神宗一郎と恋するお話
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翌日 大会当日
海南大附属高校の体育館前に観光バスが停まっていた。
フロントガラス上方には『とちぎ国体 神奈川県バスケットボール競技 少年男子』と書かれた紙が貼られている。
天気は晴天。
莉子と彦一、一年生である清田と流川も2人と共に体育館とバスを往復し荷物を運んでいた。
最後の荷物を流川が運んでくる。
莉子「ありがとう」(可愛い…)
目をシパシパさせた流川を見ていると寝起きの悠人を思い出し母性が溢れてくる。
清田が『もう準備する物いいのか?』と莉子に聞く。
莉子「うん。手伝ってくれてありがとう。助かりました」
と笑うと清田は『おう。じゃあ俺、もう行くから』と言うと神の方へ歩いて行った。
彦一「荷物、チェックしながらトランクに入れよか」
莉子「うん」
作業をしているとあっという間に時間が経った。
間も無く集合時間になる。
バスの周辺には選手達が集まってきていた。
それを見た莉子が『彦一君、選手の乗り込みチェックお願い。荷物は私がするから』と言うと彦一は『わかった』と慌ただしくバスの入り口に向かう。
腕時計で時間を確認した清田が神に声をかける。
清田「そろそろ俺らも行きましょ」
神「…俺、トイレ行くから先に行ってていいよ」
清田「じゃあ俺、先に行ってますね」
神「うん」
神は体育館横のトイレに向かう。
ゆっくりと用を足し、いつもよりもさらに丁寧にゆっくりと時間をかけて手を洗った。
戻ると牧がバスに乗り込むのが見えた。
周囲にはもう誰もいない。
神(よし…)
バスの入り口に立つ彦一が来た選手から名簿にチェックを入れている。
神はみんなが乗り込んだのを確認してから彦一の方へ向かって歩いていく。
彦一「おはようございます」
神「おはよう」
彦一は名簿にチェックを入れる。
彦一の隣で莉子が持ち物の最終チェックを終え、荷物を入れるのを手伝ってくれた運転手にお礼を言っている。
バスの入り口にやってきた莉子に神は『おはよう』と声をかけた。
顔を上げた莉子の表情がぱぁぁぁと明るくなる。
神の胸の奥がじんわりと暖かくなる。
莉子「おはようございます!」
と笑う莉子の横には目を瞑りこっくりこっくりと船を漕いで立っている流川。
寝坊遅刻の常習犯である流川を家まで迎えにいくことは事前に聞いていた神はクスッと笑って流川に『起きろよ』と肩を揺らす。
流川は目を開けると『…っス』と挨拶らしきものを返してきた。
神「おはよう。先にバスに乗って寝ろ。立ったままは危ないだろ」
と言うと流川は頭を掻いてぼーっと神を見た。
流川「……」
流川は神の言っていることを理解したのか何も言わず気だるそうにあくびを一つするとフラフラした足取りでバスに乗り込もうと足をあげた。
莉子「流川君、手伝ってくれてありがとう」
無反応のままバスに乗り込んでしまった流川の後ろ姿を見て2人は呆れたように笑う。
莉子「試合中はすごく頼りになるんですけど…」
神「プレイ中とのギャップは流川がダントツのNo. 1だな」
と腕を組んで流川の後ろ姿を見ている神。
校舎の方から高頭がやって来た。
高頭「おはよう」
神・莉子・彦一「おはようございます」
高頭が彦一に『全員揃ってるか?』と問うと名簿を見て『はいっ』と元気よく返事をした。
莉子「荷物の搬入も終わりました」
と報告すると高頭が『それじゃあ出発だ』とバスに乗り込んだ。
神が彦一に『先いいよ』と譲った。
彦一が『すんません』と監督の後に続く。
神が彦一の後ろに続くと振り返りバスのステップに足をかけた莉子に向かって『大丈夫?1段目は少し高いから気をつけてね』と手を差し出すと莉子は一瞬、戸惑うが『あ、ありがとうございます…』と手を置く。
神が莉子の手をキュッと掴むとゆっくりと引っ張り上げる。
莉子は耳まで真っ赤にすると『も、もうここからは大丈夫ですから…」と俯いてしまった。
神はおかしそうに笑うと『ん、わかった』と前に向き直り席に着く。
神は1番前の窓側の席に着く。
莉子は『う…』と固まった。
空いている席は高頭の隣と神の隣のみ。
莉子は一瞬、高頭の隣へ視線を向けた。
けれど、そこには監督が座っている。
莉子(……ここしかないよね)
少しだけ迷った後、神に声をかける。
莉子「すみません……隣、いいですか?」
神は『もちろん』と笑った。
2人のやり取りを見ていた通路側に座る宮城と清田は顔を見合わせた。
宮城「……」(狙ったな…)
