理解者の愛
その日、演練相手の審神者は、男性だった。男士たちが戦っている中、審神者は少し離れた場所から様子を見守る。
今日の部隊長は加州。戦闘経験が豊富だしまず負けることはないだろう。
「お強いですね」
相手の審神者がこちらを見ながら微笑んできた。
「……ありがとうございます」
正直、あまりこの男と話したくない。審神者は様々な人間を見てきたが──その中でも女を品定めする男と言うのは一定数いる。男はその部類だ。
現に、先程から審神者のことをじろじろと鑑定するように見てきている。不快なことこの上ない。
「貴方のような素敵な方が審神者をやっているとは思いませんでした」
「……そうですか」
「本丸の運営の話などしませんか? よければ刀を下がらせて、ふたりきりで──」
やはり、ナンパが目的だったか。審神者ははあとため息を吐いて、男を睨んだ。
「私付き合っている刀がいるので、ナンパならお断りです」
「……はい?」
男はぴきりと青筋を浮かべた。まさか振られると思っていなかったのだろう。
「……ちなみに、どの刀と?」
「亀甲貞宗ですが」
「……は、はは! 亀甲、亀甲ときましたか!」
男は亀甲の名前を聞いた瞬間、こちらを馬鹿にするような笑顔を見せてきた。
「忠誠心はあるけどな、男としては三流だろ! あんな変態趣味の男を選ぶなんてどうかしてる! アンタも変態か!?」
「……はあ?」
審神者は自分の全身の血液が巡る感覚を覚えた。
──こいつ、私の亀甲のこと、何も知らないくせに。
そう思った瞬間、身体が勝手に動いていた。審神者と亀甲を馬鹿にする男の顎に、重い拳を一撃。
「ぐはあっ!?」
男は部屋の隅にまで吹っ飛ぶ。全力で殴ってしまったが、無礼者に遠慮をする理由もない。
「亀甲はなあ、アタシのこといつでも支えてくれてんだ! 何も知らねえぽっと出が馬鹿にすんじゃねえっ!」
思わず口調が暴走族時代のものに戻る。もう一発殴ろうとすると、加州が後ろから羽交い締めにしてきた。
「ちょっと主! 何してんの! 暴力はまずいって!」
「離して加州! コイツ亀甲のこと馬鹿にしたの!」
「わかった、わかったから落ち着いて!」
相手の審神者は、白目を向いて気絶していた。
暴力沙汰になったことで、審神者は一週間の演練禁止処分を受けた。
「あーるーじー」
審神者は部屋の隅で体育座りをしていた。いきなり殴ってしまったのはよくなかったが、喧嘩を売ってきたのはあの男だ。
「主、そろそろ機嫌直しなよー」
「加州、ご主人様が政府で怒られたと聞いたのだけど……」
「あ、ほら、彼氏来たよ。亀甲、主のご機嫌とって」
「…………」
「ご主人様、何があったんだい?」
亀甲は審神者の近くに来て、心配そうな顔を見せる。
「……が……」
「うん?」
「演練の、相手が……亀甲と付き合ってるって言ったら、亀甲のこと馬鹿にしてきて……男としては三流だとか、ほんっとに失礼なことばっか……」
「…………」
「亀甲はいいところいっぱいある素敵な彼氏だもん。優しいし、頼りになるし、大事にしてくれるし……。だから、許せなくて……気がついたら、殴ってた」
「…………」
亀甲からの返事はなかった。呆れられただろうかと彼を見ると、顔を真っ赤にしている。
「な、なんで照れてるの……?」
「いや……その、ご主人様から特大の愛をもらったので、驚いて……」
「へ……」
審神者は亀甲の好きなところを言っただけだ。それだけで、こんなに喜んでくれるなんて。
「はあ……ぼくはとても愛されているんだね……嬉しくてどうにかなってしまいそうだ……」
亀甲は頬を緩ませながら、審神者を優しく抱き締めた。
「ぼくの大切なご主人様、ぼくのために怒ってくれてありがとう」
「……うん」
