(Izw)



奏は初めて会った時から自分をちゃんと持ってる人で惚れ惚れするほど綺麗な人でとても優しい人だった。


そして俺は彼女に惚れたのだ。


奏が「伊沢さん」と呼ぶのから「拓司くん」と呼ぶのが慣れた頃、俺は奏にプロポーズをした。


生きてきた中で1番、幸せな時間だった。


奏とハネムーンを決めて、家具を決めて、些細なことでもとても楽しかった。
言い争う時間も今になっては愛おしい。


でも、運命は悲しいもので。


奏は呆気なく逝ってしまった。
病気だった。



奏は秋が好きだった。
「ほんとはね、冬が1番すきなの。でも、冬は終わっちゃうから。これから冬だー！って秋が好きなの。」
変だよと笑いあった記憶は夢じゃないのに。


奏の存在自体が夢だったような気がする。





彼女の好きだった、秋がもうすぐ来る。

金木犀の香りが漂ってくる頃俺は彼女を抱きしめる。


夢なのかもしれない、都合のいい妄想なのかもしれない。


全てが悪い夢だったと、誰かが告げてくれればいいのに。