清田「……」(だから直前になってトイレに行ってみんなとタイミングをずらしたのか…)
莉子「ありがとうございます。失礼します」
莉子が座るとバスがゆっくりと動き出す。
莉子は持っていたバインダーから大会パンフレットを引っ張り出すとペラペラとめくり何かを確認している。
神は深く腰掛けるとイヤフォンをし莉子の横顔を横目で盗み見る神。
真剣にパンフレットを読んでいる莉子。
神は昨晩の事を思い出していた。
あの後、莉子は涙を拭い『神さんの言った通りですね。本当にすっきりしました』と笑った。
自分の気持ちを伝える事が苦手な莉子が『すっきりしました』と言ったことに神は安堵していた。
神はそっと目を閉じた。
神(そう思えてもらえて本当によかった…。もっと頼られる男にならないとな…後は…)
神は目を開けた。莉子はやっぱり真剣な表情でプリントを読んでいる。
神(…木村さんの為に何か『結果』を残したいな…チームとしても…個人としても…)
裏方仕事で日の目を見ないマネージャーに『日本一のチームに貢献した』という経験をさせてあげたい。
そうすればきっともっと笑ってくれるはずだから。
神(頑張ろ…)
神は莉子からほんの少しだけ体を離した。これ以上近くにいると莉子のことばかり考えてしまう。
神(試合に向けて気持ちをしっかり作っておかないと…)
イヤフォンから流れる音楽をぼんやりと聞きながら、神はゆっくりと意識を手放していった。
問題なく会場入りし控え室で試合の開始を待つ。
KANAGAWAのジャージを着る12人の選手が高頭を囲むように立っている。
高頭「みんなに回してくれ」
高頭がメンバー表とユニフォームが入った紙袋を莉子に渡す。
莉子「はい」
受け取ったユニフォームを選手達に配っていく。
4.牧 紳一 (海南3年)
5.藤真健司 (翔陽3年)
6.高砂一馬 (海南3年)
7.三井 寿 (湘北3年)
8.花形 透 (翔陽3年)
9.長谷川一志 (翔陽3年)
10.神 宗一郎 (海南2年)
11.宮城リョータ (湘北2年)
12.仙道 彰 (陵南2年)
13.福田吉兆 (陵南2年)
14.清田信長 (海南1年)
15.流川 楓 (湘北1年)
莉子が牧、藤真、高砂…と名簿の順番にユニフォームを渡していく。
10番・神
莉子「どうぞ」
と紙袋からユニフォームを出し『頑張って下さい』と手渡す。
神「うん」
12番・仙道、13番・福田
莉子「仙道さん、頑張って下さいね‼︎」
仙道「あぁ。サンキュ」
笑顔で受け取る仙道。
莉子「福田さんもどうぞ」
福田「……おう」
と言葉少なく受け取る福田。
最後に流川にユニフォームを渡す。
流川はペコッと頭を下げで受け取る。
莉子「頑張ってね!」
流川がコクっと頷くのを見て莉子は立っていた場所に戻る。
高頭「さあ、いよいよスタートだ。牧、目標は?」
監督の問いに牧がギラッと目を光らせる。
牧「もちろん優勝です」
高頭「よし」
高頭が牧の解答に満足げに笑う。
その時、控え室のドアがノックされた。
莉子が『はい』とドアを開けると大会スタッフが顔を覗かせる。
「もう少しで時間になります。準備をお願いします」
莉子「はい。わかりました」
ドアを閉めると高頭が『先発は、牧、仙道、神、流川、花形だ。着替えたら移動だ』と指示を出すと控室を出て行った。それに続いて莉子も控室を出た。
莉子(いよいよだ…)
莉子は胸の前で手を握ると(みんなが活躍できますように…)と祈った。
国体の会場
選手達の準備が終わり控室から会場へと移動する選手達。
最後尾には莉子。
正マネージャーとしてベンチに入ったのは莉子だ。バスケ選手である彦一の方がいいのではないかと進言したが彦一本人からスカウティングの為に自由に動き回りたいと言われ莉子がマネージャーとして入る事になった。
緊張した面持ちの莉子
莉子は心細くなっていた。
普段は彩子の指示があり、公式の試合ではベンチに座るのも当然、彩子だった。
慣れている神と不慣れな自分を比べて不安が大きくなってきた。
莉子「……」(ちゃんとできるかな…)
会場の扉の前で一度、立ち止まる。
先頭を歩いていた牧が体育館に入っていく。
フロアに入ってきた神奈川メンバーを見て観客が騒ぎ出す。
「おおお‼︎来た来た‼︎‼︎」
「あれが神奈川選抜だ‼︎」
観衆の注目は当然ながら、夏の総体2位の、海南メンバーに向けられている。
「インターハイ2位の海南の登場だ!」
「キャプテンの牧‼︎」
「エースシューターの神‼︎」
「魅せてくれよー‼︎期待してるぞー‼︎」
莉子は神を見た。神は穏やかな表情を浮かべている。
