冬のアドベントお題
炎の小人
12月某日。私は祖母の家にいた。祖母の屋敷は大正時代につくられた和洋折衷の住居である。もとはとある起業家の屋敷だったらしいが、めぐりめぐって今は私の祖母の家となっている。外から見ると、まるでお伽噺にでてくるような赤い屋根の家であり、今どきの家にしては珍しく、煙突が目をひく。煙突があるということは、暖炉もあるわけで。現に私は今、暖炉の前でくつろいでいる。暖炉の前の赤い一人がけのソファに座って、スマホを眺めていた。家族は全員出かけており、この家には私しかいない。パチパチと薪が爆ぜる音のみが、室内に轟く。
ショート動画を見たり、友人のインスタのストーリーを見たり。自分でもなんの生産性もない冬休みを過ごしているなって思った。
ちりんちりん。
どこからともなく音が聞こえた。今見てるショート動画の音かと思って気に留めなかった。が、違和感を覚える。
ちりんちりん。
この音はスマホから放たれているものではない。私は、スマホの画面をおとし、音のする方を見た。私の前方にある暖炉の中の炎。それを見つめる。
ぱちぱち、ちりんちりん。
ぱちぱち、ちりんちりん。
ぱちぱち、「おい! ここだぞ!」ちりんちりん。
ぱちぱち、「わかってるよ、お前もしごとしろ」ちりんちりん。
ぱちぱち、ちりんちりん。
ぱちぱち、ちりんちりん。
何かがいる。私は目をこらす。なんということか。炎の中に小さな人間がいる。しかも、一人二人ではない。多くの人がいて、街もある。炎のなかで一種の小さな社会が形成されているのだ。その街はヨーロッパのようだった。そのなかにいる人間も外国人のように思える。しかも、現代風の装いではない。中性ヨーロッパの庶民のような、古めかしい装いだ。
私の目についたのは二人の男だった。片方は若く、片方は中年である。中年男の腰には鈴が付いていた。「ちりんちりん」という鈴の音と、先ほどの会話は彼らの者であろう。彼らは荷車をつかってなにか物を運んでいた。
私は唖然として、それから目を離すことができなかった。彼らの様子を眺め続ける。
ぱちぱち、ちりんちりん。
ぱちぱち、ちりんちりん。
ぱちぱち、ちりんちりん。
ぱちぱち、ちりんちりん。
ぱちぱち、ちりんちりん。
ぱちぱち、「おいっ!」
突然、中年男がこちらを見た。そして、私を指さす。
「そこに巨人がいるぞ!?」
その驚きの声と同時に、炎がぼおっと大きく燃えた。おもわず、私は目をそらす。しばらくして、炎が弱まったのを察した私は再び炎を見る。
そこにあるのはただの炎だった。先ほどまであった町並みは見えない。見間違いだったか? そう思うが、それにしてはあまりにも、あの情景がはっきりとしている。私は手に持っていたスマホをゆっくりと机の上に置いて。頭を落ち着かせるために、ひとまず外に出ることにした。あまりにも青い空が私を迎える。そして、煙突のある赤い屋根の家を外から眺めた。白い煙が煙突から出て、青い空に溶け込むのを見て。私は不思議だけれど、どこか暖かい先ほどの情景を思い出すのだった。
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