神宗一郎と恋するお話
神奈川選抜合宿2日目 土曜日
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人を殴る鈍い音が教室に響いた後は物音一つせず、シーンと静まり返る教室内。
小野寺は肩で息をしていのを見て荒い息遣いに気付いた。
神「……」(痛…)
頬がズキズキと痛む。
口の中に鉄の味が広がっていくのがわかり口の端を拭った。
神「……」
指についた血を見て神は顔を顰めた。
神は『はぁ…』とため息をつき『…全然、反省しないんだな…』と小野寺を見つめた。
神の問いに鼻で笑う小野寺。
小野寺「反省…?何でそんなものをする必要があるんだ?俺は何も悪くない」
小野寺の口元が醜く歪む。明らかに神を煽っている。
神「……」(はぁ…)
喧嘩を売ってくる小野寺に心底呆れた。
莉子はこんな男のせいで心に傷を負い言いたい事を我慢し続けていると言うのに…
いつもは温厚な神。だからこそ怒らせてはいけないタイプの人間なのだ。
神(その喧嘩、買ってやる)
黙っている神を見て小野寺は満足した様に立ち上がった。身軽になった神も上体を起こした。
小野寺「でも…親父から言われたし、これ以上話がややこしくなるのも困るし莉子ちゃんから手は引くよ。ついでにお前にももうちょっかい出さないからさ」
神「……別に…俺にどうこうするのはいいけど…本当に木村さんに謝罪をする気はないのか?」
小野寺「確かに俺は莉子ちゃんに迷惑かけた。思ったより騒ぎが大きくなって転校までする羽目になったけど…。でも莉子ちゃんも結局は男に囲まれる男バスに入って楽しそうだし、やっぱり大抵のことは時間が解決してくれるんだよ」
神「『時間が解決』…?」
神の眉間に深い皺が寄り、一気に表情が怒りに満ちた。神の気迫に小野寺は思わず後ずさりした。
神「お前さぁ…本当に何もわかってないんだな」
小野寺「えっ…」
神「お前がばら撒いた写真のせいで学校も部活もバレた。それで木村さんがどうなったのか思い出せよ」
小野寺「……」
神「退部したのも転校したのも彼女の本意じゃない。いたかったのにいれなくなったんだ。それは何でだ?」
小野寺「で、でも…お、俺だって転校したし…そんなの喧嘩両成敗だろ…」
『俺も悪いけど莉子ちゃんも悪いところがあった』というスタンスを変えない小野寺に神は怒鳴りそうになる衝動を必死に抑える。
神はグッと拳を握り(落ち着け…)と自分に言い聞かせる。『ふぅ』と一息つく。
神「いいか?よく聞け。木村さんは転校なんてしたくなかった。でも転校せざるをえなかったんだ。お前が同級生の目の前で制服を破いたからだ。そんな醜態を晒した後、どんな顔をして学校に行ったらいいんだ?お前は行けるのか?」
小野寺「そ、それは…」
神「好奇の目で見られるっているのはそういうことなんだ。木村さんはお前が写真をばら撒いた瞬間からずっとそれに耐えてたんだ。でもお前に服を破られて限界に達した。お前は離れて心機一転、心新たに再スタートできたのかもしれない。でも木村さんは違う。学校に通える様になったのは高校からだ。環境を変えても木村さんは一年苦しんだし、楽しそうに見える今だってお前に傷つけられる前の木村さんに戻ったわけじゃない。時間が過ぎたって悲しみも恐怖も薄らぐだけで消えるわけじゃない。再会した時の木村さんの怯えた顔でわかるだろ」
小野寺「……」
神「でもお前はそれを利用して俺を揺さぶろうとしたな。俺がアタフタするのがそんなに面白かったか?」
小野寺「…でも…俺だって人前で恥をかかされた!みんなに笑われながら学校に通っていた俺の気持ちがお前に分かるのか⁉︎」
神は大きくため息をつき『何度も断られていたのに大勢の前で告白なんかするからだろ…』と頭を押さえた。
なおも言い訳を続ける小野寺に神は(もうダメだな…)と思った。こいつは自分のことしか考えられないんだ。自分がした事で莉子がどういう状態でどういった精神状態だったかなんて考えられない人間なのだ。