莉子「……」(全国区の選手なんだなぁ…。神奈川で1番得点してる選手だし…。有名なのは当然…か…)
少し仲良くなったと思って身近に感じていた神が遠い存在の様に感じてしまう。
緊張と寂しさを感じ(しっかりしなきゃ)と自身を奮い立たせながらスコアブックとストップウォッチの準備をしていると神が『大丈夫?』と声をかけて来た。
莉子「え?」
莉子が顔を上げると優しく笑う神と目が合った。
神は眉間を指差し『ここ、皺が寄ってるよ』と笑った。
莉子「あ…。わ、私…公式戦でベンチに入るの今日が初めてなんです。だから緊張しちゃって…」
神「そうなんだ。じゃあますます頑張らないとな」
莉子「ん?どういう意味ですか?」
神「緊張なんて吹っ飛ぶくらいおもしろい試合見せてあげる」
と言うと神は『アップ行ってくる』とコートに入っていく。
莉子に背中を向けているため表情は見えないが真っ赤な耳を見て莉子は吹き出し『もう吹っ飛んじゃったかも』と笑った。
アップが終わり選手達がベンチに戻ってくる。
高頭が立ち上がると自然と選手達は高頭を取り囲む様に立った。
高頭が選手達を見回した後、牧に視線を向けた。
高頭「牧、ゲームメイクは任せた。観客に神奈川の力を見せて来い‼︎」
スタメン5人「はいっ‼︎‼︎‼︎」
牧が選手たちを呼ぶと全員で円陣を組む。
神が清田との間にスペースを作ると『木村さん』と呼んだ。
莉子「え?」
キョトンとしている莉子に向かって手招きをして作ったスペースを指差した。
莉子が『え…でも…』と戸惑っていると牧と、藤真が『マネージャーも来い』と手招きする。
莉子は(本当にいいのかな…)と思いながらもみんなを待たせちゃいけないと小走りで選手達の元に向かう。
そして莉子が神と清田の間に入る。
神が莉子の肩に手を置く。
牧「この試合には特に作戦はない‼︎思う存分暴れるぞ‼︎」
一同「おう‼︎‼︎‼︎」
そして、キャプテンの牧が一声。
牧「よし、行くぞ‼︎」
一同「オウ‼︎‼︎‼︎‼︎」
組んでいた肩が離れると神が莉子に向かって手を挙げる。
莉子は首を傾げると神はクスッと笑ってあげた手を軽く叩きハイタッチを要求。
莉子は『あ』と小さく声を漏らすと神の手を叩いた。
神「行ってきます」
莉子「頑張って下さい‼︎」
神が莉子にグッと拳を握って返事を返した。
いよいよ神奈川選抜、日本一への挑戦が始まる。
神奈川選抜のスターティングメンバーがライン上に立ち審判から呼ばれるのを待っている。
並んで立つスターティングメンバーを見て、観客からさらにどよめきが起きる。
「ちょっと待て…‼︎スタメンに海南の選手が2人しか入ってないぞ」
「ホントだ!牧と神だけだ!」
全国の舞台でプレー経験がない仙道、花形は、未知の強豪である。
「あの8番(花形)と12番(仙道)は、そんなにすげえ奴なのか?」
「どっちもデケエぞ。海南は小柄だから、高さ対策で入れたってことか?」
声援を聞いていた莉子が仙道を見上げた。
仙道「ん?どうした?」
莉子「仙道さんって……こんなにすごいのに、まだ全国では知られてないんだなって思って…」
莉子の言葉に仙道は目をパチクリさせると『ははは』と笑った。
仙道「有名になってほしいか?」
莉子「はい。みんなをびっくりさせてほしいです」
仙道「まかせとけ」
と自信ありげにニヤリと笑った。
男性の声援に混ざって黄色い声援も飛び交っている。
「藤真くぅーーーーーーん‼︎」
「流川くーーーーーーん‼︎頑張ってぇ‼︎‼︎」
莉子「……」(晴子が聞いてたら拗ねちゃいそう…)
『ピーーーーーーーーー‼︎‼︎‼︎』
『両チーム、センターサークルへ!』
審判に呼びこまれ、両軍メンバーがコートに入る。
センターラインを挟み、両チームが向かい合う。
神奈川×佐賀。
ティップ・オフ。
「オウ‼︎‼︎‼︎」
審判がボールを上に放った。
バッシイイ‼︎‼︎
センタージャンプは花形が制し、神奈川ボールでスタート。
牧「よーーっし、マイボール!」
そして、一本指を立てる。
牧「さあ、一本行くぞ‼︎‼︎」
一同「オウ!‼︎‼︎‼︎」
牧が流川にボールを回す。
「おおおおーーーーー‼︎」
歓声の向き先はこの男。
「来た、15番! 湘北の流川だ!」
「さあ、さっそく1on1来るか!?」
しかし、観衆の希望に反し、流川は一度牧へボールを戻す。
そして、ボールは牧から仙道へ。
莉子「仙道さん!」
「行くか!」
ダム‼︎‼︎
仙道、カットイン。
相手ディフェンスをあっさり抜く。
「おおお‼︎12番、速ええーー‼︎‼︎」
キュキュッ‼︎
佐賀ディフェンスが動く。
ビッ‼︎
