優しい体温

 眠る前にスマートフォンでSNSを見ていると、障子の向こうから声が届いた。
「ご主人様、今いいかな」
「ん、亀甲?」
 障子を開けると、そこには枕を持った亀甲がいた。
「どうしたの? こんな時間に珍しいね」
「ああ、ご主人様と一緒に眠りたくて」
「は……!?」
 亀甲とはつい最近恋仲になったばかりだ。付き合っている男女が一緒に眠るというのはつまり、そういう意味で。
「き、亀甲、私たちまだ付き合ったばっかりだよ!? そ、そういうのはもう少し、なんていうか関係が深まってから……!」
「ご主人様、落ち着いて。そういう意味じゃないんだ」
「へ……?」
「ご主人様は最近、ずっと夜に本丸抜け出していただろう?」
「あ、はい……その節は本当にご迷惑を……」
 審神者は少し前まで、とある男に脅迫されて時間を問わず呼び出されていた。それを亀甲が助けてくれて、付き合うこことになったのだが──。
「ぼくは不安になってしまうんだ。あなたがまた、どこかに行ってしまうのではないかって」
 亀甲はさらりと審神者の頬を撫でる。その手つきはひどく優しくて。
「だから、ぼくの腕の中で眠ってほしい。ご主人様を守りたい。目覚めと共にあなたを見つめたいんだ。」
「っ……」
 ずるい、普段は殴ってくれ蹴ってくれと言ってくるくせに、こういう時に格好いい顔を見せるなんて。
「あなたが嫌がることは決してしないと誓う。だから──」
「わ、わかった……いいよ。部屋入って」
 彼を部屋に入れて、布団を敷く。どういう顔をしていいのかわからなくて、思わず俯いてしまう。
 布団に入ると、亀甲も隣に入る。少し距離を取ると、亀甲は近づいてきた。
「ご主人様、もっと近くに」
「う……」
 亀甲に近寄ると、抱き寄せられて腕の中に閉じ込められた。触れたところから彼の体温が伝わってくる。
「寒くないかい?」
「う、うん……」
 亀甲の体温は審神者より高くて、包まれているだけで安心する。もっと彼に触れたい。彼を感じたい。
「き、亀甲……」
「うん?」
「キ……キス、したいです……」
 どうしよう、がっついていると思われないだろうか。恥ずかしくて死んでしまいそうだ。
 亀甲はふわりと笑って、優しく審神者の唇に口づけた。
「……愛しいな。愛しくて、おかしくなってしまいそうだよ」
「っ……」
 ずるい。どうしてこんなに大人びた顔をするのだろう。ますます彼のことが好きになってしまう。
「おやすみ、ご主人様。いい夢を」
 額に軽く口づけられて、頭を撫でられる。
「お、おやすみ……」
 優しい体温に包まれた夜は、ひどく穏やかに過ぎていった。
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