『自分のした事』は全部『仕方ない事』で、そういう風に行動させた周りが悪いとしか考える事ができないのだろう。
告白したのに断ったから嫌がらせをするしかなかった。だから振った莉子が悪い。なのでこれは仕方ないことだった。
写真をばら撒かれたくなかったら言うことを聞くしかないのに『先生に相談する』という小野寺の中にない選択肢を勝手に作った莉子が悪い。
服を破いたのはやり過ぎたのかもしれないけど、莉子も言う事を聞かなかったのも悪いから喧嘩両成敗ということで…。
神「……」(そんな暴論許せるか…)
神の握る手にグッと力が入った。
神(自分がどれだけ酷い事をしたかわからせてやる…)
莉子が失った一年間の重みや悲しみ、不安を味わったらいい。
神は小野寺を睨んだ。
神「言ってわからないなら実際に体験してもらうしかないな…」
小野寺「は?」
神の発言に顔をしかめる小野寺。
神は出口とは逆方向に歩いていく。
神は隠してあったカメラを手に取った。
再生ボタンを押してみると小さな画面に先ほどの2人のやりとりがバッチリ映っていた。
神「……」(よし…上手くいったな)
神は黙ってカメラの操作を続けている。神の手元が見えない小野寺はイラついた様に『何してんだ?』と言った。
神は小野寺の質問を無視した。
カメラの操作を続ける神。内蔵されていたSDカードにデータを移す。
剛を煮やした小野寺が『おいっ!』と声を荒げる。
そんな小野寺を神は見つめた。静かな怒りを孕んだ瞳に小野寺はビクッと肩を揺らした。
小野寺「……」(な、なんだ…。妙に迫力が…)
ゴクっと唾を飲み込む小野寺。
神は小野寺に向かってニコッと笑った。小野寺は違和感を感じてゴクリと唾を飲み込んだ。
神「小野寺は自分がどれだけ木村さんを傷つけて苦しめてきたか知るべきだ」
と言うと小野寺に見えるようにカメラを出した。
小野寺「っ⁉︎⁉︎⁉︎」
カメラを見た小野寺の瞳が大きく見開かれた。
そのままカメラを見て固まってしまった。きっと小野寺の頭の中にはこれから起こるであろう様々な事が駆け巡っているのだろう。
見る見るうちに青ざめていく小野寺。
神「大丈夫か?」
どこかバカにした様な神の表情。でも今の小野寺にはそんなことはどうでも良かった。
小野寺「まさか撮ってたのか?」
神「うん。今までの会話も俺を殴ったのも全部、ここに録画されてるよ」
神がカメラを小野寺の方へ向けた。
小野寺「……」
小野寺はこの急展開に頭がついていかず黙ったままカメラを見つめた。
神「…コレ…どうしようか?」
小野寺「……」
神「まずはお父さんに見せようか。普段は別に暮らしてるから小野寺の事を何も知らないんだろう?これを見てお前の人間性を理解してももらった方が今後の身の振り方を考えてもらおうよ」
神が『次はどこに転校させられるだろうな』と笑う。
笑っている神を見て恐怖心が増した。小野寺の呼吸が浅く速くなっていく。
小野寺「ちょっと待ってくれよ」
小野寺の声が震えて上擦っている。激しく動揺しているのはわかったが神はお構いなしに話を続けていく。
神「その次は学校だな。自分で言うのも何だけど俺って結構、有名だからあっという間に拡散されると思うんだよね。みんなどんな反応するかな。暴力沙汰だし最悪、部活停止かもね」
と楽しそうな神に対して小野寺の顔は強張る。神の人気は知っている。バスケのファンでなくても人の良さで人気がある。女生徒からの人気だけじゃない。男子生徒や教師からの人望だって全然敵わない…。殴った経緯を誤魔化したとしても神の言葉の方が信用があるだろう。神が有利になるのは容易に想像できた。
小野寺「……」(やばい…やばい…やばい…どうしたらいい?)
小野寺は神を見た。もう神は笑みを浮かべていなかった。ただ感情の読めない冷めた表情で自分を見下ろしている。
小野寺「……」(クソッ……!)