仙道、ヘルプに来た相手センターを尻目にノールックパス。
「なにィィいいいーー‼︎‼︎⁉︎」
「なんだ、そのパスは…‼︎⁉︎」
そのボールをフリーで受けた花形が楽々ゴール。
バス‼︎‼︎
神奈川 2
佐賀 0
神奈川、先制。
「決まったあああーーーーー‼︎‼︎」
「上手い、12番‼︎‼︎凄いノールックパス‼︎」
「その前のカットインもメチャクチャ速かったぞ‼︎」
「さすが海南のメンバーを押しのけて、スタメン入りしただけのことはあるぜ」
清田「ぐぬぬぬぬっ‼︎‼︎」
そこへ牧の声が響く。
牧「よーし‼︎ナイスカットだ、仙道!」
仙道が佐賀のボールをスティール。
清田(仙道…‼︎)
ボールを奪った仙道、ニコリ。
仙道「さあ、行こーか」
ダム‼︎‼︎
神奈川のカウンター。仙道がドリブルで佐賀陣内に突っ込む。
迎え撃つ佐賀ディフェンスは2人。
「12番、止めろ‼︎‼︎」
1対2、
しかし、仙道は構わず突っ込む。
ダム‼︎‼︎
「行った‼︎‼︎‼︎」
「アイツ、1対2でも行く気だぞ…⁉︎」
ダン‼︎‼︎
佐賀ディフェンスの2人が跳ぶ。
が、仙道は空中で2人のブロックをかわす。
「な……‼︎⁉︎」
バス‼︎‼︎
神奈川 4
佐賀 0
「うわああー‼︎ダブルクラーーッチ‼︎」
「またアイツだ‼︎12番、仙道!」
「あの12番、なんかスゲェぞ‼︎‼︎動きがタダモンじゃねえ‼︎」
初っ端のノールックパス、そして、ダブルクラッチ、
仙道がその技術を見せつける。
「うっわあああ‼︎‼︎スゲエぇぇぇ‼︎‼︎」
観客が仙道のプレイに驚愕する。
しかし仙道はこれだけに留まらない。
続く佐賀の攻撃…
バッシイイ‼︎‼︎
仙道が相手シュートをブロック。
「また12番、仙道‼︎‼︎」
「今度はブロックショット‼︎‼︎」
「アイツ、なんでもアリか…⁉︎」
仙道「走れ‼︎」
ビッ‼︎‼︎
前線を走る流川へ、アメフトのタッチダウンさながらの超ロングパスを通す。
「流川だ‼︎‼︎」
フリーで受け取った流川、一気にゴールへ。
ドガアアアアーーーーーー‼︎‼︎
ダンクシュート、炸裂。
神奈川 6
佐賀 0
「うわあああーーー‼︎‼︎ダンク来たああーーー‼︎‼︎」
彦一「おおおおおーーーーー‼︎‼︎」
莉子「流川君‼︎」
「ここで15番、流川だ!」
「湘北の流川楓‼︎いきなりダンク‼︎」
「その前の仙道のパスも凄かったぞ‼︎‼︎」
仙道、ディフェンスに戻ってくる流川にひと言。
「いいところに走ってたな。さすがだぜ」
流川もひと言。
流川「フン、たりめーだ」
観客席では彦一が泣いている。
彦一「仙道さん…、なんでそんなパスができるんや…!天才や…、ホンマの天才や…‼︎」
神奈川は完全に波に乗った。
次の佐賀、今度は牧のスティール。
バッシイイ‼︎‼︎
牧「仙道‼︎‼︎」
ボールは牧から仙道へ。
ビッ‼︎‼︎
そして仙道から神へ。
清田「神さん‼︎」
瞬間、観客が騒ぐ。
「おおっと、お次は海南の神‼︎」
「スリー、あるぞ!」
「打てええーーー、神‼︎‼︎お前ならどこから打っても入る‼︎」
その言葉通り3pラインの1メートル手前からシュートを放つ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎本当に打ちやがった‼︎‼︎」
スパッ‼︎‼︎
どよめく会場。
「入れたぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」
「あんな所から放って入るか⁉︎普通⁉︎」
「そこから放る根性もすげぇが実際決めるのもすげぇ‼︎‼︎」
仙道がニコリと笑い神に声を掛ける。
仙道「ナイシュ」
と手を挙げる。
神「ナイスパス」
仙道と神のハイタッチ。
神奈川、猛烈なスタートダッシュ。
前半終了。
神奈川 69
佐賀 18
「うおおおおーーーーー‼︎‼︎圧倒的‼︎」
「こりゃ勝負にならん‼︎‼︎」
圧倒的リードに勝敗は既に決していた。
会場は神奈川の強さに唖然としていた。
このチームは海南だけじゃなかった。仙道、流川という超高校級プレーヤーがいた。
控え選手が出てもペースが落ちなかった。
まさに、神奈川全体の層の厚さを知らしめた試合だった。
そして会場には変わった反応も出てきていた。
「藤真くん目当てで来たけど、神奈川選抜みんなカッコよくない?」
「ツンツン頭の12番(仙道)もカッコよかったし」
「私は15番の1年生の子(流川)がいいわ。ちょっとニヒルな感じで」
「私は10番(神)‼︎笑顔が可愛いし爽やかだわ‼︎‼︎」
ザワザワザワ………
