本編
私たちの婚約は、あっという間に国中の人たちに知られるものとなった。
国の第1王子の婚約だ。話題になるのも当然である。彼と結婚するということは、この国の王妃になるということであった。最初は不安で胸が押しつぶされそうだった。しかし、不安だった私を殿下や兄、両親が支えてくれた。
「オリヴィアはオリヴィアらしくいればいいんだよ。それで、大丈夫。それに私が全力でフォローするから」
殿下の言葉が心に残る。
不安はある。だけど、殿下さえいればなんか大丈夫な気がする。殿下はいつだって私を助けてくれる──。
私たちは国中からの祝福をうけた。誰からの反対もうけなかったことにひとまず安堵する。学校でも、「結婚おめでとう」と言ってくれる人がたくさんいた。
私は学校の勉強と並行して、妃教育も行った。睡眠時間も削り、趣味の時間はほとんどなかった。大変だった。が、やめたいと思うことは無かった。応援してくれる殿下のためにがんばった。結果、妃教育を行う先生から「飲み込みが早い」と言われ褒められた。
1年後──私は学園を卒業し王立大学に入った。魔法研究者となるためである。大学の勉強と研究は楽しかった。
大学では兄と関わることも多かった。兄は大学の研究に協力しており、異世界転移魔法についての研究も王立大学で行っている。特別講師として、講義をすることもあった。
兄の講義はおもしろい。元々、おちゃらけた性格であるためか、人と話すのが得意なのだ。それが、人を惹きつけるトーク術となっている。
私は妃教育を行いつつ、研究に没頭した。
そして、2年後──妃教育を終わらせた私は殿下と結婚した。学生のうちに結婚するとは思わなかったが、殿下の熱いプロポーズをうけ自分が思っているよりも早い結婚となった。
なお、結婚しても大学を辞めるつもりは無い。大学院にも行く予定である。貴族令嬢は結婚したら、仕事も学校も辞めるという人が多いが、私はそのつもりは無い。結婚もして、自分のキャリアも積む。そのキャリアがきっと私の人間としての厚みになっていき、王妃としての信頼に繋がっていくはずだ。
それに例の件と関わった以上、自分だけが蚊帳の外という訳にもいくまい。
今日は結婚式の日であった。
控え室にて。私は純白のドレスを身に纏う。
レースは少なく、大人びたデザインのドレスであった。すでにメイクを施されている。私の銀色の髪は綺麗にあげられていた。
自分で見ても、見とれてしまうほど綺麗である。
なお、このドレスは殿下が選んでくれた。さすがの殿下である。私の身体を引き立て、私が気に入るドレスを選んでくれた。
まじまじと鏡の前で自分の姿を見ていると、コンコンと扉をノックされた。
「入っていい? オリヴィア」
「ええ、フィー」
扉を開いてあらわれたのは、もうすでに白いタキシードを身に纏う殿下であった。美しいし、かっこいい。殿下は常にかっこいいが、今日の殿下はいつもの何倍もかっこいい。
そんな魅力的な殿下の姿に目が離せなかった。
結婚するにあたり、殿下から「殿下ではなく、愛称で呼べ」とお願いされた。フィーというのは、彼の幼い頃からの愛称らしい。兄やアラン様など古い友人だけでなく、国王と王妃もその名前で呼びかけることがあるという。
フィーは私の姿を見るなり、硬直した。そして、口に手を当て「想像以上だな……」とぼやく。
……なにかおかしなところがあったかと、怪訝に思う。
「なにが想像以上なのよ」
私は口を尖らせ、問い詰めた。すると、フィーはにこにこと微笑みながら、私の元にやってくる。そして、私の腰を抱いた。
「想像以上に綺麗だってことだ」
その言葉に、ドキンと胸がなる。私は、赤くなった顔を隠すかのように、俯いた。
「あら、ありがとう。フィーも素敵だわ」
俯きながら、言う。フィーの腰を抱く手が、強くなった。
「誰にも見せたくないな」
耳元でそんな声が聞こえる。
「ご冗談を」
私がふふっと笑う。そして、彼の顔を見上げた。冗談を言っていたかと思ったが、フィーの顔は真剣そのものだ。
……いやいや、まさか本気で言ってるわけではあるまい。
バタンと扉が開いた。あらわれたのは兄であった。兄も正装であった。 体を寄せ合う私たちの姿を見るなり、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた。フィーが慌てて私から離れる。
「お熱いなあ……」
兄がからかい口調でそう言った。そして──
「お熱いのは見てて幸せだが、もう時間だ。イチャつくのは、終わってからにしてくれ」
兄がウィンクをひとつしてみせた。そして、バタバタと部屋を出ていく。
私とフィーは顔を合わせた。そして、1歩足を進めた。ゆっくりと……ゆっくりと会場に向かう。
これから訪れる光の未来の中へ。私たちは2人で入っていくのであった。これから始まる新しい物語に胸を高鳴らせながら──
