本編
異世界転移魔法の件が決着した後、なにごともない日々が過ぎていった。
件の関係者のその後については私が直接的に関わることなく、兄から間接的に聞いた。
学園長とライカ先生は逮捕され、今も牢獄の中に囚われている。学園長もライカ先生も反省の色が見えず、兄たちもその処遇に迷っているようだ。
アリスは、被害者であるとされ釈放された。しかし、転移者であるクリーンオッツ家には帰ることは出来ず、行方知らずだそうだ。どこかで幸せになっていることを祈りたい。
勘当されたエドワードは今は隣国でひっそりと暮らしているらしい。……アラン様がこっそり仕送りを送っているという。まあ、こちらもそれなりに幸せに暮らして欲しいところではある。
犠牲者については兄が今、異世界についての研究をしている。いち早く犠牲者がこの世界に戻ってくるために。転移者があちらの世界に戻れるように。必死に研究を進めている。
今、私自身もその研究に関わりたいと考えている。そのためには少なくとも大学院に行き、魔法の研究者とならなければならない。
私は研究者となるため、高等部3年になり最終学年になった私は必死に勉強している。
なお、私はちゃんと生徒会長になることが出来た。学園長とライカ先生という今回の首謀者に推薦されたため後ろめたさはあったが、ほかの先生からの推薦もあったため、遠慮なく生徒会長という地位に立っている。
生徒会長の仕事は忙しい。だけど、以前よりもほかの生徒たちとの関係が多くなった気がする。「ありがとう」と言われることが多くなった。「頼りになる」と言われることが多くなった。私は今まで少し近寄り難い存在だったらしい。生徒会長になり、生徒のために仕事をするにつれ、その印象がだんだんと失われて行ったらしい。
その影響なのか、時間が経った影響なのか、私の周りにあった「浮気され婚約破棄された可哀想な令嬢」というイメージはだんだんと薄れていった。
充実している学校生活を送っているが、ひとつ足りないものがあった。
──フィオナ……いや、フィーリオ殿下だ。
フィオナは事件が終わったあと、転校したということになっている。そりゃそうだ。事件が解決した今、フィオナがここにいる理由はない。
充実している……が、寂しい。
……殿下に会えないのはつらい。会いたい。
だけど、殿下はお忙しい人だ。私などに割く時間は無い。
「転移魔法の件がおわっても、私と関わってくれるかい?」
殿下のその言葉を忘れた訳では無い。だけど、いざ殿下と関わろうとすると、どうすればいいか分からない。任務という共通の目標がないから、殿下が凄く遠い存在になってしまった気がする。
あの人を忘れない訳では無い。だけど、その甘い心は淡い心となって消えたのだ。
想いを忘れよう忘れようとしていたある日 。私は学園のレポートの調査のため、王立図書館に行った。王立図書館は、王宮の隣にある王国1の図書館である。本館と、4つの別館からなる大規模な図書館だ。リアン王国だけでなく、他国の本も多く所蔵されている。
私は魔法学の本を探すため、本館へ向かう。本館は図書館の中でも1番立派な建物であった。王宮を設計した建築家が作ったらしく、豪華絢爛な建物である。
図書館の中に入ると、本の匂いが私の鼻をくすぐった。入るなり見えたのは、本の壁がそびえ立っている様子だった。天井にはシャンデリアが光る。
無限にある本から、私は目当ての本を探した。
「えっと……リゲール・ミルクの『地下魔法の原理』……」
ぼやきながら探す。
あ、見つけた。
が……かなり高いところにある。手を伸ばす。
届かない。
背伸びをしてみるが、やっぱり届かない。
もう1回試してみる。
やっぱり届かない。
仕方ない、司書さんを呼んで取ってもらうか。
伸ばした手をひっこめようとした──その時。
「取りたいのはこれ?」
後ろから声が聞こえた。この声は──
胸の高鳴りを抑えながら、私はくるりと振り返る。
誰よりも待ってたその人が、そこにいた。
「フィーリオ殿下……?」
「オリヴィア、こんにちは」
あの時と変わらない顔で、彼は私を見ていた。その美しい顔が、私の顔を照らす。
そして、殿下は私が取りたかった本をひょいっと取って、私に渡した。
「ありがとうございます……ところで、どうしてここに?」
「久しぶりに新しい本を読みたいなって思って図書館に来たら、オリヴィアを見かけてね……追いかけてきた」
殿下が肩を竦めながら言った。
追いかけてきた。仲良くしてくれようとするその気持ちが嬉しかった。
「殿下、お久しぶりですね」
「久しぶり。ごめん、なかなか会いにいけなくて」
「いえいえ、私も……」
気まずくて、俯いてしまう。勇気がなかなかなくて、こちらから行動出来ていなかったのだ。
「オリヴィア、この後ちょっと時間ある? 君の図書館での用事が終わってからでいいから」
殿下が問うた。なんのようであろうかと疑問に思う。とはいえ、もちろん、殿下に割くための時間はたくさんある。浮かれた気持ちの私はこくんと頷いた。