莉子の存在は敵わないことだらけの神に勝つ一発逆転の最強カードだと思っていたのに…。
でもそれは違った。
莉子は神の弱みではなかった。
自分は虎の尾を踏んでしまったのだ。神を相手にするのに莉子には手を出してはいけなかったのだ…。
後悔してももう遅い。頭を下げるしかない…。
小野寺は奥歯を噛んだ。
小野寺「ごめん…やめてくれ…」
と項垂れるように頭を下げる小野寺。小野寺の後頭部を睨む神。
神「木村さんが写真を作るのを辞めてくれてって頼んだ時、小野寺は木村さんをみんなの前で辱めたよな」
『それは…』と顔を上げるとギロリと睨まれ、小野寺はたじろいだ。
神「自分はさんざん好き勝手しといて自分の番になったら『やめてくれ』って都合良すぎだと思わない?」
『図々しいな』と蔑む様な視線を向ける神。
小野寺「ごめん…。反省するから…だから…」
と神の前で土下座を始める小野寺。神はそんなものが見えてもいないかのように話し続ける。
神「大丈夫だって。一年経てば『時間が解決』してくれるんだろ?一年間だけ頑張れ」
とどこまでも他人事のような物言いに早く神を説得しなければとんでも無いことになると焦りが積もる。
小野寺「……そんなこと言わないでくれ…。人を殴ってるところなんて拡散されたら犯罪者扱いされる…そうなったら俺はお終いだ」
とさらに強く床におでこをつけ『ごめんなさい…本当にごめんなさい…』と涙声で懇願する小野寺。
神が『お終い?』と笑った。
神「やっぱり想像力が足りてないな」
小野寺「え?」
神「終わるのは俺の『復讐』であってお前の人生じゃない。お前の地獄は今から始まるんだよ」
小野寺「…え…」
絶望したような顔で神を見上げる小野寺。
神「前回がそうだっただろ。大人が話し合って事が進んで一件落着。木村さんへの復讐を終えたお前は環境を変えて楽しく暮らした。その一方で復讐された側の木村さんはどう過ごしてた?中学に通えず家に引っこもってた。その時、木村さんは何を考えてたんだろうな?」
吐き捨てるように言葉をぶつける神。
小野寺「それは…」
神「お前は木村さんに甘えてるんだ。木村さんが学校に通える様になったのは『時間が過ぎた』からじゃない。彼女が強くて前向きだったからだ。あの子が笑ってるからって勝手に終わった気にならないでくれ」
小野寺は絶望した。でも諦めるわけにはいかなかった。許してもらえないなら交渉して消してもらうしかない。
小野寺「莉子ちゃんに謝ったら動画を消してくれる?」
神「何をされも消す気はないよ。保身のための謝罪に木村さんの時間を使わせる気ないから」
小野寺「そんな…本当になんでもするから…頼むよ…」
神「木村さんと同じ思いを味わってもらうって言っただろ?お前が写真を作るって言って木村さんを脅して怖がらせた事一生許さないから。それに当時の写真だって全部、回収されたって証明できないだろ。お前もいつ俺に暴露されるかわからない恐怖に苦しめよ」
小野寺「なんでも言うことを聞くから消してください…お願いします…」
神は土下座をする小野寺の頭を見ていた。そして『断る』とはっきりと言った。
小野寺は(どうしたらいいんだよ…)と少し泣いた。
神「でも…誰にも見せないっていう約束ぐらいはしてあげてもいい」
小野寺「本当⁉︎」
目に涙を浮かべている小野寺。
神はそんな小野寺に(何泣いてんだ…こいつ)と思いながら『条件がある』と正座をしている小野寺の前にしゃがむ。
神「これから先二度と木村さんとは会うな。声もかけるな。もしどこかで会ったらすぐに木村さんから離れるんだ。お前『が』即刻その場から離れるんだ。わかったか?」
小野寺はコクリと頷いた。
小野寺「莉子ちゃんに会わなければいいんだな」
神は顔を顰めた。
神「…その莉子ちゃんっていうのもやめてもらう。お前の口から木村さんの名前が出るの気分が悪い。馴れ馴れしい。名前で呼ぶような関係じゃないだろ」
小野寺「ご、ごめん…わかった…。名前も呼ばない…」
神「もし破ったら次は速攻で弁護士に言うからな」
小野寺「へ?」
間抜けな顔で神を見つめる小野寺。
神「俺が知らないと思ってるのか?お前、本当は木村さんに対して接近禁止くらってるだろ。次は問答無用で弁護士に相談させるから。俺、弁護士の連絡先も知ってるから」
と携帯の画面を見せる。
そこにはしっかりと弁護士の名前と電話番号が登録されていた。
小野寺が目を見開いて固まっている。神は不敵な笑みを浮かべまた携帯を操作する。
神「お父さんのもあるからな」
とまた携帯の画面を見せる。
小野寺「……わかった……2度と近づかない…」
画面を見た小野寺はガクッと大きく項垂れたのだった。
2人が話し合っている頃、莉子は1人で洗濯物を干していた。
室内干しのできる部屋には他の部の洗濯物がすでに干されており湿度が高い。
蒸し暑いとすら思えるこの部屋で莉子は1人黙々と手を動かしていた。
最後のタオルを干し終わり時計を見た。
莉子「……」(神さん…まだかな…)
神が小野寺と食堂を出た後、残された莉子と茜。
茜「……」
ジッと睨む茜。
莉子「?」
そんな茜の視線を感じた莉子が目線を上げようとした時、莉子の肩を誰かが叩いた。
莉子「……?」
振り返り見ると宮城だった。後ろには仙道もいる。
どこか慌てた様子の宮城は莉子の手を掴むと『こっちこっち!』と茜から莉子を離す。仙道も『お疲れ。疲れただろ?あっちで一緒に休もうぜ』と莉子の背中をグイグイ押す。
莉子「え?ちょっ…」
驚く莉子を『いいから、いいから』となだめながら手を引く宮城。そのまま神奈川メンバーの元へ足を進めた。
選手達が『お疲れ』と莉子を労う。莉子も笑顔で『お疲れ様です』と答えると空いている席に座った。
莉子「……」
席に着くと『はぁ』とため息を一つ。
さっき見た険悪な神と小野寺のやりとりが気になる。
莉子「……」(先輩…すごく怒ってた…。神さんをトラブルに巻き込んでしまったらどうしよう…)
食事を摂っている選手達に目をやる。
様々なことが頭を過ぎる。
もし神が怪我をしたら?
