「女の子」らしく?

「可愛くなりたいぃ……」
 審神者は自室で、べしゃりと力尽きた。
「なに、どうしたの主」
「おしゃれ……頑張ろうと思って……パーソナルカラー診断行ってきたんだけど……」
「ん、どーだったの?」
「私……壊滅的にベビーピンク似合わなかった……!」
 女の子らしくてふわふわした、可愛らしい色。女の子ならみんな似合う色だと思っていたのに。
「別にいーじゃん、他に似合う色わかったんでしょ?」
「でも男の子ってみんなベビーピンク着てるふわふわした女の子が好きでしょ……」
「どっから来んのその偏見」
「はあ……もっと可愛らしくなりたい……おしとやかで優しくて気遣いできて料理が得意な女の子になりたい……」
 でも、現実の自分はどうだろう。がさつで男勝りで、気遣いは出来なくて料理だってできない。
「おうおう理想たっかいなあ」
「だって……女の子らしくなんないと……」
「……なんないと?」
 男性が喜ぶ女性に、ならないと。
「亀甲が……恥ずかしい思いするでしょ……」
「は? なんで亀甲?」
「だって、私みたいながさつ女が恋人だなんて言ったら、恥ずかしいよ。亀甲が人を見る目がないって思われる。少なくとも、私は男だったら私みたいな女の子、絶対恋人にしたくないもん……」
 言ってて虚しくなってきた。じわりと涙がにじんで、だんだん声が震えてくる。
「……はーあ。ほんと、主ってバカだよねえ」
「こ、これでも真剣に悩んでるんだよ!?」
「じゃあ聞くけどさ、無理してそのおしとやかで料理が得意な女の子? になったとして、亀甲がその主を好きになっても嬉しい? 偽った自分好きになってもらって、意味はあるの?」
「う…………」
「可愛くなるのはいいと思うよ。自分を磨くって意味でね。けど、嘘の自分作るのは違うと思う」
「……でも、今の私じゃ…………」
「あのさ、主」
 加州はため息を吐いて、ぴしりと審神者の額にデコピンを食らわせた。
「ひぎゃっ」
「亀甲が好きなのは、あんたそのものなんだよ。そこを否定しないであげてよ」
「加州……」
 彼の言葉がじんわりと沁みる。今のままで、ありのままでいいのだろうか。
「その通りだ!」
 障子が勢いよく開いて、そこには亀甲が立っていた。
「ぎゃあっ!? 亀甲、いつから……!」
「ぼくが好きなのは凛としていて男性にも恐れず立ち向かう勇気があり、ぼくのことを信頼してくれる優しいご主人様だよ!」
 亀甲は審神者の手を握り、まっすぐに見つめてくる。
「どうか、ぼくの好きなひとを否定しないでほしい。ぼくは『あなた』が好きなんだ」
「亀甲……」
「それに──あなたは充分かわいらしい。これ以上かわいくなったら、あなたが男性にもてすぎて困ってしまうよ」
 ちゅ、と手の甲に口づけが落ちる。可愛い、なんて、人生で数えるくらいしか言われたことないのに。
「そーそー。主既に可愛いって。ま、もっと自分磨きしたいならお手伝いはするよ?」
「ご主人様、どうかぼくのために無理をしないで」
「は……はい……」
 優しく抱き寄せられて、心臓がばくりと高鳴る。
「き、亀甲、加州いるから……!」
「すまない、あなたが愛しくて我慢できないんだ」
「あーあー、バカップルー」
 加州は呆れたため息を吐いてお茶をすする。午後のひと時は、穏やかに過ぎていった。 
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