件の関係者のその後については私が直接的に関わることなく、兄から間接的に聞いた。
学園長とライカ先生は逮捕され、今も牢獄の中に囚われている。学園長もライカ先生も反省の色が見えず、兄たちもその処遇に迷っているようだ。
アリスは、被害者であるとされ釈放された。しかし、転移者であるクリーンオッツ家には帰ることは出来ず、行方知らずだそうだ。どこかで幸せになっていることを祈りたい。
勘当されたエドワードは今は隣国でひっそりと暮らしているらしい。……アラン様がこっそり仕送りを送っているという。まあ、こちらもそれなりに幸せに暮らして欲しいところではある。
犠牲者については兄が今、異世界についての研究をしている。いち早く犠牲者がこの世界に戻ってくるために。転移者があちらの世界に戻れるように。必死に研究を進めている。
今、私自身もその研究に関わりたいと考えている。そのためには少なくとも大学院に行き、魔法の研究者とならなければならない。
私は研究者となるため、高等部3年になり最終学年になった私は必死に勉強している。
なお、私はちゃんと生徒会長になることが出来た。学園長とライカ先生という今回の首謀者に推薦されたため後ろめたさはあったが、ほかの先生からの推薦もあったため、遠慮なく生徒会長という地位に立っている。
生徒会長の仕事は忙しい。だけど、以前よりもほかの生徒たちとの関係が多くなった気がする。「ありがとう」と言われることが多くなった。「頼りになる」と言われることが多くなった。私は今まで少し近寄り難い存在だったらしい。生徒会長になり、生徒のために仕事をするにつれ、その印象がだんだんと失われて行ったらしい。
その影響なのか、時間が経った影響なのか、私の周りにあった「浮気され婚約破棄された可哀想な令嬢」というイメージはだんだんと薄れていった。
充実している学校生活を送っているが、ひとつ足りないものがあった。
──フィオナ……いや、フィーリオ殿下だ。
フィオナは事件が終わったあと、転校したということになっている。そりゃそうだ。事件が解決した今、フィオナがここにいる理由はない。
充実している……が、寂しい。
……殿下に会えないのはつらい。会いたい。
だけど、殿下はお忙しい人だ。私などに割く時間は無い。
「転移魔法の件がおわっても、私と関わってくれるかい?」
殿下のその言葉を忘れた訳では無い。だけど、いざ殿下と関わろうとすると、どうすればいいか分からない。任務という共通の目標がないから、殿下が凄く遠い存在になってしまった気がする。
あの人を忘れない訳では無い。だけど、その甘い心は淡い心となって消えたのだ。
想いを忘れよう忘れようとしていたある日 。私は学園のレポートの調査のため、王立図書館に行った。王立図書館は、王宮の隣にある王国1の図書館である。本館と、4つの別館からなる大規模な図書館だ。リアン王国だけでなく、他国の本も多く所蔵されている。
私は魔法学の本を探すため、本館へ向かう。本館は図書館の中でも1番立派な建物であった。王宮を設計した建築家が作ったらしく、豪華絢爛な建物である。
図書館の中に入ると、本の匂いが私の鼻をくすぐった。入るなり見えたのは、本の壁がそびえ立っている様子だった。天井にはシャンデリアが光る。
無限にある本から、私は目当ての本を探した。
「えっと……リゲール・ミルクの『地下魔法の原理』……」
ぼやきながら探す。
あ、見つけた。
が……かなり高いところにある。手を伸ばす。
届かない。
背伸びをしてみるが、やっぱり届かない。
もう1回試してみる。
やっぱり届かない。
仕方ない、司書さんを呼んで取ってもらうか。
伸ばした手をひっこめようとした──その時。
「取りたいのはこれ?」
後ろから声が聞こえた。この声は──
胸の高鳴りを抑えながら、私はくるりと振り返る。
誰よりも待ってたその人が、そこにいた。
「フィーリオ殿下……?」
「オリヴィア、こんにちは」
あの時と変わらない顔で、彼は私を見ていた。その美しい顔が、私の顔を照らす。
そして、殿下は私が取りたかった本をひょいっと取って、私に渡した。
「ありがとうございます……ところで、どうしてここに?」
「久しぶりに新しい本を読みたいなって思って図書館に来たら、オリヴィアを見かけてね……追いかけてきた」
殿下が肩を竦めながら言った。
追いかけてきた。仲良くしてくれようとするその気持ちが嬉しかった。
「殿下、お久しぶりですね」
「久しぶり。ごめん、なかなか会いにいけなくて」
「いえいえ、私も……」
気まずくて、俯いてしまう。勇気がなかなかなくて、こちらから行動出来ていなかったのだ。
「オリヴィア、この後ちょっと時間ある? 君の図書館での用事が終わってからでいいから」
殿下が問うた。なんのようであろうかと疑問に思う。とはいえ、もちろん、殿下に割くための時間はたくさんある。浮かれた気持ちの私はこくんと頷いた。