もしトラブルが大きくなり国体そのものに出る事ができなくなったら?
莉子(もしそんな事になったらどうしよう…)
恐怖が膨れ上がり目が潤んだ。合宿の手伝いをしていた莉子の頭に練習風景が鮮明に浮かび、選手達の努力が水の泡になってしまうかもしれない…。
莉子の手が震えた。
莉子(また私のせいで誰かが嫌な思いをする…。それだけは避けたいのに…)
でも小野寺と対峙するのが恐ろしく怖い。
莉子が両手で顔を覆った。
莉子(あぁ…‼︎どうしよう‼︎‼︎)
仙道「大丈夫か?」
莉子が顔を上げる。心配そうに見つめてくる仙道と宮城を見て申し訳なく思う。
莉子「やり残した仕事を思い出したので終わらせてきますね。その仕事が終わったら帰りますね。お疲れ様でした」
と言うと牧の元へ向かい、みんなに『お疲れ様です』も挨拶をしながら食堂を出たのだった。
やり残した仕事を全部終えた。
莉子「後で話してくれるって言ってたけど…」
今日、話すのは無理かもしれない…。
そんな事を考えながら莉子はランドリールームから出た。
室内では蒸し暑さを感じていたのに外は肌寒い。
莉子「……」(神さん…大丈夫かな)
少し時間が経って騒ぎになっていない事が『大きなトラブル』にはなっていないことが莉子を少し冷静にさせた。
それでも心配は尽きないが…。
「ねぇ」
後ろから声をかけられビクッと体が震えた。
聞き覚えのない男性の声に警戒しながらも振り返る。
莉子「……」
やっぱり知らない男子2人組が立っていた。
振り返った莉子の元へ2人の男子は近づいてくる。
「仕事、終わったの?」
「俺らも今から帰るとこなんだ。どっかでご飯でも食べて行かない?」
男子の軽いノリに緊張感が高まっていく。
莉子はできるだけ穏やかに丁寧に言葉を選びながら答える。
莉子「…門限があって…ご飯は難しいです…。すみません…」
と断ると『じゃあ駅まで送ってくよ』と言われ困ってしまう。
莉子「えっと…。あの…」
しどろもどろになっている莉子の背後から大きな影が覆い被さってきた。
神「何してんの」
低い声に3人は飛び上がった。
3人「‼︎⁉︎」
「神⁉︎」
莉子「神さん‼︎」
声の正体は神だった。莉子は『よかった…』と小さく息をはくと神のジャージを掴んだ。
ホッと胸を撫で下ろしたような表情を浮かべる莉子にニコッと笑いかける神。
そして2人組を見た。
2人組「……」(うっ…)
神を怒らせるようなことはしていない…と思いつつも神の迫力に足が勝手に後ろに下がる。
神「うちのマネになにか用?」
「いや…。これから帰るなら駅までおくってこうかなーって…。なぁ」
「そう、そう。飲み屋が多いから危ねぇじゃん。だから…どうかなって声をかけたんんだ」
神「それなら大丈夫。彼女の家族が迎えに来てるから」
「そう…か…。わかった…」
「じゃあ、俺たちはこれで‼︎」
というと2人は走り去って行った。
莉子は(よかった)とホッとした。
『ありがとうございました』と神を見た。神の唇に血が滲んでいのに気づいた。よく見れば頬も赤くなっている。
驚いた莉子は思わず頬に手を伸ばした。
莉子「…神さん…ここ、どうしたんですか…」
ヒンヤリとした柔らかい手のひらの感触。でもヒンヤリとしたのは一瞬で手のひらからジンワリと温もりが伝わってくる。
神「あっ…これは…」
ドキドキと心臓がうるさい。小さい手に加護欲がかき立てられ、温かい手に安心感が満たされる。
莉子「……」
スッと頬から手を離す莉子。
莉子「…ごめんなさい…。私のせいで…」
今にも泣き出しそうな顔をする莉子を安心させる様に優しく声をかける。
神が『ううん。違うよ』と笑う。
神「木村さんのせいじゃないよ。ちょっと言い争いになって…」
『つい2人ともヒートアップしちゃったんだよね』と自分の頬を撫でた。
莉子「…私の事で言い争いになったんですよね?」
