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年下攻めバカップルシリーズ


03.天根×菊丸



「ダビデーっ!」


聞こえる筈のない声が聞こえて状況を理解出来ないでいると間もなく、胸に飛び込んできたのは遠くに住むはずの恋人であった。


「え…英二、さ、ん?」

「逢いたかったよーっ!」


わんわんと泣き真似をする菊丸に思わず顔が緩む。


「もうね、寂しすぎて飛んで来ちゃった」

「ありがとうございます!俺、嬉しいです!」

「あのね、」


背の高い天根をちょいちょいと手招きして屈ませると、ちゅっと軽く頬に口付けた。


「英二さん…っ!」

「えへへ」


照れたように笑う菊丸を見てこれ以上ない幸せに浸っていた。


「「菊丸っ!!!」」


すると其処へ声を聞いたのだろう、六角レギュラー陣が猛烈なスピードでやってきて、それはもう見事なチームプレイで菊丸をかっさらっていった。


「うわ…っ!英二さんっ!」

「ダビデっ!」


その時、まるでロミオとジュリエットのような悲劇的な雰囲気を醸し出す2人に黒羽は容赦なく蹴りをかました。(もちろん天根にのみだが)


「あ、いっちゃん久しぶり~」

「うん、久しぶりなのね~」

「葵くんもこんにちは~」

「はい!こんにちは菊丸さん!」


しかしそんな空気もほんの一瞬。

天根が佐伯と黒羽の睨みに脅えている横で、菊丸は黒羽に担がれながら呑気に挨拶をしていた。

だが、今日の天根はいつもとひと味違った。


「ま、負けるもんか…!とう!」

「うおっ!?」

「英二さんっ!」

「…っ!ダビデぇっ!」


黒羽の隙をつき体当たりをして、黒羽の腕が緩んだと同時に菊丸を奪還する事に見事成功した。

そして抱き上げ、そのままの勢いで走り始めた。


「「あ、おい!待ちやがれ!ダビデっ!」」

「いいなぁ、昼ドラみたいで!」

「それは違うと思うのね~」


その尋常じゃないスピードの速さに、取り残された六角レギュラー陣はただ見送るしかなかった。



───────………‥‥



「わあ!すごい久しぶりだにゃ~!海ーっ!」


そしてやって来たのは学校の近くの海。


「…あ、部活、抜けてきて大丈夫なの?」

「大丈夫です!」


変に力一杯言うのを見て思わず笑う。


「にゃは、俺ね~…ヒカルのそーゆーとこ好き」

「英二、さん…?」

「にゃはは」


そして率直な意見を、ワザと名前を強調して述べれば思った通り、驚いたような反応を返す天根にまた笑う。


「お、俺も好きです!大好きです!あ、いや、愛してます!」

「…ありがと」


しかし油断した隙に同じくらい、いや、それ以上の愛の言葉を貰い、思わず赤くなった顔を隠すように目線を逸らした。


「…英二さん」

「うん…っ!?」


すると、強い力で引き寄せられ抱きしめられた。

それに驚き、顔をあげると真剣な表情で見つめる天根と目が合い、ますます頬の赤みが増した気がした。


「愛してます、英二さん」

「…俺も、愛してるよ」


さっきとは違う低い声で囁かれ、恥ずかしさも何もかもが一気に吹っ飛び素直にそう告げると、優しく口付けられた。


「……うわー、ダビデって案外男前だったんだ」

「軽く失礼なのね~」

「くっそ…!」

「はぁ、呆れた…」


そして長い口付けを終えた時、タイミングを見計らったように六角レギュラー陣が現れた。


「うわわ…!」

「…みんないつからそこに…?」

「「『すごい久しぶりだにゃ~!海ーっ!』ってとこから?」」

「いや、そこ最初だし!」


顔を真っ赤にさせ狼狽える菊丸をさり気なく庇いながら問えば、元来ボケ担当の筈の天根すら突っ込んでしまうような答えが返ってきた。


「てか、ホント見てるこっちが恥ずかしくなるくらいのバカップルぶりだね」

「いっそ壊してやりたくなるくらいにな」

「な…っ!俺たちの愛はそう簡単に壊れません!」

「あ、ちょ!もう!恥ずかしいってば!」


しかし天根と菊丸について何やらきゃあきゃあ話す2人とは裏腹に、佐伯と黒羽は諦めるどころか物騒なことを言い始めた。


「…英二さんっ!!!」

「は、はい!?」

「俺は英二さんを一生愛することを誓います!!!」


それに焦った天根は菊丸が驚く程の物凄い剣幕でそう宣言した。


「いや、あの…」

「「また…!なに言ってんだよアイツ…!」」

「ストップストーップ!バネさん!サエさん!」

「ほら、菊ちゃん、答えてあげるのね~」


それさえも邪魔しようとする2人を阻止して、菊丸に返事を促したのは葵と樹であった。


「…俺、も…一生、愛するよ」

「英二さん…っ!」

「わ…!んんっ…」


そんな2人の笑顔と天根の真剣な顔つきに押されるままにそう答えれば、さっきよりも熱く口付けられた。


「おめでとうございます!菊丸さん!ダビデ!」

「うんうん、良かったのね~」

『「「おめでとー!」」』


そしていつの間にか集まっていた近所の子供たちまで加わり、何故か結婚式のような雰囲気になっている。


「幸せにします、英二さん」

「ありがと、ヒカル」


そんな騒がしい中、皆には聞こえないくらいの声で優しく言われ、嬉しくない筈がなく。


───皆に見られないよう、口付けを交わした。



*2009/09/04
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