(izw)



ひらひらと手に持っていた紅葉が風に吹かれて、飛んでいく。



愛したあの人がいる所も紅葉の季節になっただろうか？



将来なんて考えてなかった大学で出会った伊沢くんはとても賢かった。


高校も開成で東大のエリート。
クイズ番組で優勝しちゃったり。

でも、将来の夢は決まってなかったり。

気配りが上手な所とか。

自習中とか、クイズ中とか、目が合うと口パクで『好き』って行ってくる所とか。



そんな伊沢くんがとても好きだった。

そして自惚れでは無く彼も私の事が好きだった。






私は研究医になりたくて、医学にすすんだ。

そんな私に「海外で研究分野を勉強しないか」なんて推薦が来たら、断れる理由がなかった。


伊沢くんも賛成してくれた。


「俺は奏が運命の人だと思ってるから。待ってる。」
と自信満々に言う彼に

「私が向こうで凄っいイケメンと恋に落ちちゃうかもよ。」って言っても

「大丈夫！俺はまた奏を惚れさせる自信があるから。」
なんて。



紅葉の花言葉は『大切な思い出』

それを教えてくれたのも伊沢くん。

街には伊沢くんが教えてくれたものが沢山ある。

その思い出が私にとって大切な思い出。




かっこいいイケメンとなんて恋に落ちたりしないから、伊沢くん待ってて。



彼の手にも紅葉が飛んで行きますように。