神「…うん…。でも、まぁ…俺が勝手に腹立てただけだから気にしないで。そんなことよりさ、ちゃんと小野寺と話をつけてきたから」
『もう安心していいよ』と穏やかに笑う。
莉子「え…」
神「金輪際、木村さんにちょっかい出さないって約束させた。だからもう大丈夫」
と神はにっこりと笑った。
小野寺は肩で息をしていのを見て荒い息遣いに気付いた。
神「……」(痛…)
頬がズキズキと痛む。
口の中に鉄の味が広がっていくのがわかり口の端を拭った。
神「……」
指についた血を見て神は顔を顰めた。
神は『はぁ…』とため息をつき『…全然、反省しないんだな…』と小野寺を見つめた。
神の問いに鼻で笑う小野寺。
小野寺「反省…?何でそんなものをする必要があるんだ?俺は何も悪くない」
小野寺の口元が醜く歪む。明らかに神を煽っている。
神「……」(はぁ…)
喧嘩を売ってくる小野寺に心底呆れた。
莉子はこんな男のせいで心に傷を負い言いたい事を我慢し続けていると言うのに…
いつもは温厚な神。だからこそ怒らせてはいけないタイプの人間なのだ。
神(その喧嘩、買ってやる)
黙っている神を見て小野寺は満足した様に立ち上がった。身軽になった神も上体を起こした。
小野寺「でも…親父から言われたし、これ以上話がややこしくなるのも困るし莉子ちゃんから手は引くよ。ついでにお前にももうちょっかい出さないからさ」
神「……別に…俺にどうこうするのはいいけど…本当に木村さんに謝罪をする気はないのか?」
小野寺「確かに俺は莉子ちゃんに迷惑かけた。思ったより騒ぎが大きくなって転校までする羽目になったけど…。でも莉子ちゃんも結局は男に囲まれる男バスに入って楽しそうだし、やっぱり大抵のことは時間が解決してくれるんだよ」
神「『時間が解決』…?」
神の眉間に深い皺が寄り、一気に表情が怒りに満ちた。神の気迫に小野寺は思わず後ずさりした。
神「お前さぁ…本当に何もわかってないんだな」
小野寺「えっ…」
神「お前がばら撒いた写真のせいで学校も部活もバレた。それで木村さんがどうなったのか思い出せよ」
小野寺「……」
神「退部したのも転校したのも彼女の本意じゃない。いたかったのにいれなくなったんだ。それは何でだ?」
小野寺「で、でも…お、俺だって転校したし…そんなの喧嘩両成敗だろ…」
『俺も悪いけど莉子ちゃんも悪いところがあった』というスタンスを変えない小野寺に神は怒鳴りそうになる衝動を必死に抑える。
神はグッと拳を握り(落ち着け…)と自分に言い聞かせる。『ふぅ』と一息つく。
神「いいか?よく聞け。木村さんは転校なんてしたくなかった。でも転校せざるをえなかったんだ。お前が同級生の目の前で制服を破いたからだ。そんな醜態を晒した後、どんな顔をして学校に行ったらいいんだ?お前は行けるのか?」
小野寺「そ、それは…」
神「好奇の目で見られるっているのはそういうことなんだ。木村さんはお前が写真をばら撒いた瞬間からずっとそれに耐えてたんだ。でもお前に服を破られて限界に達した。お前は離れて心機一転、心新たに再スタートできたのかもしれない。でも木村さんは違う。学校に通える様になったのは高校からだ。環境を変えても木村さんは一年苦しんだし、楽しそうに見える今だってお前に傷つけられる前の木村さんに戻ったわけじゃない。時間が過ぎたって悲しみも恐怖も薄らぐだけで消えるわけじゃない。再会した時の木村さんの怯えた顔でわかるだろ」
小野寺「……」
神「でもお前はそれを利用して俺を揺さぶろうとしたな。俺がアタフタするのがそんなに面白かったか?」
小野寺「…でも…俺だって人前で恥をかかされた!みんなに笑われながら学校に通っていた俺の気持ちがお前に分かるのか⁉︎」
神は大きくため息をつき『何度も断られていたのに大勢の前で告白なんかするからだろ…』と頭を押さえた。
なおも言い訳を続ける小野寺に神は(もうダメだな…)と思った。こいつは自分のことしか考えられないんだ。自分がした事で莉子がどういう状態でどういった精神状態だったかなんて考えられない人間なのだ。