かくして、神奈川選抜は初日にして、いろんな意味で会場を味方に付けたのだった。
海南大附属高校の体育館前に観光バスが停まっていた。
フロントガラス上方には『とちぎ国体 神奈川県バスケットボール競技 少年男子』と書かれた紙が貼られている。
天気は晴天。
莉子と彦一、一年生である清田と流川も2人と共に体育館とバスを往復し荷物を運んでいた。
最後の荷物を流川が運んでくる。
莉子「ありがとう」(可愛い…)
目をシパシパさせた流川を見ていると寝起きの悠人を思い出し母性が溢れてくる。
清田が『もう準備する物いいのか?』と莉子に聞く。
莉子「うん。手伝ってくれてありがとう。助かりました」
と笑うと清田は『おう。じゃあ俺、もう行くから』と言うと神の方へ歩いて行った。
彦一「荷物、チェックしながらトランクに入れよか」
莉子「うん」
作業をしているとあっという間に時間が経った。
間も無く集合時間になる。
バスの周辺には選手達が集まってきていた。
それを見た莉子が『彦一君、選手の乗り込みチェックお願い。荷物は私がするから』と言うと彦一は『わかった』と慌ただしくバスの入り口に向かう。
腕時計で時間を確認した清田が神に声をかける。
清田「そろそろ俺らも行きましょ」
神「…俺、トイレ行くから先に行ってていいよ」
清田「じゃあ俺、先に行ってますね」
神「うん」
神は体育館横のトイレに向かう。
ゆっくりと用を足し、いつもよりもさらに丁寧にゆっくりと時間をかけて手を洗った。
戻ると牧がバスに乗り込むのが見えた。
周囲にはもう誰もいない。
神(よし…)
バスの入り口に立つ彦一が来た選手から名簿にチェックを入れている。
神はみんなが乗り込んだのを確認してから彦一の方へ向かって歩いていく。
彦一「おはようございます」
神「おはよう」
彦一は名簿にチェックを入れる。
彦一の隣で莉子が持ち物の最終チェックを終え、荷物を入れるのを手伝ってくれた運転手にお礼を言っている。
バスの入り口にやってきた莉子に神は『おはよう』と声をかけた。
顔を上げた莉子の表情がぱぁぁぁと明るくなる。
神の胸の奥がじんわりと暖かくなる。
莉子「おはようございます!」
と笑う莉子の横には目を瞑りこっくりこっくりと船を漕いで立っている流川。
寝坊遅刻の常習犯である流川を家まで迎えにいくことは事前に聞いていた神はクスッと笑って流川に『起きろよ』と肩を揺らす。
流川は目を開けると『…っス』と挨拶らしきものを返してきた。
神「おはよう。先にバスに乗って寝ろ。立ったままは危ないだろ」
と言うと流川は頭を掻いてぼーっと神を見た。
流川「……」
流川は神の言っていることを理解したのか何も言わず気だるそうにあくびを一つするとフラフラした足取りでバスに乗り込もうと足をあげた。
莉子「流川君、手伝ってくれてありがとう」
無反応のままバスに乗り込んでしまった流川の後ろ姿を見て2人は呆れたように笑う。
莉子「試合中はすごく頼りになるんですけど…」
神「プレイ中とのギャップは流川がダントツのNo. 1だな」
と腕を組んで流川の後ろ姿を見ている神。
校舎の方から高頭がやって来た。
高頭「おはよう」
神・莉子・彦一「おはようございます」
高頭が彦一に『全員揃ってるか?』と問うと名簿を見て『はいっ』と元気よく返事をした。
莉子「荷物の搬入も終わりました」
と報告すると高頭が『それじゃあ出発だ』とバスに乗り込んだ。
神が彦一に『先いいよ』と譲った。
彦一が『すんません』と監督の後に続く。
神が彦一の後ろに続くと振り返りバスのステップに足をかけた莉子に向かって『大丈夫?1段目は少し高いから気をつけてね』と手を差し出すと莉子は一瞬、戸惑うが『あ、ありがとうございます…』と手を置く。
神が莉子の手をキュッと掴むとゆっくりと引っ張り上げる。
莉子は耳まで真っ赤にすると『も、もうここからは大丈夫ですから…」と俯いてしまった。
神はおかしそうに笑うと『ん、わかった』と前に向き直り席に着く。
神は1番前の窓側の席に着く。
莉子は『う…』と固まった。
空いている席は高頭の隣と神の隣のみ。
莉子は一瞬、高頭の隣へ視線を向けた。
けれど、そこには監督が座っている。
莉子(……ここしかないよね)
少しだけ迷った後、神に声をかける。
莉子「すみません……隣、いいですか?」
神は『もちろん』と笑った。
2人のやり取りを見ていた通路側に座る宮城と清田は顔を見合わせた。
宮城「……」(狙ったな…)
清田「……」(だから直前になってトイレに行ってみんなとタイミングをずらしたのか…)
莉子「ありがとうございます。失礼します」