国の第1王子の婚約だ。話題になるのも当然である。彼と結婚するということは、この国の王妃になるということであった。最初は不安で胸が押しつぶされそうだった。しかし、不安だった私を殿下や兄、両親が支えてくれた。
「オリヴィアはオリヴィアらしくいればいいんだよ。それで、大丈夫。それに私が全力でフォローするから」
殿下の言葉が心に残る。
不安はある。だけど、殿下さえいればなんか大丈夫な気がする。殿下はいつだって私を助けてくれる──。
私たちは国中からの祝福をうけた。誰からの反対もうけなかったことにひとまず安堵する。学校でも、「結婚おめでとう」と言ってくれる人がたくさんいた。
私は学校の勉強と並行して、妃教育も行った。睡眠時間も削り、趣味の時間はほとんどなかった。大変だった。が、やめたいと思うことは無かった。応援してくれる殿下のためにがんばった。結果、妃教育を行う先生から「飲み込みが早い」と言われ褒められた。
1年後──私は学園を卒業し王立大学に入った。魔法研究者となるためである。大学の勉強と研究は楽しかった。
大学では兄と関わることも多かった。兄は大学の研究に協力しており、異世界転移魔法についての研究も王立大学で行っている。特別講師として、講義をすることもあった。
兄の講義はおもしろい。元々、おちゃらけた性格であるためか、人と話すのが得意なのだ。それが、人を惹きつけるトーク術となっている。
私は妃教育を行いつつ、研究に没頭した。
そして、2年後──妃教育を終わらせた私は殿下と結婚した。学生のうちに結婚するとは思わなかったが、殿下の熱いプロポーズをうけ自分が思っているよりも早い結婚となった。
なお、結婚しても大学を辞めるつもりは無い。大学院にも行く予定である。貴族令嬢は結婚したら、仕事も学校も辞めるという人が多いが、私はそのつもりは無い。結婚もして、自分のキャリアも積む。そのキャリアがきっと私の人間としての厚みになっていき、王妃としての信頼に繋がっていくはずだ。
それに例の件と関わった以上、自分だけが蚊帳の外という訳にもいくまい。
今日は結婚式の日であった。
控え室にて。私は純白のドレスを身に纏う。
レースは少なく、大人びたデザインのドレスであった。すでにメイクを施されている。私の銀色の髪は綺麗にあげられていた。
自分で見ても、見とれてしまうほど綺麗である。
なお、このドレスは殿下が選んでくれた。さすがの殿下である。私の身体を引き立て、私が気に入るドレスを選んでくれた。
まじまじと鏡の前で自分の姿を見ていると、コンコンと扉をノックされた。
「入っていい? オリヴィア」
「ええ、フィー」
扉を開いてあらわれたのは、もうすでに白いタキシードを身に纏う殿下であった。美しいし、かっこいい。殿下は常にかっこいいが、今日の殿下はいつもの何倍もかっこいい。
そんな魅力的な殿下の姿に目が離せなかった。
結婚するにあたり、殿下から「殿下ではなく、愛称で呼べ」とお願いされた。フィーというのは、彼の幼い頃からの愛称らしい。兄やアラン様など古い友人だけでなく、国王と王妃もその名前で呼びかけることがあるという。
フィーは私の姿を見るなり、硬直した。そして、口に手を当て「想像以上だな……」とぼやく。
……なにかおかしなところがあったかと、怪訝に思う。
「なにが想像以上なのよ」
私は口を尖らせ、問い詰めた。すると、フィーはにこにこと微笑みながら、私の元にやってくる。そして、私の腰を抱いた。
「想像以上に綺麗だってことだ」
その言葉に、ドキンと胸がなる。私は、赤くなった顔を隠すかのように、俯いた。
「あら、ありがとう。フィーも素敵だわ」
俯きながら、言う。フィーの腰を抱く手が、強くなった。
「誰にも見せたくないな」
耳元でそんな声が聞こえる。
「ご冗談を」
私がふふっと笑う。そして、彼の顔を見上げた。冗談を言っていたかと思ったが、フィーの顔は真剣そのものだ。
……いやいや、まさか本気で言ってるわけではあるまい。
バタンと扉が開いた。あらわれたのは兄であった。兄も正装であった。 体を寄せ合う私たちの姿を見るなり、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた。フィーが慌てて私から離れる。
「お熱いなあ……」
兄がからかい口調でそう言った。そして──
「お熱いのは見てて幸せだが、もう時間だ。イチャつくのは、終わってからにしてくれ」
兄がウィンクをひとつしてみせた。そして、バタバタと部屋を出ていく。
私とフィーは顔を合わせた。そして、1歩足を進めた。ゆっくりと……ゆっくりと会場に向かう。
これから訪れる光の未来の中へ。私たちは2人で入っていくのであった。これから始まる新しい物語に胸を高鳴らせながら──
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