『自分のした事』は全部『仕方ない事』で、そういう風に行動させた周りが悪いとしか考える事ができないのだろう。
告白したのに断ったから嫌がらせをするしかなかった。だから振った莉子が悪い。なのでこれは仕方ないことだった。
写真をばら撒かれたくなかったら言うことを聞くしかないのに『先生に相談する』という小野寺の中にない選択肢を勝手に作った莉子が悪い。
服を破いたのはやり過ぎたのかもしれないけど、莉子も言う事を聞かなかったのも悪いから喧嘩両成敗ということで…。
神「……」(そんな暴論許せるか…)
神の握る手にグッと力が入った。
神(自分がどれだけ酷い事をしたかわからせてやる…)
莉子が失った一年間の重みや悲しみ、不安を味わったらいい。
神は小野寺を睨んだ。
神「言ってわからないなら実際に体験してもらうしかないな…」
小野寺「は?」
神の発言に顔をしかめる小野寺。
神は出口とは逆方向に歩いていく。
神は隠してあったカメラを手に取った。
再生ボタンを押してみると小さな画面に先ほどの2人のやりとりがバッチリ映っていた。
神「……」(よし…上手くいったな)
神は黙ってカメラの操作を続けている。神の手元が見えない小野寺はイラついた様に『何してんだ?』と言った。
神は小野寺の質問を無視した。
カメラの操作を続ける神。内蔵されていたSDカードにデータを移す。
剛を煮やした小野寺が『おいっ!』と声を荒げる。
そんな小野寺を神は見つめた。静かな怒りを孕んだ瞳に小野寺はビクッと肩を揺らした。
小野寺「……」(な、なんだ…。妙に迫力が…)
ゴクっと唾を飲み込む小野寺。
神は小野寺に向かってニコッと笑った。小野寺は違和感を感じてゴクリと唾を飲み込んだ。
神「小野寺は自分がどれだけ木村さんを傷つけて苦しめてきたか知るべきだ」
と言うと小野寺に見えるようにカメラを出した。
小野寺「っ⁉︎⁉︎⁉︎」
カメラを見た小野寺の瞳が大きく見開かれた。
そのままカメラを見て固まってしまった。きっと小野寺の頭の中にはこれから起こるであろう様々な事が駆け巡っているのだろう。
見る見るうちに青ざめていく小野寺。
神「大丈夫か?」
どこかバカにした様な神の表情。でも今の小野寺にはそんなことはどうでも良かった。
小野寺「まさか撮ってたのか?」
神「うん。今までの会話も俺を殴ったのも全部、ここに録画されてるよ」
神がカメラを小野寺の方へ向けた。
小野寺「……」
小野寺はこの急展開に頭がついていかず黙ったままカメラを見つめた。
神「…コレ…どうしようか?」
小野寺「……」
神「まずはお父さんに見せようか。普段は別に暮らしてるから小野寺の事を何も知らないんだろう?これを見てお前の人間性を理解してももらった方が今後の身の振り方を考えてもらおうよ」
神が『次はどこに転校させられるだろうな』と笑う。
笑っている神を見て恐怖心が増した。小野寺の呼吸が浅く速くなっていく。
小野寺「ちょっと待ってくれよ」
小野寺の声が震えて上擦っている。激しく動揺しているのはわかったが神はお構いなしに話を続けていく。
神「その次は学校だな。自分で言うのも何だけど俺って結構、有名だからあっという間に拡散されると思うんだよね。みんなどんな反応するかな。暴力沙汰だし最悪、部活停止かもね」
と楽しそうな神に対して小野寺の顔は強張る。神の人気は知っている。バスケのファンでなくても人の良さで人気がある。女生徒からの人気だけじゃない。男子生徒や教師からの人望だって全然敵わない…。殴った経緯を誤魔化したとしても神の言葉の方が信用があるだろう。神が有利になるのは容易に想像できた。
小野寺「……」(やばい…やばい…やばい…どうしたらいい?)
小野寺は神を見た。もう神は笑みを浮かべていなかった。ただ感情の読めない冷めた表情で自分を見下ろしている。
小野寺「……」(クソッ……!)
