本編


説明回です。

──

リアン王国は、魔法大国として知られる。どの国よりも優秀な魔道士が多く、どの国よりも魔法が発達している。そのためか、技術も軍事力も他国を圧倒し、気づけば貿易も盛んになり産業も発展し、豊かな国と言われるようになっている。

そんな魔法大国を支えるのが我々モルセット家だ。モルセット家は、代々優秀な魔道士を輩出する公爵家である。一応、私も魔道士として魔法を勉強している身だ。私の父──エリック・モルセットも魔道士で、現在は王国中の魔道士たちをまとめあげる存在となっている。

そんな父であるが、家庭内ではそこまで威厳があるわけではなく、どちらかというと のほほんとした感じの穏やかな男である……のはずである。

クリスマスパーティーから帰ってきて、私は父の書斎に呼ばれた。

今、目の前にいるのは見たことのない形相で、私に向かう父であった。隣には同じような形相の母がいる。

「あのバカ小僧が……!」

チッと舌打ちをうつ父の声に身体を震わせる。

「まさかこんなことになるとは……」

母まで顔を真っ赤にして怒りを顕にしている。

両親がここまでお怒りなのは、もちろんエドワードのせいである。婚約破棄の話を聞いた両親はエドワードとエドワードの父である大臣に宣戦布告しそうな勢いだった。それを私と父の部下が止めたのだ。

「エドワード様! 大臣からの返事です!」

使用人が持ってきた手紙を父は乱暴に奪い取る。しばらくそれを見た後、父は小さくため息をついた。

「どうでしたの?」

母が問うと、父はちらりとこっちを見た後にその手紙を床に落とした。

「謝罪の言葉だ」

「あらまあ……」

「まだ大臣はあのクソガキと違って、常識はあるからな」

大臣は私の父とは違い、厳格な性格の男性だ。真面目で優秀な人材として、国王から信頼され、重宝されてるような人間である。そんな誠実な人間からあの男が生まれたのも不思議な話だが。

「オリヴィアの結婚相手はこちらが責任を持って見つけるとのことだ。まあ、信用ならんがな」

「父上、エドワードについては書いてありますか?」

「エドワードはアリス嬢との婚約を懇願してるらしい」

でしょうね。

アリスは確かクリーンオッツ公爵家の娘であったはずだ。たしか母親は元王族だったと聞く。クリーンオッツ家は元々はもう少し身分は低かったが、先代当主の魔力が強く、有能な魔道士として力を得た。その後、今の当主が王族と婚姻を結び、今の地位まで上り詰めた。

まあ、エドワードの結婚相手として無理な相手ではない。

とはいえ、騒ぎを起こしたこの状況の中で結婚するのは一悶着ありそうだが。

「オリヴィア」

「なんでしょう」

「申し訳ない」

父が頭を下げる。

「なぜ父上が謝る必要が?」

「あいつと結婚を結びつけたのは私だ。私にも責任がある」

父がいつもの穏やかな顔に戻る。

「大丈夫。別にあの人のこと好きじゃなかったから」

事実だ。正直、愛着はない。最低限、婚約者としての動きはしてきたが、彼と一緒に楽しい時間を過ごしてきたことは無い。

「オリヴィア、必ず新しい相手は見つける」

「別にいいわよ」

このままアカデミーに通って魔道士として活躍する道だってある。結婚しなくても、やっていける時代だ。婚約者にそこまでのこだわりは無い。

「騎士団長ブリーゲルとかどうだ?ああ見えて優しいぞ。その弟のリンゲルもありだな」

「あら、あなたの部下のナルサスもいいんじゃない?」

「だめだ。ナルサスは女癖が悪い。エドワードの兄のアランは真面目で仕事ができる男だが……大臣の息子をもう1回婚約者に立てる気持ちはないな」

「いっそのこと、王族とか。フィオール王子とかハンサムよ」

「顔のいい男は浮気する」

「偏見すぎるわ」

「父上、母上」

勇気をだして間に入った。父と母は、話を止めてこっちを見た。

「自分の結婚は自分で決めます。母上と父上の気持ちはありがたいけど……自分の人生だから自分で決めるわ」

ピシャリと言い放つ。不安そうな顔を浮かべながらも納得したようだ。


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