ〜はいはい」
また始まったテンポの良い3人のやり取りにノリきれず見ていた愛実は銀時の視線が自分に向いた事に気づき、その目をじっと見つめた。
銀時は少しダルそうにしながらも愛実の目をしっかりと見ながら間延びするような声で名乗った。
「万事屋の社長の坂田銀時でぇす。銀さんでも銀ちゃんでもまぁ好きに呼んでくれや。」
「あ、はい。」
ふざけた様な話し方をする銀時をその時初めてまともに見た。
銀時の目は見た事のない綺麗な赤い瞳をしていた。
綺麗な瞳だなぁと思いつつもとりあえず坂田さんと呼ぼうと思った。
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ある程度の人間がとっくに起きて活動している時間である。
その時間にかぶき町に独特な看板をつけた家の前で女が1人チャイム音を響かせていた。
ピンポーン
ピンポーン
もう一度鳴ったが反応は返ってこない。
それもそのはず、その家の主はまだ起きていないのだ。
ピンポーン ピンポーン ピンポピンポーン
ピンポーン ピンポーン
何度も押され鳴り続けるチャイム音
その後もしばらくなっていたが、家の中からする足音にその音が止まった。
ダダダダダダダダダダダっ!!!
ガシャン!!!!
「うるせぇぇぇぇえええ!!!!」
あまりのチャイムの回数に居留守を使おうとしたであろう男はけたたましい音と共に玄関に現れた。
この話はこの男坂田銀時とチャイムを鳴らし続けた女藤咲愛実のなんて事ない恋物語である。
「ピンポンピンポンうるせーよ!!こちとら朝方まで呑んでて殆ど寝てねーの!!なんなの?嫌がらせか!?嫌がらせだよな!?普通はあんなに鳴らさねーよ!………おたく、どちら様?」
すごい勢いで捲し立てた銀時は目の前にいた少しあか抜けないがそれなりに整った顔の女が自分の知り合いでは無い事にに気付き、少し冷静になって尋ねた。
するとあまりの勢いに固まっていた愛実も我に返り自分が目的としていた場所なのかを確認しようと口を開いた。
「え、えっとすみませんでした。何回も…でもあの私もその切羽詰まってて。えっと、ここって万事屋さんで合ってますか?」
「あーはいはい、お客さんね?いや〜なんかごめんね、うん。いや、でもぉうちの営業時間まだなんだわ、うん。悪いんだけどぉ、一度帰ってもらってまた後でぇ」
「えぇ?!まだやってないんですか?!いや、でもぉ、戻るにもえっと…」
銀時は目の前の女が依頼人だとわかってばつが悪そうにしながらも二日酔いだし寝足りないしという理由で愛実を追い返そうとしていた。
しかし愛実も一旦帰るにしても、それが無理なのでなんとかしてもらおうともう一度銀時を見ると
「…う、オェェ。」
「え?!だ、大丈夫ですか?!!」
銀時は二日酔いだった。
ピンポンのうるささに飛び起き玄関まで走ってきたのが悪かったのだろう。
すっかり吐きそうになっていた。
そのたくましい体をこれでもかと縮こませ、玄関で這いつくばっていたのである。
「気持ち悪いんですか?!」
「う、もうダメ…限界だわコレ、オェェ…」
「ま、待ってください!!玄関で吐いたら、とトイレ!トイレどこですか?そこまで支えますからもう少し頑張って!!」
明らかに限界なのだろう。
その顔はだいぶ青くなっていた。
しかしそれでも玄関で吐くよりは家なのだしトイレまで我慢した方がいいと思った愛実はその自分より遥かに堅いのいい体をなんとか支え起こし、「お、お邪魔します!」というと草履を脱ぎながら銀時をトイレまで連れて行った。