莉子の存在は敵わないことだらけの神に勝つ一発逆転の最強カードだと思っていたのに…。
でもそれは違った。
莉子は神の弱みではなかった。
自分は虎の尾を踏んでしまったのだ。神を相手にするのに莉子には手を出してはいけなかったのだ…。
後悔してももう遅い。頭を下げるしかない…。
小野寺は奥歯を噛んだ。
小野寺「ごめん…やめてくれ…」
と項垂れるように頭を下げる小野寺。小野寺の後頭部を睨む神。
神「木村さんが写真を作るのを辞めてくれてって頼んだ時、小野寺は木村さんをみんなの前で辱めたよな」
『それは…』と顔を上げるとギロリと睨まれ、小野寺はたじろいだ。
神「自分はさんざん好き勝手しといて自分の番になったら『やめてくれ』って都合良すぎだと思わない?」
『図々しいな』と蔑む様な視線を向ける神。
小野寺「ごめん…。反省するから…だから…」
と神の前で土下座を始める小野寺。神はそんなものが見えてもいないかのように話し続ける。
神「大丈夫だって。一年経てば『時間が解決』してくれるんだろ?一年間だけ頑張れ」
とどこまでも他人事のような物言いに早く神を説得しなければとんでも無いことになると焦りが積もる。
小野寺「……そんなこと言わないでくれ…。人を殴ってるところなんて拡散されたら犯罪者扱いされる…そうなったら俺はお終いだ」
とさらに強く床におでこをつけ『ごめんなさい…本当にごめんなさい…』と涙声で懇願する小野寺。
神が『お終い?』と笑った。
神「やっぱり想像力が足りてないな」
小野寺「え?」
神「終わるのは俺の『復讐』であってお前の人生じゃない。お前の地獄は今から始まるんだよ」
小野寺「…え…」
絶望したような顔で神を見上げる小野寺。
神「前回がそうだっただろ。大人が話し合って事が進んで一件落着。木村さんへの復讐を終えたお前は環境を変えて楽しく暮らした。その一方で復讐された側の木村さんはどう過ごしてた?中学に通えず家に引っこもってた。その時、木村さんは何を考えてたんだろうな?」
吐き捨てるように言葉をぶつける神。
小野寺「それは…」
神「お前は木村さんに甘えてるんだ。木村さんが学校に通える様になったのは『時間が過ぎた』からじゃない。彼女が強くて前向きだったからだ。あの子が笑ってるからって勝手に終わった気にならないでくれ」
小野寺は絶望した。でも諦めるわけにはいかなかった。許してもらえないなら交渉して消してもらうしかない。
小野寺「莉子ちゃんに謝ったら動画を消してくれる?」
神「何をされも消す気はないよ。保身のための謝罪に木村さんの時間を使わせる気ないから」
小野寺「そんな…本当になんでもするから…頼むよ…」
神「木村さんと同じ思いを味わってもらうって言っただろ?お前が写真を作るって言って木村さんを脅して怖がらせた事一生許さないから。それに当時の写真だって全部、回収されたって証明できないだろ。お前もいつ俺に暴露されるかわからない恐怖に苦しめよ」
小野寺「なんでも言うことを聞くから消してください…お願いします…」
神は土下座をする小野寺の頭を見ていた。そして『断る』とはっきりと言った。
小野寺は(どうしたらいいんだよ…)と少し泣いた。
神「でも…誰にも見せないっていう約束ぐらいはしてあげてもいい」
小野寺「本当⁉︎」
目に涙を浮かべている小野寺。
神はそんな小野寺に(何泣いてんだ…こいつ)と思いながら『条件がある』と正座をしている小野寺の前にしゃがむ。
神「これから先二度と木村さんとは会うな。声もかけるな。もしどこかで会ったらすぐに木村さんから離れるんだ。お前『が』即刻その場から離れるんだ。わかったか?」
小野寺はコクリと頷いた。
小野寺「莉子ちゃんに会わなければいいんだな」
神は顔を顰めた。
神「…その莉子ちゃんっていうのもやめてもらう。お前の口から木村さんの名前が出るの気分が悪い。馴れ馴れしい。名前で呼ぶような関係じゃないだろ」
小野寺「ご、ごめん…わかった…。名前も呼ばない…」
神「もし破ったら次は速攻で弁護士に言うからな」
小野寺「へ?」
間抜けな顔で神を見つめる小野寺。
神「俺が知らないと思ってるのか?お前、本当は木村さんに対して接近禁止くらってるだろ。次は問答無用で弁護士に相談させるから。俺、弁護士の連絡先も知ってるから」
と携帯の画面を見せる。
そこにはしっかりと弁護士の名前と電話番号が登録されていた。
小野寺が目を見開いて固まっている。神は不敵な笑みを浮かべまた携帯を操作する。
神「お父さんのもあるからな」
とまた携帯の画面を見せる。
小野寺「……わかった……2度と近づかない…」
画面を見た小野寺はガクッと大きく項垂れたのだった。
2人が話し合っている頃、莉子は1人で洗濯物を干していた。
室内干しのできる部屋には他の部の洗濯物がすでに干されており湿度が高い。
蒸し暑いとすら思えるこの部屋で莉子は1人黙々と手を動かしていた。
最後のタオルを干し終わり時計を見た。
莉子「……」(神さん…まだかな…)
神が小野寺と食堂を出た後、残された莉子と茜。
茜「……」
ジッと睨む茜。
莉子「?」
そんな茜の視線を感じた莉子が目線を上げようとした時、莉子の肩を誰かが叩いた。
莉子「……?」
振り返り見ると宮城だった。後ろには仙道もいる。
どこか慌てた様子の宮城は莉子の手を掴むと『こっちこっち!』と茜から莉子を離す。仙道も『お疲れ。疲れただろ?あっちで一緒に休もうぜ』と莉子の背中をグイグイ押す。
莉子「え?ちょっ…」
驚く莉子を『いいから、いいから』となだめながら手を引く宮城。そのまま神奈川メンバーの元へ足を進めた。
選手達が『お疲れ』と莉子を労う。莉子も笑顔で『お疲れ様です』と答えると空いている席に座った。
莉子「……」
席に着くと『はぁ』とため息を一つ。
さっき見た険悪な神と小野寺のやりとりが気になる。
莉子「……」(先輩…すごく怒ってた…。神さんをトラブルに巻き込んでしまったらどうしよう…)
食事を摂っている選手達に目をやる。
様々なことが頭を過ぎる。
もし神が怪我をしたら?