莉子が座るとバスがゆっくりと動き出す。
莉子は持っていたバインダーから大会パンフレットを引っ張り出すとペラペラとめくり何かを確認している。
神は深く腰掛けるとイヤフォンをし莉子の横顔を横目で盗み見る神。
真剣にパンフレットを読んでいる莉子。
神は昨晩の事を思い出していた。
あの後、莉子は涙を拭い『神さんの言った通りですね。本当にすっきりしました』と笑った。
自分の気持ちを伝える事が苦手な莉子が『すっきりしました』と言ったことに神は安堵していた。
神はそっと目を閉じた。
神(そう思えてもらえて本当によかった…。もっと頼られる男にならないとな…後は…)
神は目を開けた。莉子はやっぱり真剣な表情でプリントを読んでいる。
神(…木村さんの為に何か『結果』を残したいな…チームとしても…個人としても…)
裏方仕事で日の目を見ないマネージャーに『日本一のチームに貢献した』という経験をさせてあげたい。
そうすればきっともっと笑ってくれるはずだから。
神(頑張ろ…)
神は莉子からほんの少しだけ体を離した。これ以上近くにいると莉子のことばかり考えてしまう。
神(試合に向けて気持ちをしっかり作っておかないと…)
イヤフォンから流れる音楽をぼんやりと聞きながら、神はゆっくりと意識を手放していった。
問題なく会場入りし控え室で試合の開始を待つ。
KANAGAWAのジャージを着る12人の選手が高頭を囲むように立っている。
高頭「みんなに回してくれ」
高頭がメンバー表とユニフォームが入った紙袋を莉子に渡す。
莉子「はい」
受け取ったユニフォームを選手達に配っていく。
4.牧 紳一 (海南3年)
5.藤真健司 (翔陽3年)
6.高砂一馬 (海南3年)
7.三井 寿 (湘北3年)
8.花形 透 (翔陽3年)
9.長谷川一志 (翔陽3年)
10.神 宗一郎 (海南2年)
11.宮城リョータ (湘北2年)
12.仙道 彰 (陵南2年)
13.福田吉兆 (陵南2年)
14.清田信長 (海南1年)
15.流川 楓 (湘北1年)
莉子が牧、藤真、高砂…と名簿の順番にユニフォームを渡していく。
10番・神
莉子「どうぞ」
と紙袋からユニフォームを出し『頑張って下さい』と手渡す。
神「うん」
12番・仙道、13番・福田
莉子「仙道さん、頑張って下さいね‼︎」
仙道「あぁ。サンキュ」
笑顔で受け取る仙道。
莉子「福田さんもどうぞ」
福田「……おう」
と言葉少なく受け取る福田。
最後に流川にユニフォームを渡す。
流川はペコッと頭を下げで受け取る。
莉子「頑張ってね!」
流川がコクっと頷くのを見て莉子は立っていた場所に戻る。
高頭「さあ、いよいよスタートだ。牧、目標は?」
監督の問いに牧がギラッと目を光らせる。
牧「もちろん優勝です」
高頭「よし」
高頭が牧の解答に満足げに笑う。
その時、控え室のドアがノックされた。
莉子が『はい』とドアを開けると大会スタッフが顔を覗かせる。
「もう少しで時間になります。準備をお願いします」
莉子「はい。わかりました」
ドアを閉めると高頭が『先発は、牧、仙道、神、流川、花形だ。着替えたら移動だ』と指示を出すと控室を出て行った。それに続いて莉子も控室を出た。
莉子(いよいよだ…)
莉子は胸の前で手を握ると(みんなが活躍できますように…)と祈った。
国体の会場
選手達の準備が終わり控室から会場へと移動する選手達。
最後尾には莉子。
正マネージャーとしてベンチに入ったのは莉子だ。バスケ選手である彦一の方がいいのではないかと進言したが彦一本人からスカウティングの為に自由に動き回りたいと言われ莉子がマネージャーとして入る事になった。
緊張した面持ちの莉子
莉子は心細くなっていた。
普段は彩子の指示があり、公式の試合ではベンチに座るのも当然、彩子だった。
慣れている神と不慣れな自分を比べて不安が大きくなってきた。
莉子「……」(ちゃんとできるかな…)
会場の扉の前で一度、立ち止まる。
先頭を歩いていた牧が体育館に入っていく。
フロアに入ってきた神奈川メンバーを見て観客が騒ぎ出す。
「おおお‼︎来た来た‼︎‼︎」
「あれが神奈川選抜だ‼︎」
観衆の注目は当然ながら、夏の総体2位の、海南メンバーに向けられている。
「インターハイ2位の海南の登場だ!」
「キャプテンの牧‼︎」
「エースシューターの神‼︎」
「魅せてくれよー‼︎期待してるぞー‼︎」
莉子は神を見た。神は穏やかな表情を浮かべている。
莉子「……」(全国区の選手なんだなぁ…。神奈川で1番得点してる選手だし…。有名なのは当然…か…)
