本編
「ありがとう、オリヴィア。ここまで出来れば上出来だ」
兄が私の頭をガシガシと掻き回した。アラン様も私の手を握り、「ありがとう……」とひとこと礼を言う。
大したことは言ってない。ただ、冷静に対話しただけだ。
「フィー、オリヴィアを家に返してくれ」
「もういいの……?」
「オリヴィア、なんか疲れてそうじゃん。帰りな。いいよな? フィー?」
「もちろんだ」
兄なりの気遣いだった。その心がちょっと嬉しい。
私は兄とアラン様に一礼して、部屋を出る。
「……オリヴィア、ありがとう」
「いえ、こちらこそありがとうございます。体育館でもエドワードの件でも、助けてもらいました」
正直、フィーリオ殿下がいなければここまで上手くいかなかったし、私の貞操は奪われていた。
本当に……感謝しかない。
王宮内を歩いていく。ちらりと、フィーリオ殿下の横顔を見た。自分になにかできることはあるのだろうか。考えてみる。
……いや、こういうのは考えるよりも先に聞いた方が早い。私は歩く殿下に話しかけた。
「フィーリオ殿下、私に何かできる事ありますか?」
「できること?」
「ええ。いつも助けて貰ってるし、送り迎えして貰ってるし……本当になんでもいいです。欲しいものとかあれば教えてください」
私がそう聞くと、殿下は「そうだな」と顎に手を置いて考えた。
殿下の返事を待つ。仕事の手伝いでもいいし、プレゼントでもいい。私にできることは限られているが、なんだってするつもりだ。
しばらくして、穏やかな笑みを携えながら、こちらに向かう。
「今度の舞踏会、一緒に踊ってくれないか?」
殿下の視線に一瞬だけ真剣な眼差しが宿った。「え?」と思わず声を上げてしまう。
「オリヴィアと踊りたいな」
殿下がどこか嬉しそうにそう言った。
そんな誘いに、胸がキュンっと高鳴ってしまった。……が、別に舞踏会というのは恋人じゃなくても、誰とでも踊っていいものだ。家族とも、親戚とも、異性の友達とも踊るものである。期待をしてはいけない。
なんら特別な誘いでは無い。
「分かりました。踊りましょう」
「……よかった」
殿下の笑みが華やかなものとなる。なぜか、凄い喜ばれている。
「殿下の足、踏みつけないように頑張ります」
「いくらでも踏みつけていいよ」
「私が処されます。殿下がよくても周りが許しません」
そんな会話をしながら。私たちは王宮の中を歩いていった。
※※※
その頃、執務室では。
「さて、あんたをどう処理しようか」
「勝手にしなさいよ」
レナードとアリスの間で火花が散る。アランが間に入った。
「アリス、異世界転移魔法に関わった以上、お咎めなしとは言えない。君の両親にも事情を聞くよ」
「別にいいわよ。なにも有益な情報は出てこないだろうけど」
アリスはふんっとそっぽを向いた。レナードが、呆れたため息をつく。
「転移魔法について知らないわけないだろう。転移したお前をどうして娘として受け入れたかとか聞きたいことは山ほどある」
「そう言われたって……私、なぜかここに来た最初から、あの人たちは私を娘として接していたわ」
「……どういうことだ」
「言葉の通りよ。まるで私が生まれた時から私と一緒にいるような対応だったわ」
アリスは足を組む。先程までの涙はどこに行ったのか、不機嫌を表に出しながら話をしていた。
アリスの話を聞き、レナードは考える。
あたりまえのように用意されていたポジション。わざわざ魔法がそれを用意したのだろうか。わざわざ、こちらから犠牲者を出してまで──
ん? 犠牲者?
