本編
しばらくして、光が止んだ。
魂屋は、すかさず、祓い師に掴まれている少女の元へ駆け寄る。先程まで意識を持っていた彼女は、その瞬間にぱたりと倒れた。
魂屋は、それに駆け寄る。
「……ごめんね」
祓い師が謝る。魂屋は、彼を睨みつけることしか出来なかった。
「今日のところは、君も見逃してあげるからさ、もう行きなよ」
顔をクイッとあげ、学校から出ていくよう、促す祓い師。
魂屋は、体を動かすことはしなかった。彼女を助けることが出来なかった。その想いが、胸いっぱいに広がった。
「魂をさっさと封じてあげれば良かったじゃないか。俺、せせらぎさんから君の力のことは聞いているよ。できるんでしょ? 」
せせらぎ。魂屋にとっても聞いたことのある名前た。
「……流レ堂の店主からは何を聞いてるか分からないけれど、出来なかったから、こうなってるんじゃないですか」
「そっか。ねぇ、さっさとここから出てくれないかな?
見逃してあげるっていってるじゃないか。俺も無益なお祓いは嫌だよ」
面倒くさそうに、そう告げる。祓い師は、自分の刀を腰の鞘にしまい込んだ。そして、ちらりと彼女を見る。
「……その子、消滅しないね。俺の力だと、体が消滅するはずなんだけど。仕方ない。回収してくか……」
祓い師が、少女の傍らに座った。そして、彼女を抱えようとした。しかし、それを制したのは、魂屋だった。祓い師は、そんな彼を睨みつける。
「なんのつもり?」
「祓い師なんかに渡しませんよ」
「へぇ、恋してるの?」
「まさか」
「じゃあ、頂戴よ。じゃないと祓うよ」
祓い師は、腰の鞘を抜いた。彼の瞳は、先程、彼女に向けていたものと同じものであった。悪しき魔を祓う、祓い師の目。心あるものをひとつ殺す、祓い師の目。
魂屋は、ふっと鼻で笑った。
「できるもんなら、やってみろ」
魂屋の声が、廊下に轟いた──瞬間だった。
パリーン
廊下の窓が割れた。
「魂屋!」
張り裂けんばかりの大声で叫ぶ金髪碧眼の男。モーガンだ。
「何が起こってんだよ。祓い師までいるじゃないか」
モーガンは、ちっと舌打ちをこぼした。眉間に深い皺を刻みながら、魂屋の元へやってくる。
「魔法使いか」
祓い師が、小さな声で漏らす。
「戦うのめんどくせぇから、逃げるぞ」
モーガンは、魂屋を無理やり立たせ、小脇に少女を担ぐ。そして、パチンと指を鳴らした。
音が廊下に轟く。それと同時に、彼の周りを白い煙が舞った。煙は、段々と大きくなり、モーガンたちを包んでいく。祓い師は、その煙の中を見ようとしたが、それは叶わない。しばらくして、その煙は、消え去った。煙も消え去ったが、モーガンや魂屋、彼女の姿も無くなった。
消え去ったモーガンたちは、学校の外にいた。亜空間ではない。人間界にある、学校の外である。亜空間から見えた空は真っ暗だったが、こちらの世界の空も真っ暗だった。星が煌めき、月が登る。
人気のない森の中へ移動し、モーガンは、担いでいた少女を地に下ろす。
「モーガン、ありがとうございます」
「おうよ」
モーガンは、肩をパキパキと鳴らした。
そして、サファイアのような綺麗な瞳で、魂屋を見た。
「……なんで、封印してねぇんだ。いつもだったら、魂に出会った瞬間、封印してるだろ」
「出来なかったんです」
「……は?」
モーガンの口からは、いつもの数割増で、低い声が出た。 魂屋は、落ち着いた声で説明する。
「だから、封印ができなかったんです」
「ってことは、生きてんのか?」
「いえ、死んでます」
わけも分からず、モーガンは、魂屋を呆れた目で見た。
「私もわけが分かりません」
魂屋は、自分の手を見る。モーガンは、そんな様子を見て、興味なさそうだった。そして彼は、そのまま、大きな欠伸をひとつこぼす。
「まぁ、どうでもいいけどさ。そいつ、どうすんの?
