神宗一郎と恋するお話
神奈川選抜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
体育館を飛び出した莉子はそのまま食堂へと向かう。
莉子は『やってやった!』という達成感に似た高揚感と『やってしまった!』という後悔なのか罪悪感なのかわからない感情でフワフワと浮き足立つのを感じた。
しかしだんだんと興奮がおさまってくると『やってしまった』という想いでいっぱいになってきた。
莉子(私、とんでもないことをしちゃったかも…どうしよう…‼︎‼︎‼︎)
よくよく考えてみれば他校の先輩である福田や元中学MVPである三井に夏の大会で全国2位の清田…
そんなメンバーに説教してしまうなんてなんてバカな事をしてしまったんだろう…。
今、体育館はどんな空気なんだろう。バスケなんて体育でしかしたことない素人中の素人が県代表選手になんて事を言ってしまったんだ。しかも正座までさせて!
莉子「あ〜〜〜‼︎‼︎」
羞恥心に耐えられなくなった莉子は足を止めて頭を抱えその場にうずくまる。
莉子「ゔゔぅ〜……」
それでもきっと三井は許してくれると思う。なんだかんだ莉子には優しいのだ。問題は清田と福田だ。
莉子(沢山の人が見てる中であんな事言っちゃうなんて本当にありえない)
神奈川選抜だけでなくギャラリーだって沢山いたのだ。そんな中で恥をかかせてしまった。
莉子(正座までさせちゃって…)
夕食になったら嫌でもみんなに会うことになる。一体どんな顔してみんなに会ったらいいんだろう…。
しかし莉子にもああしないといけない事情があったのだ。
莉子「…はぁ…」(福田さんと清田君…許してくれるかな…)
莉子は大きなため息をついて立ち上がると重い足を引きずるように食堂に向かい始める。
莉子(ウダウダしてても仕方ない…許してもらえるまで何回でも謝るしかないよね…)
(私に出来ることはそれだけだしやるしかない…)と覚悟を決め自身を奮い立たせるが『覚悟』はグラグラと揺れ今にも崩れ落ちそうな程、脆い。
トボトボと歩いていると食堂に着いた。
『はぁ〜……』と大きなため息と共にガラガラと引き戸を開けると中には先ほどの莉子のように頭を抱え『どうしよう〜』と嘆いている田中がいた。
大きなテーブルとテーブルを囲むように置かれた丸イスが並ぶ食堂の真ん中辺りに立っている田中に近付いて行く莉子。
莉子「田中君、どうしたの…?」
名前を呼ばれ田中が顔を上げる。
田中「…木村さん…」
顔面蒼白の田中に莉子はギョッとした。
莉子「何かあったの⁉︎」
驚く莉子に田中は『それが…』と話し始めた。
田中「…弁当の注文…ミスった…」
莉子「え?」
田中がテーブルの上にあるお弁当へ視線を向けた。莉子もテーブルを見る。
大きなテーブルにちょこんと乗ったお弁当。
見た目だけでわかるくらい小さいお弁当を見た莉子は田中に視線を戻す。
『あぁぁぁぁぁ』と頭を抱える田中に莉子は『今からでも追加で何か注文できないの?』と聞けば『他の注文もあるから追加は無理って言われた』と追い詰められた表情を浮かべる田中。
莉子「そうなんだ…」
田中「…あぁ…どうしよう!」
頭を抱え、天を仰ぐ田中。
莉子が時計を見る。
莉子「学食は?」
田中「お昼までだからもう誰も残ってない……。あぁ‼︎マジでどうしよう‼︎」
頭を抱える事しか出来ずなんの解決策も思いつかない田中。刻々と夕食の時間が迫っている。
