(Izw)



彼女はいつも金木犀の香りがする。

中々、会えない彼女の香りは特別で。

俺だけのもの。

懐かしく、寂しく、暖かい。




久しぶりに彼女を見ると、たまらなくなって抱きしめる。
「愛してるよ、」と。

彼女は「うん、」と少しはずかしそうに、けれど嬉しそうに俺の背中に手を回す。

その感触が嬉しい。


抱きしめながら、今回は長くいられる？と、
答えは分かりきってる質問をする。

「ごめん、今回もいつも通り。」


何も答えない変わりに彼女を抱きしめる力を強めた。
誰かに対する意思表示のように。


2人で会える短い時間。
彼女を感じていたくて、ずっと側にいた。

仕事大丈夫？と彼女が心配そうに言う。
大丈夫と、手を握り答える。
この時をずっと待っていたのだから。仕事を先に終わらせることなど簡単な事。


彼女の金木犀の香りに顔を埋めて、愛し合う。


好きだよ、拓司くん。
と言われるのはいつも最後のほう。
そして、彼女からキスをする。



目が覚めると、金木犀の香りが消えていた。



外では秋らしく、雨が窓をうっていた。