すると、ひとつの答えらしきものが浮かび上がった。
「これは仮説になるが、異世界転移者とこちらにいた犠牲者の存在が入れ替わっているのか?」
「どういうこと?」
アランが問う。レナードはさらに話をつづけた。
「異世界転移者があちらの世界からこちらの世界に来る時、その代わりにこちらの世界の人間があちらの世界に行っているんだ」
さらにレナードは話を続ける。
「異世界転移者はこちらで失われた人間のポジションにつく。だから、アリスの転移で犠牲になったのは、本物のクリーンオッツ家の人間だ」
「なるほど……」
「証拠は揃ってない。ただの仮説だ。ただただクリーンオッツ家が異世界転移魔法に協力しているだけって可能性も無くはない」
レナードは言い放つ。だけど、筋は通っている気がする。
アランとレナードが顔を見合わせた──その時。アリスが「あっ」と思い出したかのように小さな声をこぼした。
「そういえばあの声……」
微かな声でアリスがつぶやく。
アランとレナードは、くるりとアリスの方を向き、その言葉を待った。
アリスが#1人の人間の名前__・__#を言った。
「フィーにも知らせないとな」
アリスの言葉を聞いたレナードがそうこぼした。
兄が私の頭をガシガシと掻き回した。アラン様も私の手を握り、「ありがとう……」とひとこと礼を言う。
大したことは言ってない。ただ、冷静に対話しただけだ。
「フィー、オリヴィアを家に返してくれ」
「もういいの……?」
「オリヴィア、なんか疲れてそうじゃん。帰りな。いいよな? フィー?」
「もちろんだ」
兄なりの気遣いだった。その心がちょっと嬉しい。
私は兄とアラン様に一礼して、部屋を出る。
「……オリヴィア、ありがとう」
「いえ、こちらこそありがとうございます。体育館でもエドワードの件でも、助けてもらいました」
正直、フィーリオ殿下がいなければここまで上手くいかなかったし、私の貞操は奪われていた。
本当に……感謝しかない。
王宮内を歩いていく。ちらりと、フィーリオ殿下の横顔を見た。自分になにかできることはあるのだろうか。考えてみる。
……いや、こういうのは考えるよりも先に聞いた方が早い。私は歩く殿下に話しかけた。
「フィーリオ殿下、私に何かできる事ありますか?」
「できること?」
「ええ。いつも助けて貰ってるし、送り迎えして貰ってるし……本当になんでもいいです。欲しいものとかあれば教えてください」
私がそう聞くと、殿下は「そうだな」と顎に手を置いて考えた。
殿下の返事を待つ。仕事の手伝いでもいいし、プレゼントでもいい。私にできることは限られているが、なんだってするつもりだ。
しばらくして、穏やかな笑みを携えながら、こちらに向かう。
「今度の舞踏会、一緒に踊ってくれないか?」
殿下の視線に一瞬だけ真剣な眼差しが宿った。「え?」と思わず声を上げてしまう。
「オリヴィアと踊りたいな」
殿下がどこか嬉しそうにそう言った。
そんな誘いに、胸がキュンっと高鳴ってしまった。……が、別に舞踏会というのは恋人じゃなくても、誰とでも踊っていいものだ。家族とも、親戚とも、異性の友達とも踊るものである。期待をしてはいけない。
なんら特別な誘いでは無い。
「分かりました。踊りましょう」
「……よかった」
殿下の笑みが華やかなものとなる。なぜか、凄い喜ばれている。
「殿下の足、踏みつけないように頑張ります」
「いくらでも踏みつけていいよ」
「私が処されます。殿下がよくても周りが許しません」
そんな会話をしながら。私たちは王宮の中を歩いていった。
※※※
その頃、執務室では。
「さて、あんたをどう処理しようか」
「勝手にしなさいよ」
レナードとアリスの間で火花が散る。アランが間に入った。
「アリス、異世界転移魔法に関わった以上、お咎めなしとは言えない。君の両親にも事情を聞くよ」
「別にいいわよ。なにも有益な情報は出てこないだろうけど」
アリスはふんっとそっぽを向いた。レナードが、呆れたため息をつく。
「転移魔法について知らないわけないだろう。転移したお前をどうして娘として受け入れたかとか聞きたいことは山ほどある」
「そう言われたって……私、なぜかここに来た最初から、あの人たちは私を娘として接していたわ」
「……どういうことだ」
「言葉の通りよ。まるで私が生まれた時から私と一緒にいるような対応だったわ」
アリスは足を組む。先程までの涙はどこに行ったのか、不機嫌を表に出しながら話をしていた。
アリスの話を聞き、レナードは考える。
あたりまえのように用意されていたポジション。わざわざ魔法がそれを用意したのだろうか。わざわざ、こちらから犠牲者を出してまで──
ん? 犠牲者?
すると、ひとつの答えらしきものが浮かび上がった。
「これは仮説になるが、異世界転移者とこちらにいた犠牲者の存在が入れ替わっているのか?」
「どういうこと?」
アランが問う。レナードはさらに話をつづけた。
「異世界転移者があちらの世界からこちらの世界に来る時、その代わりにこちらの世界の人間があちらの世界に行っているんだ」
さらにレナードは話を続ける。
「異世界転移者はこちらで失われた人間のポジションにつく。だから、アリスの転移で犠牲になったのは、本物のクリーンオッツ家の人間だ」
「なるほど……」
「証拠は揃ってない。ただの仮説だ。ただただクリーンオッツ家が異世界転移魔法に協力しているだけって可能性も無くはない」
レナードは言い放つ。だけど、筋は通っている気がする。
アランとレナードが顔を見合わせた──その時。アリスが「あっ」と思い出したかのように小さな声をこぼした。
「そういえばあの声……」
微かな声でアリスがつぶやく。
アランとレナードは、くるりとアリスの方を向き、その言葉を待った。
アリスが#1人の人間の名前__・__#を言った。
「フィーにも知らせないとな」
アリスの言葉を聞いたレナードがそうこぼした。