頭を抱え『どうしよう』を繰り返す田中に莉子は新たな案を出す。
莉子「『作る』って言うのはどうかな?材料と設備があれば私、作れるよ」
田中を落ち着かせようと莉子は出来る限り落ち着いた声で話しかける。
莉子の言葉に田中は莉子を見つめた。
田中「材料なら夏の合宿で使った残りがあるけど…でもあと30分しかないんだよ?時間的に無理だよ…」
と落ち込む田中の背中を叩く。
莉子「大丈夫‼︎私、料理得意なの。田中君や彦一君が手伝ってくれたら絶対に間に合うよ」
田中「でも…」
莉子「できることはやろうよ‼︎ね?」
すっかりやる気になっている莉子を見て田中も考えを改める。
田中「……わかった!報告行って材料も使っていいか聞いてくるよ」
莉子「うん‼︎私、冷蔵庫の中見ててもいいかな?」
田中は『うん』と頷くと調理室から出て行った。さっきまでの青ざめた頼りない表情はすっかり消えていて、莉子は『よしっ!』と気合を入れると食堂内にある調理室へと続くドアを開けた。
体育館
莉子が出ていった後、莉子への発言に対して牧から厳重注意を受けていた。
先ほどと同様、牧の足元に正座をして項垂れる清田。
その様子を他の選手たちは遠巻きに見ている。
牧「わかったのか⁉︎」
一通り話終えた牧が清田に問う。
清田「ハイ…反省してます…」
と項垂れる清田に牧がトドメを刺す。
牧「木村さんに謝罪するまで練習には参加させん」
清田「そんなっ!」
『問答無用』とお説教を切り上げその場から離れる牧。清田は牧の背中を見送り『最悪だ…』と呟いた。
落ち込む清田に神が近づいてきて正座している清田の前にしゃがみ込むと肩に手を置いた。
神「謝る時は俺も一緒に頭下げるからそんなに落ち込むなよ」
清田「神さん…いいんすか…」
神「後輩のミスは先輩のミスだからな」
神はにっこりと笑い『だから元気出せ』と清田の背中を叩いた。
その時、田中が『失礼します』と慌ただしく体育館に入ってきた。そのまま牧の所に走って行く。
田中が何か話し始めると見る見るうちに牧の顔が険しくなっていく。一連の流れを見ていた神はまた何かあったなと思い田中と牧を見つめている。
その後、牧が高頭の元に田中を伴い話をしに行くと『何ぃ〜』と高頭もまた顔を顰めた。
すっかり萎縮してしまった田中を庇う様に前に立ち何やら話している牧。牧の話が終わると高頭は田中に何かを言った。指示をもらったのか田中は高頭に深々と頭を下げた。
そのまま彦一の元へ行くと何かを説明。彦一と田中は時計を見上げると慌てた様子で体育館から走り去って行った。
神「……何かあったな…」
神がポツリと呟くと清田も『みたいっすね…』と返す。牧が『はぁ…』とため息をついている。
そんな牧に藤真が声をかけた。
藤真「トラブル?」
牧「あぁ…。弁当の発注ミスでな…。でも木村さんが不足分を作って賄ってくれる事になったんだよ」
三井「莉子が?」
牧「頼りになる子だ」
『頭が下がるよ』と眉を下げる。藤真は『確かに』と笑った。
藤真「さっきのすごかったなよな。俺、絶対に泣くと思ったけとあそこで言い返すなんてさすが湘北のマネージャーだ。肝が座ってる」
と宮城と三井の方を見た。すると宮城は『当たり前でしょ。ウチには超優秀な教育係アヤちゃんがいるんだから』とドヤ顔をして『あんなので泣くわけない』とニヤリと笑う。
一同「……」(アヤちゃん…?)
