誰よりも愛を知っている貴方は


「はあ……疲れたあ……」
 書類仕事が一通り片付いて、気分転換に廊下を歩く。本丸は自然が多いし広いから、こういう時にありがたい。
「なんかおやつでも食べようかな……チョコまだあったっけ……」
 考え事をしながら歩いていると──ふにり、と何かを踏んだ。
 この感覚は知っている。知っているが理解したくない。恐る恐る下を見ると、満面の笑みの恋刀がいた。
「やあご主人様!」
「だからなんで廊下で寝るのよ!」
「そんなの、もちろんご主人様に踏んでもらうためさ!」
 亀甲の笑顔は眩しいくらいだ。私、どうしてこの刀が好きなんだっけ。
 八つ当たりに足に力を入れると、亀甲は悦楽の声を漏らす。
「ああっ、ありがとうございます!」
 しまった、これは逆効果なんだった。しかも今、やはり自分はスカートを履いているから中が見えてしまう。
「……下着、見た?」
 足を退けながらスカートを抑える。ここで怒ったら更に悦ばせてしまう。
「うん、不可抗力で見えたよ」
 まあ、どうせ見えたところで亀甲は何とも思わないだろう。そう思っていたのに、亀甲は立ち上がって少し照れくさそうな顔をした。
「でも、そうだね……。好きな女性の下着をたまたま見てしまうというのは、踏まれるのと同じくらいドキドキするというか……」
「な……!」
 以前はそんなこと言わなかったのに。審神者は顔を赤らめて拳を振りかぶった。
「なんでそこだけ普通のこと言うのよ、馬鹿っ!」
「ああっ!」
 重たい拳の一撃。打撃音が辺りに響いて、本丸の刀たちはまたか、と呆れ返ったという。

 これは、地獄から救われた女の子と、彼女の騎士のこれから始まる恋の物語。
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