少し仲良くなったと思って身近に感じていた神が遠い存在の様に感じてしまう。
緊張と寂しさを感じ(しっかりしなきゃ)と自身を奮い立たせながらスコアブックとストップウォッチの準備をしていると神が『大丈夫?』と声をかけて来た。
莉子「え?」
莉子が顔を上げると優しく笑う神と目が合った。
神は眉間を指差し『ここ、皺が寄ってるよ』と笑った。
莉子「あ…。わ、私…公式戦でベンチに入るの今日が初めてなんです。だから緊張しちゃって…」
神「そうなんだ。じゃあますます頑張らないとな」
莉子「ん?どういう意味ですか?」
神「緊張なんて吹っ飛ぶくらいおもしろい試合見せてあげる」
と言うと神は『アップ行ってくる』とコートに入っていく。
莉子に背中を向けているため表情は見えないが真っ赤な耳を見て莉子は吹き出し『もう吹っ飛んじゃったかも』と笑った。
アップが終わり選手達がベンチに戻ってくる。
高頭が立ち上がると自然と選手達は高頭を取り囲む様に立った。
高頭が選手達を見回した後、牧に視線を向けた。
高頭「牧、ゲームメイクは任せた。観客に神奈川の力を見せて来い‼︎」
スタメン5人「はいっ‼︎‼︎‼︎」
牧が選手たちを呼ぶと全員で円陣を組む。
神が清田との間にスペースを作ると『木村さん』と呼んだ。
莉子「え?」
キョトンとしている莉子に向かって手招きをして作ったスペースを指差した。
莉子が『え…でも…』と戸惑っていると牧と、藤真が『マネージャーも来い』と手招きする。
莉子は(本当にいいのかな…)と思いながらもみんなを待たせちゃいけないと小走りで選手達の元に向かう。
そして莉子が神と清田の間に入る。
神が莉子の肩に手を置く。
牧「この試合には特に作戦はない‼︎思う存分暴れるぞ‼︎」
一同「おう‼︎‼︎‼︎」
そして、キャプテンの牧が一声。
牧「よし、行くぞ‼︎」
一同「オウ‼︎‼︎‼︎‼︎」
組んでいた肩が離れると神が莉子に向かって手を挙げる。
莉子は首を傾げると神はクスッと笑ってあげた手を軽く叩きハイタッチを要求。
莉子は『あ』と小さく声を漏らすと神の手を叩いた。
神「行ってきます」
莉子「頑張って下さい‼︎」
神が莉子にグッと拳を握って返事を返した。
いよいよ神奈川選抜、日本一への挑戦が始まる。
神奈川選抜のスターティングメンバーがライン上に立ち審判から呼ばれるのを待っている。
並んで立つスターティングメンバーを見て、観客からさらにどよめきが起きる。
「ちょっと待て…‼︎スタメンに海南の選手が2人しか入ってないぞ」
「ホントだ!牧と神だけだ!」
全国の舞台でプレー経験がない仙道、花形は、未知の強豪である。
「あの8番(花形)と12番(仙道)は、そんなにすげえ奴なのか?」
「どっちもデケエぞ。海南は小柄だから、高さ対策で入れたってことか?」
声援を聞いていた莉子が仙道を見上げた。
仙道「ん?どうした?」
莉子「仙道さんって……こんなにすごいのに、まだ全国では知られてないんだなって思って…」
莉子の言葉に仙道は目をパチクリさせると『ははは』と笑った。
仙道「有名になってほしいか?」
莉子「はい。みんなをびっくりさせてほしいです」
仙道「まかせとけ」
と自信ありげにニヤリと笑った。
男性の声援に混ざって黄色い声援も飛び交っている。
「藤真くぅーーーーーーん‼︎」
「流川くーーーーーーん‼︎頑張ってぇ‼︎‼︎」
莉子「……」(晴子が聞いてたら拗ねちゃいそう…)
『ピーーーーーーーーー‼︎‼︎‼︎』
『両チーム、センターサークルへ!』
審判に呼びこまれ、両軍メンバーがコートに入る。
センターラインを挟み、両チームが向かい合う。
神奈川×佐賀。
ティップ・オフ。
「オウ‼︎‼︎‼︎」
審判がボールを上に放った。
バッシイイ‼︎‼︎
センタージャンプは花形が制し、神奈川ボールでスタート。
牧「よーーっし、マイボール!」
そして、一本指を立てる。
牧「さあ、一本行くぞ‼︎‼︎」
一同「オウ!‼︎‼︎‼︎」
牧が流川にボールを回す。
「おおおおーーーーー‼︎」
歓声の向き先はこの男。
「来た、15番! 湘北の流川だ!」
「さあ、さっそく1on1来るか!?」
しかし、観衆の希望に反し、流川は一度牧へボールを戻す。
そして、ボールは牧から仙道へ。
莉子「仙道さん!」
「行くか!」
ダム‼︎‼︎
仙道、カットイン。
相手ディフェンスをあっさり抜く。
「おおお‼︎12番、速ええーー‼︎‼︎」
キュキュッ‼︎
佐賀ディフェンスが動く。
ビッ‼︎
仙道、ヘルプに来た相手センターを尻目にノールックパス。
「なにィィいいいーー‼︎‼︎⁉︎」