亀甲の体温に触れて、ようやく怒りが収まってくる。審神者は彼を抱き締め返して、そのぬくもりに溺れた。
今日の部隊長は加州。戦闘経験が豊富だしまず負けることはないだろう。
「お強いですね」
相手の審神者がこちらを見ながら微笑んできた。
「……ありがとうございます」
正直、あまりこの男と話したくない。審神者は様々な人間を見てきたが──その中でも女を品定めする男と言うのは一定数いる。男はその部類だ。
現に、先程から審神者のことをじろじろと鑑定するように見てきている。不快なことこの上ない。
「貴方のような素敵な方が審神者をやっているとは思いませんでした」
「……そうですか」
「本丸の運営の話などしませんか? よければ刀を下がらせて、ふたりきりで──」
やはり、ナンパが目的だったか。審神者ははあとため息を吐いて、男を睨んだ。
「私付き合っている刀がいるので、ナンパならお断りです」
「……はい?」
男はぴきりと青筋を浮かべた。まさか振られると思っていなかったのだろう。
「……ちなみに、どの刀と?」
「亀甲貞宗ですが」
「……は、はは! 亀甲、亀甲ときましたか!」
男は亀甲の名前を聞いた瞬間、こちらを馬鹿にするような笑顔を見せてきた。
「忠誠心はあるけどな、男としては三流だろ! あんな変態趣味の男を選ぶなんてどうかしてる! アンタも変態か!?」
「……はあ?」
審神者は自分の全身の血液が巡る感覚を覚えた。
──こいつ、私の亀甲のこと、何も知らないくせに。
そう思った瞬間、身体が勝手に動いていた。審神者と亀甲を馬鹿にする男の顎に、重い拳を一撃。
「ぐはあっ!?」
男は部屋の隅にまで吹っ飛ぶ。全力で殴ってしまったが、無礼者に遠慮をする理由もない。
「亀甲はなあ、アタシのこといつでも支えてくれてんだ! 何も知らねえぽっと出が馬鹿にすんじゃねえっ!」
思わず口調が暴走族時代のものに戻る。もう一発殴ろうとすると、加州が後ろから羽交い締めにしてきた。
「ちょっと主! 何してんの! 暴力はまずいって!」
「離して加州! コイツ亀甲のこと馬鹿にしたの!」
「わかった、わかったから落ち着いて!」
相手の審神者は、白目を向いて気絶していた。
暴力沙汰になったことで、審神者は一週間の演練禁止処分を受けた。
「あーるーじー」
審神者は部屋の隅で体育座りをしていた。いきなり殴ってしまったのはよくなかったが、喧嘩を売ってきたのはあの男だ。
「主、そろそろ機嫌直しなよー」
「加州、ご主人様が政府で怒られたと聞いたのだけど……」
「あ、ほら、彼氏来たよ。亀甲、主のご機嫌とって」
「…………」
「ご主人様、何があったんだい?」
亀甲は審神者の近くに来て、心配そうな顔を見せる。
「……が……」
「うん?」
「演練の、相手が……亀甲と付き合ってるって言ったら、亀甲のこと馬鹿にしてきて……男としては三流だとか、ほんっとに失礼なことばっか……」
「…………」
「亀甲はいいところいっぱいある素敵な彼氏だもん。優しいし、頼りになるし、大事にしてくれるし……。だから、許せなくて……気がついたら、殴ってた」
「…………」
亀甲からの返事はなかった。呆れられただろうかと彼を見ると、顔を真っ赤にしている。
「な、なんで照れてるの……?」
「いや……その、ご主人様から特大の愛をもらったので、驚いて……」
「へ……」
審神者は亀甲の好きなところを言っただけだ。それだけで、こんなに喜んでくれるなんて。
「はあ……ぼくはとても愛されているんだね……嬉しくてどうにかなってしまいそうだ……」
亀甲は頬を緩ませながら、審神者を優しく抱き締めた。
「ぼくの大切なご主人様、ぼくのために怒ってくれてありがとう」
「……うん」
亀甲の体温に触れて、ようやく怒りが収まってくる。審神者は彼を抱き締め返して、そのぬくもりに溺れた。