全員の頭に『?』マークが浮かぶ。
三井「…まぁ…そんなヤワなヤツじゃねぇのは確かだ」
と莉子を褒められ嬉しそうな宮城と三井を見て神は(あの子は随分と大事にされてるんだな…)と感心した。
神はさっきの出来事を思い返した。大きく潤んだ瞳を見た時、確かに神も藤真同様『泣く』と思った。
そんな莉子を見て咄嗟に一歩足を踏み出した神。一見か弱く見える莉子だが真っ直ぐに清田を見つめ清田に言い返した。そして凍てつく様な不穏な空気を莉子は自分の言葉で完全に消してしまった。
ピリつく静寂に響く莉子の声と言葉に揺らぎは感じられなかった。感じたのは莉子の子を思う親の愛情に似た強い想いだ。
神「…すごい子だな…」
と可愛らしく可憐な守ってあげたくなる容姿からは想像できない強さを持った莉子を想い心を振るわせるのだった。
調理室
彦一「炊飯器使わんの?」
大きな両手鍋でご飯を炊こうとする莉子に彦一は炊飯器を指差し疑問をぶつける。
田中と彦一は莉子の指示で冷凍野菜を刻んでいた。
莉子「炊飯器は時間かかるもん。お鍋の方が早く炊けるんだよ」
と言うと洗ったお米を鍋に入れると計量カップで測った水を注ぐ。そして鍋を火にかけると『野菜切れた?』と田中と彦一に問う。
田中「うん…でもちょっと歪になっちゃった…」
とまな板の上の野菜を包丁の先で突っついた。
彦一「ワイも…」
と不安げに莉子を見る。さっき清田に恐れることなく言い返した莉子が少し怖い彦一は莉子の顔色を窺う。
確かに不格好な野菜達だが問題はない。莉子はニコッと笑う。
莉子「これで大丈夫だよ。この調子でドンドン切ってね」
と言うと莉子は解凍した鶏肉を取り出し下味を付け始める。
田中「何を作るの?」
莉子「具沢山のお味噌汁と鶏の照り焼き。鶏がたくさん冷凍してあったから…」
莉子は『本当に使っても大丈夫だったんだよね…?』と聞く。田中は『もちろん』と笑顔を見せる。
彦一「焼くん間に合う?」
大量の鶏肉を前に彦一が時計を気にし始める。
彦一「味噌汁もまだ完成してへんし…」
莉子「大丈夫!オーブンで一気に焼くから」
と鉄板にオーブンシートを引くとお肉を重ならない様に並べていく。そして予熱で温めておいたオーブンに入れる。
莉子は『よし!次はお出汁を取ってお味噌汁を作って…」
米を炊いているお鍋の横にある大鍋の蓋を開けるとすでに煮えたぎっているお湯。そこに大量の鰹節を入れ出汁をとる。
キッチンタイマーを手に取ると3分後にセットし鍋の隣に置く。
莉子はすでに切り終わっている人参、ゴボウ、大根の入ったボウルを取ると熱したフライパンに胡麻油を垂らし炒め始める。
ジュージューと野菜の焼ける音がする。
部屋の温度がどんどん上昇する。莉子のコメカミからスーッと汗が流れた。
莉子「ふぅ…」
手の甲で汗を拭う。大量の根野菜を焦げない様に木ベラでかき混ぜたりフライパンを大きく揺らしたりと体力が削られていく。
田中も彦一も与えられた仕事を必死にこなす。莉子も夕飯に間に合わせようと必死だ。
誰も喋らず黙々と目の前の仕事をこなしていく3人。
ピピピピ
タイマーが3分経過したことを知らせる。
タイマーを止めると蓋を開け鰹節を入れた出汁パックを菜箸で取り出すと炒めた具材を鍋に入れる。
サイコロ状に切った豆腐と油揚げも鍋に放り込むと再びタイマーをセットする。今度は5分だ。
莉子が2人を見た。
莉子「彦一君はお鍋が吹きこぼれないか見てて欲しい。タイマーが鳴ったらお味噌を入れてよーく混ぜて。田中君はお茶碗と汁椀と照り焼き用の大きめの皿を2枚お願い」
