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第一章
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翌日。
任務報告を終えたクザンは、執務室を出て、階段の手すりにもたれかかるように煙草をくわえていた。
火はつけない。ただなんとなく落ち着かなくて、指先でくるくる回す。
(……昨日のアレは、完全にやられてたな、オレ)
モモと並んで、他愛もない会話をして、ただそれだけのはずなのに。
それが妙に胸に残っていて、仕事中も、ぼんやり思い出しては集中が途切れる。
「――ふぅん」
「……、うおっ」
突然、背後から低い声がして、クザンは思わず振り向いた。
そこにいたのは、いつも以上に鋭い目でクザンを見ている、おつるだった。
「アンタ、最近妙に上の空ね。……何か、あったのかい?」
「……いや、べつに。なんもないけどよ」
とぼけて返すと、おつるは腕を組みながら、ふむ、と目を細める。
「……ロープの結び目、逆だったって聞いたけど?」
「……あの子、喋ったのかよ」
「ふふ。あの子ね、いつもは淡々としてるのに、昨日はなんだか、ほんの少しだけ顔が柔らかかったのよ」
おつるの視線が、クザンを見透かすように深くなる。
「……クザン。アンタ、あの子のこと、気になってるね?」
「……っ、な、なんで翌日。
任務報告を終えたクザンは、執務室を出て、階段の手すりにもたれかかるように煙草をくわえていた。
火はつけない。ただなんとなく落ち着かなくて、指先でくるくる回す。
(……昨日のアレは、完全にやられてたな、オレ)
モモと並んで、他愛もない会話をして、ただそれだけのはずなのに。
それが妙に胸に残っていて、仕事中も、ぼんやり思い出しては集中が途切れる。
「――ふぅん」
「……わ、うおっ」
突然、背後から低い声がして、クザンは思わず振り向いた。
そこにいたのは、いつも以上に鋭い目でクザンを見ている、おつるだった。
「アンタ、最近妙に上の空ね。……何か、あったのかい?」
「……いや、べつに。なんもないよ」
とぼけて返すと、おつるは腕を組みながら、ふむ、と目を細める。
「……ロープの結び目、逆だったって聞いたけど?」
「……あの子、喋ったのかよ」
「ふふ。あの子ね、いつもは淡々としてるのに、昨日はなんだか、ほんの少しだけ顔が柔らかかったのよ」
おつるの視線が、クザンを見透かすように深くなる。
「……クザン。アンタ、あの子のこと、気になってるわね?」
「……っ、な、なんでオレが……」
「隠し方下手すぎるんだよ。あたしを誰だと思ってるのさ」
おつるはくつくつと笑う。
「アンタがどんなに飄々としてようが、恋に気づいたときの顔って、みんな同じなんだよ」
クザンは額に手を当てて、困ったように笑う。
「……マジかよ。そんなにバレバレ?」
「バレバレね。ま、でも――」
そこでおつるは少しだけ柔らかい表情になった。
「……悪い子じゃないわよ、モモは。アンタが本気になるなら、アタシは止めない」
「……ありがと」
クザンは頭をかきながら、ゆるく笑った。
「あーあ……やっぱオレ、マジであの子のこと好きになっちまってんだなぁ」
誰にも届かないような声で、煙草をポケットにしまいながら、クザンは静かに階段を降りていった。
オレが……」
「隠し方、下手すぎ。あたしが誰だと思ってるの」
おつるはくすっと笑う。
「アンタがどんなに飄々としてようが、恋に気づいたときの顔って、みんな同じなのよ」
クザンは額に手を当てて、困ったように笑う。
「……マジかよ。そんなにバレバレ?」
「バレバレよ。ま、でも――」
そこでおつるは少しだけ柔らかい表情になった。
「……悪い子じゃないわよ、モモは。アンタが本気になるなら、あたしは止めない」
「……ありがと」
クザンは頭をかきながら、ゆるく笑った。
「あーあ……やっぱオレ、マジでアンタのこと、好きになっちまってんだなぁ」
