本編
「舞踏会?」
とある放課後、フィオナとディナーを食べていた時、ふとフィオナがそんなことを言った。
「うん。今度王宮であるらしいよ」
そういえば、両親からそんなこと聞いたことあった……ような気がする。私はふと母の言葉を思い出した。
「たくさん殿方がいるから、いろいろな人と関わってみなさい」
つまりは、舞踏会に行けということだ。正直、少し憂鬱である。
とくに脈のある男性がいるわけではないのに……と思いつつも、ふと先日のことを思い出した。
──フィーリオ殿下。
優しい、不思議な雰囲気の男性であった。前、フィオナみたいな男性がいたら……と思ったことがあるが、まさにそれを具現化するような男性だ。
私は頭についているバレッタに触れる。あの日貰ったバレッタを、ちょうど今日もつけていた。
綺麗な白銀のバレッタ。レスノアの花が美しく刻まれたバレッタだ。
私好みのデザインであるため、気に入っている。別に王子から貰ったものだからつけてるというわけではない……多分。
でも、あの時を思い出すと、ほんの少し胸が高鳴った。
とはいえ、フィーリオ殿下はこの国の第1王子である。そして、あの端正な顔。様々な女性からのアプローチがあるはずだ。
「フィオナはいくの?」
ふと、聞いてみる。フィオナと行けば、楽しいかもしれない。そんな淡い期待をもって、聞いてみる。
「……行けないかな」
「そうなの? 」
フィオナほど美人なら、舞踏会の花になれると思うのに。でも、フィオナはそんなこと求めるような女性ではないかとも思ってしまう。
少し残念だが、仕方ない。
私は鶏のソテーの最後の1切れを食べた。完食だ。香ばしい香りと、ほのかにきくスパイスが美味しかった。
「オリヴィアはどんなドレスを着るの?」
食べ終えて店を出た頃、フィオナに聞かれた。
「うーん……何色にしようかな……」
ちなみに前回の舞踏会は赤色であった。正直、かなり目立ったので、淡い色がいい。
そんなことを思っていた。
もうそろそろ女性が出歩く時間ではないし帰ろうかと思ったその時。フィオナが目を丸くした。
「……あれ、アリス様じゃない?」
フィオナがそう言う。目を凝らしてみる。そこに居たのは、フィオナの言う通り、アリスであった。アリスの周りには誰もいない。アリスは辺りをキョロキョロと見渡している。こそこそと人目を避けるような動きだった。
「何してんだろう」
私たちは顔を見合わせる。そして、コソコソとアリスを追いかけた。
アリスから隠れる。暗闇と人混みに身を潜めながら、アリスに着いていく。
着いたのは立派な仕立て屋であった。華やかで色鮮やかなドレスがずらりと並んでいる。
アリスはそこに入っていった。
「……何も買わないのに、中に入るのはまずいかな……」
「そうね。仕立て屋は店員さんに絡まれるわ」
そう言って、中に入ることは断念する。
「舞踏会のドレス仕立てるのかな?」
「なのに、あんなこそこそ動くかしら?」
あの時のアリスの姿は明らかに人目を意識していた。挙動不審だった。
仕立て屋に行くだけの姿ではなかった。
私たちは仕立て屋の外から、まじまじとアリスを観察する。ガラスの窓越しから、アリスの姿がはっきり見えた。彼女は仕立て屋の中で、誰かを探すかのようにキョロキョロ辺りを見渡していた。
しばらくして。アリスは誰かと合流した。
その相手を見て、私は目を丸くする。
黒い髪に緑色の瞳に中性的な顔──
「アラン……?」
フィオナが、声をこぼした。
アラン様はこちらに背を向けているため、どういう表情をしているかよく分からない。しかし、フィオナの顔は、いつしかエドワードに見せたあの恋する乙女の顔であった。
アラン様の腕に、アリスがしがみつく。
「どういうこと?」
アラン様がエドワードとアリスの関係を知らないわけが無い。
……浮気?
