(Kwkm)




高校の時、古文で「かなし」が「愛し」となることに「へぇ、テストに出そう」しか感想がなかった。

そもそも、実感がなかった。




でも、それが今になって思い出し実感するとは高校生の俺は思ってもいなかった。



「奏どうしたん？顔がニマニマしてる。」
「 だって、私の一番好きな人だもん！」

あぁ、そう。と流したが内心は流せない。

好きな人？
誰？
スマホ見とるしな。
メール？
てか、好きなのは付き合ってる俺じゃないの？



「ねぇ、これ答えた時どんな気持ちでした？川上さん！」
と彼女がスっと目の前に出したのは俺と伊沢さんなどのメンバーが出ている動画。

まって、ちょっと理解が出来ない。

「感想？押した時はそりゃ嬉しいけど。」

そう！だよね！とまたソファに戻ってスマホを見ている。


俺の理解が正しいのなら、奏の好きな人は.........。

嫌、待てよ。他のメンバーの可能性もある。
誰だよ。





「なに見とるん？俺らの動画？」
「そうだよ！拓郎が忙しくしてたから暇潰そっかなって。」

上から覗くと流れている動画の、下にある言葉が目に入った。

『川上拓郎 好きな動画集』という題名の再生リスト。



俺はモーレツに体温が上がった気がして覗き込むのを辞めた。




やっと実感が湧きました。高校の古文の先生。
古文で「かなし」が「愛し」となるのは悲しい時のように、胸が痛くなるからなのか。

大好きな彼女が自分のことを「好き」だと改めて言ってくれると。