2人「わかった!」
2人が動き始めると莉子はオーブンの中を覗いた。こんがりといい焼き色が付いている。
莉子(よかった…いい感じだ…)
冷蔵庫を開けるとレタスとミニトマトをザルに出し水にさらす。
田中が出した大皿2枚に水気を切ったレタスを敷き詰めていく。
チーンと鶏の焼き上がりを知らせる音がし莉子がミトンを嵌めるとオーブンを開ける。
とたんに照り焼きの匂いが調理室に一気に広がり田中と彦一のお腹がグゥーと鳴った。
莉子は笑って『味見する?』と聞く。
ツヤツヤの鶏肉を見て田中と彦一はゴクっと唾をのみこんだ。
しかし2人は『いやぁ…でも…』と遠慮するように首を横に振った。
遠慮する2人に莉子はニコッと笑い言った。
莉子「出来たてを食べれるのは作ってる人の特権なんだよ?それに…」
と『つまみ食いが一番美味しいんだから』といたずらっ子のように笑い鍋敷きの上に鉄板を置いた。
菜箸で鶏肉を摘むと彦一に向かって『はい、あーーん』と差し出す。
彦一・田中「えっ⁉︎」
戸惑う2人にお構いなし『ほら!食べて‼︎』と彦一の口元に鶏肉を近づける。
2人は顔を見合わせた後、彦一が『いただきます…』と呟きパクッと照り焼きを食べた。
彦一「うまっ‼︎」
莉子「でしょ?」
と得意げに言った後、菜箸を洗い『田中君も…はい、あーーーん』と鶏肉を差し出す。
田中は恥ずかしそうに『あーん』と口を開け鶏肉を食べた。
田中「うまっ!すっごい柔らかい‼︎」
莉子「オーブンで焼くとジューシーに焼き上がるんだよ」
と言い菜箸の先を洗うと鉄板の鶏肉を大皿に乗せていく。
ミニトマトもバランスよく全体に散らすように載せていく。
全てのお皿にレタス、鶏肉、ミニトマトを乗せる
味噌汁の味も確認する。
莉子「うん!美味しい!完成‼︎」
味噌汁の味見をした莉子が2人に向かって笑顔を見せる。
それを見た2人は『やったぁ‼︎』とバンザイをする。
田中「本当に間に合った…すごいよ‼︎木村さん‼︎」
莉子「だから言ったでしょ?」
と腰に手を当て得意げに莉子は笑った。
それから3人はテーブルにお弁当を並べ照り焼きの皿を置く。
田中と彦一が手分けして料理を並べているとお腹を空かせた選手達が食堂に入ってきた。
彦一と田中が『お疲れ様です!』と挨拶をする。
仙道がテーブルに並んでいる照り焼きを見て『美味そう』と笑う。
賑やかになった食堂に莉子が大きなやかんを持って現れる。
頬を赤くし、汗ばんだ額に前髪が張り付いている。莉子が一生懸命頑張ったのが見てよくわかり選手達はほっこりした気分になった。
莉子「お疲れ様です」
と笑う。
その笑顔に神はキュンと胸が高鳴った。
神(可愛い…本当…可愛い…)
莉子も体育館での一件はすっかり頭から消えていたが福田と清田を見て(あ!そうだった‼︎)と慌てた。
莉子(ど、ど、どうしよう…謝らなきゃ…いけないけど…)
お腹を空かせているのだろう、嬉々とした表情で清田も福田も食べる気満々で席に着いている。
莉子「…」(今じゃない…か…)
莉子がお茶を配ろうとした時、席について食事が始まるのを今か今かと待っている清田の頭を牧がガシッと掴んだ。
清田「ヒィ‼︎」
牧「お前…忘れてないよな?」
ドスの効いた声で話しかけられた清田は『忘れてません!』と飛び上がった。
慌てて莉子の元へ駆け寄ると『わわわわわわわわわわわわわわ悪かった!』と頭を下げる。
清田が勢いよく頭を下げたのを目をパチクリさせながら見つめた後、莉子もまた申し訳なさそうに『ううん。私こそごめんね。偉そうなこと言って…』と頭を下げた。