人間界に返す訳にも行かないだろ?」
「そうですね……」
魂屋は、気絶している少女を見る。
漆黒の髪に、白い肌。白雪姫を連想させるような女の子だ。人間の女性にしては、随分と可愛らしいと思う。
「しばらくは、私のところに置いておきますよ」
「……目覚めるのか?」
「分かりません」
魂屋は、少女の頬に触れた。
「でも……形あるものは、いつか目覚めますよ」
彼女の顔を見て、そんな一言をこぼした。
風が吹き、カサカサという木の葉っぱが擦れる音がした。夜風が3人の体に触れたのだった──。
魂屋は、すかさず、祓い師に掴まれている少女の元へ駆け寄る。先程まで意識を持っていた彼女は、その瞬間にぱたりと倒れた。
魂屋は、それに駆け寄る。
「……ごめんね」
祓い師が謝る。魂屋は、彼を睨みつけることしか出来なかった。
「今日のところは、君も見逃してあげるからさ、もう行きなよ」
顔をクイッとあげ、学校から出ていくよう、促す祓い師。
魂屋は、体を動かすことはしなかった。彼女を助けることが出来なかった。その想いが、胸いっぱいに広がった。
「魂をさっさと封じてあげれば良かったじゃないか。俺、せせらぎさんから君の力のことは聞いているよ。できるんでしょ? 」
せせらぎ。魂屋にとっても聞いたことのある名前た。
「……流レ堂の店主からは何を聞いてるか分からないけれど、出来なかったから、こうなってるんじゃないですか」
「そっか。ねぇ、さっさとここから出てくれないかな?
見逃してあげるっていってるじゃないか。俺も無益なお祓いは嫌だよ」
面倒くさそうに、そう告げる。祓い師は、自分の刀を腰の鞘にしまい込んだ。そして、ちらりと彼女を見る。
「……その子、消滅しないね。俺の力だと、体が消滅するはずなんだけど。仕方ない。回収してくか……」
祓い師が、少女の傍らに座った。そして、彼女を抱えようとした。しかし、それを制したのは、魂屋だった。祓い師は、そんな彼を睨みつける。
「なんのつもり?」
「祓い師なんかに渡しませんよ」
「へぇ、恋してるの?」
「まさか」
「じゃあ、頂戴よ。じゃないと祓うよ」
祓い師は、腰の鞘を抜いた。彼の瞳は、先程、彼女に向けていたものと同じものであった。悪しき魔を祓う、祓い師の目。心あるものをひとつ殺す、祓い師の目。
魂屋は、ふっと鼻で笑った。
「できるもんなら、やってみろ」
魂屋の声が、廊下に轟いた──瞬間だった。
パリーン
廊下の窓が割れた。
「魂屋!」
張り裂けんばかりの大声で叫ぶ金髪碧眼の男。モーガンだ。
「何が起こってんだよ。祓い師までいるじゃないか」
モーガンは、ちっと舌打ちをこぼした。眉間に深い皺を刻みながら、魂屋の元へやってくる。
「魔法使いか」
祓い師が、小さな声で漏らす。
「戦うのめんどくせぇから、逃げるぞ」
モーガンは、魂屋を無理やり立たせ、小脇に少女を担ぐ。そして、パチンと指を鳴らした。
音が廊下に轟く。それと同時に、彼の周りを白い煙が舞った。煙は、段々と大きくなり、モーガンたちを包んでいく。祓い師は、その煙の中を見ようとしたが、それは叶わない。しばらくして、その煙は、消え去った。煙も消え去ったが、モーガンや魂屋、彼女の姿も無くなった。
消え去ったモーガンたちは、学校の外にいた。亜空間ではない。人間界にある、学校の外である。亜空間から見えた空は真っ暗だったが、こちらの世界の空も真っ暗だった。星が煌めき、月が登る。
人気のない森の中へ移動し、モーガンは、担いでいた少女を地に下ろす。
「モーガン、ありがとうございます」
「おうよ」
モーガンは、肩をパキパキと鳴らした。
そして、サファイアのような綺麗な瞳で、魂屋を見た。
「……なんで、封印してねぇんだ。いつもだったら、魂に出会った瞬間、封印してるだろ」
「出来なかったんです」
「……は?」
モーガンの口からは、いつもの数割増で、低い声が出た。 魂屋は、落ち着いた声で説明する。
「だから、封印ができなかったんです」
「ってことは、生きてんのか?」
「いえ、死んでます」
わけも分からず、モーガンは、魂屋を呆れた目で見た。
「私もわけが分かりません」
魂屋は、自分の手を見る。モーガンは、そんな様子を見て、興味なさそうだった。そして彼は、そのまま、大きな欠伸をひとつこぼす。
「まぁ、どうでもいいけどさ。そいつ、どうすんの?
人間界に返す訳にも行かないだろ?」
「そうですね……」
魂屋は、気絶している少女を見る。
漆黒の髪に、白い肌。白雪姫を連想させるような女の子だ。人間の女性にしては、随分と可愛らしいと思う。
「しばらくは、私のところに置いておきますよ」
「……目覚めるのか?」
「分かりません」
魂屋は、少女の頬に触れた。
「でも……形あるものは、いつか目覚めますよ」
彼女の顔を見て、そんな一言をこぼした。
風が吹き、カサカサという木の葉っぱが擦れる音がした。夜風が3人の体に触れたのだった──。