もしトラブルが大きくなり国体そのものに出る事ができなくなったら?
莉子(もしそんな事になったらどうしよう…)
恐怖が膨れ上がり目が潤んだ。合宿の手伝いをしていた莉子の頭に練習風景が鮮明に浮かび、選手達の努力が水の泡になってしまうかもしれない…。
莉子の手が震えた。
莉子(また私のせいで誰かが嫌な思いをする…。それだけは避けたいのに…)
でも小野寺と対峙するのが恐ろしく怖い。
莉子が両手で顔を覆った。
莉子(あぁ…‼︎どうしよう‼︎‼︎)
仙道「大丈夫か?」
莉子が顔を上げる。心配そうに見つめてくる仙道と宮城を見て申し訳なく思う。
莉子「やり残した仕事を思い出したので終わらせてきますね。その仕事が終わったら帰りますね。お疲れ様でした」
と言うと牧の元へ向かい、みんなに『お疲れ様です』も挨拶をしながら食堂を出たのだった。
やり残した仕事を全部終えた。
莉子「後で話してくれるって言ってたけど…」
今日、話すのは無理かもしれない…。
そんな事を考えながら莉子はランドリールームから出た。
室内では蒸し暑さを感じていたのに外は肌寒い。
莉子「……」(神さん…大丈夫かな)
少し時間が経って騒ぎになっていない事が『大きなトラブル』にはなっていないことが莉子を少し冷静にさせた。
それでも心配は尽きないが…。
「ねぇ」
後ろから声をかけられビクッと体が震えた。
聞き覚えのない男性の声に警戒しながらも振り返る。
莉子「……」
やっぱり知らない男子2人組が立っていた。
振り返った莉子の元へ2人の男子は近づいてくる。
「仕事、終わったの?」
「俺らも今から帰るとこなんだ。どっかでご飯でも食べて行かない?」
男子の軽いノリに緊張感が高まっていく。
莉子はできるだけ穏やかに丁寧に言葉を選びながら答える。
莉子「…門限があって…ご飯は難しいです…。すみません…」
と断ると『じゃあ駅まで送ってくよ』と言われ困ってしまう。
莉子「えっと…。あの…」
しどろもどろになっている莉子の背後から大きな影が覆い被さってきた。
神「何してんの」
低い声に3人は飛び上がった。
3人「‼︎⁉︎」
「神⁉︎」
莉子「神さん‼︎」
声の正体は神だった。莉子は『よかった…』と小さく息をはくと神のジャージを掴んだ。
ホッと胸を撫で下ろしたような表情を浮かべる莉子にニコッと笑いかける神。
そして2人組を見た。
2人組「……」(うっ…)
神を怒らせるようなことはしていない…と思いつつも神の迫力に足が勝手に後ろに下がる。
神「うちのマネになにか用?」
「いや…。これから帰るなら駅までおくってこうかなーって…。なぁ」
「そう、そう。飲み屋が多いから危ねぇじゃん。だから…どうかなって声をかけたんんだ」
神「それなら大丈夫。彼女の家族が迎えに来てるから」
「そう…か…。わかった…」
「じゃあ、俺たちはこれで‼︎」
というと2人は走り去って行った。
莉子は(よかった)とホッとした。
『ありがとうございました』と神を見た。神の唇に血が滲んでいのに気づいた。よく見れば頬も赤くなっている。
驚いた莉子は思わず頬に手を伸ばした。
莉子「…神さん…ここ、どうしたんですか…」
ヒンヤリとした柔らかい手のひらの感触。でもヒンヤリとしたのは一瞬で手のひらからジンワリと温もりが伝わってくる。
神「あっ…これは…」
ドキドキと心臓がうるさい。小さい手に加護欲がかき立てられ、温かい手に安心感が満たされる。
莉子「……」
スッと頬から手を離す莉子。
莉子「…ごめんなさい…。私のせいで…」
今にも泣き出しそうな顔をする莉子を安心させる様に優しく声をかける。
神が『ううん。違うよ』と笑う。
神「木村さんのせいじゃないよ。ちょっと言い争いになって…」
『つい2人ともヒートアップしちゃったんだよね』と自分の頬を撫でた。
莉子「…私の事で言い争いになったんですよね?」
神「…うん…。でも、まぁ…俺が勝手に腹立てただけだから気にしないで。そんなことよりさ、ちゃんと小野寺と話をつけてきたから」
『もう安心していいよ』と穏やかに笑う。
莉子「え…」
神「金輪際、木村さんにちょっかい出さないって約束させた。だからもう大丈夫」
と神はにっこりと笑った。