「花屋を訪ねましょう、真島さん。」

空気を破いたのは峯だった。
｢峯…！｣
「すみません。今日は例の件で来たのですが話しかけるタイミングを失って…でだ。何もかも辻褄があわない。死んだはずのゆみさんが俺たちの目の前にいる。あなたが愛したゆみさんはあなたを知らない。ゆみさんの世界は存在しない。何もかもの歯車が狂ってやがる。俺たちのない頭で色々勘ぐっても時間の無駄だ。情報屋、特に花屋は全ての世界を監視しているような男だ。あの方なら俺たちの今の状況にメスを入れてくれるでしょう。車を出します。さあ、真島さんゆみさん乗って。サンドラ君はどうする」

「私も行くわ…」

サンドラはか細く返事した。

「お前らよく聞けよ。今から言うことはもっとも俺らしくないセリフだからな。ゆみ、お前の存在ははっきり言ってオカルトだ。だが肉体が消失した亡霊でもない。確かにゆみはここに存在する。お前は殺された瞬間、別の世界に移動し生命を維持したままショックで記憶障害に陥った。そしてパラレルワールドで田中ゆみとして違和感なく今まで生活し、何がきっかけかはわからんがこちらの世界に戻ってきた。と言ってみたものの、俺にもさっぱりだぜ。ただお前がどんな道を辿ったのかはわからねぇがこうして生きて帰ってきて本当によかった。俺が言えるのはそれだけだ。」