誰よりも愛を知っている貴方は

 本丸に帰ると、亀甲の部屋に連れてこられた。少し待っているように言われ、しばらくして亀甲が救急箱を持って帰ってきた。
「傷の手当をしないと。手を出して」
「い、いいよ。自分でやる」
「ご主人様」
 亀甲は優しく審神者の手を取って、ゆっくり語りかけた。
「あなたのことを大切にしたいんだ。ぼくにやらせてほしい」
「……わ、わかっ、た……」
 亀甲は傷に消毒液を塗って、ガーゼで保護したり、大きな傷には包帯を巻いてくれた。
「口の端も切れているね。少し染みるよ」
 アルコールが染みた脱脂綿を、口元の傷に当てられる。ほんの少しだけ痛くて、身体が跳ねた。
「大丈夫かい?」
「だ、大丈夫……」
「よし、これで大丈夫。念の為、明日病院に行こう」
「……いいよ、これくらいの傷、昔はよくやってたしすぐ治るから」
 そう言うと、亀甲は審神者の身体を包み込んだ。
「ご主人様。どうか自分をないがしろにしないで。あなたはぼくの大切なひとなんだ」
「……そ、の、大切、って、どういう、意味?」
 亀甲は言っていた、『愛しいひと』だと。それは、主従としての意味なのだろうか。
「さっき言ってたいとしい、って……ご主人様として、なの?」
 期待をしてもいいのだろうか。亀甲が、自分を想ってくれていると──。
「……あなたに男女の情があると言ったら、信じてくれるかい?」
 亀甲の瞳に嘘はなかった。審神者を愛している──男の目だ。
「きっこう……」
 嬉しい。彼が同じ気持ちだったなんて。でも、本当にいいのだろうか。審神者は他の男に身体を許したのだ。
「いい、の? だって私、あいつに……」
「それ以上は言わなくていい。ぼくはあなたを愛したいんだ。それだけじゃだめかな」
「…………ううん、ダメじゃ、ない……」
 審神者はぽすん、と亀甲に身体を預けた。
「私、貴方の……ちょっと変態だけど面白いところとか、いざって時は私を支えてくれるところとか……私を、大切だと思ってくれるところとか……」
 きゅ、と彼の服を掴む。許されるのなら、彼と生きたい。
「そういうところが……好きなの……」
 言った。言ってしまった。心臓がばくばくと高鳴っている。全身から変な汗が出そうだ。
「……ご主人様…………」
「私で、いい? 私は、亀甲がいいの……」
 その言葉に、返答はなかった。ただ、彼は愛おしげに微笑んで、ゆっくりと審神者の頬に触れ、唇を重ねた。
「……ぼくの、ぼくだけの、光。誰よりも愛しいひと」
 涙がぽろぽろと零れる。ようやく、ようやく届いた大切な想い。
「亀甲……亀甲っ……」
「ご主人様──」
 亀甲はいつまでも、いつまでも審神者を抱き締めて離さなかった。
 
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