「オェェ、オボロロロロロロ……」
トイレに着くなりすぐ様吐き出した銀時の背中を心配そうな顔でさする愛実。
言っておくが2人は初対面である。
「大丈夫ですか?お水持ってきましょうか?あ、でも勝手にお台所使っちゃ…」
「いや、頼むわお姉さん。そこ行ったとこに水道あっから」
「わかりました」
銀時に言われ、少し慌てながらお水を取りに行く愛実。
人様の家でましてや今日初めて訪ねた家で勝手をしていいものか悩んだ愛実は一瞬躊躇したが、銀時は特に気にしなかった。
まぁこの家は何かしら勝手に人がやってきては勝手をする家なのだ。
そんな事を気にする愛実を見て自分の周りにはいないタイプだなと銀時は思った。
そんな事を考えているうちに水の入ったコップを持って愛実が戻ってきた。
「あの、お水持ってきました。大丈夫ですか?」
「あぁ助かったわ」
言うや否や銀時は水を受け取り一気に飲み干した。
水を一気に煽る銀時を愛実は少し呆けながら見ていた。
「ぷはぁぁぁぁああ!!いやぁマジ助かったわ。今回はマジでヤバかったな、やっぱ酒やめよ!うん、今度こそやめるわ!」
「あ、あの大丈夫なんですか?さっきまで真っ青でしたけど…」
「あぁ、全部吐いたらスッキリしたわ」
吐ききり水も飲んで調子を取り戻したのか1人スッキリした様子の銀時からは先程のような具合悪さは感じられなくなっていた。
その様子に安堵した愛実は本来の自分の目的である依頼を思い出した。
「元気になったのならよかったです。あ、あのそれで先程言っていた依頼なんですが…」
「あ〜はいはい。お姉さん依頼人だったっけ?で?その依頼ってのは?」
「え?あのいいんですか?その、さっきは営業時間がどうって…」
「え??っあ〜そうね!いや、でもお姉さんには世話んなったしね!うん!特別に話聞いたげるわ!」
「あ、ありがとうございます!」
二日酔い、寝たり無いといった理由から追い返そうとしたのだがここまで迷惑をかけておいてそれを言うのはさすがの銀時でもばつが悪い
愛実も人を疑うという事をしないのかすっかり銀時の話を信じていた。
「とりあえずこっちのソファに座っててくれる?」
話をするにも流石にずっとトイレでする訳も無く、事務所兼リビングに依頼人である愛実を連れてきてソファに座らせた。
そして吐いてスッキリしたとはいえ未だ酒の匂いが残る状態で話を聞くのもなんだという事で銀時はシャワーを浴びてくるという。
「なんか悪いな、待たせちまって」
「いえ!話を聞いていただけるようですし、それに吐いたばかりでは気持ち悪いでしょう?シャワー浴びた方がいいですよ!私は大丈夫ですから」
内心あまり酒が得意で無い愛実は酒の臭いが気になっていたので願ったり叶ったりだったりするがそれは胸にしまった。
そして風呂場に入る前に銀時がそろそろ従業員が来る頃だからもし来たら説明しておいてくれと言っていった。
「はぁ…なんか、ドッと疲れた。てか、ここ大丈夫なのかなぁ?あのお兄さんだいぶ具合悪そうだったけど…」
そう言って部屋の中を見渡す愛実。
額縁に大きく書かれた糖分の文字や立て掛けて置かれている木刀に書かれた洞爺湖を見てなんだか胡散臭さが際立ってきたような気がしてくる。
「いやいや!選んでる場合でも無いし、きっと大丈夫だよね!」
愛実が1人ブツブツと言っていると玄関の方から人の話し声がし始めた。
「あれ?玄関開けっ放し。ま〜た銀さん酔い潰れて帰ってきたのかなぁ?」
「へっ!いつものことアル。どうせゲロ吐きまくって伸びてるネあの天パ!」
(あ、あれ?従業員の人たちかなぁ?)