「なんだ、そのパスは…‼︎⁉︎」
そのボールをフリーで受けた花形が楽々ゴール。
バス‼︎‼︎
神奈川 2
佐賀 0
神奈川、先制。
「決まったあああーーーーー‼︎‼︎」
「上手い、12番‼︎‼︎凄いノールックパス‼︎」
「その前のカットインもメチャクチャ速かったぞ‼︎」
「さすが海南のメンバーを押しのけて、スタメン入りしただけのことはあるぜ」
清田「ぐぬぬぬぬっ‼︎‼︎」
そこへ牧の声が響く。
牧「よーし‼︎ナイスカットだ、仙道!」
仙道が佐賀のボールをスティール。
清田(仙道…‼︎)
ボールを奪った仙道、ニコリ。
仙道「さあ、行こーか」
ダム‼︎‼︎
神奈川のカウンター。仙道がドリブルで佐賀陣内に突っ込む。
迎え撃つ佐賀ディフェンスは2人。
「12番、止めろ‼︎‼︎」
1対2、
しかし、仙道は構わず突っ込む。
ダム‼︎‼︎
「行った‼︎‼︎‼︎」
「アイツ、1対2でも行く気だぞ…⁉︎」
ダン‼︎‼︎
佐賀ディフェンスの2人が跳ぶ。
が、仙道は空中で2人のブロックをかわす。
「な……‼︎⁉︎」
バス‼︎‼︎
神奈川 4
佐賀 0
「うわああー‼︎ダブルクラーーッチ‼︎」
「またアイツだ‼︎12番、仙道!」
「あの12番、なんかスゲェぞ‼︎‼︎動きがタダモンじゃねえ‼︎」
初っ端のノールックパス、そして、ダブルクラッチ、
仙道がその技術を見せつける。
「うっわあああ‼︎‼︎スゲエぇぇぇ‼︎‼︎」
観客が仙道のプレイに驚愕する。
しかし仙道はこれだけに留まらない。
続く佐賀の攻撃…
バッシイイ‼︎‼︎
仙道が相手シュートをブロック。
「また12番、仙道‼︎‼︎」
「今度はブロックショット‼︎‼︎」
「アイツ、なんでもアリか…⁉︎」
仙道「走れ‼︎」
ビッ‼︎‼︎
前線を走る流川へ、アメフトのタッチダウンさながらの超ロングパスを通す。
「流川だ‼︎‼︎」
フリーで受け取った流川、一気にゴールへ。
ドガアアアアーーーーーー‼︎‼︎
ダンクシュート、炸裂。
神奈川 6
佐賀 0
「うわあああーーー‼︎‼︎ダンク来たああーーー‼︎‼︎」
彦一「おおおおおーーーーー‼︎‼︎」
莉子「流川君‼︎」
「ここで15番、流川だ!」
「湘北の流川楓‼︎いきなりダンク‼︎」
「その前の仙道のパスも凄かったぞ‼︎‼︎」
仙道、ディフェンスに戻ってくる流川にひと言。
「いいところに走ってたな。さすがだぜ」
流川もひと言。
流川「フン、たりめーだ」
観客席では彦一が泣いている。
彦一「仙道さん…、なんでそんなパスができるんや…!天才や…、ホンマの天才や…‼︎」
神奈川は完全に波に乗った。
次の佐賀、今度は牧のスティール。
バッシイイ‼︎‼︎
牧「仙道‼︎‼︎」
ボールは牧から仙道へ。
ビッ‼︎‼︎
そして仙道から神へ。
清田「神さん‼︎」
瞬間、観客が騒ぐ。
「おおっと、お次は海南の神‼︎」
「スリー、あるぞ!」
「打てええーーー、神‼︎‼︎お前ならどこから打っても入る‼︎」
その言葉通り3pラインの1メートル手前からシュートを放つ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎本当に打ちやがった‼︎‼︎」
スパッ‼︎‼︎
どよめく会場。
「入れたぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」
「あんな所から放って入るか⁉︎普通⁉︎」
「そこから放る根性もすげぇが実際決めるのもすげぇ‼︎‼︎」
仙道がニコリと笑い神に声を掛ける。
仙道「ナイシュ」
と手を挙げる。
神「ナイスパス」
仙道と神のハイタッチ。
神奈川、猛烈なスタートダッシュ。
前半終了。
神奈川 69
佐賀 18
「うおおおおーーーーー‼︎‼︎圧倒的‼︎」
「こりゃ勝負にならん‼︎‼︎」
圧倒的リードに勝敗は既に決していた。
会場は神奈川の強さに唖然としていた。
このチームは海南だけじゃなかった。仙道、流川という超高校級プレーヤーがいた。
控え選手が出てもペースが落ちなかった。
まさに、神奈川全体の層の厚さを知らしめた試合だった。
そして会場には変わった反応も出てきていた。
「藤真くん目当てで来たけど、神奈川選抜みんなカッコよくない?」
「ツンツン頭の12番(仙道)もカッコよかったし」
「私は15番の1年生の子(流川)がいいわ。ちょっとニヒルな感じで」
「私は10番(神)‼︎笑顔が可愛いし爽やかだわ‼︎‼︎」
ザワザワザワ………
かくして、神奈川選抜は初日にして、いろんな意味で会場を味方に付けたのだった。