いや、アラン様は真面目なイメージがある。まさかそんなことするわけない。
とはいえ、アリスは明らかにアラン様に好意を持っている。
「どういうことなの?」
「分からない……」
フィオナはどこか険しい顔をしていた。どこか怒りも見える顔である。
しばらくして。アラン様とアリスは、店員さんに連れられ奥の部屋に消えた。ガラス越しでは見えなくなったため、私たちの追跡はこれ以上出来ない。私たちは唖然として、しばらくその場から動くことが出来なかった。
とある放課後、フィオナとディナーを食べていた時、ふとフィオナがそんなことを言った。
「うん。今度王宮であるらしいよ」
そういえば、両親からそんなこと聞いたことあった……ような気がする。私はふと母の言葉を思い出した。
「たくさん殿方がいるから、いろいろな人と関わってみなさい」
つまりは、舞踏会に行けということだ。正直、少し憂鬱である。
とくに脈のある男性がいるわけではないのに……と思いつつも、ふと先日のことを思い出した。
──フィーリオ殿下。
優しい、不思議な雰囲気の男性であった。前、フィオナみたいな男性がいたら……と思ったことがあるが、まさにそれを具現化するような男性だ。
私は頭についているバレッタに触れる。あの日貰ったバレッタを、ちょうど今日もつけていた。
綺麗な白銀のバレッタ。レスノアの花が美しく刻まれたバレッタだ。
私好みのデザインであるため、気に入っている。別に王子から貰ったものだからつけてるというわけではない……多分。
でも、あの時を思い出すと、ほんの少し胸が高鳴った。
とはいえ、フィーリオ殿下はこの国の第1王子である。そして、あの端正な顔。様々な女性からのアプローチがあるはずだ。
「フィオナはいくの?」
ふと、聞いてみる。フィオナと行けば、楽しいかもしれない。そんな淡い期待をもって、聞いてみる。
「……行けないかな」
「そうなの? 」
フィオナほど美人なら、舞踏会の花になれると思うのに。でも、フィオナはそんなこと求めるような女性ではないかとも思ってしまう。
少し残念だが、仕方ない。
私は鶏のソテーの最後の1切れを食べた。完食だ。香ばしい香りと、ほのかにきくスパイスが美味しかった。
「オリヴィアはどんなドレスを着るの?」
食べ終えて店を出た頃、フィオナに聞かれた。
「うーん……何色にしようかな……」
ちなみに前回の舞踏会は赤色であった。正直、かなり目立ったので、淡い色がいい。
そんなことを思っていた。
もうそろそろ女性が出歩く時間ではないし帰ろうかと思ったその時。フィオナが目を丸くした。
「……あれ、アリス様じゃない?」
フィオナがそう言う。目を凝らしてみる。そこに居たのは、フィオナの言う通り、アリスであった。アリスの周りには誰もいない。アリスは辺りをキョロキョロと見渡している。こそこそと人目を避けるような動きだった。
「何してんだろう」
私たちは顔を見合わせる。そして、コソコソとアリスを追いかけた。
アリスから隠れる。暗闇と人混みに身を潜めながら、アリスに着いていく。
着いたのは立派な仕立て屋であった。華やかで色鮮やかなドレスがずらりと並んでいる。
アリスはそこに入っていった。
「……何も買わないのに、中に入るのはまずいかな……」
「そうね。仕立て屋は店員さんに絡まれるわ」
そう言って、中に入ることは断念する。
「舞踏会のドレス仕立てるのかな?」
「なのに、あんなこそこそ動くかしら?」
あの時のアリスの姿は明らかに人目を意識していた。挙動不審だった。
仕立て屋に行くだけの姿ではなかった。
私たちは仕立て屋の外から、まじまじとアリスを観察する。ガラスの窓越しから、アリスの姿がはっきり見えた。彼女は仕立て屋の中で、誰かを探すかのようにキョロキョロ辺りを見渡していた。
しばらくして。アリスは誰かと合流した。
その相手を見て、私は目を丸くする。
黒い髪に緑色の瞳に中性的な顔──
「アラン……?」
フィオナが、声をこぼした。
アラン様はこちらに背を向けているため、どういう表情をしているかよく分からない。しかし、フィオナの顔は、いつしかエドワードに見せたあの恋する乙女の顔であった。
アラン様の腕に、アリスがしがみつく。
「どういうこと?」
アラン様がエドワードとアリスの関係を知らないわけが無い。
……浮気?
いや、アラン様は真面目なイメージがある。まさかそんなことするわけない。
とはいえ、アリスは明らかにアラン様に好意を持っている。
「どういうことなの?」
「分からない……」
フィオナはどこか険しい顔をしていた。どこか怒りも見える顔である。
しばらくして。アラン様とアリスは、店員さんに連れられ奥の部屋に消えた。ガラス越しでは見えなくなったため、私たちの追跡はこれ以上出来ない。私たちは唖然として、しばらくその場から動くことが出来なかった。