どうやらこの万事屋の従業員である新八、神楽がやってきたようだった。
愛実は説明しておくよう言われたのでソファから立ち上がり玄関にいる2人の元に向かおうと廊下に続く扉を開けた。
それと同時に風呂から上がったのだろう銀時がパンツ一枚で風呂場から出たきた。
「へ?」
「あ?」
少しの間の後、目の前にいた銀時が吹っ飛んだ。
ドガァ!だかドコォ!だか音を立てて扉にめり込む銀時と、目の前で起こった事が信じられない愛実は固まっていた。
吹き飛んだ銀時が先程までいた場所、つまり愛実の目の前には見慣れないチャイナ服でオレンジの髪色の可愛らしい顔をした女の子が立っていた。
するとその女の子もとい神楽はその可愛らしい顔を恐ろしい形相に変えるとめり込んだ状態からなんとか起き上がったらしい銀時に飛びかかって行く。
「オマエこんな純粋そうな女連れ込んで何してたアルか?!ナニしたアルか?!!サイテーよ!見損なったよ銀ちゃん!!!」
「銀さん、アンタって人はもうホントに呆れましたよ!サイテーだよアンタ!」
「オメェら何とんでもない勘違いしてんのぉぉおお?!!事情も聞かず急に殴り飛ばすとか!何考えてんだ!!」
「お前もお前アル!!」
銀時を殴りつけながらとんでもない誤解を口にする神楽と銀時を蔑んだ目で見る新八に怒りだす銀時。
誤解だと言おうとするところで神楽はそれを無視して怒りの矛先を愛実に向けた。
愛実はあまりの状況に未だよく理解の追い付いていない頭を動かして、とりあえず自分がすごい勘違いをされているんだろうことだけは分かった。
なんとか誤解を解こうと口を開こうとするが、
「自分を大切にしなきゃダメアル!!なんて言って連れてこられたんだか、こんな男について行っちゃいけないネ!!」
「え、あ、あの…はい。」
神楽のあまりの勢いに上手く言葉が出ない愛実ははいと返事をするしかなかった。
「いや、なんでお姉さんまで返事してんの?!誤解だって言ってんだろうがぁぁあ!!」
「いやぁーなんかすみませんでした。盛大な勘違いをしてしまって」
「いえ、わかっていただけて何よりです。」
「だいたい銀ちゃんが悪いネ!パンツ一丁でいたら誰だって勘違いするアル!」
「だからっていきなり吹っ飛ばす奴があるかぁ!!ったく、どんだけ信用ねーんだよ。」
「「それは日頃の行いアル(です)」」
「なんだと!?、」
とりあえずなんとか神楽と新八への誤解を解き、今は4人万事屋の事務所兼リビングであるソファに座っていた(ちなみに席順は銀時と新八が並んで座り、愛実が向かいに座っている。神楽は銀時と新八の間の背もたれ部分に座っていた)
また取っ組み合いが始まりそうな雰囲気を壊したのは愛実の笑い声だった。
「ふっ、あははははは!ご、ごめんなさいっ…つい、」
「あ、いやこちらこそなんか恥ずかしい所をお見せして…」
あまりの息の合ったやり取りに我慢が出来なかったのだ。
それだけこの3人の仲は良いのだろう。
そう思うと先程のやり取りももしかしたら日常なのかもしれないと愛実は思った。
「えっと、自己紹介がまだでしたよね。僕志村新八って言います。」
「私は神楽ネ!歌舞伎町の女王様と呼ぶヨロシ!」
恥ずかしそうにしながらも真面目に自己紹介してくれた新八とその新八を押し除けて元気よく名乗ってくれた神楽を見て愛実もニッコリと笑いながら名乗った。
「えっと、私藤咲愛実って言います。新八君と神楽ちゃん?女王様って呼べばいいの?」
「愛実って呼んでいいアルか?私の事は特別に神楽でいいネ!」
「わかった!神楽ちゃん、すごく可愛いよね!私神楽ちゃんみたいな可愛い子初めて見たよ!」
「当然ヨ!でも愛実も可愛いアル、それにめっさスタイルいいネ!」
「へ?そ、そうかなぁ?」
「何食べたらそんなに大きくなるアルか?」
明らかに神楽の目が愛実の胸を見ていた。
確かに愛実の胸は大きい方だが、男2人がいる状況で話すことでは無い。
案の定そんな事を言い出す神楽を慌てて新八が止める。
「神楽ちゃん!失礼でしょ、そんな事急に!」
「新八、何顔赤くしてるアルか。キモいネ、私に近づかないで」
「な、なんだとぉ!!」
「まぁまぁ新八。童貞のお前には刺激が強すぎるよなぁ。」
「銀さんまで!!」
先程から口を挟まずに様子を見ていた銀時も新八をからかい始める。
それに対しさらに顔を赤くして怒っている新八だったがまだ銀時が名乗っていない事に気づき自己紹介を促した。
「ぼ、僕の事はいいんです!!てか、銀さん!まだ名乗っていないでしょう?!愛実さんにちゃんと自己紹介して下さい!」
「あ〜はいはい」
また始まったテンポの良い3人のやり取りにノリきれず見ていた愛実は銀時の視線が自分に向いた事に気づき、その目をじっと見つめた。
銀時は少しダルそうにしながらも愛実の目をしっかりと見ながら間延びするような声で名乗った。
「万事屋の社長の坂田銀時でぇす。銀さんでも銀ちゃんでもまぁ好きに呼んでくれや。」
「あ、はい。」
ふざけた様な話し方をする銀時をその時初めてまともに見た。
銀時の目は見た事のない綺麗な赤い瞳をしていた。
綺麗な瞳だなぁと思いつつもとりあえず坂田さんと呼ぼうと思った。
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