誰にも届かないような声で、煙草をポケットにしまいながら、クザンは静かに階段を降りていった。
任務報告を終えたクザンは、執務室を出て、階段の手すりにもたれかかるように煙草をくわえていた。
火はつけない。ただなんとなく落ち着かなくて、指先でくるくる回す。
(……昨日のアレは、完全にやられてたな、オレ)
モモと並んで、他愛もない会話をして、ただそれだけのはずなのに。
それが妙に胸に残っていて、仕事中も、ぼんやり思い出しては集中が途切れる。
「――ふぅん」
「……、うおっ」
突然、背後から低い声がして、クザンは思わず振り向いた。
そこにいたのは、いつも以上に鋭い目でクザンを見ている、おつるだった。
「アンタ、最近妙に上の空ね。……何か、あったのかい?」
「……いや、べつに。なんもないけどよ」
とぼけて返すと、おつるは腕を組みながら、ふむ、と目を細める。
「……ロープの結び目、逆だったって聞いたけど?」
「……あの子、喋ったのかよ」
「ふふ。あの子ね、いつもは淡々としてるのに、昨日はなんだか、ほんの少しだけ顔が柔らかかったのよ」
おつるの視線が、クザンを見透かすように深くなる。
「……クザン。アンタ、あの子のこと、気になってるね?」
「……っ、な、なんで翌日。
任務報告を終えたクザンは、執務室を出て、階段の手すりにもたれかかるように煙草をくわえていた。
火はつけない。ただなんとなく落ち着かなくて、指先でくるくる回す。
(……昨日のアレは、完全にやられてたな、オレ)
モモと並んで、他愛もない会話をして、ただそれだけのはずなのに。
それが妙に胸に残っていて、仕事中も、ぼんやり思い出しては集中が途切れる。
「――ふぅん」
「……わ、うおっ」
突然、背後から低い声がして、クザンは思わず振り向いた。
そこにいたのは、いつも以上に鋭い目でクザンを見ている、おつるだった。
「アンタ、最近妙に上の空ね。……何か、あったのかい?」
「……いや、べつに。なんもないよ」
とぼけて返すと、おつるは腕を組みながら、ふむ、と目を細める。
「……ロープの結び目、逆だったって聞いたけど?」
「……あの子、喋ったのかよ」
「ふふ。あの子ね、いつもは淡々としてるのに、昨日はなんだか、ほんの少しだけ顔が柔らかかったのよ」
おつるの視線が、クザンを見透かすように深くなる。
「……クザン。アンタ、あの子のこと、気になってるわね?」
「……っ、な、なんでオレが……」
「隠し方下手すぎるんだよ。あたしを誰だと思ってるのさ」
おつるはくつくつと笑う。
「アンタがどんなに飄々としてようが、恋に気づいたときの顔って、みんな同じなんだよ」
クザンは額に手を当てて、困ったように笑う。
「……マジかよ。そんなにバレバレ?」
「バレバレね。ま、でも――」
そこでおつるは少しだけ柔らかい表情になった。
「……悪い子じゃないわよ、モモは。アンタが本気になるなら、アタシは止めない」
「……ありがと」
クザンは頭をかきながら、ゆるく笑った。
「あーあ……やっぱオレ、マジであの子のこと好きになっちまってんだなぁ」
誰にも届かないような声で、煙草をポケットにしまいながら、クザンは静かに階段を降りていった。
オレが……」
「隠し方、下手すぎ。あたしが誰だと思ってるの」
おつるはくすっと笑う。
「アンタがどんなに飄々としてようが、恋に気づいたときの顔って、みんな同じなのよ」
クザンは額に手を当てて、困ったように笑う。
「……マジかよ。そんなにバレバレ?」
「バレバレよ。ま、でも――」
そこでおつるは少しだけ柔らかい表情になった。
「……悪い子じゃないわよ、モモは。アンタが本気になるなら、あたしは止めない」
「……ありがと」
クザンは頭をかきながら、ゆるく笑った。
「あーあ……やっぱオレ、マジでアンタのこと、好きになっちまってんだなぁ」
誰にも届かないような声で、煙草をポケットにしまいながら、クザンは静かに階段を降りていった。