清田が『おう。気にすんな』と言いながら頭を上げようとすると後頭部をガシッと掴まれグッと押し込まれる。
清田「ぐっ…」
牧「いや。このバカが言ったのはただの暴言だが木村さんのは忠告だ。モノが違う。本当に申し訳ない事をした…」
と牧が清田の頭を掴んだまま深々と頭を下げる。
高砂もやって来て『俺達からも謝罪するよ…申し訳なかった』と神と共に頭を下げた。
海南の選手達に頭を下げられた莉子は大慌てで『や、やめてください』とタジタジだ。
莉子「わ、私が悪いんです。私が言う事じゃなかったのに余計な事をしたのがいけなかったんです。本当にすみませんでした。これからは自分の仕事を全うしようと思います」
と莉子も頭を下げる。これは莉子の本心だった。仮にあの発言を牧や藤真がしていたならこんな事にはならなかっただろう。
嫌味でも皮肉でもなく『黙って雑用しよう』と決意した。
海南メンバーが言葉に詰まっていると藤真が『そろそろいいだろ?みんな待ち焦がれてるぞ』と呼びに来る。
牧「あぁ…そうだな。最後に一言だけ…」
と言うと莉子を見た。真っ直ぐ見つめられ莉子は背筋を伸ばした。
牧「木村さん」
莉子「は、はい」
何を言われるのだろうか…と不安そうに牧を見つめ返す。
牧「微妙な始まり方になってしまったけど君の仕事ぶりには感服した。明日からもよろしく」
と莉子に向かって手を差し出す。
莉子「はいっ!よろしくお願いします‼︎」
と言うと両手で包み込む様に牧の手を握り返した。
ニコニコと笑い嬉しそうに牧を見上げる莉子。牧の表情もフッと和らぐ。
そんな2人を見て神の表情が強張る。
神(なんか嫌だ…)
なんだか2人の手を取り合う姿を見ていると心が曇る。
今すぐにでも握り合う手に手刀を喰らわせたくなるが確実に牧の手を覆っている莉子の手に当たるのでグッと我慢する。
神(長いな…もういいだろ…)
と我慢の限界に達した神はニッコリと笑い『そろそろご飯にしませんか?』と牧を見た。
牧「?お、おう…そ、そうだな…」(な、なんだ?)
神の圧に困惑した牧は手を引っ込めた。
牧に対して強気の神も莉子にはめっぽう弱い。
すぐそこに莉子がいる…。それだけで緊張してしまう。
神(つい何も考えないでこんな近くまで来ちゃった…あ、汗の匂いとか大丈夫かな…)
チラッと莉子を見ればばっちり目が合う。
莉子は一瞬、驚いたように目を見開いた後、取り繕うような笑顔を見せた。
神「‼︎⁉︎」
完全な愛想笑いも神には刺激が強すぎた。
莉子の笑顔にどうしていいのかわからず神はプイッと顔を背けてしまった。
莉子「?」
神(可愛い!可愛い!可愛い!どうしよう!)
どうしようもなく胸がときめく。顔が赤くなっているのが自分でもわかる。
神は赤面を隠すように莉子から離れ席に着く。
神が席に着くと残っていたメンバーと莉子が空いている席に着く。
『いただきます』の挨拶が終わると食堂が賑やかになる。
照り焼きを一口食べた選手達の口から次々と『美味い!』という言葉が飛び交う。
甘めの味付けで隠し味だろうか仄かにニンニクの香りが鼻に抜ける。その香りがまた食欲をそそる。
神「美味い…」
ポツリとつぶやかれた神の言葉を莉子は聞き逃さなかった。
チラッと神を見る。
飄々とプレーし虎視眈々とゴールを狙うクールでクレバーなイメージのある神が自分の作った料理を口にして目を輝かせて二口目に手を伸ばすのを見て嬉しくなる。
莉子(良かった…料理は気に入ってもらえたみたい…)
ホッとしている間に莉子の料理はあっという間に無くなり味噌汁の鍋もカラになったのだった。